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2021年6月18日 (金)

砂漠のジミヘン

Title:Afrique Victime
Musician:Mdou Moctar

ここでも何度か紹介したことがありますが・・・一時期、「砂漠のブルース」と呼ばれるグループが注目を集め、人気を博したことがあります。アフリカ砂漠周辺、特にトゥアレグ族の奏でる音楽は、ブルースと共通するような音楽性を有することから、そのような呼ばれ方をしており、特にその代表的なバンド、Tinariwenはグラミー賞を複数回受賞するなど、大きな注目を集めました。

今回紹介するミュージシャンは、そんな「砂漠のブルース」の流れを組むミュージシャン。もともとプリンスの「パープル・レイン」を再構築したトゥアレグ語の映画「Akounak Tedalat Taha Tazoughei」で主演をつとめたことでも注目を集めたMdou Moctar(エムドゥ・モクター)を中心した4人組バンドによるアルバム。広告のうたい文句では「ニジェール共和国のサイケ・ヒーローにて、今世界で最も注目をあつめるギター・ヒーローのひとり」という紹介のされ方をしており、「砂漠のジミヘン」なんて呼ばれ方をしているほか、エディ・ヴァン・ヘイレンのギターサウンドをルートとして・・・なんて紹介のされ方もしています。

この紹介のされ方からして、このHIP HOP全盛の時代に今さら・・・?感もなきにしもあらずなのですが、確かに1曲目「Chismiten」のパワフルなギターソロのインストから、確かにジミヘンやエディ・ヴァン・ヘイレンといった往年のギターヒーローを彷彿とさせてくれます。

その後も「Taliat」でもメロディアスなギタープレイを聴かせてくれたり、タイトルチューン「Afrique Victime」でも力強いギタープレイを聴かせてくれるなど、全体的にギターが非常に印象に残るバンドであることは間違いありません。ただ、所々、確かにハードロック的な雰囲気を感じさせるギタープレイは入り、それが大きな魅力であることは間違いありませんが、アルバム全体としては、むしろ「砂漠のブルース」につながるようなトゥアレグ族らしいフレーズやサウンドがメイン。そのため、ジミヘンやエディ・ヴァン・ヘイレンといううたい文句から、ハードロック的な耳で聴き始めると、若干違和感を覚えるかもしれません。

ただし、一方で、このハードロック的なダイナミックなギタープレイと、「砂漠のブルース」的なトライバルなサウンドやコールアンドレスポンス、アフリカを彷彿とさせるような壮大なスケール感とのバランスが彼らの最大の魅力にも感じました。「Ya Habibti」の哀愁感たっぷりのメロディーラインもいかにも「砂漠のブルース」な様相で印象に残りますし、タイトルチューンの「Afrique Victime」も、グルーヴィーでサイケ感あるサウンドを奏でながら、一方ではコールアンドレスポンスで、みんなで歌い上げるような楽曲の構成に、アフリカ的なスケール感を覚える作品になっています。

また、ダイナミックなギタープレイだけではなく、「Tala Tannam」などでは、非常に繊細なギタープレイを聴かせてくれており、その点も彼の音楽的な懐の深さも感じさせます。「新世代のギターヒーロー」という言い方は、この時代、若干どうなんだろう?という感もありますが、確かに、彼のギタープレイは今の時代でも間違いなくリスナーの心を奪いさる演奏だったと思います。

ハードロック好きというよりは、Tinariwenあたりが好きなら文句なしにお勧めできる、新たなトゥアレグ族の実力派ミュージシャンの登場といった感じでしょうか。ただ、ダイナミックなギタープレイはハードロックリスナーでも十分楽しめるかもしれません。そういう意味で、ワールドミュージックというとなじみのない方にも聴きやすい作品かもしれません。今後、日本でも注目が高まりそう。要注目の傑作アルバムです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

My Beautiful Laundrette/PET SHOP BOYS

PET SHOP BOYSの最新作は7曲入りのEP盤。本作は同名の映画の舞台ヴァージョンのために書かれた曲などが収録されており、昨年4月に販売したハードカヴァー本「Annually 2020」にCDとしてついていた作品をこのほど配信リリースとなったそうです。彼ららしい軽快なエレクトロポップでリズミカルな作品がメイン。うち4曲がインストなのですが、それらも含めてPSBらしいポップなメロディーラインが耳に残ります。また「Omar's theme」やインスト曲の「Night sings(Popa's theme)」などエキゾチックな雰囲気の曲も多く、独特の味付けも感じられます。ともあれポップグループPSBの魅力にあふれたポップアルバム。20分という短い時間ですが、彼らの魅力に十分触れられた作品でした。

評価:★★★★★

PET SHOP BOYS 過去の作品
Yes
ULTIMATE PET SHOP BOYS(邦題:究極のペットショップボーイズ)
The Most Incredible Thing
Elysium(邦題 エリシオン~理想郷~)
ELECTRIC
SUPER
Agenda
Hotspot
Monkey business

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