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2021年6月26日 (土)

日本ポップス史を築いた巨匠の集大成

昨年10月、80歳で惜しまれつつこの世を去った作曲家、筒美京平。1960年代から2000年代まで40年以上にかけて数々のヒット曲を世に送り出し、歌謡曲からグループサウンズ、アイドルソングからJ-POPまで、非常に幅広いジャンルで痕跡を残し、まさに日本の戦後ポップスを作り上げたといっても過言でもない偉大なる巨匠ですが、今年に入り、彼を悼む数多くの企画が立ち上がりましたが、本作は、レコード会社4社の共同企画により、彼が生み出した数多くの楽曲の中からトップ10入りしたヒット曲を選択したオムニバス盤。もちろん、彼が生み出した数多くのベスト10ヒットすべてを網羅している訳ではありませんが、彼の代表曲が網羅された企画となっています。

Title:筒美京平 TOP 10 HITS 1967-1973

まず1967年から1973年の曲を集めた作品集。彼にとって初の1位獲得&ミリオンセラーとなったいしだあゆみ「ブルー・ライト・ヨコハマ」や、尾崎紀世彦「また逢う日まで」、堺正章「さらば恋人」、南沙織「17才」など、彼にとっては20代後半から30代前半。まだ若手の範疇の時期の作品ながらも、いきなり後にスタンダードナンバーとなるようなヒット曲を連発しています。ちなみに弘田三枝子「渚のうわさ」とヴィレッジ・シンガーズ「バラ色の雲」はオリコン発足前で、ヒットはしたようですが、ベスト10入りという記録はないのですが、しっかりと収録されています。

Title:筒美京平 TOP 10 HITS 1974-1980

70年代後半のヒット曲。郷ひろみ、野口五郎、桜田淳子など、アイドル歌謡曲の割合がグッと増えます。この時期も岩崎宏美「ロマンス」、庄野真代「飛んでイスタンブール」など数多くのスタンダードナンバーを生み出していますが、なんといっても太田裕美「木綿のハンカチーフ」が秀逸。この手の明るさと切なさを同居させたようなポップスで、彼の右に出るような作家はいないのではないでしょうか?

Title:筒美京平 TOP 10 HITS 1981-1985

80年代アイドル全盛期の曲を収録した作品集。彼が41歳から45歳までの作品なのですが、おそらく彼がもっとも脂がのっていた時期ではないでしょうか。実際、前2作が6年という期間の作品をおさめているのに対して、本作の期間はわずか4年。その間に「ギンギラギンにさりげなく」「夏色のナンシー」「Romanticが止まらない」など数多くのヒット曲を連発しています。そして何より彼の代表する傑作とも言えるのが斉藤由貴の「卒業」。これも「木綿のハンカチーフ」と同様、明るさと切なさを同居させたような曲調が非常に秀逸な作品になっています。

またおそらくこの時期、数多くのアイドルソングを手掛けてヒットさせたのは、時代が求める曲調が筒美京平の楽曲の方向性とピッタリとマッチしていたからように思います。筒美京平の作品は、和風な歌謡曲テイストを強く感じさせつつ、一方ではバタ臭い洋楽的な要素も強く感じます。そのため、洋楽的な新しさを醸し出しつつ、一方では多くの日本人に受けそうな歌謡曲路線も色濃く残したこの時期のアイドルポップは、筒美京平の音楽性と、特にピッタリとマッチしたように感じます。

Title:筒美京平 TOP 10 THIS 1986-2006

逆にちょっと選曲に苦しんだ感があるのがこの時期。80年代後半のバンドブームから90年代のJ-POP全盛期、当初は80年代アイドルポップの象徴的存在だった筒美京平は、少々「時代遅れ」みたいな見方もされていた時期もあったように思います。特に90年代前半にはトップ10ヒットは激減します。ただ、1994年にヒットしたNOKKO「人魚」あたりから筒美京平サウンドが見直され、藤井フミヤの「タイムマシーン」やTOKIOの「AMBITIOUS JAPAN」など、J-POPの時代にも多くのヒット曲を生み出しています。

ただ、この時期、ほかにもピチカート・ファイヴやDOUBLE、ゴスペラーズや及川光博、MISIAなどにも楽曲を提供し、J-POPにも多くの痕跡を残していたのですが、残念ながらトップ10ヒットには結びつかず。また小沢健二の「強い気持ち・強い愛」はベスト10ヒットを記録したのですが、残念ながら本作では未収録。そのため、彼がJ-POPに残した痕跡については、この作品集にはさほど反映されていないのがちょっと残念に感じます。

そんな訳で、全4枚組。ベスト10ヒットという縛りがあるため、代表曲とされるのですがシングルヒットはしていない「サザエさん」や、逆にベスト10ヒットでも前述の「強い気持ち・強い愛」などは未収録となっています。とはいえ、彼の代表曲はほぼ網羅されており、筒美京平サウンドの魅力を知るには最適な作品集だと思います。

彼のヒット曲を網羅的に聴き、その幅広い音楽性に驚かされると同時に、あらためて彼の才能を実感することが出来た作品集。あらためて、彼のご冥福をお祈りしたいと思います。

評価:いずれも★★★★★

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