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2021年8月16日 (月)

全世界注目の2枚目

Title:Happier Than Ever
Musician:Billie Eilish

今、世界でもっとも注目を集めているミュージシャンといえば、間違いなく彼女、ビリー・アイリッシュではないでしょうか。前作「WHEN WE ALL FALL ASLEEP,WHERE DO WE GO?」は世界中で大きな注目を集め、昨年1月に行われたグラミー賞では、主要四部門を独占するなど、名実ともに、世界を代表するポップミュージシャン、といっても過言ではないでしょう。

そんな中、ついにリリースされた、前作から約2年4か月ぶりにリリースされた2枚目のオリジナルアルバムが本作。文句なしに本国アメリカやイギリスをはじめ、世界各国のチャートで1位を獲得し、新作に対しての期待の大きさを感じさせます。そうしてリリースされたニューアルバムですが、まずはそのジャケットが目を惹きます。典型的な「白人女性」のスタイルに、肩もあらわにし、「女性性」を前面に出したセクシーなポーズが印象的。まるで精神病患者のように、暗い部屋の中でベットの端に座り、白目をむいていた前作のジャケットとはあまりに対照的。彼女自体は、普段から白人ミュージシャンとして珍しいほど積極的にBLMに対しても発言するなどの姿勢も目立つため、このいかにも白人女性的なジャケット写真の姿は、ある意味「皮肉」ともとれるかもしれませんし、前作とは異なる姿に、固定的な彼女に対するイメージを拒否するスタンスもあったのかもしれません。

そして肝心の楽曲ですが、前作よりもよりポップにまとまっている作品になっていました。前作でも、抑え目のサウンドで淡々と表現するような楽曲が目立ったのですが、今回も基本的には同じ方向性。必要以上に盛り上がることのない作風で淡々としたポップスが続いていきます。ただ、前作で「ダークポップ」なるいわれ方をしたような暗い雰囲気の楽曲は少なく、全体としてはむしろメロディアスでポップという印象を抱くような作品が並んでいたように感じます。

サウンド的にも「Oxytocin」のようなエレクトロチューンや、「Not My Responsibility」のようにドリーミーなサウンドをバックに淡々と語るような作品もありつつ、「Billie Bossa Nova」「Halley's Comet」のようなメランコリックなメロディーラインでムーディーに聴かせる曲が目立ったように思います。タイトルチューンとなっている「Happier Than Ever」も序盤はアコギでフォーキーに聴かせる曲調からスタート。後半はダイナミックなバンドサウンドで盛り上がるのですが、続くラストチューンの「Male Fantasy」も再びアコギでしんみりフォーキーに聴かせる楽曲でアルバムは締めくくられています。

前作同様、エレクトロやHIP HOP、フォーク、ロック、ポップスなどの音楽性を感じるのですが、今回はその中でもポップスやフォークなどの要素がより強かったように感じます。淡々としたメロディーラインで決してインパクトの強い楽曲ではないものの、しっかりと耳に残り、最後まで飽きずに聴けることが出来る作品になっていました。そういう点、彼女のソングライターとしての実力を感じます。

また、歌詞については、ここ最近、一気に注目され大きく変化した彼女の身の回りに対しての彼女なりのスタンスを示した歌詞が目立ちます。特にドリーミーなサウンドにのせて淡々とした語りを綴る「Not My Responsibility」では「Do you know me?/Really know me?」と世間の批判に対しての彼女の反抗心を感じさせる歌詞になっており、彼女なりの強いメッセージを感じさせます。

ただ、それでも世間に対しての反発心がかなり強かった前作に対すると、良くも悪くも「まとまった」という感のあるアルバム。それがデビュー作のような勢いを失ったとみるか、一流のポップシンガーとしての安定感を手に入れたとみるか意見はわかれそうですが、個人的には単なるハイプではない、一流のポップシンガーとしての階段を間違いなく大きく上ったアルバムだと思います。このアルバムも大きく注目されそうですし、まだまだ彼女の活躍は止まらなさそう。2枚目の作品ですが、彼女はまだ19歳。まさに末恐ろしさも感じさせる1枚でした。

評価:★★★★★

Billie Eilish 過去の作品
When We All Fall Asleep, Where Do We Go?

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