RCサクセションの本質が伝わる名盤
Title:RHAPSODY NAKED Deluxe Edition
Musician:RCサクセション
昨年から、忌野清志郎デビュー50周年としてRCサクセションあるは忌野清志郎ソロ作に関して、様々な企画が立ち上がっていますが、本作はその第4弾企画となります。もともと1980年にリリースされ、RCサクセションを代表する名盤として知られるライブアルバム「RHAPSODY」。その後、未発表音源を加えた完全版として2005年に「RHAPSODY NAKED」がリリースされていますが、本作は、その「RHAPSODY NAKED」をリマスター。さらにはオフィシャルブートレグとして、1980年前後のライブ音源を収録したCDを追加。限定版にはさらにLPにライブ映像作品も加えた豪華内容になっています。
RCサクセションといえば数多くの傑作アルバムを世に送り出し、セールス的には1988年にリリースし、東芝EMIからのリリースが直前に中止になったことでも話題となった「COVERS」が、彼らのアルバムとしては唯一のチャート1位を記録しています。本作はリリース時にチャート最高位47位と決してヒットしたとは言い難く、かつオリジナルアルバムではなくライブアルバム。それでもRCサクセションを代表する名盤というと、本作が取り上げられるケースが少なくありません。
しかし、あらためてこのアルバムを聴くと、なぜ本作が彼らを代表する傑作と言われるのか、その理由はよくわかるように思います。まず、このライブ音源から伝わってくる熱量が半端ありません。当時のメインメンバーは29歳。すっかりアラフィフ、アラカンのロッカーも少なくなくなった現在と異なり、当時はそろそろベテランの領域に入ってくる年代でしょう。しかし、このアルバムから感じる攻撃性は、年齢なりの衰えは全くありませんし、むしろそこにそれなりのキャリアに伴う技量が加わったことにより、一方ではある種の余裕とそれにともなうユーモラスさがライブパフォーマンスに加わっています。それだけに今聴いても、非常に迫力のあり、かつ魅力的なパフォーマンスがCDを通じてもしっかりと伝わってきます。
さらに一番大きいのは、RCサクセションの音楽的なルーツが、ライブ音源ではより伝わってくる、ということではないでしょうか。例えばオリジナルの「RHAPSODY」にも収録されている「上を向いて歩こう」のカバーなどが典型的なのですが、オーティスレディングの影響を強く受けているボーカルスタイルで、ソウルの要素を強く取り入れていますし、梅津和時のサックスにより、全体的にもよりソウルからの影響が顕著な音楽性を感じます。
特にオリジナルの方ではカットされていたものの「NAKED」に収録されている「まりんブルース」「たとえばこんなラヴ・ソング」ではゲストに金子マリが登場。彼女のボーカルによって、よりソウルやブルース的な要素も強めていますし、「Sweet Soul Music~The Dock Of The Bay」では、まさにオーティスレディングの名曲もカバーとして取り上げるなど、さらにブルースやソウルからの影響を顕著に感じる構成となっています。
オリジナル音源以上に迫力のあるロックバンドとしての彼らの要素や、さらにソウルやブルースに強い影響を受けているルーツ志向という彼らの要素をより強く感じるこのライブ音源。確かにRCサクセションのよりコアな部分を出している名盤であることは間違いなく、そういう意味でもRCサクセションを代表する1枚として本作が取り上げられているのでしょう。あらためて本作が名盤名高い理由がはっきりとわかりました。
そしてこのデラックスエディションの特徴としてのDisc3。当時のライブ音源が収録されています。「ブートレグ」というサブタイトルの通り、音質としてはさほど良くないのですが、ただそれだけに逆にライブとして現場の空気感をよりとらえられており、ある種のリアリティーも感じられます。「ボスしけてるぜ」のMCでは、この曲が「勤労青年の勤労意欲を削ぐ」という理由で有線放送の放送禁止になった、というMCがあるのですが、本当でしょうか?(笑)ちなみに銀座のことを「粋がった田舎者の街」とけなしているのもキヨシローらしい感じがします。
とにかく、全ロックリスナーが聴くべき、日本のロック史を代表する名盤ということは間違いないでしょう。個人的にはオリジナル音源よりも、より彼らの本質がわかる「NAKED」の方がより優れているように感じます。オフィシャルブートレグも聴きどころが多いですし、これを機に、是非とも聴いてほしい名盤です。
評価:★★★★★
RCサクセション 過去の作品
悲しいことばっかり
シングル・マン+4
SUMMER TOUR '83 渋谷公会堂~KING OF LIVE COMPLETE~
COMPLETE EPLP~ALL TIME SINGLE COLLECTION~
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