HR/HMへの素直な敬愛を感じる
Title:Van Weezer
Musician:Weezer
「Weezerの次のアルバムは、HR/HMの色合いが強いアルバムになるぞ!その名も『Van Weezer』」・・・という話は、以前からよくよく聴いていました。もともと彼らが幼少期を過ごした80年代は、アメリカでは多くのHR/HMバンドが活躍した時代。デビュー当初の彼らのイメージは、そのHR/HMのイメージとは真逆だった彼らですが、もともと彼らも、KISSやブラック・サバス、さらには今回のアルバムの元ネタとも言えるVAN HALENの影響を強く受けていたそうです。
そんな訳で、次のアルバムが「Van Weezer」になるという話は2019年頃から流れており、レコーディングも開始されたようですが、昨年のコロナ禍の中で制作が中止。代わりにリリースされたのが前作「OK HUMAN」だったそうです。しかし、それから約1年。徐々にレコーディングが進められたようで、ついにタイトルそのまま「Van Weezer」がリリースされました。ジャケットもいかにもHR/HMといった感じのジャケットで、彼らのHR/HMへの敬愛ぶりが感じられます。
そんなHR/HMに強い影響を受けた今回のアルバム。1曲目「Hero」の冒頭から、バリバリのハードロックテイストのギターサウンドからスタートしますし、続く「All the Good Ones」も冒頭のギターの「キュイーン」と鳴る音からして、いかにもハードロック。3曲目の「The End of the Game」のエッジの効いたギターもいかにもVAN HALENっぽい感じですし、「Blue Dream」も疾走感あるサウンドにのるテンポよいギターサウンドもハードロックテイスト。終始、HR/HMからの影響を強く感じさせるバンドサウンド、特にギターサウンドが強く鳴り響くアルバムになっています。
ただ、そんなHR/HMのアルバムなのですが、どうしても伝わってくるのはWeezerらしいメロディーライン。結局、どんなにハードロックなギターが鳴り響いていようが、WeezerはWeezerなんだな、ということも強く感じました。1曲目「Hero」もイントロはハードロックですし、ギターはハードロックのそれなのですが、メロディーライン自体は紛うことなくWeezer。典型的なのが「Beginning of the End」で、かなり力強くハードなサウンドが鳴り響いているのですが、メランコリックなメロディーラインはいかにもWeezer節。Weezerとしての個性をしっかりと感じられました。
ある意味「怖い」雰囲気のあるハードロックのイメージと、逆に「ナード」なWeezerのメロディーラインというアンバランスさが絶妙にマッチした楽曲になっており、ユニークながらもWeezerだからこそ出来る作品になっていたように感じます。昔、憧れがあったもののちょっと怖くてできなかったハードロックのサウンドを、おそるおそる、でも素直な敬愛たっぷりに取り組んでいる・・・そんな彼らの素直な気持ちを感じさせる作品になっていました。小難しいこと抜きにして、純粋にHR/HMが好き、この音を鳴らしたかった、ということが強く伝わってくる作品だったと思います。
HR/HM好きには賛否がわかれるかもしれませんが、ただ純粋に音楽を楽しんでいるポップなアルバムという点は間違いないでしょう。そういう意味でも素直にその楽しいサウンドとメロを味わうべき作品のように感じました。もっとも、ここ最近、ちょっと「異色作」ともいえるアルバムが続いている彼ら。次あたりは再び、彼ららしい王道のパワーポップなアルバムを聴きたいところなのですが・・・。
評価:★★★★★
WEEZER 過去の作品
WEEZER(Red Album)
RADITUDE
HURLEY
DEATH TO FALSE METAL
Everything Will Be Alright in the End
WEEZER(White Album)
Pacific Daydream
Weezer(Teal Album)
Weezer(Black Album)
OK HUMAN
ほかに聴いたアルバム
日本のシングル集/Bob Dylan
昨年4月に予定していた来日公演に合わせてリリースされたコンピレーションアルバム。日本におけるシングルを集めたBob Dylanのシングルコレクション。ご存じの通り、かつては日本と本国アメリカではシングルとしてリリースされる曲も異なり、日本では、特に日本人受けしそうな作品をシングルカットしていたのですが、それだけにボブディランの日本における受容史を知ることの出来るコンピ盤になっています。もちろん、本国でもシングル化され、収録曲は既にアルバムなどに収録済のものばかりなので、ファンにとっては目新しさはないかもしれませんが、全体的に日本人向けということもあってか、メロディアスで聴きやすい、ポップな側面が強い作品ばかり。コロナ禍で来日公演は残念ながら中止されてしまいましたが、作品自体は興味深く、ボブディランの入門的にも楽しめる作品でした。
評価:★★★★★
BOB DYLAN 過去の作品
Together Through Life
Tempest
Triplicate
Rough And Rowdy Ways
The Battle At Garden's Gate/Greta Van Fleet
「現代版レッド・ツェッペリン」とも称され、セカンドEP「From the Fires」がアカデミー賞を受賞するなど大きな話題となったロックバンドの、フルアルバムとしては2作目となる作品。確かに、レッド・ツェッペリンの名前が出てくるのも納得できるような、70年代的な雰囲気も感じさせる懐かしいハードロックサウンドを聴かせてくれます。メロディーラインも哀愁感たっぷりで、その点も含めて、懐かしさを感じさせるバンド。昔ながらのロックバンド然としたバンドで、なんだかんだ言って、みなさんこういう音が好きなんですね・・・。
評価:★★★★
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