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2021年7月10日 (土)

今も色あせない魅力

Title:8-9-10!!!(Ver.3)
Musician:Jitterin'Jinn

おそらく、40代中盤から50代あたりの方にとっては「懐かしい」という印象を抱くのではないでしょうか。80年代に一世を風靡し、バンドブームの火付け役となったオーディション番組「三宅裕司のいかすバンド天国」通称「イカ天」に出場し、6代目キングを獲得したJitterin'Jinnのベストアルバム。1989年から翌年にかけて「エヴリデイ」「プレゼント」「にちようび」「夏祭り」と続けざまに大ヒットを記録しました。特に「夏祭り」は2000年にWhiteberryがカバーしヒットを記録していますので、もうちょっと下の世代の方も、この曲はご存じの方は多いのではないでしょうか(・・・といっても、もう20年も前の話になるんですね・・・)。さらに同じ頃、スカパンクブームの流れで、スカパンクの先駆者として彼らが再注目・再評価されたりもしたので、30代の方でもご存じの方も少なくないかもしれません。

今回のアルバム、「Ver.3」というサブタイトルの通り、実はベストアルバムとして「8-9-10!!!」を冠したアルバムはこれが3作目となります。第1弾は1999年にデビュー10周年を記念してリリースされたアルバムで、Ver.2は2007年にリリース。そして今回リリースされたのが第3弾となります。この3枚のベストアルバム、1曲目から10曲目までは同じ選曲、曲順。こちらに「エヴリデイ」「プレゼント」「にちようび」「夏祭り」などといったヒット曲がズラリと並んでいます。レコード盤で言えば「A面」にあたる前半は、Jitterin'Jinnの表の顔、とも言えるのかもしれません。

一方、11曲目からラストの選曲は3枚とも異なります。前のバージョンから次のバージョンの間にリリースされた曲が追加収録されている、という点もありますが、今回のアルバムでもVer.2以前の曲からも再度ピックアップされており、以前のバージョンを聴いた方にとっても、違うJitterin'Jinnの曲を楽しめる(悪く言えば、2度買いさせる)構成になっています。また、アルバムの最後にはボーナストラックが収録されており、今回は2009年に行われた「20th Anniversary day SPECIAL LIVE」来場者特典CDに収録されていた「ラベンダー」が収録されています。

さて、40代中盤世代の私にとっても、Jitterin'Jinnといえば非常に懐かしさを感じるバンドなのですが、今回、このベスト盤で久々に彼らの曲を聴いてみると、懐かしさを感じるのと同時に、楽曲の色褪せなさにも驚かされました。彼らが奏でるサウンドはシンプルな2ビートのスカ。そのためバンドサウンドとしても最小限のサウンドしかなっていないということもあって、良い意味で時代性を感じさせません。時代性を感じさせないがために、ポップなメロディーラインと合わせて、30年以上の月日を経ても全く楽曲が色あせていませんでした。

また、シンプルな2ビートのスカながらもメロディーラインはある種の歌謡性を感じさせるメランコリックなメロディーラインなのも大きな魅力。学生時代の切ない恋愛を思い起こさせるノスタルジーあふれる歌詞にもピッタリマッチしており、そんな彼ららしさが最も魅力的に発揮されたのが名曲「夏祭り」でしょう。

「君は好きな綿菓子買って 御機嫌だけど少し向うに
友達見つけて離れて歩いた」
(「夏祭り」より 作詞 破矢ケンタ)

という歌詞も、いかにも学生らしい初心な恋愛模様にキュンキュンしちゃいますし、これが過去の思い出として歌われているのも、その後の2人を想像して切なくなってきてしまいます。

さらに今回の彼らのアルバムでもうひとつ、彼らの曲が持っていたユニークな要素を感じました。それがアルバム後半「PLEASE DON'T CRY」「週間天気予報」「夕暮れ」などの曲に感じた、和風で郷愁感あふれるトラッドの要素。静かに奏でられるアコーディオンのメロディーがより楽曲に哀愁感をあたえ、かつ、どこかトラッドの要素も感じさせます。前半の曲に関してもメランコリックなメロディーラインが大きな魅力と感じたのですが、これらの曲に関しては、彼らの楽曲の哀愁感という側面が、より強調されており、彼らのヒット曲からはあまり感じなかったトラッド的な要素も強く感じました。

また一方「プリプリダーリン」ではロックンロールの要素を強く全面に押し出したりしており、スカを基調した音楽性の広さも感じさせます。今回のアルバムで彼らの代表曲を通じて聴くと、あらためてJitterin'Jinnというバンドが実力のあるバンドだったんだ、ということを再認識することが出来ました。

残念ながら現在彼らは、2009年以降、ライブも行っておらず、新譜のリリースもなく、活動休止状態が続いています。ただ、その楽曲は時代を超えて色あせておらず、是非、活動を再開してほしい、そう強く感じてしまいました。そんな活動休止状態の中での今回のベスト盤リリース、ひょっとしたら活動再開の嚆矢だったりするのでしょうか?そうであったらうれしいのですが・・・。

評価:★★★★★

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