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2021年7月 2日 (金)

戦後テキサス・カントリー・ブルースを代表するシンガーのコンピ盤

Title:The Texas Blues of Smokey Hogg
Musician:Smokey Hogg

今回紹介するのは、最近リリースされたブルースミュージシャンのコンピレーションアルバム。1914年にアメリカはテキサス州で生まれたスモーキー・ホグというブルースミュージシャン。当初は1937年にデビュー。その後、第二次世界大戦での兵役を経て、1947年に録音を行い、その後1958年までという短い期間に関わらず、モダン、スペシャリティ、インペリアルなど数多くのレーベルから60枚以上のSP盤やシングルをリリース。うち1948年の「ロング・トール・ママ」と1950年の「リトル・スクール・ガール」はビルボードのR&Bチャートでベスト10入りをするなどのヒットを記録したそうです。

彼は相当な酒飲みだったそうで、レコーディングの最中に、バンド全員用だったウィスキーの5分の1ガロン(約750ml)を飲み干したというエピソードもあるそうです。ただ、その影響もあってか、若くして大腸がんにかかり、1960年にわずか46歳で早世。実質的な活動期間は10年ちょっとという太く短いブルースミュージシャン人生と言えるでしょう。

本作は、そんな彼の全24曲入りとなるコンピレーションアルバム。もともと、同名タイトルの彼の伝記本とのタイアップとしてリリースされた作品だそうです。その書籍の方は残念ながら洋書で邦訳もされていないので読んでいないのですが、CDの方はSmokey Hoggというミュージシャンが非常に気になり、彼の音源を聴くのはこれがはじめてなのですが、アルバムを手にとってみました。

彼はいわば戦後すぐのテキサス・カントリー・ブルースを代表するブルースシンガーの一人なのですが、まず聴いてみて感じたのは楽曲として垢ぬけていて、ある種のモダンさを感じさせるという点でした。1曲目から4曲目までは1947年の録音なのですが、ジャジーな感のあるピアノをバックに伸びやかに歌い上げるボーカルも印象的。「Worring Over You」ではホーンがゆっくりとその音色を聴かせてくれますし、「Everybody Gotta Racket」も楽曲の構成やボーカルは展開的なカントリーブルースながらも、ピアノの音色でジャジーな雰囲気を醸し出しています。

5曲目から12曲目は1950年の録音になるのですが、こちらも4曲目と同様、ピアノトリオをバックとした演奏。「No Matter What You Do」のピアノにはメロウさも感じさせつつ、スモーキーのボーカルもどこかセクシーに歌い上げているのが印象的。「Coming Back Home To You Again」ではピアノとギターをバックに歌い上げる彼のボーカルの力強さが印象に残ります。ただどの曲も、4曲目までと同様、演奏にはジャジーさを感じさるカントリーブルースで、どこか垢ぬけたモダンさを感じさせます。

その前半の印象がちょっと変わるのが13曲目以降。こちらは1951年の演奏となるのですが、ギターのみによる弾き語りの演奏。パターン的に似たような曲が多く、そういう意味ではちょっとダレる部分もあるのですが、ただ、12曲目までのモダンな演奏の中ではあまり表に出てこなかった、彼の泥臭いような部分が前に出てきており、前半とはまた異なるスモーキー・ホグの魅力を感じさせます。

彼の演奏と歌自体は比較的王道を行くような、テキサス・カントリー・ブルースだな、という印象を受けるのですが、そこにモダンな雰囲気のピアノトリオの演奏を重ねることにより、またちょっと新たな雰囲気も感じさせる点がユニークに感じました。今回、彼の音源を聴くのはこれがはじめてですが、やはりその魅力的な演奏に惹かれた1枚。わずか10年ちょっとの活動期間で録音された曲は256曲に及ぶそうで、まだまだいろいろ聴きごたえのある楽曲にも出会えそう。彼の代表的なコンピ盤はほかにもいろいろと出ているみたいですので、他のアルバムも是非聴いてみたいです。

評価:★★★★★

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