バラエティー富んだ久々のフルアルバム
Title:4Wheels 9Lives
Musician:Ken Yokoyama
ここ最近、Hi-STANDARDとしての活動も目立ったため、Ken Yokoyama名義としては久しぶりとなるフルアルバム。直近作がミニアルバムで、その前がコンピ盤だったので、純粋なフルアルバムとしては実に約5年8ヶ月ぶりとなるアルバムとなります。タイトルの「4Wheels」とは、Ken Yokoyamaのバンド4人組をあらわした言葉、「9Lives」はしぶとく生きるという決意を表した言葉で、このコロナ禍の中での彼の、というよりも彼らの決意を感じることが出来ます。
そんな彼の久々となるニューアルバムですが、いままでの彼のアルバムの中でも、突き抜けてポップで、そして聴いていて心地よくなる傑作に仕上がっていました。まず序盤ですが、Ken Yokoyamaらしいパンキッシュなナンバーからスタート。1曲目「I'm Going Now,I Love You」はエッジの効いたギターのイントロからスタートすると、ハイテンポで疾走感あふれるパンクチューンが展開。さらに続くタイトル「4Wheels 9Lives」も、その分厚いサウンドが聴いていて心地よくなるメロコアなナンバーへと続いていきます。
ここらへんはいかにもKen Yokoyamaらしいヘヴィーなナンバーが続きます。もちろん、これらいかにも彼らしいナンバーも魅力的なのですが、このアルバムの良さはこれから。3曲目「Spark Of My Heart」はメロコアやパンクというよりはパワーポップの様相も感じるメロディアスでポップなメロディーが魅力的なナンバーに。「Helpless Romantic」もミディアムチューンで、ヘヴィーなバンドサウンドに心地よさを感じさせつつ、基本的にはメロディアスな歌を聴かせる楽曲となっています。
さらにグッと雰囲気が変わるのが後半。「Cry Baby」は軽快なスカパンクのナンバー。カラッとしたサウンドが魅力的な爽快な楽曲に仕上がっていますし、「Forever Yours」もメランコリックなメロディーラインの疾走感あるギターロックに。さらに「On The Sunny Side Of The Street」では前半、ちょっとブルースの要素も感じる軽快なギターインストでスタート。後半は歌も入ってくるのですが、こちらもルーツ志向の軽快なギターポップに仕上がっています。
そんな訳で、全体的にはしっかりとKen Yokoyamaらしいパンクロック、あるいはメロコアの路線を聴かせつつ、一方でバラエティーに富んだ作品を聴かせてくれた本作。そのため、最後までまったくダレることなく疾走感あるサウンドもあって、一気に楽しめるアルバムに仕上がっていました。また、全編で流れるメロディアスでポップなメロディーラインも大きな魅力。意外とベタさも感じるメロディーラインが大きなインパクトにもなっていました。
そしてバラエティー富んだ作品を聴かせつつ、最後は彼らしいパンクロックナンバー「While I'm Still Around」で締めくくりという構成も見事。Ken Yokoyamaに求められるファンからの要望にきちんと応えつつ、ミュージシャンとしてそれだけではないという面をしっかりアピールできていたアルバムに仕上がっていたと思います。パンクロック好きはもちろん、それ以外の音楽ファンにとっても幅広く楽しめるアルバムでした。
評価:★★★★★
Ken Yokoyama 過去の作品
Four
Best Wishes
SENTIMENTAL TRASH
Ken Yokoyama VS NUMBA69(Ken Yokoyama/NAMBA69)
Songs Of The Living Dead
若いながらも歴史あり 96.3.2@新宿LIQUID ROOM/Fishmans
90年代後半に活躍し、レゲエやダブなどを取り入れた独特の音楽性が、今なお高い評価を集めているバンドFishmans。ボーカルで、ほぼすべての曲の作詞作曲を手掛けていた佐藤伸治が、1999年にわずか33歳という若さで急逝したこともあり、半ば「伝説のバンド」と化している彼ら。その後も残ったメンバーである茂木欣一を中心としてFishmans名義でのライブが行われているなどバンドとしては活動を続けているのですが、当然のことながら、ライブ以外の音源のリリースはありません。
本作はタイトル通り、1996年に行われた新宿LIQUID ROOMでのライブの模様をおさめたライブ盤。もともと2005年にDVD化されていた映像の音源をリマスターしてライブアルバムとして収録した作品となります。アルバム「空中キャンプ」リリース後のツアーで、今から振替えると、これから彼らの音楽はさらなる成長を遂げるのですが、このころの作品ももちろん、既に圧倒的な個性を獲得し、独特の浮遊感を覚えるライブパフォーマンスが大きな魅力。収録されているMCは時代を感じられて、ある種ほほえましさと興味深さを感じるのですが(ジュンスカと対バンしていたというのはかなり意外・・・)、音楽の魅力は今でも新鮮味すら感じられ、今聴いても、全く衰えていません。あらためてFishmansの魅力に触れることの出来るライブ盤。今の若い世代にも聴いてほしいなぁ・・・という感想はいかにもおじさんっぽいのですが・・・。
評価:★★★★★
Fishmans 過去の作品
LONG SEASON '96~7 96.12.26 赤坂BLITZ
BLUE SUMMER~Selected Tracks 1991-1995~
Night Cruising 2018
| 固定リンク
「アルバムレビュー(邦楽)2021年」カテゴリの記事
- コンセプト異なる2枚同時作(2021.12.27)
- 彼女のスタイルを貫いたカバー(2021.12.18)
- メランコリックなメロが良くも悪くも(2021.12.13)
- リスタート(2021.12.06)
- 戦時下でも明るいジャズソングを(2021.12.05)
コメント