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2021年7月27日 (火)

99日後に消えるアルバム

Title:NINE
Musician:SAULT

Nine

めっちゃカッコいいバンドによる、とびぬけて異色ともいうべきアルバムがリリースされました。紹介するのは、2020年の私的ベストアルバムにも2枚同時にランクインさせたグループ、SAULTのニューアルバム。このグループ、ロンドンを拠点として活動する謎のユニットで、昨年リリースした「Untitled(Black is)」「Untitiled(Rise)」も大きな話題となりましたが、そもそもバンド名からして「ソー」なのか「ソールト」なのか不明・・・という、謎めいたユニットだったりします。

そんな彼らが今年発表したアルバムも、非常にユニーク。普通にCD、アナログ盤がリリースされ、ストリーミング配信もダウンロード配信も行われているのですが、その期間がわずか99日!リリースは6月25日のようですので、おそらく10月2日あたりには消えてしまう計算となります。このようなリリース形態とした理由は不明ですが、もっとも、CDしろアナログにしろ「媒体」としてアルバムを「所有」すれば永続的に聴けるわけですから、ストリーミングのような聴き方が一般的となっている今のシーンに対するアンチという姿勢、なのかもしれません。

そのような限られた期間のみリリースされる本作ですが、その事実があまりにももったいなく感じるほどのカッコいいアルバムに仕上がっています。アルバムはまず、トライバルなコーラスによるイントロ的なナンバー「Haha」からスタートするのですが、そこから続く「London Gangs」のレトロな雰囲気のあるファンキーなギターリフへの入りがまず、鳥肌が立つほどカッコいい!この「London Gangs」も、女性ボーカルが重なり、レトロ・ファンクな曲調ながらも、ループするサウンドが今風という、グルーヴィーなサウンドに思わず踊り出してしまうようなナンバー。続く「Trap Life」もトライバルなパーカッションが加わりつつ、ファンキーなサウンドがカッコいいナンバー。後半になると一転、シンセのリズムにレトロな雰囲気も加わり、独特のグルーヴ感を醸しています。

このファンキーでグルーヴィーなリズムがカッコいい前半から一転、インターリュード的な「Mike's Story」を挟んで後半は、メロウなトラックが心地よいナンバーが続きます。「Bitter Streets」はメロウな女性ボーカルが、こちらもレトロな懐かしさを感じさせるナンバー。メロウな歌モノながらも、そのバックに流れるベースラインとドラムスのグルーヴが、また非常に心地よさを感じさせる楽曲に仕上がっています。「Alcohol」も同じくメロウな女性ボーカルで、こちらはタイトル通り、大人の雰囲気を存分に醸し出すムーディーなナンバーに。こちらも独特の甘い雰囲気がたまりません。

そんなレトロでムーディーなナンバーが並んでいたかと思えば「You from London」もまた、メロウなトラックながらも女性ボーカルが入り、サンプリングも取り入れたHIP HOPなナンバーに。懐かしいガールズポップのようなタイトルチューン「9」をメロディアスに聴かせた後、ラストの「Light's in Your Hands」は力強い女性ボーカルで歌い上げるソウルやゴスペルなどの要素を取り入れた楽曲と、後半はメロウなトラックの歌モノを軸としつつ、バリエーションの富んだ作品の並ぶ構成になっていました。

終始、懐かしいレトロな雰囲気を醸し出しつつ、一方ではループするサウンドやサンプリング、HIP HOPなどの今どきな要素を取り入れ、かつファンク、エレクトロ、ポップ、ソウル、ゴスペルなど多彩な音楽性を上手く楽曲の中に取り入れている・・・さらに全体に流れている独特なグルーヴ感も文句なしでカッコいいアルバム。前作も文句なしの傑作でしたが、続く本作も間違いなく本年度を代表する傑作アルバムに仕上がっていたと思います。

惜しむらくはこのアルバム、99日で消滅し、年間ベストに選んでも、来年はじめの時点では聴く手段がなくなってしまう事実・・・・・・。まあ、それがミュージシャンの意図なので仕方がないのでしょうが。ただ、間違いなく傑作アルバムですので、聴くのなら今のうちに急げ!!文句なしにカッコいいアルバムでした。

評価:★★★★★

SAULT 過去の作品
Untilted(Black is)
Untitled(Rise)


ほかに聴いたアルバム

Fatigue/L'Rain

ニューヨークはブルックリン出身のマルチインストゥルメンタル奏者、L'Rainによるニューアルバム。30分弱という長さに対して、14曲入りという構成になっており、1曲あたり平均2分弱という内容に。ソウルやゴスペル、ジャズなどの要素を取り入れたエクスペリメンタル的な作風の楽曲が、短い時間で次々と繰り広げられることが魅力的。かなりアバンギャルドなエレクトロチューンからドリーミーなポップ、ムーディーな歌モノまで、挑戦的な作風の曲から聴きやすいポップな作風の曲までの振れ幅もユニーク。めくるめく構成に時間があっという間に過ぎ去るアルバムでした。

評価:★★★★★

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アルバムレビュー(洋楽)2021年」カテゴリの記事

コメント

SAULTのアルバムはサイト(bandcamp)から消えてしまいましたが、それと入れ替わるようにフィジカル盤(LP・CD)がリリースされました。

キティ・エンパイア(The Observer)は《彼らの名前は常に 「暴行」(assault)という言葉の冷たい震えを伴っていたが、ここでは治療(remedy)として彼らの音楽を提供している。「SAULTは傷を癒します」 とSolは甘く囁くように歌う》と評しています。
(https://www.theguardian.com/music/2021/jul/03/sault-nine-review-london-99-days-balm-)

投稿: sknys | 2021年10月10日 (日) 13時24分

>sknysさん
情報ありがとうございます。フィジカルのリリースはやはりうれしいですね。いいアルバムなので、そのまま消えてしまうのはあまりにもったいない・・・。

投稿: ゆういち | 2021年12月15日 (水) 08時42分

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