30周年の企画盤
Title:ウル盤
Musician:ウルフルズ
2022年にデビューから30周年を迎えるウルフルズ。30周年の年は来年なのですが、その記念すべき年を控えて、30周年30曲のセルフカバーを行うことを発表。その第1弾となるのがこのアルバムです。1996年にリリースした大ヒット作「バンザイ~好きでよかった~」や「それが答えだ!」「かわいいひと」などのシングルヒット曲を中心に、ウルフルズの代表曲が収録されています。
デビュー30周年の記念リリースというと、オールタイムベスト、という企画がすぐに思い浮かびそうです。ただ、そんな中、あえてセルフカバーを、それも30曲もリリースするというあたりに、彼らのこだわりを感じさせます。まあ、ベスト盤としては2014年に「赤盤だぜ!!」がリリースされており、同作を含めてすでに4枚のベスト盤がリリースされている、という事情はあるのでしょうが・・・。しかし、〇周年毎にベスト盤をリリースしたり、ベスト盤の間のスパンがわずか5年程度というケースもあったりする中、このタイミングでのオールタイムベストリリースとなってもおかしくない中での、あえてセルフカバーリリースというあたりがこだわりといった感じでしょうか(・・・って言っていて、その後、オールタイムベストのリリースがあったりして)。
さて、そんな今回のセルフカバーですが、オリジナルからアレンジ的に大きな変化はありません。原曲のイメージがガラリと変わるようなアレンジもなく、そういう意味でも「30周年のベストアルバム」としても十分機能しそうな内容になっています。
しかし、そんな中でもあえてセルフカバーにするという点、バンドとして30年活動を行っていた中での成長を、しっかり曲に残したいということなのでしょう。若さゆえの勢いを重視することが多いロックと比べて、特に彼らが敬愛するソウルやブルースのジャンルでは、年齢を重ねることによるボーカルの深みが、より大きな魅力となることは少なくありません(もちろん、ロックでもそういう魅力を出しているミュージシャンはたくさんいますが)。また、バンドとして30年を経過したことにより、メンバーの一体感もより増して、迫力のある演奏を聴かせてくれています。
実際に、例えば「バンザイ~好きでよかった~」も、特にトータス松本のボーカルのより感情をこもったボーカルが魅力的なセルフカバーになっていますし、「それが答えだ」もよりファンキーな演奏を楽しませてくれます。デビューから30年が経過し、ベテランバンドとなった彼ら。より年齢を重ねることによるバンドのすごみを曲からしっかりと感じ取ることが出来ました。
ちなみに本作、カバーアルバムの第1弾ということですが、大ヒットした「ガッツだぜ!」や「明日があるさ」は収録されていません。こちらは第2弾以降ということになるのでしょうか。それはそれで楽しみ。第2弾以降で、どのような彼らの演奏が聴けるのか、楽しみにしたいです。
評価:★★★★★
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