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2021年6月28日 (月)

バンドとしての音楽性の広がりを感じる3枚目

Title:Blue Weekend
Musician:Wolf Alice

2015年にリリースした「My Love Is Cool」、2018年にリリースした「Visions of a Life」、どちらも私的年間ベストの2位にランクインさせた大傑作、という以上に私にとって壺のアルバムをリリースし続けたWolf Alice。もちろん、世間からの評価も非常に高いようで、直近作の「Visions of a Life」はイギリスの著名な音楽賞であるマーキュリー賞を受賞するなど、高い評価を得ています。

彼女たちの大きな魅力といえば、まず軸となるのはボーカル、エリー・ロウゼルの清涼感のあるボーカルに、ポップなメロディーラインでしょう。さらに特徴的なのは、彼女たちの音楽はひとつの場所に留まらず、アルバム毎にスタイルを変えていく、というのも大きな特徴のように感じます。デビューアルバム「My Love Is Cool」はドリーミーでシューゲイザー系の影響が強い作風に。2作目「Visions of a Life」ではよりガレージロック寄りにシフトした作品となっていました。

続く3作目である本作。1枚目、2枚目といずれもイギリスのチャートで2位を獲得(さらに本作では初の1位を獲得!)するなど、名実ともに人気バンドの仲間入りを果たした彼女たちですが、今回のアルバムは、そんな彼女たちの余裕からでしょうか、よりスケール感を感じつつ、よりバラエティーのあるポップな作風にシフトしたように感じます。1曲目「The Beach」はアルバムの中でイントロ的な作品ですが、伸びやかなサウンドにはスケール感を覚えます。続く「Delicious Things」はファンタジックな雰囲気を感じさせるポップチューン。「Smile」ではラップも登場しますし、「Safe From Heartbreak(if you never fall in love)」はアコギのアルペジオで聴かせるフォーキーな楽曲に。さらに「How Can I Make It OK?」はエレクトロサウンドを取り入れつつ、ファルセットボーカルでファンタジックに聴かせるポップチューンと、ポップな楽曲をメインとしたバラエティー富んだ展開となっています。

ただ正直なところ、前半に関しては良くも悪くもいままでの彼女たちにあったインディーロック的な雰囲気が消え、大物然とした雰囲気になっており、もちろん魅力的なポップソングではあるものの、1枚目、2枚目に比べると、かなり物足りなさも感じていました。確かに「Smile」でのヘヴィーなギターリフとノイジーなサウンドや「Lipstick On The Glass」でのダウナーなサウンドなど、いままでの彼女たちらしいガレージやシューゲイザー的な要素も感じられるのですが、いままでの楽曲に比べると、やはりガレージやシューゲイザー的な要素は薄めで物足りないなぁ・・・と思っていました。

しかし、その印象が変わるのが後半。まず「Play The Greatest Hits」は前半で見せていたような「いい子ちゃん的な人気バンド」の仮面をかなぐりすてるような、ストレートに疾走感あるパンクロック。さらに「Feeling Myself」も前半なポップな作風ながらも、後半はシューゲイザーなギターノイズが埋め尽くすローファイなポップチューン。「The Last Man on Earth」も、ピアノも入って美しいポップチューンながらも、後半はギターノイズも入り、ドリーミーなサウンドを聴かせるポップチューンと、特に後半はシューゲイザーやガレージの要素をふんだんに含んだ曲が並んでいました。

個人的にはポップ色が強くなり、良くも悪くも大物然とした感もある本作は、やはり1枚目、2枚目ほどは自分の壺にははまらなかったのは間違いありません。とはいえ、アルバム後半の楽曲など、いままでのアルバムの雰囲気もきちんと残していますし、ポップなメロ、清涼感あるボーカルというWolf Aliceの魅力は健在。しっかりと彼女たちの魅力を残しつつ、さらなる音楽性の広がりを確保した傑作であると思います。これからの彼女たちがさらにどのように変化していくのか、楽しみです。

評価:★★★★★

Wolf Alice 過去の作品
My Love Is Cool
Visons of a Life

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