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2021年6月21日 (月)

コロナ禍の中で作成されたバラエティーに富んだ傑作

Title:新しい果実
Musician:GRAPEVINE

前作「ALL THE LIGHT」から約2年3ヶ月ぶり。デビューから24年目に突入したGRAPEVINEのニューアルバム。毎回、クオリティーの高い傑作を安定的にリリースしてきている彼ら。既にベテランの域に達っしている中、決して派手なヒット曲をリリースしている訳ではないにも関わらず安定した人気を確保し、本作もしっかりとベスト10ヒットを記録しているあたり、やはり派手ではないものの高いレベルの楽曲を安定的にリリースしているからでしょう。今回はコロナ禍の中で、特に楽曲作成に集中した結果完成した作品のようで、それだけに今回のアルバムも文句なしの傑作に仕上がっています。

GRAPEVINEのアルバムというと、アルバム毎にヘヴィーな作風と爽やかな作風のアルバムが交互にリリースされた時期がありました。そして前作「ALL THE LIGHT」はその2つのベクトルの曲が融合した作品になっていたように感じます。さて、そんな中、最新アルバムはどのような感じに仕上がるのか・・・興味深く、そのアルバムを聴いてみたのですが、今回のアルバムはいつも以上にバラエティーの富んだ作品に仕上がっていました。

1曲目「ねずみ浄土」はいきなりファルセットボーカルからスタート。気だるい雰囲気の作風も含めて、今風のネオソウルの影響を強く感じる作品になっています。かと思えば「目覚ましはいつも鳴りやまない」はファンクの要素を入れつつ、こちらも最近の流行に沿ったような、シティポップ、AORの影響を感じさせる作品。まずアルバムの冒頭2曲は、あえて言えば、最近のシーンに対するGRAPEVINEからの回答、という見方も出来るかもしれません。

逆に「Gifted」「阿」はヘヴィーでサイケ風のギターサウンドが前に押し出されたロックの色合いの強いヘヴィーなナンバー。こちらはむしろ70年代風の匂いすら感じさせるナンバーで、バンドサウンドのヘヴィネスさも加えて、ロックバンドGRAPEVINEとしての実力を感じさせる楽曲に仕上がっています。また一方「リヴァイアサン」は軽快で疾走感のあるギターロック風のナンバーで、こちらはむしろ90年代のオルタナ系ロックの影響を感じさせる曲。ここらへんにもロックバンドとしての幅の広さを感じます。

かと思えば「ぬばたま」はピアノが入ってメランコリックに聴かせるムーディーなナンバーになっていますし、「josh」はリズミカルな打ち込みがニューウェーヴの要素を感じるナンバー。

そして印象的なのが最後を締めくくる「最期にして至上の時」でしょう。メロウに聴かせるボーカルも耳を惹きますが、「此岸」「祈り」という妙に宗教的、というより仏教的な目立つ歌詞も印象的。逆に冒頭の「ねずみ浄土」でも同じく、「浄土」という仏教用語が登場しますので、ある意味、対になっている楽曲に感じます。

この「ねずみ浄土」という曲、「一切の煩悩やけがれから離れた清浄な国土」という意味であるため、ある意味「不浄」をイメージする「ねずみ」との組み合わせは異質。さらに歌詞の中では「アダムとイブ」というキリストの概念も登場します。歌詞の中で「新たな普通/何かが狂う」という、コロナ禍の中のニューノーマルを皮肉ったような歌詞が登場しますので、ある意味、今のこのコロナ禍の状況をアイロニックに表現した歌詞ととらえられるかもしれません。

いつも以上にバラエティーの富んだ楽曲に、宗教的で印象に残る歌詞も特徴的な今回のアルバム。また文句なしの傑作アルバムに仕上がっていました。決して派手さはないものの、爽快さとヘヴィネス、今のサウンドと昔ながらのサウンドをほどよくバランスさせていた、非常によく出来た傑作アルバムだったと思います。GRAPEVINEの実力をあらためて実感した、そんな1枚でした。

評価:★★★★★

GRAPEVINE 過去の作品
TWANGS
MALPASO(長田進withGRAPEVINE)
真昼のストレンジランド
MISOGI EP
Best of GRAPEVINE
愚かな者の語ること
Burning Tree
BABEL,BABEL
ROADSIDE PROPHET
ALL THE LIGHT

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