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2021年8月24日 (火)

「アフリカ」を前面に

Title:Mother Nature
Musician:Angelique Kidjo

今年開催された東京オリンピック。いろいろ物議をかもした開会式の中で、一番驚いたことがありました。それは彼女、アンジェリーク・キジョーの登場。ジョン・レジェンドやキース・アーバンといった大物ミュージシャンと共に登場し、「イマジン」を熱唱し、大きな話題に・・・という感じではなく、正直なところ「誰?」のような感覚だったようです。確かに彼女は、グラミー賞を4度受賞していたり、ユニセフの親善大使を務めるなど、間違いなく「世界的なミュージシャン」ではあるものの、日本と特に縁のあるミュージシャンではなく、彼女を選ぶセンスの良さはともかくとして、あえて日本のオリンピックの開会式に登場させる意味については、疑問符が残ってしまうのは間違いないでしょう。

さて、もともとユニセフの親善大使だったり、アフリカの女子教育を支援するNPO団体「バトンが・ファンデーション」を設立したりと、社会的な活動も目立つ彼女。そんな中リリースされた今回のアルバムは、積極的に「アフリカ」を意識したアルバムになっており、なおかつ、数多くのアフリカ出身のミュージシャンたちとのコラボが大きな特徴となっています。「Africa,One Of A Kind」では、アフリカ音楽を代表する大御所ミュージシャン、Salif Keitaと共演。当サイトでも取り上げたことのあるナイジェリア人のシンガーソングライターBurna Boyや、Beyonceのアルバムにも参加したことのあるナイジェリアのシンガーソングライターYemi Aladeなどなど、数多くのアフリカ系のミュージシャンが参加しています。

そんなアルバムなだけに楽曲的にもトライバルな作風の曲が目立ちます。例えば前述のSalif Keitaが参加した「Africa,One Of A Kind」では、トライバルで軽快なパーカッションのサウンドがいかにもアフリカ的。爽快でスケール感も覚える作品に。"You are Africa/We are Africa"と歌いこの曲は、人類みなアフリカの血が流れているという、アフリカ讃歌となっています。また「One Africa(Independance Cha-Cha)」も印象的。「アフリカの年」と言われた1960年にリリースされた、「コンゴ音楽の父」とも言われるル・グラン・カレによる楽曲のリメイク。アフリカの国々の名前も読み込まれた歌詞も印象的な、軽快でリズミカルな楽曲を聴かせてくれます。

このように、明確にアフリカを意識した1枚ではあるのですが、ただ、実はアルバム全体としては必ずしもアフリカ音楽らしいトライバルな要素ばかりが前に出ている訳ではなく、むしろ良い意味であか抜けた感のある、明るいポップという印象を受ける作品になっています。1曲目の「Choose Love」などはまさにそんなナンバーで、伸びやかなボーカルを爽やかに聴かせるR&B的なポップスに仕上がっていますし、Burna Boyをゲストに迎えた「Do Yourself」も、トライバルなリズムで軽快に聴かせつつ、軽快でポップな作風の曲調はかなりあか抜けたものとなっています。「Mycelium」もムーディーでドラマチックなナンバー。哀愁たっぷりのメロディーラインは日本人の琴線に触れそう。ラストの「Flying High」も、リズムにはトライバルな要素も見え隠れするのですが、メロディーは爽快なポップスにまとまっており、広い層にアピールできそうな楽曲に仕上がっています。

「アフリカ」という点を前面に出しつつ、ただ一方では決してトライバルな方向に行き過ぎない、いい意味でのポップな要素を感じられるアルバムになっていたと思います。東京オリンピックの開会式に出場し、日本でも注目・・・と行きたいところなのですが、残念ながらほとんど話題になっていないのが残念なところ・・・。ただ、開会式を見ていた方で少しでも気になった方がいたら、是非とも聴いてほしい1枚だと思います。日本でももっと知名度が高まればうれしいのですが。

評価:★★★★★

Angelique Kidjo 過去の作品
Remain in Light
Celia

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