« 懐かしさも感じるキュートなギタポ | トップページ | 今週は再び日本のアイドルが・・・ »

2021年6月15日 (火)

海外進出への挑戦心を感じるが・・・

Title:WINK
Musician:CHAI

どうも日本では大手レコード会社や事務所のバックアップを取り付けたような日本人ミュージシャンの海外進出ばかりが大きくピックアップされるようなケースが目立ちますが、インディーのレベルで海外に進出し活躍するようなミュージシャンも少なくありません。当サイトでも何度か取り上げた彼女たち、CHAIもそんなミュージシャンの一組で、前作「PUNK」は、なんと海外のWebメディアPitchforkでも高い評価を受け、年間ベストアルバムにランクインするなどの活躍を見せました。さらに本作ではあのインディーレーベル、サブポップと契約!世界に向けて、一気に飛躍しようとする姿勢を感じます。

そんな海外進出への「攻め」の姿勢を感じられるCHAIですが、今回のアルバムに関してもそんな海外への「攻め」を感じさせる内容になっています。具体的に言うと、いままでのインディーロック的な作風から、ガラリと雰囲気を変えたのが本作。1曲目の「Donuts Mind If I Do」から、エレクトロアレンジのしんみりメロウなR&Bチューンとなっていますし、2曲目の「チョコチップかもね」では新進気鋭のラッパーRic Wilsonをフューチャーし、ダウナーに聴かせるR&Bになっています。

さらに「PING PONG!」ではYMCKをフューチャーし、チップチューンを取り入れたエレクトロポップになっていますし、こちらも今注目を受けているトラックメイカーであるMndsgnをフューチャーした「IN PINK」では軽快なリズムが耳を惹くエレクトロチューンになっています。

そんな訳で、今回のアルバムは新進気鋭のミュージシャンをフューチャーしたサウンドはかなり「今風」な感が強く、タイトなバンドサウンドがメインとなっていたいままでの作品と異なり、エレクトロサウンド主体、R&B寄りの作風になっていました。ほかにもメロウなシティポップ風の「It's Vitamin C」、メロウに聴かせる「Wish Upon a Star」など、R&B寄りの作品が目立ちます。「END」のようにタイトなビートを聴かせる楽曲もあるにはあるのですが、いままでのCHAIのイメージからすると、少々異なる感のあるアルバムになっていました。

こういう今までの彼女たちのイメージに拘らない新たな挑戦というのは、それはそれで頼もしいものがあり、彼女たちも決して一つの場所に留まらず、進化を続けていくミュージシャンとも言えるのでしょう。ただ、そういう挑戦心は買いつつも、率直に言ってアルバム全体としては印象は、かなり辛いなぁ・・・というイメージを持ってしまいました。

楽曲の出来としては決して悪いわけではありません。やはり今風のエレクトロトラックは聴いていてカッコよさを感じますし、メロウなナンバーもそれなりにしっかりと歌いこなしています。ただ、前作まで感じた、CHAIとしての個性はこのアルバムではあまり感じることが出来ません。もちろん「NEOかわいい」を標ぼうする彼女たちは、そのイメージに沿った歌詞という点では今回も共通するのかもしれませんが、そんなイメージと裏腹なタイトなバンドサウンドもなく、意外とポップなメロディーラインも鳴りを潜めてしまい、代わりに登場したのは、今風といえば今風なのですが、逆に言うと、少々ありふれた感のあるサウンドと、いかにも海外志向のメロディーラインやサウンド。CHAIとしての新たなサウンドを提示した・・・という印象は残念ながらありませんでした。

悪い意味で海外を意識しすぎて、自分の軸足を若干見失った感のあるアルバム。1枚目2枚目と年間ベストクラスの傑作が続いていただけに非常に残念。新機軸も決して悪いわけではありませんが、その上でCHAIらしさを付与していかないど、徐々に厳しくなってしまうような感もあります。悪いアルバムではないのですが、ちょっと残念に感じた1枚でした。

評価:★★★★

CHAI 過去の作品
PINK
わがまマニア
PUNK


ほかに聴いたアルバム

MTV Unplugged:RHYMESTER/RHYMESTER

2月にMTVで放映された、アコースティック形式でのライブパフォーマンス「MTV Unplugged」でのRHYMESTERのパフォーマンスの模様を収録したライブ盤。「キング・オブ・ステージ」の異名を持つほど、そのライブパフォーマンスには定評のある彼らですが、この日のライブも、いつもと異なるアコースティック形式で、なおかつコロナ禍の中で異例となる無観客でのパフォーマンスながらも、いつもながらの彼ららしいパフォーマンスが繰り広げられています。アコースティック形式でも、RHYMESTERの楽曲の魅力は全く変わらず、彼ららしい、聴いていて気分が盛り上がってくるパフォーマンスを聴かせてくれていました。

評価:★★★★★

RHYMESTER 過去の作品
マニフェスト
POP LIFE
フラッシュバック、夏。
ダーティーサイエンス
The R~The Best of RHYMESTER 2009-2014~
Bitter,Sweet&Beautiful
ダンサブル
ベストバウト2 RHYMESTER Featuring Works 2006-2018

CULTICA/オカモトショウ

OKAMOTO'Sのボーカリスト、オカモトショウによる初のソロアルバム。正直、オカモトショウはボーカリストとして少々線が細く、それがOKAMOTO'Sの弱点になっていました。しかし、今回のソロアルバムではエレクトロサウンドを大胆に導入。バンド活動と差をつけるのと同時に、エレクトロサウンドの中にボーカルを「サウンドのひとつ」として取り扱うことにより、彼の「線が細い」という弱点を克服するどころか、エレクトロサウンドの中で、変に主張しすぎない彼のボーカルが楽曲の中で非常に上手く機能していたように感じます。聴く前の予想に反した傑作アルバム。こういうボーカルの生かし方、OKAMOTO'Sでも上手く取り扱えればよいのですが。

評価:★★★★★

|

« 懐かしさも感じるキュートなギタポ | トップページ | 今週は再び日本のアイドルが・・・ »

アルバムレビュー(邦楽)2021年」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 懐かしさも感じるキュートなギタポ | トップページ | 今週は再び日本のアイドルが・・・ »