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2021年8月 9日 (月)

いろいろな挑戦を感じるが

Title:scent of memory
Musician:SEKAI NO OWARI

昨年11月にはEnd of the World名義のアルバム「Chameleon」が、さらに今年2月にはベスト盤がリリースと、アイテムのリリースが続いたためちょっと意外な感もあるのですが、SEKAI NO OWARI名義のオリジナルアルバムとしては2枚同時リリースとなった「Eye」「Lip」以来、約2年5か月ぶりのニューアルバムとなります。まあ、その前のオリジナルアルバム「Tree」からは4年のインターバルがありましたので、それに比べると、今回のインターバルはさほど長くない、とも言えるのですが。

今回のニューアルバムは、ベスト盤リリース後初のアルバムということもあり、彼らにとってひとつの区切りをつけた後のアルバムと言えるかもしれません。今回、レコード会社もTOY'S FACTORYからVirgin Musicに移籍。このレコード会社移籍もあり、まさに心機一転のアルバムと言ったところでしょうか。

その心機一転の心意気を感じられるかのように、今回のアルバムは彼らの挑戦が感じられるアルバムとなっています。2曲目「Like a scent」はなんとHIP HOPに挑戦。トラップ風のトラックに坂本龍一の楽曲のフレーズを重ねた、いかにもHIP HOP的なつくりの作品になっているほか、「陽炎」でははじめてSaoriがボーカルに挑戦。「family」ではFukaseの2人の妹がボーカルとして参加している楽曲になっているなど、新しい試みが要所要所に感じられます。

ただ、そういった試みが功を奏していたか、と言われると、ちょっと微妙な部分も。「Like a scent」は、精神病院に入院していたこともあるFukaseの、その当時の心境も語られているなど、彼らにしてはかなりダークでどぎつさもある描写が大きなインパクトになっているのですが・・・・・・しかし、どうも聴いていると「いきがっていて吹かしている」という印象を受けてしまいます。ひとつはその歌詞の描写に対してサウンドがあまりに清涼感がありすぎる、という点もありますし、歌詞にしてもいかにもどぎつさを狙ったような感があり、どこか浮いてしまっているチグハグ感が否めませんでした。Saoriボーカルにしてもアルバムの中ではインパクトにはなっているのですが・・・うん、ボーカリストとしては、あれだよね・・・・。

また、新たな一歩ということもあるのでしょうし、メンバー全員、それなりの年齢になってきた、ということもあるのでしょうが、全体的にいままでのようなファンタジックな雰囲気は薄め。いかにもキラキラしたサウンドでドリーミーな雰囲気の、といった曲はあまり聴かれませんでした。もっとも一方で、ピアノやストリングスを多用した美しいサウンドは健在、というよりも今回のアルバムではそのサウンドをより積極的に前面に出して用いているような感もあります。

もっともなんだかんだいっても耳を惹くのはメランコリックさも感じられるポップなメロディーラインで、切ないメロディーラインが胸をうつ「umbrella」や、ベルの音色が美しい、少々ベタさも感じられるクリスマスソング「silent」、おそらく亡くなった友人へ捧げる悲しい歌詞ながらも明るいポップなメロというアンバランスさが耳を惹く「tears」など、前々から思っていることなのですが、やはりメロディーラインの良さがセカオワの大きな魅力だよな、ということをあらためて感じました。また、このメロディーラインの良さという土台があるからこそ、若干痛々しさも感じる挑戦も、作品として成り立つのでしょうね。

そんな訳で、挑戦の結果としては若干微妙な点は否めないのですが、なんだかんだいっても美しいメロディーラインに惹かれる、セカオワらしいアルバムに仕上がっていたと思います。今回の挑戦が、今後、実を結べばよいと思うのですが、さてさて・・・。ただ、あらたな一歩を踏み出した彼ら。今後の活動も楽しみです。

評価:★★★★

SEKAI NO OWARI 過去の作品
EARTH
ENTERTAINMENT
Tree
Lip
Eye
Chameleon(End of the World)
SEKAI NO OWARI 2010-2019

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