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2021年7月 3日 (土)

これが東京事変の「音楽」

Title:音楽
Musician:東京事変

これは直近のミニアルバム「ニュース」の時にも書いたのですが・・・コロナ禍で特にエンタメ業界が翻弄された2020年において、最も大きなニュースのひとつと言えるのが東京事変復活のニュースでしょう。まだコロナ禍が表面化する前の2020年の元旦に報道されたこのニュース。復活コンサートが、コロナが表面化する中で強行されたこともあり、一部でバッシングも生じてしまいましたが、その後は順調に活動を続け、そしてついに、待望となるフルアルバムがリリースされました。

そんな久々となるニューアルバムですが、2020年に聴く東京事変のサウンドは、しっかりと2020年にアップデートされているな、というのがまずは第一の印象でした。もちろん、椎名林檎をはじめ、メンバーそれぞれ、東京事変の活動が休止している最中も個々で活動していたわけですから、久々のアルバムでもしっかりと現役感を醸し出しているのは当たり前といえば当たり前かもしれません。ただ、ミニアルバム「ニュース」のリリースもあったものの、久々のアルバムでもバンドとしてのインターバルを感じさせないアルバムになっていたようにも感じます。

フルアルバムの冒頭を飾る「孔雀」はまさにHIP HOPやファンクの要素を入れつつ、AORやネオソウルなどの要素を取り入れ、しっかりと現代にアップデートした作品に感じます。シンセとファンキーなベースでレトロフューチャー風な雰囲気を醸し出す「黄金比」も、80年代的な懐かしさを感じさせつつも、同時に今どきな印象を受ける作品になっています。

さらに「闇なる白」はちょっとキリンジっぽい感じもするAORチューンですし、同じく「銀河民」もメロウな雰囲気のAORな要素の強い作品に。全体的に、いままでの作品以上にAOR的な要素を強く感じるアルバムになっていました。

ただ一方では「命の帳」では椎名林檎の感情たっぷりの歌声をしっかりと聴かせるピアノバラードになっていますし、「青のID」もアバンギャルドでリズミカルなピアノが軽快なポップチューン。さらに「緑酒」では疾走感あるギターロックとバラエティー富んだ展開に。ラストの「一服」も軽快なエレクトロポップと、「音楽」というタイトル通り、東京事変の様々な音楽がつまったアルバムに仕上がっていました。

今回のアルバムでも、作詞は椎名林檎で統一されている一方、作曲はバンドメンバーがそれぞれ手掛けたアルバムになっており、このバラエティー富んだ展開は、そんな複数の作家陣をかかえているからこその結果とも言えるでしょう。そういう意味でもまさに東京事変らしいアルバムになっていたと思います。しかし一方でちょっと気になったのは、その結果として、全体としてアルバムとしてちょっとバラバラな感が否定できない内容になっていたのも気になりました。メンバーがそれぞれの方向に走ってしまい、アルバムとして若干、核の部分が弱いようにも感じてしまったのも否定できません。

アルバムとしては非常によくできた傑作なのは間違いないと思います。ただ、ここ最近、勢いのあった椎名林檎のソロ作と比べると、ちょっとまとまりのない内容だったような感も否めません。まあ、このゴチャゴチャ感もバンドらしい魅力といえば魅力かもしれませんが・・・。これからの東京事変の活躍も期待しつつ、椎名林檎のソロも並行して活動してほしいなぁ・・・とも感じてしまったアルバムでした。

評価:★★★★★

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