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2021年6月19日 (土)

幻のグループ、まさかの再始動

Title:接続
Musician:AJICO

2000年夏、「RISING SUN ROCK FESTIVAL」に突如登場したロックバンド、AJICO。当時、「情熱」「悲しみジョニー」などヒットを連発して注目を集めていたシンガーUAと、その年の7月にBlankey Jet Cityを解散させたばかりの浅井健一が組んだバンドということでシーンに衝撃が走り大きな話題となりました。しかし、翌年アルバム「深緑」をリリースし、その後ツアーも行ったものの、その最終公演で活動を終了することが報告。活動は1年に満たず、その幕を下ろしました。

その活動期間の短さから、まさに「幻のグループ」的な存在となってしまったAJICOですが、今年2月、全楽曲のダウンロードとストリーミング配信が解禁になると、3月に「ARABAKI ROCK FEST」への出演が決定。なんと実に20年ぶりとなるバンド活動再開が発表されました。「ARABAKI ROCK FEST」については、残念ながらコロナの蔓延により中止が決定されたものの、新譜のリリースが決定。約20年ぶりにリリースされた4曲入りのEP盤が本作となります。

今回の全4曲、作曲はすべて浅井健一が担当。作詞はUA作詞が2曲、浅井健一1曲、2人の共同作詞が1曲という構成になっています。正直なところ、ここ最近の浅井健一の作品というと、良くも悪くも「大いなるマンネリ」気味になってしまっているのが否めません。ただ今回のアルバムは、野性味を感じられるUAのボーカルもあって、最近の彼の作品とは一風変わったAJICOとしての独特の楽曲を作り上げています。

1曲目「地平線Me」はまさに、そんなUAのボーカルがいかされた、うねるようなグルーヴ感のあるトライバルな作風が印象的。2曲目「惑星のベンチ」は一転、ストリングスも入って爽やかなポップに仕上がっており、タイトルチューン「接続」は浅井健一らしいくすんだ雰囲気を醸し出しつつ、ピアノの音色や途中の転調で絶妙な爽やかさや、幻想的な雰囲気も醸し出している独特な雰囲気の楽曲に。ラストの「L.L.M.S.D.」は作詞もベンジーということもあって、こちらは完全に最近の浅井健一の王道チューンに。ただ、メロディアスなギターロックに仕上がっており、いい意味でのポップで聴きやすさも感じます。

そしてこのアルバムで印象的だったのは歌詞。そもそも「接続」というタイトル自体、このコロナ禍において、なかなか人と人とのつながりがもてなくなってしまった今だからこそ、あえてこのようなタイトルの作品を作ったとも言えます。またアルバムの冒頭を飾る「地平線Ma」の一番最初から

「もう右も左も関係ない
トンネルは終わり
意識をぶって 親密に行こう」
(「地平線Ma」より 作詞 UA)

と、人と人とのつながりはもちろんですし、昨今、右も左も極論に走り、相手を攻撃しがちな世間に対してのメッセージにも感じられます。コロナ禍の中で、さらに未来への不安を感じる現状の中で、人々へ「接続」を呼びかける、そんな歌詞が印象に残るアルバムでした。

そしてもちろんそんな楽曲を支え、グルーヴ感を作り出しているバンドサウンドにも言及しない訳にはいかないでしょう。ドラムには数多くのミュージシャンのアルバムやツアーに参加している椎野恭一が参加。さらにベースには言わずと知れたTOKIEさんが参加。ここにベンジーのギターが重なるわけですから、バンドサウンドと、この独特なグルーヴ感を楽しめるのも納得です。

正直、浅井健一はここ最近、駄作ではないものの、いまひとつマンネリ気味なアルバムが目立ちます。UAは直近作「JaPo」は傑作ではあったものの、同作から5年間、アルバムリリースはありませんでした。2人とも決して脂ののった状態ではないものの、そんな中でリリースされたAJICOがしっかり傑作をリリースしてきたことに驚かされると共に、何気にメンバーの相性の良さも感じました。今度こそ、コンスタントに活動を続けるのでしょうか?次は是非、フルアルバムで!そして、コンスタントな活動を期待したいところです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

エレクトリック ジェリーフィッシュ/特撮

約5年3ヶ月ぶりとなる特撮のニューアルバム。コロナ禍をテーマとした曲を多くのミュージシャンが歌う中、「オーバー・ザ・レインボ〜僕らは日常を取り戻す」はオーケンらしい歌詞が特徴的ですし、ミュージカル風にまとめたプログレチューン「歌劇『空飛ぶゾルバ』より『夢』」もユニーク。ハードロックやハードコア路線のヘヴィーなサウンドも彼ららしい感じ。安定感もあって、良くも悪くも卒なさを感じさせます。前作同様、三柴理のピアノがちょっと大人しめだったのは残念なのですが・・・このコロナ禍の中で、彼ららしさをしっかりと出していた安定感ある作品でした。

評価:★★★★

特撮 過去の作品
5年後の世界
パナギアの恩恵
ウィンカー

NEBULA/fox capture plan

男性3人組のジャズバンド、fox capture planのニューアルバム。既に結成から10年が経過した中堅バンドの彼ら。名前は聴いたことあるような・・・程度の認識だったのですが、偶然、CDショップで流れてきた音楽が「自分好みかも!」と思い、はじめてアルバムを聴いてみました。ピアノを軸としたメランコリックで美しいメロディーラインと分厚めのサウンドは確かに好みのタイプ・・・・・ではあるのですが、思ったほどは壺にははまらなかったかな?ただ、次回作も聴いてみたいバンドであることは間違いないのですが。

評価:★★★★

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