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2021年6月 7日 (月)

空気公団はつづいていく

Title:僕と君の希求
Musician:空気公団

空気公団としては約3年ぶり。ちょっと久しぶりとなるニューアルバム。彼女たちも、既に結成14年目。中堅バンドとしてのキャリアを擁するバンドとなってきたのですが、2018年にオリジナルメンバーの戸川由幸が脱退を表明。これを機に、山崎ゆかりのソロユニットに移行しました。2019年には山崎ゆかりソロ名義でのアルバムもリリースしていますので、そのまま解散という手もあったのかもしれませんが、空気公団という名前を残したかったのでしょうか。また、自身の名前を前に出しての活動に違和感を覚えたのかもしれません。

もっともいままでの空気公団も基本的に山崎ゆかりのワンマンバンド的な様相も強く、彼女がボーカル、作詞、作曲を担当してきただけに空気公団としての楽曲の雰囲気にほとんど変化はありません。いつもながらのアコースティックなサウンドがメインとなる暖かみのあるサウンドと、ちょっと切なさを感じさせるメロディーライン。フォーキーな要素も加味した良質なシティポップという路線はそのままとなっています。

しかし、今回のアルバムに関してはバンドとしての枠組みがなくなったためでしょうか。今まで以上に自由度の高いサウンドを楽しめるアルバムに仕上がっていました。「許す」ではホーンセッションやジャジーなピアノ、さらに泣きのギターが入ったムーディーな曲調に仕上げていますし、「かぜのね」に入っている爽やかなサウンドはマリンバの音でしょうか。バンドサウンドから自由になったのですが、「大切なひとつ」では逆にノイジーなギターサウンドを前面に押し出したロック色の強い楽曲に仕上げています。

ただ、そういった自由度の高い作風を基調としつつ、全体的にはソロプロジェクトだからでしょうか、アコースティックでシンプルなサウンドも目立った作品になっていました。アコギで聴かせるフォーキーな「ささやかなとき」からアルバムはスタートしますし、続く「記憶の束」「うたがきこえる」もピアノで暖かく聴かせる作品になってます。

後半は「地点」「僕と君の希求」「そしてつづいていく」と基本的にはピアノ弾き語りでしんみりと聴かせる楽曲が続きます。ソロになったからこそ、バンドから自由になった音作りを志向した作品と、ソロらしいシンプルでアコースティックな音作りを志向した作品がほどよいバランスで配置されている、ソロプロジェクトならではのアルバムになっていたと思います。

そしてラストを締めくくる楽曲も印象的。「そしてつづいていく」。非常に前向きで、明日を向いている歌詞が印象的なのですが、まさに今の山崎ゆかりの心境をあらわしている曲と言えるかもしれません。オリジナルメンバーの脱退という出来事がありつつも、空気公団としてしっかり前をむいて進んでいく。決意表明という言葉は、空気公団のようなミュージシャンにはあまり似合わないようにも感じますが、今の空気公団を表現した曲なのかもしれません。

ソロプロジェクトとなったもののファンにとっては何も心配なく、これからも良質な音楽を生み出していく、そんな空気公団のこれからを感じさせるアルバムになっていました。またソロだからこそ空気公団としての新たな可能性も感じさせます。まだまだこれからも空気公団はつづいていきそうです。

評価:★★★★★

空気公団 過去の作品
空気公団作品集
メロディ
ぼくらの空気公団
春愁秋思
LIVE春愁秋思
夜はそのまなざしの先に流れる
くうきにみつる(くうきにみつる)
音街巡旅I
こんにちは、はじまり。
ダブル
僕の心に街ができて


ほかに聴いたアルバム

キャビネット/山本精一

コロナ禍でも精力的に活動を続ける山本精一のニューアルバムは、全編インストとなる作品。かなり挑戦的といった印象を受ける作品で、ギターサウンドを軸としつつ、そこにエレクトロのサウンドを入れてきたり、メタリックなビートを入れてきたり、静かなギターで空間を聴かせたりと、全9曲なのですが、それぞれアイディアを駆使した作品が並びます。ただ、あくまでも"POP"を念頭に置いたアルバムということで、確かに後半、メランコリックなメロディーラインが耳なじみやすい曲も収録。実験的な試みとポップな試みを両立させたアルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★★

山本精一 過去の作品
PLAYGROUND
PLAYGROUND acoustic+
ラプソディア
Falsetto
童謡
palm

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