奇妙礼太郎の人生賛歌
Title:ハミングバード
Musician:奇妙礼太郎
奇妙礼太郎のビクター移籍第1弾となるのは全6曲入りとなるミニアルバム。彼の作品を聴くのは、前作「More Music」に次いで2曲目となります。奇妙礼太郎というと、決して派手さはないものの朴訥とした雰囲気のボーカルを、時としてエモーショナルに歌い上げ聴かせるそのボーカルスタイル。また、ロックンロール、ブルース、フォーク、ネオアコなどの要素を取り込んだ音楽性も大きな魅力です。ただ一方、メロディーラインについては若干インパクトの弱さは否めず、奇抜な歌詞などが飛び込んでくるのですが、それを差し引いても、少々薄味という印象は否めませんでした。
そんな中、今回のアルバムではプロデューサーにベベチオの早瀬直久を起用。全楽曲、彼が作詞作曲を手掛けており、奇妙礼太郎はボーカルに徹したアルバムになっています。そして、その結果は大成功。奇妙礼太郎のボーカルを生かしつつ、暖かみのある身近な素材を読み込んだ歌詞の世界観はそのままに、前作で物足りなかった楽曲のインパクトがグッと増した傑作に仕上がっていました。
1曲目を飾るタイトルチューン「humming bird」からまずマリンバで軽快に聴かせつつ、メロディアスに聴かせるピアノが印象的。彼のボーカルに相まって、非常に暖かみのあるポップチューンに仕上がっています。そして、ある意味、このアルバム1番インパクトがあったのが続く「お茶を飲もう」でしょう。タイトル通り、「お茶」をテーマに日常を歌った曲なのですが、サビの部分の歌詞が
「踊る千利休が見えた気がしたよ」
とダンサナブルな展開に。コーラスにも「千利休 千利休」のコーラスが・・・・・・千利休は踊りません!個人的にはかなりインパクトのある歌詞でした。
歌詞が暖かく印象的だったのが続く「Life Is Beautiful」で
「冗談でも 言いたくない言葉を
君は人が怖いから 放ってしまうのかな」
という歌詞から、サビのラストでは「ライフイズビューティフル」と締めくくる、そっと優しく人を包み込むような暖かいナンバー。暖かい歌詞やメロも素晴らしいのですが、ここに優しくもエモーショナルな奇妙礼太郎のボーカルが実によくマッチしており、絶妙な名バラードに仕上がっています。
その後も郷愁感たっぷりでフォーキーな「アスファルト」や、暖かいホーンセッションでノスタルジックあふれるメロを力強く聴かせる「思い出の店」など、暖かさを感じるナンバーが続き、そして秀逸だったのがラストの「すぐそばのハッピー」。タイトルそのままのとても暖かい応援歌的な楽曲。ホーンセッションも入ったニューオリンズ風のアレンジも楽しいですし、コロナ禍の中であえて「あなたと飲めばホロ苦ワンダホー」という歌詞も印象的。「Life If Beautiful」同様、人生賛歌な1曲となっています。
全体的にはミディアムチューンで聴かせる楽曲が並ぶのですが、聴いていて思わず楽しくなってくるような楽曲ばかりで、特に「Life Is Beautiful」「すぐそばのハッピー」などのように人生賛歌を感じさせる楽曲が目立つように感じました。文句なしに早瀬直久との相性もバッチリ。今後、この組み合わせでのリリースが続くかどうかはわからないのですが、今後も続くとしたら、奇妙礼太郎はよいパートナーを見つけた、といってもいいのではないでしょうか。このコロナ禍でめげそうになった時にこそ聴いてほしい、聴いていてハッピーになれる、そんな傑作でした。
評価:★★★★★
奇妙礼太郎 過去の作品
More Music
ほかに聴いたアルバム
The Race/AK-69
前作「LIVE:live」からわずか10ヶ月というインターバルでリリースされたAK-69のニューアルバム。ANARCHYやちゃんみな、SALUといった豪華なゲストも参加した本作。ただ、基本的にはいつもの彼と同様、今時のトラップ的なリズムを入れつつ、メランコリックなサウンドでリズミカルに聴かせるラップがメイン。ある意味、いつも通りのAK-69といった感じで、彼のアルバムではいつも思うのですが、目新しいものはないのですが、しっかりとファンの求めるものと押さえている卒のない内容といった感じに仕上がっていました。
評価:★★★★
AK-69 過去の作品
THE CARTEL FROM STREETS
THE RED MAGIC
The Independent King
Road to The Independent King
THE THRONE
DAWN
無双Collaborations -The undefeated-
THE ANTHEM
ハレルヤ-The Final Season-
LIVE:live
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