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2021年6月

2021年6月30日 (水)

今週も人気のSSWが1位を獲得

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

先週の米津玄師に続き、今週も男性シンガーソングライターが1位獲得です。

今週1位を獲得したのは星野源「不思議」。TBS系ドラマ「着飾る恋には理由があって」主題歌。先行配信により5月5日付チャートで2位を獲得していましたが、このたびCDリリースとなり、先週の17位から大きくランクアップし、見事1位に輝きました。CD販売数は2位。ダウンロード数も11位から5位、ストリーミング数も17位から15位へとアップ。ただYou Tube再生回数は16位から18位にダウンしています。その他、ラジオオンエア数で見事1位を獲得しているほか、PCによるCD読取数2位、Twitterつぶやき数3位と上位にランクインしています。

オリコン週間シングルランキングでは初動売上13万5千枚で2位初登場。前作「ドラえもん」の14万4千枚から若干ダウン。星野源といえば、新垣結衣との結婚を発表し、世間に衝撃が走りましたが、本作の売上動向を見る限り、あまり彼の人気には影響がなかったみたいですね。

2位はBTS「Butter」が先週と同順位をキープ。ストリーミング数、Twitterつぶやき数、You Tube再生回数は先週と同じく1位。ダウンロード数は3位から4位にダウンしています。また、先週、ベスト盤リリースの影響でランクアップした「Dynamite」は再び7位にダウン。これで45週連続のベスト10ヒットとなりました。

3位は先週1位の米津玄師「Pale Blue」が2ランクダウンながらもベスト3をキープ。ダウンロード数は今週で4週連続1位をキープ。ただストリーミング数は4位から8位、You Tube再生回数は3位から4位にダウンしています。

続いて4位以下の初登場曲です。まず4位に関ジャニ∞「ひとりにしないよ」が初登場でランクイン。テレビ朝日系ドラマ「コタローは1人暮らし」主題歌。CD販売数及びPCによるCD読取数1位、Twitterつぶやき数2位。オリコンでは初動売上20万枚で1位初登場。前作「キミトミタイセカイ」の初動21万7千枚(1位)からダウン。

5位初登場は新潟を拠点に活動するAKB48の姉妹グループNGT48「Awesome」がランクイン。CD販売数3位、PCによるCD読取数28位、Twitterつぶやき数59位。オリコンでは初動売上7万6千枚で4位初登場。前作「シャーベットピンク」の8万枚(2位)からダウン。

8位はハロプロ系女性アイドルグループ、アンジュルム「はっきりしようぜ」がランクイン。CD販売数4位、ダウンロード数25位、ラジオオンエア数13位、PCによるCD読取数12位、Twitterつぶやき数32位。ちなみに作詞作曲はスタレビの根本要というかなり意外な人選になっています。楽曲的にはあまりスタレビっぽさは感じないのですが。オリコンでは初動売上4万6千枚で4位初登場。前作「限りあるMoment」の3万5千枚(4位)からアップ。

今週の初登場組は以上。一方、ロングヒット組は、まず優里「ドライフラワー」は5位から6位にワンランクダウン。ただ、ストリーミング数3位、カラオケ歌唱回数1位は先週から同順位をキープしているほか、ダウンロード数8位から7位、You Tube再生回数も10位から8位にジワリとアップ。予想以上のしぶとい人気を見せています。これで32週連続のベスト10入り。

YOASOBI「怪物」は6位から9位にダウン。ストリーミング数は5位から4位にアップしていますが、You Tube再生回数は8位から9位へダウン。これでベスト10ヒットは23週連続となりましたが、後がなくなってきています。

そしてAdo「踊」は先週と変わらず10位をキープ。こちらは予想以上のしぶとい人気を見せており、連続ベスト10ヒットを9週に伸ばしています。特にここに来て、ダウンロード数が16位から13位、ストリーミング数が9位から7位、You Tube再生回数が6位から5位、カラオケ歌唱回数も12位から8位と軒並み順位を上げています。来週以降、再浮上あるか?

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2021年6月29日 (火)

事実上、the band apartの新作

Title:3
Musician:the band apart(naked)

the band apartのアコースティック編成、the band apart(naked)名義によるタイトル通り、3枚目となるニューアルバム。ただ、今回のアルバム、いままでとはちょっと異なる点がありました。それは、以前のthe band apart(naked)名義のアルバムが、the band apart曲のセルフカバー、もしくは他のミュージシャンの楽曲のカバーだったりするのですが、今回のアルバムは純然たる新曲が3曲収録されているという点。さらに、「Foresight」はもともとthe band apart(naked)名義のシングルとしてリリースされており、そういう意味では全8曲中4曲が、the band apart(naked)の曲ということになります。

さらに今回のアルバムはnaked名義ではあるのですが、決してアコースティックギターやピアノといったアンプラグドな楽器で演奏された感じの曲、でもありません。1曲目「ラブレター」はアコギを用いつつも、エレクトリックギターやベースラインもしっかりと鳴り響いている楽曲。軽快でリズミカルなギターを刻むこの楽曲は、the band apart名義でリリースされても決して不思議ではない楽曲となっています。続く「夢太郎」も、ちょっとユニークなタイトルではあるのですが、軽快なギターが鳴り響く、ちょっとファンキーでダンサナブルなポップ。こちらもthe band apartの王道を行くようなナンバーで、the band apart名義でリリースされていても不思議ではありません。

そして今回のアルバムでうれしいのは、ここで収録されているthe band apartのセルフカバーのうち3曲が、2018年にリリースしたシングル「Falling in Love」の購入者特典としてついてきた無料CD「A LOG」の収録曲という点。シングル曲やアルバム楽曲に比べると、「知る人ぞ知る」的なイメージのある楽曲で、正直言うと、私もこの「A LOG」については未聴でした。それだけに今回、こういう形で聴けるというのはうれしい試みに感じます。

そんな「A LOG」からのナンバー「プリテンダー」は、今では他のバンドの曲のように感じてしまうのですが、the band apartの「プリテンダー」はちょっと切なさを感じるメロディーラインがインパクトのあるメロディアスに聴かせる楽曲。アコースティックなサウンドを取り入れているのですが、そのサウンドにもピッタリとマッチしています。同じく「A LOG」からの曲として、メランコリックな「The Sun」も、その切ないメロと軽快なリズムが耳に残りますし、「Snow Lady」も軽快なアコギのリフが爽やかな楽曲に仕上がっています。

そして、アコースティック編成ならではなのが、the band apartの楽曲「Cosmic Shoes」のリメイク「Cosmic Shoes 2」でしょう。アコースティックテイストの強いアレンジとなった本作は、爽やかなアコースティックサウンドも魅力的ながらも、メロディーラインの良さもより全面に出てきているアレンジに仕上がっていました。

さらにthe band apart(naked)名義でリリースされたシングル「Foresight」も疾走感あるリズムにシティポップ的な爽やかなサウンドとメロディーラインが大きなインパクトに。こちらもthe band apartらしい楽曲に仕上がっています。そして最後を締めくくる「Where the light is」も、□□□の三浦康嗣がピアノで参加。ミディアムチューンの暖かみのあるメロディーラインにピアノの音色がピッタリとマッチした素敵な楽曲に仕上がっていました。

そんな訳で、いままでthe band apart(naked)というと、the band apartのサイドプロジェクトとして、企画盤的な内容が多かったのですが、今回のアルバムは、間違いなくthe band apart(naked)のオリジナルアルバムと言える内容ですし、事実上、the band apartの新作とも言っていい内容になっていました。そして、その内容は、the band apartとしての王道を行くような楽曲の連続。彼らとしては決して目新しい作品ではなく、新たな挑戦といった感じでもないのですが、the band apartの楽曲として、しっかりと壺を抑えた、クオリティー高い良作が並ぶアルバムに仕上がっていました。卒のない・・・という言い方も出来るかもしれませんが、文句なしに名曲が揃った傑作だったと思います。the band apartの魅力がしっかりとつまった1枚でした。

評価:★★★★★

the band apart 過去の作品
Adze of penguin
shit
the Surface ep
SCENT OF AUGUST
街の14景
謎のオープンワールド
1(the band apart(naked))
Memories to Go
前へ(□□□ feat.the band apart)
2(the band apart(naked))
20years
POOL e.p.


ほかに聴いたアルバム

SDR/ZIGGY

約2年半ぶりとなるZIGGYのニューアルバム。ある意味、王道ど真ん中を行くような、ハードロック路線なのですが、その方向性の迷いのなさに一種の清々しさすら感じられるロックンロールのアルバムに。軽快に響くピアノの音色も効果的に用いられており、ロックリスナーなら、間違いなく高い満足感を得られるアルバムだと思います。正直、この令和の時代に目新しさはあまりないのですが、ただ、とにかくロックに対する愛情を強く感じさせる1枚でした。

評価:★★★★

ZIGGY 過去の作品
SINGLE COLLECTION
2017
ROCK SHOW
HOT LIPS

In Dreams/INO Hidefumi

フェンダーローズピアノをメインに、メロウなAORチューンやインスト曲などの楽曲を発表してきたINO hidefumiの最新作。今回も、彼の王道とも言うべきスタイルの、フェンダーローズで軽快に聴かせるメロウなAORが中心の楽曲。良い意味で良質なポップソングという言い方がピッタリとくるような作品で、そういう意味では決して目新しさはないものの、最後までしっかりと楽しめる作品に仕上がっていました。

評価:★★★★

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2021年6月28日 (月)

バンドとしての音楽性の広がりを感じる3枚目

Title:Blue Weekend
Musician:Wolf Alice

2015年にリリースした「My Love Is Cool」、2018年にリリースした「Visions of a Life」、どちらも私的年間ベストの2位にランクインさせた大傑作、という以上に私にとって壺のアルバムをリリースし続けたWolf Alice。もちろん、世間からの評価も非常に高いようで、直近作の「Visions of a Life」はイギリスの著名な音楽賞であるマーキュリー賞を受賞するなど、高い評価を得ています。

彼女たちの大きな魅力といえば、まず軸となるのはボーカル、エリー・ロウゼルの清涼感のあるボーカルに、ポップなメロディーラインでしょう。さらに特徴的なのは、彼女たちの音楽はひとつの場所に留まらず、アルバム毎にスタイルを変えていく、というのも大きな特徴のように感じます。デビューアルバム「My Love Is Cool」はドリーミーでシューゲイザー系の影響が強い作風に。2作目「Visions of a Life」ではよりガレージロック寄りにシフトした作品となっていました。

続く3作目である本作。1枚目、2枚目といずれもイギリスのチャートで2位を獲得(さらに本作では初の1位を獲得!)するなど、名実ともに人気バンドの仲間入りを果たした彼女たちですが、今回のアルバムは、そんな彼女たちの余裕からでしょうか、よりスケール感を感じつつ、よりバラエティーのあるポップな作風にシフトしたように感じます。1曲目「The Beach」はアルバムの中でイントロ的な作品ですが、伸びやかなサウンドにはスケール感を覚えます。続く「Delicious Things」はファンタジックな雰囲気を感じさせるポップチューン。「Smile」ではラップも登場しますし、「Safe From Heartbreak(if you never fall in love)」はアコギのアルペジオで聴かせるフォーキーな楽曲に。さらに「How Can I Make It OK?」はエレクトロサウンドを取り入れつつ、ファルセットボーカルでファンタジックに聴かせるポップチューンと、ポップな楽曲をメインとしたバラエティー富んだ展開となっています。

ただ正直なところ、前半に関しては良くも悪くもいままでの彼女たちにあったインディーロック的な雰囲気が消え、大物然とした雰囲気になっており、もちろん魅力的なポップソングではあるものの、1枚目、2枚目に比べると、かなり物足りなさも感じていました。確かに「Smile」でのヘヴィーなギターリフとノイジーなサウンドや「Lipstick On The Glass」でのダウナーなサウンドなど、いままでの彼女たちらしいガレージやシューゲイザー的な要素も感じられるのですが、いままでの楽曲に比べると、やはりガレージやシューゲイザー的な要素は薄めで物足りないなぁ・・・と思っていました。

しかし、その印象が変わるのが後半。まず「Play The Greatest Hits」は前半で見せていたような「いい子ちゃん的な人気バンド」の仮面をかなぐりすてるような、ストレートに疾走感あるパンクロック。さらに「Feeling Myself」も前半なポップな作風ながらも、後半はシューゲイザーなギターノイズが埋め尽くすローファイなポップチューン。「The Last Man on Earth」も、ピアノも入って美しいポップチューンながらも、後半はギターノイズも入り、ドリーミーなサウンドを聴かせるポップチューンと、特に後半はシューゲイザーやガレージの要素をふんだんに含んだ曲が並んでいました。

個人的にはポップ色が強くなり、良くも悪くも大物然とした感もある本作は、やはり1枚目、2枚目ほどは自分の壺にははまらなかったのは間違いありません。とはいえ、アルバム後半の楽曲など、いままでのアルバムの雰囲気もきちんと残していますし、ポップなメロ、清涼感あるボーカルというWolf Aliceの魅力は健在。しっかりと彼女たちの魅力を残しつつ、さらなる音楽性の広がりを確保した傑作であると思います。これからの彼女たちがさらにどのように変化していくのか、楽しみです。

評価:★★★★★

Wolf Alice 過去の作品
My Love Is Cool
Visons of a Life

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2021年6月27日 (日)

ジャズにとどまらない音楽性が魅力的

Title:Black To The Future
Musician:Sons Of Kemet

イギリスはロンドンを拠点に活動する4人組ジャズバンド、Sons of Kemetの約3年ぶりとなるアルバム。このバンドの中心人物となるシャバカ・ハッチングスは、ジャズサックス/クラリネット奏者として名をはせるのみならず、ソングライター、哲学者、さらには作家としても幅広い活動を見せる、今のイギリスのジャズ界の最重要人物と言われるミュージシャンだそうで、本作も大きな注目を集めている1枚のようです。

ただ「ジャズ」というカテゴライズされる本作ですが、「ジャズ」というジャンルでくくってしまうにはかなり異質な作品。そもそも、バンドメンバーからして、テナーサックス、チューバにツインドラムというかなり珍しい構成になっていますし、「For The Culture」ではグライムMCのD Double Eが参加するなど、そもそもジャズというカテゴリーに留まらない方向性を感じます。

実際楽曲も「Pick Up your Burning Cross」はアフロビートの要素を強く感じますし、「Think Of Home」もジャズ的な要素を感じつつ、アフロサウンドやダブの要素も同時に感じさせる作品に。さらに後半はラテンからの影響が顕著で、ラテンの軽快なリズムが印象的な「In Remembrance Of Those Fallen」、同じく軽快なラテンパーカッションとムーディーなホーンセッションが耳に残る「Let The Circle Be Unbroken」などが続きます。

さらにラストの「Black」はアバンギャルドなサウンドに迫力あるシャウトが重なるナンバー。全体的にはツインドラムのサウンドもあってかなりダイナミックなサウンドとなっており、ジャズの要素はもちろんのこと、アフロビートやHIP HOP、ラテンにさらにはポストロックまで内包するような音楽に仕上がっています。ある意味、いかにも「ジャズ」的なものを求めたとしたらちょっと調子が狂うかもしれませんが、むしろ個人的には、ジャズに留まらない幅広い音楽性に耳を奪わせ、さらにアフロビートやラテンのサウンドに強く魅了されました。

そして今回のアルバム、彼らの強いメッセージも備えたアルバムになっているそうで、特に昨年大きな話題になったBLMにリンクするような作品になったそうです。歌詞自体は残念ながら日本人の私たちにとってストレートに訴えるものではありませんが、このジャケットや、「Black To The Future」というアルバムタイトル。さらには「Throughout The Madness,Stay Strong」や「Black」といったようなタイトルに、焦燥感のあるシャウトやラップ、またアフロビートやラテンといったアフリカのルーツ志向的な作風からも、彼らのメッセージは十分伝わってくるようにも思います。

ちょっとくすんだ怪しげな雰囲気も非常にカッコいいですし、彼らのメッセージも突き刺さってくるような作品。ジャズに留まらずロックやアフロビートが好きな人にも受け入れられそうな傑作でした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Music for Living Spaces/Green-House

ロサンジェルスを拠点に活動し、高い評価を受けているアンビエントミュージシャン、Green-Houseによる初となるフルアルバム。シンセで静かに聴かせるアンビエントの作品が並んでおり、清涼感あるサウンドが魅力的。途中、虫の声らしきものも収録されているなど、自然の中を感じさせる作風に、聴いていて心も安らぐ作品になっています。

評価:★★★★

Six Songs for Invisible Gardens/Green-House

で、こちらは同じくGreen-Houseの、昨年リリースした6曲入りのミニアルバム。「Music for Living Space」のリリースを機に、CDリリースされたようです。こちらは明確に、水の音や波の音、鳥の声などが入っている、自然の音を生かしたアンビエント作。自然の音色に静かに耳を傾けると、心が安らいでくる、そんな作品でした。

評価:★★★★

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2021年6月26日 (土)

日本ポップス史を築いた巨匠の集大成

昨年10月、80歳で惜しまれつつこの世を去った作曲家、筒美京平。1960年代から2000年代まで40年以上にかけて数々のヒット曲を世に送り出し、歌謡曲からグループサウンズ、アイドルソングからJ-POPまで、非常に幅広いジャンルで痕跡を残し、まさに日本の戦後ポップスを作り上げたといっても過言でもない偉大なる巨匠ですが、今年に入り、彼を悼む数多くの企画が立ち上がりましたが、本作は、レコード会社4社の共同企画により、彼が生み出した数多くの楽曲の中からトップ10入りしたヒット曲を選択したオムニバス盤。もちろん、彼が生み出した数多くのベスト10ヒットすべてを網羅している訳ではありませんが、彼の代表曲が網羅された企画となっています。

Title:筒美京平 TOP 10 HITS 1967-1973

まず1967年から1973年の曲を集めた作品集。彼にとって初の1位獲得&ミリオンセラーとなったいしだあゆみ「ブルー・ライト・ヨコハマ」や、尾崎紀世彦「また逢う日まで」、堺正章「さらば恋人」、南沙織「17才」など、彼にとっては20代後半から30代前半。まだ若手の範疇の時期の作品ながらも、いきなり後にスタンダードナンバーとなるようなヒット曲を連発しています。ちなみに弘田三枝子「渚のうわさ」とヴィレッジ・シンガーズ「バラ色の雲」はオリコン発足前で、ヒットはしたようですが、ベスト10入りという記録はないのですが、しっかりと収録されています。

Title:筒美京平 TOP 10 HITS 1974-1980

70年代後半のヒット曲。郷ひろみ、野口五郎、桜田淳子など、アイドル歌謡曲の割合がグッと増えます。この時期も岩崎宏美「ロマンス」、庄野真代「飛んでイスタンブール」など数多くのスタンダードナンバーを生み出していますが、なんといっても太田裕美「木綿のハンカチーフ」が秀逸。この手の明るさと切なさを同居させたようなポップスで、彼の右に出るような作家はいないのではないでしょうか?

Title:筒美京平 TOP 10 HITS 1981-1985

80年代アイドル全盛期の曲を収録した作品集。彼が41歳から45歳までの作品なのですが、おそらく彼がもっとも脂がのっていた時期ではないでしょうか。実際、前2作が6年という期間の作品をおさめているのに対して、本作の期間はわずか4年。その間に「ギンギラギンにさりげなく」「夏色のナンシー」「Romanticが止まらない」など数多くのヒット曲を連発しています。そして何より彼の代表する傑作とも言えるのが斉藤由貴の「卒業」。これも「木綿のハンカチーフ」と同様、明るさと切なさを同居させたような曲調が非常に秀逸な作品になっています。

またおそらくこの時期、数多くのアイドルソングを手掛けてヒットさせたのは、時代が求める曲調が筒美京平の楽曲の方向性とピッタリとマッチしていたからように思います。筒美京平の作品は、和風な歌謡曲テイストを強く感じさせつつ、一方ではバタ臭い洋楽的な要素も強く感じます。そのため、洋楽的な新しさを醸し出しつつ、一方では多くの日本人に受けそうな歌謡曲路線も色濃く残したこの時期のアイドルポップは、筒美京平の音楽性と、特にピッタリとマッチしたように感じます。

Title:筒美京平 TOP 10 THIS 1986-2006

逆にちょっと選曲に苦しんだ感があるのがこの時期。80年代後半のバンドブームから90年代のJ-POP全盛期、当初は80年代アイドルポップの象徴的存在だった筒美京平は、少々「時代遅れ」みたいな見方もされていた時期もあったように思います。特に90年代前半にはトップ10ヒットは激減します。ただ、1994年にヒットしたNOKKO「人魚」あたりから筒美京平サウンドが見直され、藤井フミヤの「タイムマシーン」やTOKIOの「AMBITIOUS JAPAN」など、J-POPの時代にも多くのヒット曲を生み出しています。

ただ、この時期、ほかにもピチカート・ファイヴやDOUBLE、ゴスペラーズや及川光博、MISIAなどにも楽曲を提供し、J-POPにも多くの痕跡を残していたのですが、残念ながらトップ10ヒットには結びつかず。また小沢健二の「強い気持ち・強い愛」はベスト10ヒットを記録したのですが、残念ながら本作では未収録。そのため、彼がJ-POPに残した痕跡については、この作品集にはさほど反映されていないのがちょっと残念に感じます。

そんな訳で、全4枚組。ベスト10ヒットという縛りがあるため、代表曲とされるのですがシングルヒットはしていない「サザエさん」や、逆にベスト10ヒットでも前述の「強い気持ち・強い愛」などは未収録となっています。とはいえ、彼の代表曲はほぼ網羅されており、筒美京平サウンドの魅力を知るには最適な作品集だと思います。

彼のヒット曲を網羅的に聴き、その幅広い音楽性に驚かされると同時に、あらためて彼の才能を実感することが出来た作品集。あらためて、彼のご冥福をお祈りしたいと思います。

評価:いずれも★★★★★

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2021年6月25日 (金)

音楽の幅がさらに広がる

Title:Cavalcade
Musician:black midi

最近、イギリスのロックシーンが活況を呈していて話題となっています・・・という話は、ここのサイトでも何度か紹介したことがあるかと思います。そして、おそらくそんな活況を呈するロックシーンの代表格のミュージシャンとも言えるのが彼ら、black midi。ここでも紹介した前作「Schlagenheim」が日本でも大きな話題となり、一躍注目のバンドの仲間入りを果たしました。本作は、それに続く2ndアルバムとなります。

そんな期待たっぷりで迎え入れられたアルバムですが、まずアルバムの冒頭を飾る「John L」が文句なしにカッコいい!「『Discipline』期のキング・クリムゾンを彷彿とさせる」という紹介のされ方をされているようですが、イントロのエッジの効いたダイナミックなエッジのサウンドからいきなりゾクゾクとさせられます。その後、複雑なリズムを奏でつつ、ダイナミックに展開されるバンドサウンドにラップ的なボーカルが乗ったアバンギャルドなサウンドが繰り広げられるのですが、途中、パッとサウンドが止まって静寂が展開される部分などもまさに鳥肌モノ。1曲目ながらもいきなりアルバムのハイライトとも言うべき傑作からのスタートとなっています。

このプログレ的な複雑な展開に、ダイナミックかつ緊張感あるバンドサウンドというのは前作でも感じた彼らの大きな魅力。その後も「Slow」「Dethroad」などでも同じように、サイケ的な要素を加味しつつ、ダイナミックなサウンドを聴くことが出来ます。ただ、今回のアルバム、前作と比べてバンドに大きな変化があったそうです。まず一つ目は楽曲の作成方法。いままではバンドによるジャム・セッションから楽曲を練り上げていく方法だったそうですが、コロナ禍によりその方法が取れなくなり、そのため、各自自宅で作曲を行い、楽曲を持ち合って作成する方法を取らざるを得なくなったそうです。そしてもう1点はメンバーの変化。オリジナル・メンバーであるギタリスト/ヴォーカリストのマット・ケルヴィンが、一時的にバンドから離れ、一方、ツアー・メンバーであったサックスのカイディ・アキンニビとキーボードがセス・エヴァンスをレコーディングに参加。その変化により今回、楽曲の幅がグッと広がっています。

具体的に言うと、セッション的なバンドサウンドがカッコいい「John L」に続く「Marlene Dietrich」は1曲目から一転、メロウな歌モノに変化。ストリングスも入って、しんみりと聴かせるナンバーになっています。さらに「Chondromalacia Patella」はファンキーなギターがカッコいい楽曲に仕上がっていますし、「Slow」でもサックスが加わりジャジーな雰囲気が強く感じられます。ラストを締めくくる「Ascending Forth」もアコースティックなサウンドでメランコリックな歌モノとなっており、彼らのメロディーメイカーとしての側面も感じられる楽曲となっています。

もちろんどの曲も複雑な楽曲構成やダイナミックなバンドサウンドなどblack midiらしい魅力は満載。前作もロックやサイケ、プログレなどの要素を感じさせましたし、本作でもそういったサウンドの要素を感じさせ、70年代の雰囲気もにおわせつつ、ただ、単純な70年代のリバイバルではない、彼らの魅力を強く感じます。本作はそれに加えて、ジャズやフォーク、歌モノ的な要素も強くなり、さらなる音楽的な幅を感じさせるアルバムになっていました。コロナ禍やメンバーの一時脱退は彼らにとって決してポジティブな要素ではなかったはずですが、それをバンドにとってプラスの要素と変えてしまったのはさすが。彼らのその実力を強く感じさせるアルバムに仕上がっていました。

前作に引き続き、またもや傑作アルバムだった本作。まだまだその注目度は日本でも上がっていきそう。これからの活躍がますます楽しみになってくる、そんな作品でした。

評価:★★★★★

black midi 過去の作品
Schlagenheim


ほかに聴いたアルバム

Reprise/Moby

ダンスミュージックで数多くのヒット曲を飛ばしてきたMobyの最新作は、そんな彼の楽曲をオーケストラアレンジでリアレンジした企画盤。ドイツの名門レーベル、グラモフォンからのリリースという力の入れようなアルバムになっています。オーケストラアレンジ自体は、良くも悪くも目新しさもなく、曲によってはちょっと大味かも、と思うような展開も予想通りなのですが、一方、ストリングスアレンジになったことにより、Mobyの楽曲がもともと持っていたメロディーラインの良さが、より際立つ内容に仕上がっていたように感じます。それだけに、最初はちょっと大味に感じたオーケストラアレンジの曲も、後半に行くにつれて徐々にはまっていって聴き入ってしまう内容になっていました。メロディーメイカーとしての彼の実力を再認識できた1枚でした。

評価:★★★★★

MOBY 過去の作品
Go:The Very Best Of Moby

Last Night
Wait for me
Destroyed
Innocents
These Systems Are Failing(Moby and The Void Pacific Choir)
Everything Was Beautiful,and Nothing Hurt
All Visible Objects

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2021年6月24日 (木)

アイドル系やアニソン系が目立つチャート

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週は、妙にアイドル系(それも韓国系)やアニソン系の初登場が目立つチャートとなりました。

まず初登場1位には、韓国のアイドルグループBTSのベスト盤「BTS,THE BEST」がランクイン。CD販売数、ダウンロード数、PCによるCD読取数でいずれも1位を獲得しています。オリコン週間アルバムランキングでも初動売上78万2千枚で1位初登場。直近のオリジナルアルバム「MAP OF THE SOUL:7~THE JOURNEY~」の56万4千枚(1位)からアップしています。

2位も韓国の男性アイドルグループ。SEVENTEEN「Your Choice」がランクイン。CD販売数2位、ダウンロード数3位、PCによるCD読取数19位。オリコンでは初動売上14万2千枚で2位初登場。前作「24H」の24万7千枚(1位)からダウン。

K-POP勢は今週、さらに9位に女性アイドルグループfromis_9「9 WAY TICKET」がランクインしています。韓国のオーディション番組「アイドル学校」から登場したグループ。CD販売数6位、その他はランク圏外ながらも総合順位でベスト10入り。オリコンでは初動売上5千枚で9位初登場しています。

他にも6位にEXO「Don’t Fight The Feeling」がランクインしているほか、オリコンでは輸入盤でTWICE「Taste of Love:10th Mini Album」がベスト10入りするなど、K-POP勢が目立った今週のチャート。ちょっとうがった見方をすると、BTSのベスト盤リリースに合わせて、おこぼれを狙おう、という戦略か??なんてことも思ってしまったり・・・。

そして3位には「MANKAI STAGE『A3!』Spring Troupe 満開の桜の下で」がランクイン。スマートフォン向けイケメン役者育成ゲーム「A3!」から派生した舞台に使われた曲をまとめたアルバム。CD販売数3位、ダウンロード数15位、PCによるCD読取数20位。オリコンでは初動売上1万6千枚で5位初登場。同シリーズの前作「『MANKAI STAGE『A3!』~WINTER 2020~』MUSIC Collection」の3千枚(23位)からアップ。

続いて4位以下の初登場です。まず5位にドイツのヘヴィーメタルバンドHelloween「Helloween」が初登場。7人編成になって初のアルバムですが、トリプルヴォーカル&トリプルギターという編成らしいです。すごいね・・・。CD販売数4位、ダウンロード数10位、PCによるCD読取数7位。オリコンでは初動売上1万枚で6位初登場。前作「My God-Given Right」の7千枚(9位)よりアップしています。

さらに今週、9位以下にアイドル育成ゲームTHE IDOLM@STERがらみのアルバムがズラリと並んでいます。9位に如月千早(今井麻美)「THE IDOLM@STER MASTER ARTIST 4 10 如月千早」、10位に水瀬伊織(釘宮理恵)「THE IDOLM@STER MASTER ARTIST 4 12 水瀬伊織」がそれぞれランクイン。前者がCD販売数7位、ダウンロード数76位、PCによるCD読取数25位、後者がCD販売数10位、ダウンロード数79位、PCによるCD読取数28位。登場キャラクターのソロアルバムシリーズ「MASTER ARTISTシリーズの第4弾」で4作同時リリースのうちの2作。ちなみに残り2作萩原雪歩(浅倉杏美) 「THE IDOLM@STER MASTER ARTIST 4 11 萩原雪歩」、双海真美(下田麻美)「THE IDOLM@STER MASTER ARTIST 4 13 双海真美」はそれぞれ11位、13位にランクインしています。オリコンでは前者が初動売上6千枚で8位に、後者が初動売上5千枚で13位にランクイン。同シリーズの前作で3作同時リリースだった星井美希(長谷川明子)「THE IDOLM@STER MASTER ARTIST 4 07 星井美希」、三浦あずさ(たかはし智秋)「THE IDOLM@STER MASTER ARTIST 4 08 三浦あずさ」、秋月律子(若林直美)「THE IDOLM@STER MASTER ARTIST 4 09 秋月律子」(それぞれ8位、9位、10位)の初動売上5千枚からほぼ横バイ。

今週の初登場盤は以上ですが、ベスト10返り咲きも1作。それがずっと真夜中でいいのに。「ぐされ」。先週の69位から8位にランクアップ。今年の2月4日付チャート以来、17週ぶりのベスト10返り咲き。これは完全受注生産のアナログ盤のリリースがあった影響。そのためCD販売数(といっても事実上、アナログ盤の販売数でしょうが)が先週のランク圏外から11位に大きくアップしています。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2021年6月23日 (水)

大人気SSWが見事1位獲得

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週1位は、現在、最も人気のあるSSWといえる彼が獲得です。

今週1位は米津玄師「Pale Blue」が先週の3位から2ランクアップして初の1位獲得となりました。今週はCDがリリースされ、CD販売数で2位にランクイン。ダウンロード数で1位を獲得したほか、ラジオオンエア数、PCによるCD読取数でも1位獲得。ほか、ストリーミング数及びTwitterつぶやき数で4位、You Tube再生回数3位と軒並み上位にランクイン。総合順位でも見事1位獲得となりました。オリコン週間シングルランキングでも初動売上15万6千枚で1位獲得。ただ、前作「馬と鹿」の初動41万2千枚(2位)からはダウンしてしまいました。

2位はBTS「Butter」が先週と変わらずランクイン。ストリーミング数、Twitterつぶやき数、You Tube再生回数1位、ダウンロード数、ラジオオンエア数3位と先週から全てのランキングで同順位という珍(?)記録となっています。また先週8位だった「Dynamite」が今週4位にランクアップ。ストリーミング数が5位から2位、You Tube再生回数も6位から4位、ダウンロード数が21位から12位とアップしていますが、今週、彼らのベスト盤がランクインしてきた影響と思われます。これで44週連続のベスト10ヒット。

3位はAKB48の姉妹グループ、NMB48「シダレヤナギ」が初登場。CDランキングは1位でしたが、ほかPCによるCD読取数及びTwitterつぶやき数が16位にランクインしたのみで他は圏外という結果に。総合順位も3位に留まりました。オリコンでは初動売上13万3千枚で2位初登場。前作「恋なんかNo thank you!」の13万枚(1位)から若干のアップ。

続いて4位以下の初登場曲ですが、今週初登場曲は1曲のみ。それが9位にランクインしてきた三代目J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE「100 SEASONS」。CD販売数は3位、PCによるCD読取数も6位にランクインしましたが、そのほか、ダウンロード数47位、Twitterつぶやき数23位、その他は圏外という結果になり、総合順位はこの位置に。オリコンでは初動売上6万6千枚で3位初登場。前作「Movin'on」の3万4千枚(1位)からアップしています。

今週のロングヒット曲ですが、まず優里「ドライフラワー」は4位から5位にダウン。ストリーミング数3位、カラオケ歌唱回数1位は先週から同順位をキープ。ダウンロード数は11位から8位に回復した一方、You Tube再生回数は8位から10位にダウンしています。これで31週連続のベスト10ヒット。

YOASOBI「怪物」が先週から同順位の6位をキープ。ストリーミング数は6位から5位にアップ。一方、You Tube再生回数は7位から8位にダウンしています。これで22週連続のベスト10ヒットに。一方、「夜に駆ける」は今週12位と、再びベスト10圏外にランクダウン。ベスト10ヒットは通算59週でとりあえずストップです。

さらに今週、Ado「踊」が10位にランクイン。連続ベスト10ヒットを8週に伸ばしロングヒットを記録しています。初登場4位から5位、9位と一気にランクダウンしたのですが、その後、5週連続で9位をキープ。今週も10位とベスト10ヒットを維持し、根強い人気を見せています。リズミカルなエレクトロビートは、大ヒットした「うっせぇわ」とちょっと異なるタイプですが、音楽的にはこちらの方が面白い印象が。今後の巻き返しはあるか??

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2021年6月22日 (火)

日本人にとっても懐かしさを感じる

Title:They're Calling Me Home
Musician:Rhiannon Giddens

今回紹介するのは、アメリカのトラッド系ミュージシャンのアルバムです。今回紹介する、Rhiannon Giddensは、もともと、アメリカのルーツミュージックグループ、Carolina Chocolate Dropsのメンバーだった女性ミュージシャン。このCarolina Chocolate Dropsというグループは、グラミー賞のベスト・トラディッショナル・フォーク・アルバムを受賞したこともあるグループなのですが、2014年には活動を休止。本作は、その彼女のソロアルバムということになります。

彼女はボーカリストとしてだけではなく、バンジョー、フィドル、ギターなどを手掛けるマルチインストゥルメタル奏者だそうで、本作は前作に続き、彼女の公私ともにパートナーである、同じくマルチインストゥルメンタル奏者でジャズミュージシャンでもあるFrancesco Turrisiとともに手掛けた作品。2人による主にストリングス系の楽器を中心とした美しい楽器の音色も楽しめるアルバムとなっていました。

そんな今回のアルバムなのですが、アメリカン・トラッドというと日本人にとってはちょっとなじみのない・・・なんて印象も受けそうな作品ですが、しかし本作を聴くと、私たち日本人にとってもどこか郷愁感を覚えるようなメロディーラインが胸に響いてくるような、そんなアルバムに仕上がっていました。まず印象的なのが「I Shall Not Be Moved」。フォーキーな作風は日本人にとってもなじみやすいのですが、メロディーラインも暖かみのあるメランコリックなフレーズが印象に残ります。

さらに印象に残るのが続く「Black as Crow」。まさに日本人にとっても懐かしさを感じさせるような郷愁感たっぷりのナンバー。泣きメロとも言える印象的なメロディーラインを、ギターやストリングスなどのアコースティックな楽器でしんみりと聴かせてくれます。日本人にとっても、涙腺を直撃しそうなメロディーが特徴的な楽曲でした。

そんなフォーキーな作風の曲も目立つながらも、さらに本作がユニークだったのは、トラッド系という一言では収まらないような、幅広い音楽性が楽しめた点でした。例えば続く「O Death」は力強いボーカルに勇壮なパーカッションが響く、トライバルな要素を入れつつ、全体的にはソウルの要素を強く感じさせる作風がユニーク。「Waterbound」は暖かい音色とフィドルが特徴的なカントリー風のナンバー。「Bully for You」は笛の音色がエキゾチックな感触を覚えるインストチューン。さらに「Nenna Nenna」はなんとボーカルのみの重厚なアカペラでもの悲しく聴かせる楽曲に仕上がっています。

さらにユニークなのが本編ラスト。ご存じ有名なゴスペルナンバー「Amazing Grace」のカバーなのですが、力強いパーカッションが鳴り響き、トライバルな雰囲気の作風に。後半になるとここにフィドルの音色が加わり、アイリッシュな雰囲気が加わるというユニークなカバーに。様々な音楽性を感じさせる彼女ならではのカバーと言えるかもしれません。

そんな訳で、アメリカントラッドのアルバムながらも、日本人にとってもどこか懐かしさを感じつつ、さらに様々な音楽性を感じさせる素晴らしいアルバムに仕上がっていました。難しいこと抜きにして、幅広い層が楽しめそうなアルバム。日本では決して知名度は高くないのですが、その実力は間違いありません。お勧めの1枚です。

評価:★★★★★


Pray For Haiti/Mach-Hommy

アメリカはニュージャージーを拠点に活動しているハイチ系ラッパー。かなりダウナーな雰囲気のドープなラップが魅力的。ちょっとレトロな雰囲気だったり、メロウなフレーズなどを挟みつつ、ちょっと怪しげな雰囲気で最後まで一気に聴かせるようなサウンドが魅力的。ちなみに「Makrel Jaxon」では「つまようじをさしたリンゴ」という謎の日本語がサンプリングされています。

評価:★★★★★

A Little Bang (Bigger Bang Tour EP)/The Rolling Stones

Bigger

DVDでのリリースが予定されている「A Bigger Bang: Live On Copacabana Beach」から5曲をピックアップし、先行配信されたEP盤。わずか5曲とはいえ「Sympathy For The Devil」「Happy」など盛り上がる楽曲や「Wild Horses」のバラード曲も披露。ほどよくストーンズのライブの魅力をつまみぐいした作品になっていて、これだけでも十分楽しめる一方、ライブ映像も見なくては・・・と感じてしまうような作品になっていました。ある意味、プロモーション目的の先行EPとしては非常によく出来た内容かと。

評価:★★★★★

The Rolling Stones 過去の作品
Shine a Light: Original Soundtrack
Some Girls LIVE IN TEXAS '78
CHECKERBOAD LOUNGE LIVE CHICAGO 1981(邦題 ライヴ・アット・ザ・チェッカーボード・ラウンジ・シカゴ1981)
(MUDDY WATERS&THE ROLLING STONES
GRRR!
HYDE PARK LIVE
Sweet Summer Sun-Hyde Park Live
Sticky Fingers Live
Blue&Lonesome
Ladies & Gentlemen
ON AIR
Voodoo Lounge Uncut
Honk
The Rolling Stones Rock and Roll Circus

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2021年6月21日 (月)

コロナ禍の中で作成されたバラエティーに富んだ傑作

Title:新しい果実
Musician:GRAPEVINE

前作「ALL THE LIGHT」から約2年3ヶ月ぶり。デビューから24年目に突入したGRAPEVINEのニューアルバム。毎回、クオリティーの高い傑作を安定的にリリースしてきている彼ら。既にベテランの域に達っしている中、決して派手なヒット曲をリリースしている訳ではないにも関わらず安定した人気を確保し、本作もしっかりとベスト10ヒットを記録しているあたり、やはり派手ではないものの高いレベルの楽曲を安定的にリリースしているからでしょう。今回はコロナ禍の中で、特に楽曲作成に集中した結果完成した作品のようで、それだけに今回のアルバムも文句なしの傑作に仕上がっています。

GRAPEVINEのアルバムというと、アルバム毎にヘヴィーな作風と爽やかな作風のアルバムが交互にリリースされた時期がありました。そして前作「ALL THE LIGHT」はその2つのベクトルの曲が融合した作品になっていたように感じます。さて、そんな中、最新アルバムはどのような感じに仕上がるのか・・・興味深く、そのアルバムを聴いてみたのですが、今回のアルバムはいつも以上にバラエティーの富んだ作品に仕上がっていました。

1曲目「ねずみ浄土」はいきなりファルセットボーカルからスタート。気だるい雰囲気の作風も含めて、今風のネオソウルの影響を強く感じる作品になっています。かと思えば「目覚ましはいつも鳴りやまない」はファンクの要素を入れつつ、こちらも最近の流行に沿ったような、シティポップ、AORの影響を感じさせる作品。まずアルバムの冒頭2曲は、あえて言えば、最近のシーンに対するGRAPEVINEからの回答、という見方も出来るかもしれません。

逆に「Gifted」「阿」はヘヴィーでサイケ風のギターサウンドが前に押し出されたロックの色合いの強いヘヴィーなナンバー。こちらはむしろ70年代風の匂いすら感じさせるナンバーで、バンドサウンドのヘヴィネスさも加えて、ロックバンドGRAPEVINEとしての実力を感じさせる楽曲に仕上がっています。また一方「リヴァイアサン」は軽快で疾走感のあるギターロック風のナンバーで、こちらはむしろ90年代のオルタナ系ロックの影響を感じさせる曲。ここらへんにもロックバンドとしての幅の広さを感じます。

かと思えば「ぬばたま」はピアノが入ってメランコリックに聴かせるムーディーなナンバーになっていますし、「josh」はリズミカルな打ち込みがニューウェーヴの要素を感じるナンバー。

そして印象的なのが最後を締めくくる「最期にして至上の時」でしょう。メロウに聴かせるボーカルも耳を惹きますが、「此岸」「祈り」という妙に宗教的、というより仏教的な目立つ歌詞も印象的。逆に冒頭の「ねずみ浄土」でも同じく、「浄土」という仏教用語が登場しますので、ある意味、対になっている楽曲に感じます。

この「ねずみ浄土」という曲、「一切の煩悩やけがれから離れた清浄な国土」という意味であるため、ある意味「不浄」をイメージする「ねずみ」との組み合わせは異質。さらに歌詞の中では「アダムとイブ」というキリストの概念も登場します。歌詞の中で「新たな普通/何かが狂う」という、コロナ禍の中のニューノーマルを皮肉ったような歌詞が登場しますので、ある意味、今のこのコロナ禍の状況をアイロニックに表現した歌詞ととらえられるかもしれません。

いつも以上にバラエティーの富んだ楽曲に、宗教的で印象に残る歌詞も特徴的な今回のアルバム。また文句なしの傑作アルバムに仕上がっていました。決して派手さはないものの、爽快さとヘヴィネス、今のサウンドと昔ながらのサウンドをほどよくバランスさせていた、非常によく出来た傑作アルバムだったと思います。GRAPEVINEの実力をあらためて実感した、そんな1枚でした。

評価:★★★★★

GRAPEVINE 過去の作品
TWANGS
MALPASO(長田進withGRAPEVINE)
真昼のストレンジランド
MISOGI EP
Best of GRAPEVINE
愚かな者の語ること
Burning Tree
BABEL,BABEL
ROADSIDE PROPHET
ALL THE LIGHT

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2021年6月20日 (日)

軽快なポップがとにかく楽しい

Title:FREAK
Musician:ネクライトーキー

バンド名ってどういう意味なんだろう??と思いつつ、微妙なインパクトのある名前は前から知っていたのですが、本作ではじめて音源を聴いてみたネクライトーキー。もともと、「石風呂」名義でボカロPとして活動し、コンテンポラリーの生活というバンドも組んでいた朝日を中心とした5人組バンド。ボーカルのもっさも、もともとニコニコ動画で「歌い手」として活動していたらしく、ある意味、「今どきのバンド」といった感じもします。本作はメジャー2作目となるフルアルバム。オリコンでは最高位14位を記録するなど、まさにブレイク寸前といった感のあるバンドとなっています。

また「今どきのバンド」といった感は、その楽曲のタイトルからも感じさせます。「はよファズ踏めや」「誰が為にCHAKAPOCOは鳴る」「俺にとっちゃあ全部がクソに思えるよ」など、微妙にタイトルが長めでかつ口語的。コミカルな感じも含めて、「軽さ」を感じさせます。ちょっとヤバイTシャツ屋さんっぽいかな??まあ、あそこまでのコミカルさはさすがにないのですが・・・。ボーカルのもっさの声質がハイトーンで、いわゆるアニメ声っぽい感じなのも、いかにも今どきっぽさを感じます。

ただ、このいかにも今どきの若者バンドらしい(・・・といってもメインライターである朝日は30歳を超えているようですが)軽さが、楽曲に対して非常にいい形で作用しているように感じます。彼らの魅力は、とにかく1にも2にも、難しいこと抜きで楽しめる、底抜けに楽しいポップチューンという点。典型的なのは「誰が為にCHAKAPOCOは鳴る」でしょう。「CHAKAPOCO」という響きも楽しいのですが、とにかく底抜けに楽しいポップチューンに仕上がっています。

ギターロック的な要素を入れて楽しいという意味では「はよファズ踏めや」でしょうか。シンセの音色も楽しい軽快なギターポップチューン。「はよファズ踏めや」の歌詞からファズギターがはじまるという、メタ的な楽曲構造も楽しいポップチューンになっています(この「メタ」的な部分も、今どきのバンドらしい感じが・・・)。

ほどよくノイジーなバンドサウンドとポップなメロディーラインという構造は、いかにもなJ-POPバンドといった感じもありますが、そういった点も含めて、良い意味で聴きやすさも感じます。「俺にとっちゃあ全部がクソに思えるよ」などは疾走感あるギターロックは、いかにも下北系のオルタナ系ギターロックバンドといった感じ。節回しがちょっとチャットモンチーっぽさも感じるかも?「豪徳寺ラプソディ」などはヘヴィーなギターリフからスタートし、意外とロックバンドとしてのタフネスさも感じつつ、メロディーは至ってポップという点も彼らの魅力といった感じでしょうか。シンセを加えて、ほどよくトリッキーに展開していく楽曲構造もまた、楽曲にユーモアさを加えており、彼らの大きな魅力に感じました。

そして最後は「夢を見ていた」は、しっかり聴かせるバラードチューンで締めくくり。軽快でコミカルに展開しつつ、最後、聴かせるべき部分はしっかりと聴かせるという意味では、バンドとしての底力も感じさる楽曲に仕上がっていました。

最初は、そのいかにも若者的な部分に、オジサン的にはちょっと引いてしまった点もあるのですが、もともとポップス好きの私にとって、聴いていってどんどんはまっていき、気が付けばすっかりお気に入りの1枚になっていました。メロディーラインにもインパクトがあり、さらにブレイクも期待できそう。間違いなく、これからが楽しみなバンドです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

赤裸々/ポルカドットスティングレイ

ポルカドットスティングレイの新作は4曲入りのEP。アニメ「ゴジラ S.P <シンギュラポイント>」のエンディングテーマ「青い」や、神風動画と組んだタテヨコ動画により、彼女たちの代表曲が再アレンジされた「トゲめくスピカ(タテヨコver.)」などが収録された作品。疾走感あるギターロックを聴かせる中、ちょっとアイドルポップっぽさを感じる「トーキョーモーヴ」など、全体的にはポップな色合いの強いアルバムに。全体的にはいい意味で聴きやすい作品となっていました。

評価:★★★★

ポルカドットスティングレイ 過去の作品
大正義
全知全能
一大事
有頂天
ハイパークラクション
新世紀
何者

HELP EVER HURT COVER/藤井風

今、最も注目を集める男性シンガーソングライターのひとり、藤井風の新アイテムはカバーアルバム・・・なのですが、もともとアルバム「HELP EVER HURT NEVER」の初回限定版に付属していたカバーアルバムを、評判の高さから復刻したもの。カバーしているのは「Close To You」「Back Stabbers」「Beat It」「Time After Time」など、有名曲ばかりなのですが、基本的にほぼピアノのみのカバーにも関わらず、多種多様なタイプの曲を見事歌いこなしています。ボーカリストとしてもしっかりと表現力ある歌声をしっかりと聴かせてくれており、彼のボーカリストとしての実力を感じさせる内容に。個人的には下手したら本編以上に出来がいいのでは??とすら思わせる傑作カバーに、彼の実力を再認識させられた1枚でした。

評価:★★★★★

藤井風 過去の作品
HELP EVER HURT NEVER

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2021年6月19日 (土)

幻のグループ、まさかの再始動

Title:接続
Musician:AJICO

2000年夏、「RISING SUN ROCK FESTIVAL」に突如登場したロックバンド、AJICO。当時、「情熱」「悲しみジョニー」などヒットを連発して注目を集めていたシンガーUAと、その年の7月にBlankey Jet Cityを解散させたばかりの浅井健一が組んだバンドということでシーンに衝撃が走り大きな話題となりました。しかし、翌年アルバム「深緑」をリリースし、その後ツアーも行ったものの、その最終公演で活動を終了することが報告。活動は1年に満たず、その幕を下ろしました。

その活動期間の短さから、まさに「幻のグループ」的な存在となってしまったAJICOですが、今年2月、全楽曲のダウンロードとストリーミング配信が解禁になると、3月に「ARABAKI ROCK FEST」への出演が決定。なんと実に20年ぶりとなるバンド活動再開が発表されました。「ARABAKI ROCK FEST」については、残念ながらコロナの蔓延により中止が決定されたものの、新譜のリリースが決定。約20年ぶりにリリースされた4曲入りのEP盤が本作となります。

今回の全4曲、作曲はすべて浅井健一が担当。作詞はUA作詞が2曲、浅井健一1曲、2人の共同作詞が1曲という構成になっています。正直なところ、ここ最近の浅井健一の作品というと、良くも悪くも「大いなるマンネリ」気味になってしまっているのが否めません。ただ今回のアルバムは、野性味を感じられるUAのボーカルもあって、最近の彼の作品とは一風変わったAJICOとしての独特の楽曲を作り上げています。

1曲目「地平線Me」はまさに、そんなUAのボーカルがいかされた、うねるようなグルーヴ感のあるトライバルな作風が印象的。2曲目「惑星のベンチ」は一転、ストリングスも入って爽やかなポップに仕上がっており、タイトルチューン「接続」は浅井健一らしいくすんだ雰囲気を醸し出しつつ、ピアノの音色や途中の転調で絶妙な爽やかさや、幻想的な雰囲気も醸し出している独特な雰囲気の楽曲に。ラストの「L.L.M.S.D.」は作詞もベンジーということもあって、こちらは完全に最近の浅井健一の王道チューンに。ただ、メロディアスなギターロックに仕上がっており、いい意味でのポップで聴きやすさも感じます。

そしてこのアルバムで印象的だったのは歌詞。そもそも「接続」というタイトル自体、このコロナ禍において、なかなか人と人とのつながりがもてなくなってしまった今だからこそ、あえてこのようなタイトルの作品を作ったとも言えます。またアルバムの冒頭を飾る「地平線Ma」の一番最初から

「もう右も左も関係ない
トンネルは終わり
意識をぶって 親密に行こう」
(「地平線Ma」より 作詞 UA)

と、人と人とのつながりはもちろんですし、昨今、右も左も極論に走り、相手を攻撃しがちな世間に対してのメッセージにも感じられます。コロナ禍の中で、さらに未来への不安を感じる現状の中で、人々へ「接続」を呼びかける、そんな歌詞が印象に残るアルバムでした。

そしてもちろんそんな楽曲を支え、グルーヴ感を作り出しているバンドサウンドにも言及しない訳にはいかないでしょう。ドラムには数多くのミュージシャンのアルバムやツアーに参加している椎野恭一が参加。さらにベースには言わずと知れたTOKIEさんが参加。ここにベンジーのギターが重なるわけですから、バンドサウンドと、この独特なグルーヴ感を楽しめるのも納得です。

正直、浅井健一はここ最近、駄作ではないものの、いまひとつマンネリ気味なアルバムが目立ちます。UAは直近作「JaPo」は傑作ではあったものの、同作から5年間、アルバムリリースはありませんでした。2人とも決して脂ののった状態ではないものの、そんな中でリリースされたAJICOがしっかり傑作をリリースしてきたことに驚かされると共に、何気にメンバーの相性の良さも感じました。今度こそ、コンスタントに活動を続けるのでしょうか?次は是非、フルアルバムで!そして、コンスタントな活動を期待したいところです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

エレクトリック ジェリーフィッシュ/特撮

約5年3ヶ月ぶりとなる特撮のニューアルバム。コロナ禍をテーマとした曲を多くのミュージシャンが歌う中、「オーバー・ザ・レインボ〜僕らは日常を取り戻す」はオーケンらしい歌詞が特徴的ですし、ミュージカル風にまとめたプログレチューン「歌劇『空飛ぶゾルバ』より『夢』」もユニーク。ハードロックやハードコア路線のヘヴィーなサウンドも彼ららしい感じ。安定感もあって、良くも悪くも卒なさを感じさせます。前作同様、三柴理のピアノがちょっと大人しめだったのは残念なのですが・・・このコロナ禍の中で、彼ららしさをしっかりと出していた安定感ある作品でした。

評価:★★★★

特撮 過去の作品
5年後の世界
パナギアの恩恵
ウィンカー

NEBULA/fox capture plan

男性3人組のジャズバンド、fox capture planのニューアルバム。既に結成から10年が経過した中堅バンドの彼ら。名前は聴いたことあるような・・・程度の認識だったのですが、偶然、CDショップで流れてきた音楽が「自分好みかも!」と思い、はじめてアルバムを聴いてみました。ピアノを軸としたメランコリックで美しいメロディーラインと分厚めのサウンドは確かに好みのタイプ・・・・・ではあるのですが、思ったほどは壺にははまらなかったかな?ただ、次回作も聴いてみたいバンドであることは間違いないのですが。

評価:★★★★

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2021年6月18日 (金)

砂漠のジミヘン

Title:Afrique Victime
Musician:Mdou Moctar

ここでも何度か紹介したことがありますが・・・一時期、「砂漠のブルース」と呼ばれるグループが注目を集め、人気を博したことがあります。アフリカ砂漠周辺、特にトゥアレグ族の奏でる音楽は、ブルースと共通するような音楽性を有することから、そのような呼ばれ方をしており、特にその代表的なバンド、Tinariwenはグラミー賞を複数回受賞するなど、大きな注目を集めました。

今回紹介するミュージシャンは、そんな「砂漠のブルース」の流れを組むミュージシャン。もともとプリンスの「パープル・レイン」を再構築したトゥアレグ語の映画「Akounak Tedalat Taha Tazoughei」で主演をつとめたことでも注目を集めたMdou Moctar(エムドゥ・モクター)を中心した4人組バンドによるアルバム。広告のうたい文句では「ニジェール共和国のサイケ・ヒーローにて、今世界で最も注目をあつめるギター・ヒーローのひとり」という紹介のされ方をしており、「砂漠のジミヘン」なんて呼ばれ方をしているほか、エディ・ヴァン・ヘイレンのギターサウンドをルートとして・・・なんて紹介のされ方もしています。

この紹介のされ方からして、このHIP HOP全盛の時代に今さら・・・?感もなきにしもあらずなのですが、確かに1曲目「Chismiten」のパワフルなギターソロのインストから、確かにジミヘンやエディ・ヴァン・ヘイレンといった往年のギターヒーローを彷彿とさせてくれます。

その後も「Taliat」でもメロディアスなギタープレイを聴かせてくれたり、タイトルチューン「Afrique Victime」でも力強いギタープレイを聴かせてくれるなど、全体的にギターが非常に印象に残るバンドであることは間違いありません。ただ、所々、確かにハードロック的な雰囲気を感じさせるギタープレイは入り、それが大きな魅力であることは間違いありませんが、アルバム全体としては、むしろ「砂漠のブルース」につながるようなトゥアレグ族らしいフレーズやサウンドがメイン。そのため、ジミヘンやエディ・ヴァン・ヘイレンといううたい文句から、ハードロック的な耳で聴き始めると、若干違和感を覚えるかもしれません。

ただし、一方で、このハードロック的なダイナミックなギタープレイと、「砂漠のブルース」的なトライバルなサウンドやコールアンドレスポンス、アフリカを彷彿とさせるような壮大なスケール感とのバランスが彼らの最大の魅力にも感じました。「Ya Habibti」の哀愁感たっぷりのメロディーラインもいかにも「砂漠のブルース」な様相で印象に残りますし、タイトルチューンの「Afrique Victime」も、グルーヴィーでサイケ感あるサウンドを奏でながら、一方ではコールアンドレスポンスで、みんなで歌い上げるような楽曲の構成に、アフリカ的なスケール感を覚える作品になっています。

また、ダイナミックなギタープレイだけではなく、「Tala Tannam」などでは、非常に繊細なギタープレイを聴かせてくれており、その点も彼の音楽的な懐の深さも感じさせます。「新世代のギターヒーロー」という言い方は、この時代、若干どうなんだろう?という感もありますが、確かに、彼のギタープレイは今の時代でも間違いなくリスナーの心を奪いさる演奏だったと思います。

ハードロック好きというよりは、Tinariwenあたりが好きなら文句なしにお勧めできる、新たなトゥアレグ族の実力派ミュージシャンの登場といった感じでしょうか。ただ、ダイナミックなギタープレイはハードロックリスナーでも十分楽しめるかもしれません。そういう意味で、ワールドミュージックというとなじみのない方にも聴きやすい作品かもしれません。今後、日本でも注目が高まりそう。要注目の傑作アルバムです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

My Beautiful Laundrette/PET SHOP BOYS

PET SHOP BOYSの最新作は7曲入りのEP盤。本作は同名の映画の舞台ヴァージョンのために書かれた曲などが収録されており、昨年4月に販売したハードカヴァー本「Annually 2020」にCDとしてついていた作品をこのほど配信リリースとなったそうです。彼ららしい軽快なエレクトロポップでリズミカルな作品がメイン。うち4曲がインストなのですが、それらも含めてPSBらしいポップなメロディーラインが耳に残ります。また「Omar's theme」やインスト曲の「Night sings(Popa's theme)」などエキゾチックな雰囲気の曲も多く、独特の味付けも感じられます。ともあれポップグループPSBの魅力にあふれたポップアルバム。20分という短い時間ですが、彼らの魅力に十分触れられた作品でした。

評価:★★★★★

PET SHOP BOYS 過去の作品
Yes
ULTIMATE PET SHOP BOYS(邦題:究極のペットショップボーイズ)
The Most Incredible Thing
Elysium(邦題 エリシオン~理想郷~)
ELECTRIC
SUPER
Agenda
Hotspot
Monkey business

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2021年6月17日 (木)

アルバムはK-POPのアイドルが・・・

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

先週のHot100、Hot Albumsとは逆に、今週は、Hot100は日本のアイドル、Hot Albumsは韓国のアイドルグループが1位獲得です。

1位初登場は韓国の男性アイドルグループTOMORROW X TOGETHER「The Chaos Chapter:FREEZE」が獲得。CD販売数1位、ダウンロード数23位、PCによるCD読取数21位。輸入盤が先行でリリースされていた関係上、先週はダウンロード数のみのランクインで16位にランクインしていましたが、2週目にして1位獲得。オリコン週間アルバムランキングでも同様の理由で先週4位にランクインしていましたが、今週は国内盤の売上も加わり、7万6千枚を売り上げて1位にランクインしています。

2位には椎名林檎を中心としたロックバンド東京事変「音楽」がランクイン。CD販売数は2位でしたが、ダウンロード数及びPCによるCD読取数共に1位で総合順位は2位。2012年に解散したものの、今年、突如復活を発表。昨年、ミニアルバム「ニュース」をリリースしてましたが、フルアルバムとしては2011年の「大発見」以来、10年ぶりの新作となりました。オリコンでは初動売上4万2千枚で2位初登場。前作「ニュース」の初動売上3万枚(2位)よりアップしています。

3位4位には国民的ヒットとなった人気ゲームのサントラ盤がランクイン。3位に「あつまれ どうぶつの森 オリジナルサウンドトラック BGM集」が、4位に「あつまれ どうぶつの森 オリジナルサウンドトラック とたけけミュージック集 Instrumental」が、それぞれランクインしています。ご存じ大ヒットとなったゲーム「あつまれ どうぶつの森」のサントラ盤。「BGM集」はゲームで使われるBGMをまとめたもの、「とたけけミュージック集」はゲーム中の人気キャラクター「とたけけ」の歌う曲をインスト版で収録した曲となっています。オリコンでは両者をまとめてパッケージした初回限定版が初動売上1万5千枚で3位にランクインしていますが、Billboardでは両者は別のアルバムとして取り扱われており、3位4位に並んでいます。

続いて4位以下の初登場盤です。5位初登場は氷川きよし「南風吹けば」。CD販売数5位、PCによるCD読取数79位。オリコンでは初動売上1万4千枚で4位初登場。前作「生々流転」(7位)から横バイ。

6位にはthe LOW-ATUS「旅鳥小唄 -Songbirds of Passage-」がランクイン。CD販売数6位、PCによるCD読取数10位。ELLEGARDEN、MONOEYES、the HIATUSで活躍している細美武士と、BRAHMANのTOSHI-LOWの2人によるユニット。2人とも、東日本大震災の支援活動を積極的に行ってきたミュージシャンでしたが、2人ともライブなどで一緒になることも多かったことから自然発生的に2人で活動を開始。被災地での弾き語りライブなどを中心に活動を行ってきました。そのユニットがこのたび、ついにリリースしたアルバムが本作となります。オリコンでは初動売上1万枚で6位初登場。

8位にも韓国の男性アイドルグループEXO「Don’t Fight The Feeling」がランクイン。輸入盤のためダウンロード数での2位ランクインのみでのベスト10入りとなっています。オリコンでは初動売上5千枚で9位初登場。前作で同じ輸入盤「Obsession」の8千枚(16位)からダウン。

9位には小原鞠莉(鈴木愛奈) from Aqours「LoveLive! Sunshine!! Ohara Mari First Solo Concert Album ~New winding road~」。アニメキャラによるアイドルプロジェクトラブライブ!サンシャイン!!から登場したアイドルグループAqoursのメンバーによるソロアルバム。CD販売数8位、ダウンロード数18位、PCによるCD読取数34位。オリコンでは初動売上6千枚で7位初登場。同シリーズの渡辺曜(斉藤朱夏) from Aqours「LoveLive! Sunshine!! Watanabe You First Solo Concert Album ~Beginner's Sailing~」の初動1万1千枚(4位)からダウン。

最後10位にはラッパーAK-69「The Race」がランクイン。CD販売数は12位でしたが、ダウンロード数は5位にランクインし、総合順位ではベスト10入り。オリコンでは初動売上3千枚で13位にランクイン。前作「LIVE:live」の6千枚(7位)からダウンしています。

初登場が多かった今週のチャートですが、その影響もありロングヒット盤は軒並みランクダウン。YOASOBI「THE BOOK」は6位から14位に、米津玄師「STRAY SHEEP」は10位から18位にそれぞれランクダウン。いずれも先週、ベスト10に返り咲いていましたが、返り咲きはいずれも1週のみとなっています。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2021年6月16日 (水)

今週は再び日本のアイドルが・・・

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週は秋元康系が1位獲得となりました。

今週1位を獲得したのは乃木坂46「ごめんねFingers crossed」が獲得。CD販売数及びPCによるCD読取数で1位、ラジオオンエア数6位。一方、ダウンロード数は15位、Twitterつぶやき数19位、You Tube再生回数は83位に留まっています。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上58万9千枚で1位初登場。前作「僕は僕を好きになる」(1位)から横バイ。

2位はBTS「Butter」が先週からワンランクダウン。ストリーミング数及びYou Tube再生回数は先週と変わらず1位をキープ。一方、ラジオオンエア数は1位から3位にダウン。ダウンロード数は4位から3位に、Twitterつぶやき数は21位から1位にアップしています。また「Dynamite」も先週から変わらず8位をキープ。こちらはこれで43週連続のベスト10ヒットとなっています。

3位は米津玄師「Pale Blue」が先週からワンランクダウン。ダウンロード数は今週も1位をキープしているほか、ストリーミング数が7位から2位、You Tube再生回数も6位から2位とランクアップ。今後のロングヒットも期待できそうなチャート動向になってきています。

続いて4位以下ですが、今週初登場曲は1位の乃木坂46のみ。以下、ロングヒット曲が並びました。

まず優里「ドライフラワー」は今週5位から4位にアップ。根強い人気を見せています。ダウンロード数は11位までダウンしたものの、ストリーミング数3位、カラオケ歌唱回数1位をキープ。You Tube再生回数は7位から8位にダウンしたものの、まだまだ上位にランクインしています。これで30週連続のベスト10ヒットに。

YOASOBI「怪物」は先週から変わらず6位をキープ。こちらはストリーミング数が4位から6位、You Tube再生回数も4位から7位と下落傾向。それでもこれで21週連続の1位となっています。一方、「夜に駆ける」は今週も10位をキープし、これで3週連続の10位に。ベスト10ヒットも通算59週目となり、土俵際の粘りを見せています。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2021年6月15日 (火)

海外進出への挑戦心を感じるが・・・

Title:WINK
Musician:CHAI

どうも日本では大手レコード会社や事務所のバックアップを取り付けたような日本人ミュージシャンの海外進出ばかりが大きくピックアップされるようなケースが目立ちますが、インディーのレベルで海外に進出し活躍するようなミュージシャンも少なくありません。当サイトでも何度か取り上げた彼女たち、CHAIもそんなミュージシャンの一組で、前作「PUNK」は、なんと海外のWebメディアPitchforkでも高い評価を受け、年間ベストアルバムにランクインするなどの活躍を見せました。さらに本作ではあのインディーレーベル、サブポップと契約!世界に向けて、一気に飛躍しようとする姿勢を感じます。

そんな海外進出への「攻め」の姿勢を感じられるCHAIですが、今回のアルバムに関してもそんな海外への「攻め」を感じさせる内容になっています。具体的に言うと、いままでのインディーロック的な作風から、ガラリと雰囲気を変えたのが本作。1曲目の「Donuts Mind If I Do」から、エレクトロアレンジのしんみりメロウなR&Bチューンとなっていますし、2曲目の「チョコチップかもね」では新進気鋭のラッパーRic Wilsonをフューチャーし、ダウナーに聴かせるR&Bになっています。

さらに「PING PONG!」ではYMCKをフューチャーし、チップチューンを取り入れたエレクトロポップになっていますし、こちらも今注目を受けているトラックメイカーであるMndsgnをフューチャーした「IN PINK」では軽快なリズムが耳を惹くエレクトロチューンになっています。

そんな訳で、今回のアルバムは新進気鋭のミュージシャンをフューチャーしたサウンドはかなり「今風」な感が強く、タイトなバンドサウンドがメインとなっていたいままでの作品と異なり、エレクトロサウンド主体、R&B寄りの作風になっていました。ほかにもメロウなシティポップ風の「It's Vitamin C」、メロウに聴かせる「Wish Upon a Star」など、R&B寄りの作品が目立ちます。「END」のようにタイトなビートを聴かせる楽曲もあるにはあるのですが、いままでのCHAIのイメージからすると、少々異なる感のあるアルバムになっていました。

こういう今までの彼女たちのイメージに拘らない新たな挑戦というのは、それはそれで頼もしいものがあり、彼女たちも決して一つの場所に留まらず、進化を続けていくミュージシャンとも言えるのでしょう。ただ、そういう挑戦心は買いつつも、率直に言ってアルバム全体としては印象は、かなり辛いなぁ・・・というイメージを持ってしまいました。

楽曲の出来としては決して悪いわけではありません。やはり今風のエレクトロトラックは聴いていてカッコよさを感じますし、メロウなナンバーもそれなりにしっかりと歌いこなしています。ただ、前作まで感じた、CHAIとしての個性はこのアルバムではあまり感じることが出来ません。もちろん「NEOかわいい」を標ぼうする彼女たちは、そのイメージに沿った歌詞という点では今回も共通するのかもしれませんが、そんなイメージと裏腹なタイトなバンドサウンドもなく、意外とポップなメロディーラインも鳴りを潜めてしまい、代わりに登場したのは、今風といえば今風なのですが、逆に言うと、少々ありふれた感のあるサウンドと、いかにも海外志向のメロディーラインやサウンド。CHAIとしての新たなサウンドを提示した・・・という印象は残念ながらありませんでした。

悪い意味で海外を意識しすぎて、自分の軸足を若干見失った感のあるアルバム。1枚目2枚目と年間ベストクラスの傑作が続いていただけに非常に残念。新機軸も決して悪いわけではありませんが、その上でCHAIらしさを付与していかないど、徐々に厳しくなってしまうような感もあります。悪いアルバムではないのですが、ちょっと残念に感じた1枚でした。

評価:★★★★

CHAI 過去の作品
PINK
わがまマニア
PUNK


ほかに聴いたアルバム

MTV Unplugged:RHYMESTER/RHYMESTER

2月にMTVで放映された、アコースティック形式でのライブパフォーマンス「MTV Unplugged」でのRHYMESTERのパフォーマンスの模様を収録したライブ盤。「キング・オブ・ステージ」の異名を持つほど、そのライブパフォーマンスには定評のある彼らですが、この日のライブも、いつもと異なるアコースティック形式で、なおかつコロナ禍の中で異例となる無観客でのパフォーマンスながらも、いつもながらの彼ららしいパフォーマンスが繰り広げられています。アコースティック形式でも、RHYMESTERの楽曲の魅力は全く変わらず、彼ららしい、聴いていて気分が盛り上がってくるパフォーマンスを聴かせてくれていました。

評価:★★★★★

RHYMESTER 過去の作品
マニフェスト
POP LIFE
フラッシュバック、夏。
ダーティーサイエンス
The R~The Best of RHYMESTER 2009-2014~
Bitter,Sweet&Beautiful
ダンサナブル
ベストバウト2 RHYMESTER Featuring Works 2006-2018

CULTICA/オカモトショウ

OKAMOTO'Sのボーカリスト、オカモトショウによる初のソロアルバム。正直、オカモトショウはボーカリストとして少々線が細く、それがOKAMOTO'Sの弱点になっていました。しかし、今回のソロアルバムではエレクトロサウンドを大胆に導入。バンド活動と差をつけるのと同時に、エレクトロサウンドの中にボーカルを「サウンドのひとつ」として取り扱うことにより、彼の「線が細い」という弱点を克服するどころか、エレクトロサウンドの中で、変に主張しすぎない彼のボーカルが楽曲の中で非常に上手く機能していたように感じます。聴く前の予想に反した傑作アルバム。こういうボーカルの生かし方、OKAMOTO'Sでも上手く取り扱えればよいのですが。

評価:★★★★★

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2021年6月14日 (月)

懐かしさも感じるキュートなギタポ

Title:Even The Good Days Are Bad
Musician:Last Days Of April

スウェーデン出身のギターポップバンド、Last Days Of April。いわゆる「美メロ系のギターポップバンド」で、本作が約6年ぶりとなるニューアルバムとなります。ほどよくノイジーなギターを中心としたバンドサウンドに胸キュンなメロディーラインということで、タイプ的にはTEENAGE FANCLUBやFountains Of Wayne、あるいはおなじスウェーデンの胸キュン系ギターロックバンドThe Marrymakersあたりが好きなら気に入るかも、といったタイプのバンドでしょうか。

彼らのデビューは1996年で、既に結成25周年目というベテランの域に達するバンド。デビュー以来、2,3年に1度はアルバムをリリースするというコンスタントな活動を続けています。私自身も彼らのアルバムを聴くのはこれがはじめてではなく、2003年にリリースされたアルバム「If You Lose It」が日本でもちょっと話題となり、そのアルバムをリアルタイムで聴いて気に入っていたのですが・・・その後はアルバムがリリースされても、日本ではほとんど情報が入っていなかったこともあって、なんとなく聴いていませんでした。ただ、今回のアルバムのリリースについて、久々にWebメディア上で話題に出てきて、久しぶりに聴いてみたのが今回のアルバム、という流れになります。

そんな久々に聴いた今回のアルバムは、相変わらずの美メロ路線にほどよくノイジーなギターサウンドがとても心地よい逸品、ということになるのでしょうか。以前聴いたアルバム「If You Lose It」も心地よい美メロ路線に当時、結構はまった記憶があるのですが、今回のアルバムに関しても、20年近いスパンが開いていたものの、そのスタイルはほとんど変わっていないように感じます。

もっとも美メロ系ギターロックバンドと一言で言っても、バンドによってそのスタイルが様々に変わりますが、彼らが特徴的なのはメランコリックなメロディーラインと、60年代のガレージロックあたりを彷彿とさせる、ちょっとサイケでレトロなバンドサウンドのスタイルではないでしょうか。アルバムは、1曲目、タイトルナンバーの「Even the Good Days Are Bad」からスタートしますが、ガレージ気味なノイジーなギターサウンドに、ストリングスも入った音色が非常にメランコリック。どこかレトロな懐かしさも感じさせます。「Had Enough」もピアノが加わったメランコリックなサウンドがとても懐かしさを感じさせますし、「Alone」もちょっと懐かしさを感じる軽快なガレージロック風。「Hopeless」も懐かしい60年代ポップの匂いを感じさせる楽曲に仕上がっています。

他にも「美メロ」と言えば、まさに2曲目の「Run Run Run」でしょう。ミディアムチューンのナンバーなのですが、胸がキュンと来るようなキュートなメロディーラインがたまらないポップチューン。これぞ美メロ好きの壺をつきそうなナンバー。また「Anything」の分厚いギターサウンドにキュートなメロディーラインも美メロギタポ好きの胸をうちそう。まさに聴いていて胸がキュンと来るようなポップチューンの並ぶ作品になっています。

ちょっと懐かしさを感じさせつつ、無条件にポップなメロディーを楽しむことが出来るそんな1枚。美メロ好きには文句なしにお勧めできる作品だと思います。久々に聴いたアルバムで、聴き逃していた作品も多いのですが、これを機に、過去に戻って彼らのアルバムを聴いてようかなぁ。そんな気にもさせてくれる傑作でした。

評価:★★★★★

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2021年6月13日 (日)

圧巻のライブ盤

Title:AMAZING GRACE:THE COMPLETE RECORDINGS(邦題 至上の愛~チャーチ・コンサート~<完全版>)
Musician:ARETHA FRANKLIN

さて、先日、アレサ・フランクリンの映画「アメイジング・グレイス/アレサ・フランクリン」を紹介しましたが、本作はその時の教会コンサートの模様を収録したライブアルバム。映画での紹介の時にも書いたのですが、映画自体は技術的な問題から当時、お蔵入りしたのですが、ライブ音源の方はアルバムとしてリリース。ゴスペルアルバムとしては異例となるミリオンヒットを記録し、アルバム自体も彼女を代表する名盤として、今なお多くのゴスペルファン、ソウルファンに愛されつづけている作品となっています。

ただ、オリジナルとなる1972年のアルバムはそのコンサートから一部を抜粋し、再構成した内容。それを本作では、映画公開にあわせて当時のコンサートを完全収録。オリジナルでは一部オーバーダビングをほどこしたり、再レコーディングをした部分もあったそうですが、今回はそのような装飾も取り除き、当日の模様がそのまま収録されているライブ盤となっているそうです。

映画でも紹介したとおり、この教会コンサートは2日間にわかっておこなわれました。今回のアルバムでも2日間のライブを2枚のアルバムにわたって収録。完全版であるがゆえに、冒頭のグリーヴランド師の挨拶やアレサの紹介、さらにDisc2では映画の中でも印象的なシーンであった、アレサの父親、C.L.フランクリン師の説教も収録されています。映画でもカットされた曲もしっかり収録されているので、こちらもさながらドキュメンタリーのようなアルバムになっています。

もともとのオリジナルの「AMAZING GRACE」で収録されていたのは2日目の演奏がメインで、そこに一部、1日目の演奏が加わる構成になっていたそうです。一方、映画では、2日目に関してはC.L.フランクリン師や当日、観客として参加していた、アレサに影響を与えたというクララ・ウォード、さらには同じく観客であったローリングストーンズのミック・ジャガーとチャーリー・ワッツの姿が印象に強く残る構成になっており、アレサのボーカルの迫力という側面では、1日目の方が強く印象に残ったように感じます。

ただ、このアルバムで2日間通して聴くと、間違いなく1日目のパフォーマンスにも素晴らしいものがありますが、2日間を比較すると、間違いなく2日目の方がアレサのボーカル、会場の雰囲気などを含めて圧巻という印象を受けました。特に圧巻だったのがDisc2の「Mary Don't You Weep(マリアよ泣くなかれ)」で、彼女のパワフルなボーカルはもちろんのこと、コーラスとの一体感が強く感じられる鳥肌が立つパフォーマンスで、まさに奇跡が起きたようなステージングになっていました。ちなみにこの曲はオリジナルだと1曲目に収録されているようですが、その理由も納得できます。さらにC.L.フランクリン師の説教に続く「Precious Memories(尊きおもいで)」もまた、ブルージーなギターをバックにしんみりと歌い上げる彼女の歌声が強く印象に残るナンバー。事実上のラストナンバーとなりますが、父親の言葉の後に、感慨たっぷりに歌い上げる彼女の心境がこちらにも伝わってくるようです。

もちろん1日目の方も素晴らしいパフォーマンスだらけで、特に映画でも胸に響いてくる歌声を聴かせてくれた「Amazing Grace」はもちろん、CDの音源でも彼女の歌声は心に突き刺さってくるでしょう。1日目のベストパフォーマンスであったことは、このアルバムからもあらためて実感させられます。

映画で感じた興奮を思い起こさせるようなアルバム・・・と言いたいのですが、個人的には映画を観るよりこちらを先に聴いたので、アルバムもよかったけど、やはり映像のある映画でさらに圧倒されました。とはいえ、もちろんこちらのアルバムも文句なしの傑作で、アレサのすごさをあらためて感じさせられました。オリジナルはアレサの名盤として名高い作品ですが、これからはこちらの完全版があらたな彼女のスタンダードとなっていくのでしょうか。圧巻の作品です。

評価:★★★★★

Aretha Franklin 過去の作品
Aretha Franklin Sings the Great Diva Classics
A BRAND NEW ME: ARETHA FRANKLIN WITH THE ROYAL PHILHARMONIC ORCHESTRA


ほかに聴いたアルバム

Delta Kream/The Black Keys

The Black Keysのニューアルバムは敬愛するブルースの楽曲をカバーしたカバーアルバム。原曲のブルースのイメージそのままに、彼ららしい骨太のサウンドをのせカバーしているアルバムに仕上がっており、あくまでも原曲への敬意を感じさせるカバーに、彼らのブルースへの愛情を感じさせます。

評価:★★★★★

The Black Keys 過去の作品
EL CAMINO
"Let's Rock"

Fat Pop/Paul Weller

前作からわずか10ヶ月というインターバルでリリースされたニューアルバム。御年63歳ながらも、いまなお積極的な活動が目立つ彼ですが、そんな新作も、そんな年齢を全く感じさせない、現役感あふれるアルバムに。前作は比較的アコースティックテイストの強かったアルバムでしたが、本作は1曲目「Cosmic Fringes」からエレクトロサウンドを取り入れた作品となっており、その後もギターロック路線やアコースティックな楽曲、哀愁感たっぷりの作品などバラエティー富んだ内容に。大ベテランの彼ですが、今なお感じる攻めの姿勢が垣間見れたアルバムになっていました。

評価:★★★★

Paul Weller 過去の作品
22 DREAMS
Wake Up The Nation
Sonik Kicks
A Kind Revolution
True Meanings
In Anohter Room

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2021年6月12日 (土)

圧巻のステージパフォーマンス

コロナ禍で、ここ1年以上、映画館から足が遠のいていましたが、先日、久しぶりに映画を観てきました。まあ、純粋に見たい映画がなかったというのもありますが・・・。それが「アメイジング・グレイス/アレサ・フランクリン」。「ソウルの女王」と呼ばれたアレサ・フランクリンが1972年に行ったゴスペルコンサートの模様を収録したフィルムの待望の映画化となります。

もともと映画化を想定して行われたゴスペルライブなのですが、撮影現場でいわゆる「カチンコ」を使わなかったために音と映像の同期が上手くいかず、お蔵入りになってしまった作品。その後、技術的な問題は克服できたものの、今度はアレサ本人から許可がおりず映画化は断念されたものの、2018年にアレサが鬼籍に入ったことから映画化に向けて動き出し、撮影から40年以上の月日を経て、ようやくこのたび映画化されたといういわくつきの作品。ただし、ライブ音源のみは別途ライブアルバムとしてリリースされ、ゴスペルでは珍しいミリオンセラーを達成。現在でもアレサの・・・という枠組みを超えた「名盤」として知られる1枚となっています。

「カチンコ」を使うのを忘れるくらい、現場はバタバタしていたみたいで、その模様は映像にも残っています。ただ、この不慣れさゆえに、映像としては変に凝った編集もありません。一部、リハーサルの映像と本番の映像を重ねる試みはあるものの、基本的には当日のライブの模様をそのまま撮影して使用しているスタイルになっており、それが今となっては、当日の雰囲気がそのまま伝わってくる貴重な映像としての価値を高める結果となっています。

1a7420f486bd932746ec851cda3223f2さて、肝心のライブパフォーマンスは2日間にわかって行われているのですが、まず気になるのはその会場の狭さ(!)。ちょっとした学校の体育館程度の広さしかありませんし、アレサも演壇の上で直立不動で歌うか、ピアノの弾き語りで歌うかという、比較的シンプルなパフォーマンスですし、バックの聖歌隊は椅子に座って歌っていますし、バンドメンバーは演台と観客席の間の狭いスペースに押し込められるように陣取って演奏を聴かせてくれています。それであれだけスケール感のあるパフォーマンスを聴かせてくれる点は驚くべき事実です。

パフォーマンスは主にアレサも敬愛するグリーヴランド師の司会を中心として進められます。彼も歌やピアノ演奏で参加しているのですが、その彼のパフォーマンスも非常にアグレッシブで特筆すべき内容ですし、バンドメンバーであるコーネル・デュプリー、チャック・レイニー、バーナード・パーディー、そしてケン・ラパーのパフォーマンスの素晴らしさ、バックのコーラスをつとめる聖歌隊の素晴らしさも言うまでもありません。

そしてもちろん一番印象に残ったのは言うまでもなくアレサ本人のパフォーマンス。普段、ソウルミュージシャンとして活躍してきた彼女が、その原点とも言えるゴスペルに挑戦したパフォーマンスということもあり、彼女の表情からはどこか緊張感も覚えますし、その歌声も普段以上に力が入っているように感じます。しかし、その身体のどこから出てくるんだ、と思われるような力強い、そしてそれだけ歌を張り上げながらも、音が一切ぶれない歌声に、まずは圧倒されます。そしてその一方でただ声を張り上げるだけではなく、やさしく聴かせる部分では特に、その表現力のある歌声に聴き惚れてしまうのではないでしょうか。そのボーカリストとしての実力をいかんなく感じられる映像に、終始くぎ付けされます。

特に1日目に関しては、序盤「Wholy Holy」などのバラードナンバーでじっくり聴かせつつ、中盤には「What A Frend We Have In Jesus」などで徐々にアップテンポに盛り上げ、会場の高揚感を高めつつ、ラストではおなじみ「Amazing Grace」を表現力たっぷりに力強く歌い上げるという展開には鳥肌すら立ってきます。最後の「Amazing Grace」ではあまりの圧倒ぶりに、グリーヴランド師が目じりをおさえて涙を流すというシーンが撮られているのですが、確かに私もあの現場にいたら、涙が出てきてしまうように感じました。実際、映画を観ているだけで目じりが熱くなってきましたし・・・。今回の映画、歌詞にも字幕がついているのでゴスペルの歌詞の内容もよくわかるのですが、確かにこうやって音楽で高揚感を高めつつ、歌詞にキリスト教の教えを織り込めば、神への帰依が深まるよなぁ、なんてことも感じてしまいました。

そして2日目のパフォーマンスの見どころといえば、なんと会場にローリング・ストーンズのミック・ジャガーとチャーリー・ワッツの姿が映っているという点。そして、アレサの父親であるC・L・フランクリンが会場に登場してくる点でしょう。アレサの父親のC・L・フランクリンも説教師として非常に有名な人物で、そのたたずまいからもただ者ならぬカリスマ性を感じます。途中、歌の間に彼の演説が入ってくるのですが、この演説も、私のような日本人でも、半分くらい意味がわかるような平易な英語表現をゆっくりとわかりやすく語りつつ、アレサの素晴らしさと父親として娘を思う気持ちを短い内容の中でうまく織り込んでくる素晴らしいスピーチとなっており、確かに説教師として人気を博した理由もよくわかります。その後、アレサがピアノの弾き語りをする中で、やさしくタオルで彼女の汗をぬぐってあげるシーンもあり、親子の関係が垣間見れる暖かいシーンも映し出されていました。

映画としては特にこれといった構成もなく、シンプルなコンサートフィルムといった様相の内容でしたが、だからこそ、当日のライブの雰囲気がそのまま伝わってくる素晴らしい、そして貴重な映像になっていた作品でした。どこまで劇場公開が続くかわかりませんし、コロナ禍の中ですので劇場に足を運ぶのを躊躇してしまう向きもあるかもしれませんが・・・しっかりと感染予防対策をしてぜひとも映画館で見てほしい作品だと思います。アレサのボーカリストとしてのすごさをあらためて痛感した作品でした。

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2021年6月11日 (金)

パパ!お帰り!(刑務所から)

Title:Daddy's Home
Musician:St.Vincent

アルバムをリリースする毎に高い評価を受け、今や、最も注目されるシンガーソングライターの一人となった、ニューヨークはブルックリンを拠点に活動を続けるSt.VIncent。今回のアルバムは、収監されていた彼女の父親が2019年に出所したことをきっかけとして作成されたアルバムだそうで、「パパ、おかえり」というタイトルは刑務所からの帰還というのはなんともヘヴィーな・・・。

さて、St.Vincentというとアルバム毎にそのスタイルを変える点もひとつの特徴となっています。私が彼女の作品をはじめて聴いたのは、オリジナルアルバムとして前々作となる「St.Vincent」からでしたが、同作はギターサウンドを前に押し出した作風。前作「MASSEDUCTION」は社会派な様相の強い作品を収録しつつ、全体としてはエレクトロ色の強い作品に。さらに同作をアコースティックアレンジにガラリと変えた「MassEducation」なんていう作品もリリースしたりもしています。

そして今回の作品もガラリとその作風を変えています。エキゾチックなギターサウンドにのせて伸びやかに歌い上げる「Donw And Out Donwtown」やソウルフルなボーカルをけだるく聴かせるタイトルチューン「Daddy's Home」、サイケなギターをバックに哀愁感たっぷりに聴かせるゴスペル的な要素も入った「The Melting Of The Sun」に、ムーディーに聴かせる「The Laughing Man」など、前半は比較的ソウルやファンク的な要素の強い作品が並びます。

そうかと思えばガラッと変わるのがインターリュードを挟んで後半の「Somebody Like Me」。アコースティックギターのサウンドで爽やかなフォークチューン。さらに「...At The Holiday Party」もフォーキーなサウンドでメロディアスに聴かせるポップチューンになっています。前半の雰囲気との変化に驚かされますが、このようなバラエティー富んだ楽曲を1枚のアルバムに容易におさめることが出来るのも、彼女のミュージシャンとしての包容力があるからでしょう。

そんなバラエティー富んだ作風ながら今回のアルバム、どこか懐かしさを感じさせるのが、この作品が70年代のバラエティーに富んだニューヨークの音楽の影響を受けているから。「Daddy's Home」というタイトルの通り、彼女が子供の頃に父親と聴いていた想い出の音楽に影響を受けた、といった感じなのでしょうか。日本人にとって懐かしさを感じる昭和30年代的なサウンド・・・といった感じとは少々異なるのですが、それでも私たちにとってもどこか懐かしさを感じさせます。

とはいえ、決して昔ながらのサウンドそのままといった感じではなく、例えば1曲目の「Pay Your Way In Pain」は強いビートのエレクトロチューンとなっており、ここらへんは今風のサウンドといった感じ。全体的にもしっかり今風の音にアップデートしており、決して単純な懐古趣味といった感じに陥っていません。

今回も幅広い彼女の音楽性を感じさせる傑作アルバムに仕上がっていました。彼女のミュージシャンとしての懐の深さにはあらためて驚かされます。これから彼女からどんな音楽が飛び出してくるのか・・・まだまだとても楽しみです!

評価:★★★★★

St.Vincent 過去の作品
St.Vincent
MASSEDUCTION
MassEducation


ほかに聴いたアルバム

At The BBC/Amy Winehouse

2011年に27歳という若さで早世した、既に「伝説」と呼ぶべき立場になってしまった女性シンガーAmy Winehouse。本作は彼女がイギリスBBCに残した音源をまとめたアルバム。もともと2012年にリリースされたアルバムなのですが、そこに未発表音源を加えて全3枚組として再リリースした作品となります。ちょっとくすんだ感じの味わい深い声色で、感情たっぷりに力強く歌い上げる彼女のボーカルは、やはり今聴いてもかなり魅力的。あらためてわずか27歳でこの世を去ってしまったという事実が非常に残念で仕方ありません。今回追加されたDisc2、3の28曲についてもいずれも魅力的な音源ばかりで、2012年のアルバムを聴いていたとしても、あらためて聴きなおしたい作品。あらためて彼女のすごさを感じる作品でした。

評価:★★★★★

Amy Winehouse 過去の作品
Back To Black
LIONESS:HIDDEN TREASURES
Amy Winehouse at the BBC

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2021年6月10日 (木)

こちらは日本のアイドルが1位

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

Hot100は韓国のアイドルグループBTSが席巻しましたが、アルバムチャートは日本のアイドルが1位獲得です。

まず今週1位を獲得したのがKinki Kidsの堂本光一によるソロアルバム「PLAYFUL」。CD販売数及びPCによるCD読取数1位。スクエア・エニックスとのコラボにより、CGの堂本光一と実写の彼が共演するジャケット・映像が使われているそうです。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上10万6千枚で1位初登場。前作「KOICHI DOMOTO 『Endless SHOCK』Original Sound Track 2」の初動7万6千枚(1位)からアップ。この前作は、彼が座長をつとめるミュージカルのサントラ盤でしたので、純粋なオリジナルアルバムとしては前作「Spiral」の7万枚(2位)からもアップしています。

2位はCYaRon!「ある日・・・永遠みたいに!」がランクイン。アニメキャラによるアイドルプロジェクト「ラブライブ!サンシャイン!!」によるアイドルグループAqoursのメンバーによる別プロジェクトのデビューアルバム。CD販売数2位、ダウンロード数10位、PCによるCD読取数11位。オリコンでは初動売上1万2千枚で2位初登場。

3位には徳永英明「LOVE PERSON」が初登場。CD販売数3位、ダウンロード数21位、PCによるCD読取数39位。デビュー35周年を迎えた彼による4年ぶりのニューアルバム。オリコンでは初動売上1万1千枚で3位初登場。直近作はセルフカバーアルバム「太陽がいっぱい Plein Soleil ~セルフカヴァー・ベストII~」で、同作の初動8千枚(9位)からはアップ。オリジナルアルバムとしては前作「BATON」の初動1万4千枚(8位)からはダウンしています。

続いて4位以下の初登場盤ですが、まず7位に手嶌葵「Simple is best」がランクイン。CD販売数5位、ダウンロード数20位、PCによるCD読取数82位。映画「ゲド戦記」の主題歌「テル―の唄」でデビューした彼女のベストアルバム。オリコンでも初動売上4千枚で5位初登場。なにげにアルバムでは初となるベスト10ヒット。ベスト盤としても3枚目なのですが、なぜ本作がこれほど売れたのでしょうか?直近作は同じくベスト盤の「Aoi Works II~best collection 2015-2019~」はベスト50圏外でしたので、それからも大きくランクアップしています。

8位には和楽器バンド「Starlight E.P.」が初登場。6月9日リリース予定のEP盤からの先行配信で、ダウンロード数2位にランクインし、総合順位でもベスト10入りとなりました。フジテレビ系ドラマ「イチケイのカラス」主題歌「Starlight」をはじめとした4曲入りの、事実上のシングル的な作品になっています。

今週の初登場は以上。今週はさらにベスト10返り咲きが1枚。それが先週の19位から10位にランクアップした、米津玄師「STRAY SHEEP」。4週ぶりのベスト10返り咲き。これで通算28週目のベスト10ヒットとなりました。「Pale Blue」がリリースされた影響でしょうか。またYOASOBI「THE BOOK」も先週の11位から6位にランクアップし2週ぶりのベスト10入り。これで通算21週目のベスト10ヒットとなりました。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2021年6月 9日 (水)

2週連続BTSが1位

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週はK-POPが1位獲得です。

今週1位は韓国の男性アイドルグループBTSの配信限定シングル「Butter」が先週から引き続き2週連続で1位を獲得。ストリーミング数、ラジオオンエア回数、You Tube再生回数は先週から変わらず1位をキープしています。BTSは「Dynamite」が先週の7位からワンランクダウンの8位。これで42週連続のベスト10ヒットとなっています。

2位には米津玄師「Pale Blue」が初登場でランクイン。ダウンロード数1位、ストリーミング数7位、ラジオオンエア数2位、Twitterつぶやき数3位、You Tube再生回数6位。TBS系ドラマ「リコカツ」主題歌。6月16日リリース予定のCDからの先行配信となります。かなり分厚いストリングスで聴かせるバラードナンバー。いい意味での大物の貫禄も感じさせるような楽曲に仕上がっています。

3位初登場はジャニーズ系アイドルグループV6「僕らは まだ」。テレビ朝日系ドラマ「特捜9 season4」主題歌。11月に解散を発表した彼らですが、本作は解散発表後、初のシングル。歌詞もどこか解散をイメージしたような、グループを総括するような内容になっています。CD販売数及びTwitterつぶやき数1位、ラジオオンエア数29位、PCによるCD読取数2位。オリコン週間シングルランキングでは同作が初動売上12万6千枚で1位初登場。前作「It's my life」の初動売上10万6千枚(1位)からアップ。

続いては4位以下ですが、今週、4位以下で初登場はゼロ。またロングヒット曲が目立つチャートとなっています。まず優里「ドライフラワー」は今週も5位をキープ。ストリーミング数は3位をキープ。ダウンロード数は12位から10位と再びアップしている一方、You Tube再生回数は5位から7位にダウンしています。またカラオケ歌唱回数も今週で18週連続の1位を記録しています。これでベスト10ヒットを29週連続と伸ばしました。

YOASOBI「怪物」が4位から6位にダウン。You Tube再生回数は4位をキープしているものの、ストリーミング数が2位から4位にダウン。これで20週連続のベスト10ヒットに。「夜に駆ける」も土俵際の粘りを見せ、今週も先週から変わらず10位をキープ。これで通算58週目のベスト10ヒットとなりました。ただ一方、「もう少しだけ」は今週残念ながら11位にダウン。残念ながらわずか3週でベスト10からは消える結果となっています。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2021年6月 8日 (火)

平井堅は「誰」になりたかったんだろう?

Title:あなたになりたかった
Musician:平井堅

デビュー25周年を迎えた平井堅の約5年ぶりとなるニューアルバム。正確にはデビューが1995年のため、25周年は2000年となるのですが、一応、デビューした2000年5月から今年の5月までが「デビュー25周年」という位置づけなのでしょうか?また彼はデビューからブレイクまでに比較的長い期間のあり、「楽園」でのブレイクまで5年が経過しているのですが、それでも「楽園」のヒットからもう20年になるのですか・・・月日が経つのは早いなぁ・・・。

さて、そんな久々となるニューアルバムは、いかにも平井堅らしさを感じる楽曲と、新たな彼の挑戦の感じさせる曲が並ぶ作品となっていました。特に彼の新たな挑戦としてエレクトロサウンドへの挑戦が顕著に感じ去られる本作。「怪物さん」では今をときめくあいみょんとのコラボの作品で、メロディーラインや歌詞は平井堅らしさを感じる作品ではあるものの、アレンジはリズミカルなエレクトロチューンに。「1995」では、なんと水曜日のカンパネラのケンモチヒデフミがアレンジャーとして参加。エキゾチックでユーモラスなエレクトロアレンジになっており、どこかコミカルにサンプリングされたボーカルが楽しいアレンジになっています。「ポリエステルの女」もボーカルにエフェクトが加えて、新たな効果を生み出そうとしている挑戦的な作品。平井堅の新たな可能性を感じさせるポップチューンが並びます。

一方で、そのほかの楽曲に関しては、いかにも平井堅らしい楽曲が並んでいます。「ノンフィクション」も切ないアコースティックアレンジのラブソングが彼らしさを感じますし、「#302」は切ない片思いの曲で、名曲「even if...」を彷彿とさせる楽曲になっています。「いてもたっても」も、エレクトロアレンジは目新しい感もあるのですが、こちらも切ない片思いの歌詞が平井堅らしさを強く感じさせる楽曲。ピアノをバックにしんみり歌い上げる「half of me」も「瞳をとじて」あたりを彷彿とさせる平井堅の王道路線とも言うべきバラードナンバーに仕上がっています。

そんな感じで、平井堅らしさを感じさせる王道路線の曲と、新たな彼の可能性を感じさせる挑戦的な曲がほどよいバランスで並んでおり、いい意味でバランスの取れた作品に仕上がっていました。ただ若干気になるのは、その王道路線の曲があまりにベタで二番煎じ的なものを感じさせる点。「#302」なんて完全に「even if...」の二番煎じ的な部分は否定できませんし、そのほかの曲も「どこかで聴いたような…」という印象も感じさせました。

また今回のアルバムでちょっと気になってしまったのはAmazonのレビューコメントなどを見る限り、彼の新たな方向性に否定的なスタンスのレビューコメントも目立ってしまうあたり、彼のファンの保守性が目立ってしまっていることが気になりました。トップレビューなんかで「『楽園』の頃に戻ってほしい」なんてコメントをした人がいるんですが、今回の平井堅らしさを感じる楽曲を聴く限りでは、彼にR&B志向はあまり強くないのは明白であり、この20年間、何を聴いてきたんだろう・・・と感じてしまいます。

そんなことを考えつつ気になるのが今回の「あなたになりたかった」というアルバムタイトル。平井堅はじゃあ、誰になりたかったんでしょうか?平井堅といえば「瞳をとじて」に代表されるような、ある意味J-POPの王道的なポップソングを歌いシンガー、といったイメージがあります。また、Amazonのレビューコメントに代表するようにファンも、そんな保守的な像を望んでいる部分も否定できません。それに対して、今回のアルバムで挑戦的な作品を歌うことにより、そのイメージを崩す、ミュージシャンとしての幅広さをアピールしたかったのでしょうか。例えばKANだったり、あるいは奥田民生だったり、王道の路線を貫きつつも、実験的な作風もファンに許容されるシンガーソングライターも少なくありませんが、ひょっとして今回のアルバムでは平井堅は、そういう幅広い作風も許容されるような懐の深いシンガーソングライターになりたい・・・そういう思いがあったのだろか、そう感じてしまいました。

今回の挑戦が次回作以降、どのように反映されるか、楽しみでもあり、またファンがそれにどのように反応するのか不安な部分もあります。また今回のアルバムでも、王道路線の曲が若干ベタすぎるという意味で、決して彼もシンガーとして勢いがある訳でもなく、次回以降の展開が気にかかる部分もあります。そういう意味でこれからの活躍がいろいろな側面で要注目です。

評価:★★★★★

平井堅 過去の作品
FAKIN' POP
Ken's Bar II
Ken Hirai 15th Anniversary c/w Collection '95-'10 ”裏 歌バカ”
JAPANESE SINGER
Ken's Bar III
THE STILL LIFE
Ken Hirai 20th Anniversary Special!! Live Tour 2016
Ken Hirai Singles Best Collection 歌バカ2


ほかに聴いたアルバム

I SING/Crystal Kay

2019年にはミュージカルへの挑戦はあったものの、ミュージシャンとしての新譜はなく、若干、どうしたんだろうといった感もあったCrystal Kayですが、久々となる新作は彼女初となるカバーアルバム。それもちょっと意外なことに、取り上げた楽曲はベタベタなJ-POPのヒットソングが並びます。彼女の歌唱力からすると、もうちょっと本格的なR&Bナンバーのカバーも聴きたい気もするのですが・・・。

またカバーにしても、基本的にはR&Bという自身の枠組みに当てはめたようなカバーが多く、結果としてそれがピッタリとマッチしたカバーと違和感のあるカバーにわかれたように思います。今一つとしては、1曲目のスピッツ「楓」。シンプルなポップソングが無理やり感情たっぷりに装飾されたようなカバーとなっていて、聴いていてガクッと来てしまいました。ただ一方、非常に良かったのがOfficial髭男dismの「I LOVE...」で、この曲がもともと持っているソウル的な要素を上手く引き出しており、見事なカバーに仕上げています。もともとR&Bやソウル的な要素のある曲は上手くカバーしていたのに対して、そのような要素が薄い曲に関しては違和感の残るカバーだったように感じます。そういう意味では曲によってスタイルを変えるという器用なシンガーではないのかもしれませんが(もっとも、ワザとR&B風に仕上げた可能性も高いですが)歌唱力は文句ないだけに、やはり本格的なR&Bのスタンダードナンバーのカバーが聴きたいかも。

評価:★★★★

Crystal Kay 過去の作品
Shining
Color Change!
BEST of CRYSTAL KAY
THE BEST REMIXES of CK
FLASH
Spin The Music
VIVID
Shine
For You

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2021年6月 7日 (月)

空気公団はつづいていく

Title:僕と君の希求
Musician:空気公団

空気公団としては約3年ぶり。ちょっと久しぶりとなるニューアルバム。彼女たちも、既に結成14年目。中堅バンドとしてのキャリアを擁するバンドとなってきたのですが、2018年にオリジナルメンバーの戸川由幸が脱退を表明。これを機に、山崎ゆかりのソロユニットに移行しました。2019年には山崎ゆかりソロ名義でのアルバムもリリースしていますので、そのまま解散という手もあったのかもしれませんが、空気公団という名前を残したかったのでしょうか。また、自身の名前を前に出しての活動に違和感を覚えたのかもしれません。

もっともいままでの空気公団も基本的に山崎ゆかりのワンマンバンド的な様相も強く、彼女がボーカル、作詞、作曲を担当してきただけに空気公団としての楽曲の雰囲気にほとんど変化はありません。いつもながらのアコースティックなサウンドがメインとなる暖かみのあるサウンドと、ちょっと切なさを感じさせるメロディーライン。フォーキーな要素も加味した良質なシティポップという路線はそのままとなっています。

しかし、今回のアルバムに関してはバンドとしての枠組みがなくなったためでしょうか。今まで以上に自由度の高いサウンドを楽しめるアルバムに仕上がっていました。「許す」ではホーンセッションやジャジーなピアノ、さらに泣きのギターが入ったムーディーな曲調に仕上げていますし、「かぜのね」に入っている爽やかなサウンドはマリンバの音でしょうか。バンドサウンドから自由になったのですが、「大切なひとつ」では逆にノイジーなギターサウンドを前面に押し出したロック色の強い楽曲に仕上げています。

ただ、そういった自由度の高い作風を基調としつつ、全体的にはソロプロジェクトだからでしょうか、アコースティックでシンプルなサウンドも目立った作品になっていました。アコギで聴かせるフォーキーな「ささやかなとき」からアルバムはスタートしますし、続く「記憶の束」「うたがきこえる」もピアノで暖かく聴かせる作品になってます。

後半は「地点」「僕と君の希求」「そしてつづいていく」と基本的にはピアノ弾き語りでしんみりと聴かせる楽曲が続きます。ソロになったからこそ、バンドから自由になった音作りを志向した作品と、ソロらしいシンプルでアコースティックな音作りを志向した作品がほどよいバランスで配置されている、ソロプロジェクトならではのアルバムになっていたと思います。

そしてラストを締めくくる楽曲も印象的。「そしてつづいていく」。非常に前向きで、明日を向いている歌詞が印象的なのですが、まさに今の山崎ゆかりの心境をあらわしている曲と言えるかもしれません。オリジナルメンバーの脱退という出来事がありつつも、空気公団としてしっかり前をむいて進んでいく。決意表明という言葉は、空気公団のようなミュージシャンにはあまり似合わないようにも感じますが、今の空気公団を表現した曲なのかもしれません。

ソロプロジェクトとなったもののファンにとっては何も心配なく、これからも良質な音楽を生み出していく、そんな空気公団のこれからを感じさせるアルバムになっていました。またソロだからこそ空気公団としての新たな可能性も感じさせます。まだまだこれからも空気公団はつづいていきそうです。

評価:★★★★★

空気公団 過去の作品
空気公団作品集
メロディ
ぼくらの空気公団
春愁秋思
LIVE春愁秋思
夜はそのまなざしの先に流れる
くうきにみつる(くうきにみつる)
音街巡旅I
こんにちは、はじまり。
ダブル
僕の心に街ができて


ほかに聴いたアルバム

キャビネット/山本精一

コロナ禍でも精力的に活動を続ける山本精一のニューアルバムは、全編インストとなる作品。かなり挑戦的といった印象を受ける作品で、ギターサウンドを軸としつつ、そこにエレクトロのサウンドを入れてきたり、メタリックなビートを入れてきたり、静かなギターで空間を聴かせたりと、全9曲なのですが、それぞれアイディアを駆使した作品が並びます。ただ、あくまでも"POP"を念頭に置いたアルバムということで、確かに後半、メランコリックなメロディーラインが耳なじみやすい曲も収録。実験的な試みとポップな試みを両立させたアルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★★

山本精一 過去の作品
PLAYGROUND
PLAYGROUND acoustic+
ラプソディア
Falsetto
童謡
palm

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2021年6月 6日 (日)

グルーヴィーなサウンドがたまりません

Title:Seek Shelter
Musician:Iceage

最近、特に欧米のミュージックシーンでは次々と新しくておもしろいロックバンドが登場してきています。Idlesが全英チャート1位を獲得するなどブレイクしたり、Black Midiが注目を集めたりと、最近はロック復権とも言えるほど活況を呈してきています。そんな中、注目したいロックバンドの傑作がまたひとつ登場しました!今回紹介するのはIceageというデンマークのポストロックバンド。今回、彼らの音源ははじめて聴くのですが、非常に素晴らしいロックアルバムで、また一組、注目のロックバンド誕生の予感がします・・・・・・

・・・・・・

と最初聴いたときに思っていたのですが、すいません、これは完全に私の知識不足でした。このバンドは結成2008年の、結成13年目になるベテランといっていい域のロックバンド。デビュー作は2011年の「New Brigade」で、この作品で既に高い評価を集め、その後もアルバムをリリースする毎に高い評価を受けているバンド。「最近出てきた」のでは全くなく、既に一定以上の評価を集めているロックバンドだったようです。

本作はそんな彼らの約4年ぶりとなるニューアルバム。そんな訳で彼らのアルバムははじめて聴いたのですが、これが冒頭で絶賛している通り、一気にはまってしまいました。まず個人的に壺につきまくったのが前半。もう完全に90年代のブリットポップ、あるいはマンチェスター・ムーブメントの影響を強く感じるグルーヴィーなギターロック。1曲目のタイトルチューン「Shelter Song」なんかもミディアムチューンながらダウナーな歌いっぷりとうねるようなサウンドなんてまさに、といった感じですし、2曲目「High&Hurt」なんかもリズミカルでグルーヴィーなサウンドが心地よい、もろブリットポップやマンチェスター・ムーブメントのサウンドといった感じで心地よさを感じますし、「Vendetta」もグルーヴィーでサイケなサウンドが非常に心地よい作品に仕上がっています。

そんな訳で、ちょっと懐かしさも感じられる前半の作品に一気にはまってしまったのですが、さらにユニークだったのは後半戦。ここからグッと雰囲気がかわってきます。「Drink Rain」は気だるい雰囲気の中でムーディーに聴かせるポップチューンになっていますし、どこかボブディラン的に語るようなボーカルでフォーキーな雰囲気が漂う「Gold City」、さらに疾走感あるギターロックにポップなメロがT-Rexあたりの雰囲気を感じる「Dear Saint Cecilia」とバラエティーある楽曲が続いていきます。ここらへんの、様々な音楽的要素を入り混じったバラエティー富んだ作風は実にユニークに感じました。

ただ、その後半の作品も含めて、気だるさを感じるボーカルやメロディーラインにグルーヴィーなリズムは共通。バラエティー富んだ作風ながらもアルバム全体としての統一感もしっかりと感じられました。デビュー作以降、アルバムをリリースする毎に高い評価を得ているバンドみたいなのですが、確かにその理由も納得。ストーンローゼズあたりが好きなら気に入りそうですし、個人的にもかなりはまってしまいました。今年のベスト盤候補と言える1枚。今回はじめて知ったバンドだったのですが、一気に気になるバンドとなりました。前作以前もチェックしてみようかなぁ。

評価:★★★★★

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2021年6月 5日 (土)

ソングライターが2人になっても

Title:ENDLESS ARCADE
Musician:TEENAGE FANCLUB

90年代からシンプルかつ暖かみのあるメロディーラインでリスナーを魅了し、日本でも多くのファンを獲得。また多くのミュージシャンにも影響を与えているスコットランド・グラスゴー出身のギターポップバンド、TEENAGE FANCLUB。特にフロントマンであるノーマン・ブレイク、レイモンド・マッギンリー、ジェラード・ラヴの3人はいずれもソングライターとして才を持ち、それぞれが楽曲を提供。この3人ものソングライターを擁するというバンドとしての布陣もまた、彼らの魅力の大きな下支えとなっていました。

しかし、非常に残念なことに2018年、そのメインのソングライターの1人、ジェラード・ラヴが脱退を表明。メインライターのうちの1人を欠けてしまうという、バンドとしては危機とも言える状況になってしまいました。脱退の理由が「ツアー計画に関する意見の相違」だったそうで、30年近く一緒に活動を続けて、いまさら何を・・・とも思うのですが、年齢を重ねて身の回りの状況が変わるにつれ、いろいろな事情があるのでしょう。とても残念です。

とはいうものの、まだメインのライターが2人も残っているというのが、彼らの強みであることは間違いありません。今回、約4年ぶりとなるニューアルバムなのですが、キュートなポップスというTEENAGE FANCLUBの大きな魅力は、ジェラード脱退後初となるこのアルバムでも全く衰えていません。今回のアルバムでも、素直に楽しめるポップチューンが並ぶ傑作アルバムに仕上がっていました。

今回のアルバムはメインライターが2人になったということもあり、ノーマン、レイモンドの2人が全12曲入りのアルバムについて、それぞれ6曲ずつ楽曲を提供する形になっています。また、今回、ライターが2人になったことにより、ノーマンとレイモンドの2人の楽曲の相違がより明確になる構成に仕上がっていました。

レイモンドの楽曲はちょっとひねったようなメロディーラインでダウナーな雰囲気を感じさせる楽曲が特徴的。タイトルチューンである「Endless Arcade」もアップテンポで軽快な曲ながらも、どこか影を感じさせますし、「In Our Dreams」も微妙にひねくれたメロディーラインが魅力的。ラストを締めくくる「Silent Song」もメロウに聴かせるメランコリックなメロディーラインが大きな魅力に感じます。

一方で、ノーマンの楽曲は暖かく切なさを感じるメロディーラインに聴いていて思わずキュンとなってしまう作品が並びます。冒頭を飾る「Home」もまさにそんな暖かさを感じるポップソングの中に、絶妙な切ないフレーズが登場してくる点が大きな魅力ですし、テンポよいポップチューン「Warm Embrace」も祝祭色のある明るい曲調が大きな魅力。後半では「I'm More Inclined」も切ないメロで暖かいメロディーラインを聴かせてくれるのが大きな魅力となっていますし、続く「Back In The Day」もちょっと切ないメロが大きな魅力のミディアムチューンとなっています。

個人的にはノーマンの聴いていてキュンとなるメロディーラインが大きな魅力に感じるのですが、一方でそんなノーマンの曲とほどよくバランスさせて聴かせてくれるレイモンドの楽曲がアルバムにほどよいバラエティーを与えています。メインライターが2人になってもTEENAGE FANCLUBの魅力は間違いなく健在。今回のアルバムではそんな彼らの変わらぬ魅力を強く感じさせてくれました。

相変わらず魅力的なエバーグリーンの楽曲の数々がリスナーを終始魅了する傑作アルバム。聴いていて素直に楽しめる、全ポップス好きに聴いてほしいアルバムだと思います。今後は、メインライター2人を中心として、まだまだ活動を続けていくのでしょう。まだまだ数多くのグッドミュージックを私たちに届けてくれそうです。

評価:★★★★★

TEENAGE FANCLUB 過去の作品
Shadows
Here


ほかに聴いたアルバム

There is No End/Tony Allen

アフロビートの創始者、フェラ・クテイのバンドでドラムをつとめて、彼の右腕としても活躍したドラマー、Tony Allen。昨年4月、79歳でこの世を去りましたが、本作はそんな彼が最期に録音した遺作。御年79歳にしてリリースした作品なのですが、ただ、この年齢を感じさせない若々しさを感じさせるアルバムで、イギリスのグライムシーンを牽引するラッパーのスケプタや同じくアメリカで活躍するラッパー、ダニー・ブラウンなどをフューチャー。トライバルでファンキーなリズムを聴かせつつ、サウンド的にはむしろ「今風」と感じさせるような作品で、Tony Allenの音楽的な若々しさを感じてしまいます。正直、これが80歳手前のミュージシャンの作品とは信じられないほど。それだけにこれが最期というのは本当に残念。改めてご冥福をお祈りしたいと思います。

評価:★★★★★

Tony Allen 過去の作品
Rejoice(Tony Allen & Hugh Masekela)

Live At Knebworth 1990/PINK FLOYD

ピンクフロイドが1990年に行った、イギリスはネプワースコンサートでのライブの模様を収めたライブアルバム。全7曲入りのアルバムで、スケール感あるサウンドをメランコリックに聴かせるスタイルが印象的。とにかくライブ盤を通じて感じられる会場のスケール感がピンクフロイドのサウンドにもピッタリとマッチしており、圧巻でありつつ繊細さを感じさせるプレイはさすが彼らならではといった感じでしょうか。音も非常にクリアで、彼らのライブの魅力が味わえる作品でした。

評価:★★★★

PINK FLOYD 過去の作品
The Endless River(永遠(TOWA))

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2021年6月 4日 (金)

貴重な歴史的音源

Title:Sound Storing Machines(蓄音機)~日本最古の78回転レコード 1903-1912

今回紹介するアルバムは非常にユニークな1枚です。タイトル通り、1903年から1912年に録音された、日本最古の78回転レコードを収録した作品。ただし、リリースしたのは日本のメーカーではなく、シアトルの人気レーベル Sublime Frequencies。もともと「アジアのSP盤アンソロジー」と題して、韓国とミャンマーのSP音源をリリースしてきたそうですが、その第3弾として選ばれたのが日本。当サイトでも戦前のSP盤を収録したオムニバスは、SP盤専門レーベルの「ぐらもくらぶ」からリリースしてきた作品を含めて、多く紹介してきました。ただ、今回の音源はさらに時代をさかのぼった明治の音源。特に当時は日本に録音機材がなく、海外のレコード会社が録音技師から吹き込み機材一式まで日本に持ち込み、ホテルの一室などをスタジオ代わりにして録音した「出張録音」として録音していたそうです。明治期の大衆文化を音の側面から知れるという意味でも非常に貴重なオムニバス盤と言えるでしょう。

特に1曲目の「雅楽『陪臚(平調)』」は明治36年(1903年)2月にイギリスのグラモフォン社によって行われた日本最初の出張録音の作品の中のひとつ。本作には雅楽が収録されていますが、謡曲、狂言、義太夫、長唄など様々な芸能音楽を収録したそうです。雅楽に関しては全く知識がないのでよくわからないのですが、この演奏スタイルは今と変わらないのでしょうか?それとも、聴く人が聴けば、今のスタイルと微妙な違いがあるのでしょうか?

今回収録しているのは全15曲なのですが、このような雅楽が2曲、義太夫4曲、長唄1曲、俗曲2曲、法界節1曲、三曲1曲、落語1話、竹琴1曲、謡曲1曲とその当時の芸能音楽がほどよくバランスされて収録しています。うち義太夫の4曲というのが収録曲としては一番多いのですが、それだけ当時流行していたということのあらわれでしょうか。三曲というのも若干聴きなれないですが、琴、三味線、尺八の合奏のこと。法界節も明治20年代に大流行したジャンルのようで、その後衰退してしまったそうですが、明治時代の演説歌に引き継がれていったようです。

ただ、この中で耳慣れないジャンルながらも一番ユニークだったのが竹琴なるジャンル。もともと1886年に沼津の田中竹琴によって発明された楽器だそうで、一時期は皇太后・皇后の御前演奏という栄誉まで得たそうですが、日清戦争後に急速に衰退して、今や完全にすたれてしまった幻の楽器。しかし、その演奏する音色は、どこか東南アジアのガムランを彷彿とさせるようなエキゾチックで、和楽器の中では圧倒的な独自性を放っており、聴いていて非常に魅力的でした。これ、誰か復活させないかなぁ・・・?

またユニークかつ貴重な音源だったのが三代目柳家小さんによる落語「浮世風呂」。柳家小さんといっても、おそらく私たちがすぐ思い浮かぶ、人間国宝にまでなった名人は五代目ですので、その先々代。貴重な落語がおさめられているのですが、お話はほとんどなく、基本的に都都逸や義太夫を披露する「歌」の部分がメインになっています。ただ、その当時の名人の話がおさめられている非常に貴重な音源であることは間違いないでしょう。

さらにユニークだったのは吉原〆寿なる芸者が歌う俗曲「猫じゃ猫じゃ」。楽曲自体もユニークなのですが、おもしろかったのは曲間の曲紹介に彼女の笑い声が入っているところ。それもライナーツノートでは「うふふふ・・・」と可愛らしく書いてあるのですが、実態は、「ガハハハ・・・」に近いような豪快な笑い方になっています。ひょっとして、女性が「うふふふ・・・」なんて笑うのが可愛らしいと思うのは今の価値観で、明治期は女性も豪快に「ガハハハ」と自然体で笑っていたのでしょうか?

そんな訳で、明治期の日本の文化・風俗が音の側面から楽しめる非常に貴重な音源集。正直なところ、音はどれも悪く、素直に「音楽」を楽しむというよりは、貴重な音源を興味深く聴いて、その向こう側にある明治期の暮らしに思いをはせるというのが正しい聴き方だと思います。そういう意味では音楽的に万人にお勧めといった感じではないのですが、興味があれば是非。当時の貴重な演奏が楽しめた1枚でした。

評価:★★★★

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2021年6月 3日 (木)

「鬼滅の刃」人気はまだまだ続く

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

先週も「鬼滅の刃」で人気を確保したシンガーが1位を獲得しましたが・・・

今週1位を獲得したのは「TVアニメ『鬼滅の刃』竈門炭治郎 立志編 オリジナルサウンドトラック」。2019年4月から9月まで放送されあtテレビアニメ「鬼滅の刃」に使用された楽曲を集めたサントラ盤。なぜいまさら?といった感もあるのですが、漫画のヒット、映画の大ブレイクを機に、次の企画までのつなぎとして、映画の話題も落ち着いてきたこの時期にリリースしたのでしょうか。CD販売数及びダウンロード数1位、PCによるCD読取数4位。オリコン週間アルバムランキングでも初動売上2万4千枚で1位を獲得しています。

2位には先週も2位を獲得したNCT DREAM「Hot Sauce:NCT DREAM Vol.1」が2週連続で同順位をキープしています。

3位初登場はハロプロ系の女性アイドルグループ、つばきファクトリー「2nd STEP」。CD販売数及びダウンロード数3位、PCによるCD読取数27位。タイトル通り、2枚目となるオリジナルアルバム。オリコンでは初動売上1万5千枚で3位初登場。前作「first bloom」の1万6千枚(6位)より微減。

続いて4位以下の初登場盤です。まず4位にKen Yokoyama「4Wheels 9Lives」がランクイン。ご存じHi-STANDARDのギタリストとしても活躍しているミュージシャンによるオリジナルアルバム。CD販売数4位、PCによるCD読取数3位。オリコンでは初動売上1万5千枚で2位初登場。前作「Bored? Yeah, Me Too」はレーベル直販のみでのリリースだったため、集計対象となる前々作「Songs Of The Living Dead」の1万7千枚(4位)からはダウンしています。

5位にはヴィジュアル系バンドthe GazettE「MASS」がランクイン。CD販売数5位、PCによるCD読取数10位。前作「NINTH」から約2年10ヶ月ぶりとちょっと久々の新作となります。オリコンでは初動売上1万3千枚で4位初登場。前作「NINTH」の1万7千枚(3位)よりダウンしています。

6位初登場は男性アイドルグループ=conect「きっとあの日、僕は死んだ」。CD販売数6位、その他のチャートは圏外となっています。本作がデビューアルバムとなる8人組グループ。オリコンでは初動売上7千枚で6位初登場。

7位にはロックバンドGRAPEVINE「新しい果実」がランクイン。CD販売数7位、ダウンロード数10位、PCによるCD読取数31位。約2年ぶりとなるニューアルバム。既にデビューから24年が経過したベテランの域に達している彼らですが、目立った大ヒットはない反面、根強い人気を感じさせます。オリコンでは初動売上6千枚で8位初登場。前作「ALL THE RIGHT」(10位)から初動売上は横バイ。

8位にはポルカドットスティングレイ「赤裸々」が入ってきました。CD販売数8位、ダウンロード数6位、PCによるCD読取数35位。4曲入りのEP盤となります。オリコンでは初動売上6千枚で9位初登場。直近のオリジナルフルアルバム「何者」の1万1千枚(8位)からダウンしています。

そして9位には、まさかの復活にビックリしました、AJICO「接続」がランクイン。CD販売数10位、ダウンロード数8位、PCによるCD読取数41位。UAと浅井健一、TOKIE、椎野恭一という強力なメンバー4人が揃ったロックバンド。2000年のエゾロックで登場し、その後、シングル3枚、アルバム1枚をリリースするものの、わずか1年弱でその活動を停止させていました。それが今年に入り、楽曲のストリーミングが解禁になったかと思えば、バンドとして突然の復活!本作は4曲入りのミニアルバムとなりますが、これがバンド再開の挨拶代わりといった感じになるのでしょうか。オリコンでも初動売上4千枚で10位初登場。UAとしても、ソロアルバムは2016年の「JaPo」以降リリースしていませんが、同作はオリコンでベスト50圏外でしたし、浅井健一も直近のアルバム「Caramel Guerrilla」が初動2千枚(15位)でしたので、両者の売上から大幅にアップ。いかにAJICOの登場が待ち望まれていたかがわかります。ちなみにAJICOとしての前作「深緑」の初動12万3千枚(4位)からは大幅にダウン・・・しているのですが、本作はもう約20年前(!)の作品ですので、この差は仕方ないところでしょう・・・。

さらに今週はYOASOBI「THE BOOK」が11位にダウンと、ついにベスト10から陥落。ベスト10連続ヒットは20週でストップとなりました。とはいえ、ダウンロード数は2位、PCによるCD読取数は1位となっていますので、来週以降の再ランクインは十分にありえそうです。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2021年6月 2日 (水)

日韓アイドル勢が1位2位

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週はK-POPが1位獲得です。

今週1位は韓国の男性アイドルグループBTSの配信限定シングル「Butter」が先週の2位からランクアップし、2週目にして1位を獲得。ダウンロード数は先週の1位から2位にダウンしましたが、ストリーミング数、Twitterつぶやき数、You Tube再生回数は先週と変わらず1位。今週はラジオオンエア数も1位にアップし、総合順位で1位を獲得しています。また「Dynamite」も先週も8位から7位にアップ。これで41週連続のベスト10ヒットとなりました。

2位は日本のアイドルグループ。日向坂46「君しか勝たん」がランクイン。CD販売数及びPCによるCD読取数は本作が1位。ただダウンロード数は6位、Twitterつぶやき数は3位、ラジオオンエア数30位、You Tube再生回数は70位に留まり、総合順位は2位に留まりました。オリコン週間シングルランキングでは初動売上48万6千枚で1位初登場。前作「ソンナコトナイヨ」の55万8千枚(1位)からダウンしています。

3位にはback number「怪盗」が初登場でランクイン。日テレ系ドラマ「恋はDeepに」主題歌。同作も配信限定シングルで、ダウンロード数は本作が1位獲得。ほかにストリーミング数4位、ラジオオンエア数6位、Twitterつぶやき数28位、You Tube再生回数7位を獲得し、総合順位は3位にランクインしてきました。

今週、初登場曲はこの2曲のみ。4位以下ですが、先週と同様のロングヒット曲が並びます。まずYOASOBIですが、今週「怪物」が7位から4位にランクアップ。ストリーミング数が3位から2位にランクアップするなど、根強い人気を見せています。これで19週連続のベスト10ヒットになりました。また「夜に駆ける」も先週から変わらず10位をキープ。後がない状態は続いているものの、こちらも根強い人気を見せています。これで通算57週目のベスト10ヒットに。ただ一方「もう少しだけ」は4位から7位にダウンとこちらは早くも失速気味。今週も3曲同時ランクインとなりましたが、来週はどのような展開になるか気になるところです。

なにげにかなり根強い人気を誇る優里「ドライフラワー」は今週も5位をキープ。ストリーミング数は2位から3位にダウン。ダウンロード数も11位から12位にダウンするなど下落傾向となっているものの、You Tube再生回数は3週連続の5位をキープしているほか、カラオケ歌唱回数は今週で17週連続の1位。これで28週連続のベスト10ヒットを記録しています。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2021年6月 1日 (火)

HR/HMへの素直な敬愛を感じる

Title:Van Weezer
Musician:Weezer

「Weezerの次のアルバムは、HR/HMの色合いが強いアルバムになるぞ!その名も『Van Weezer』」・・・という話は、以前からよくよく聴いていました。もともと彼らが幼少期を過ごした80年代は、アメリカでは多くのHR/HMバンドが活躍した時代。デビュー当初の彼らのイメージは、そのHR/HMのイメージとは真逆だった彼らですが、もともと彼らも、KISSやブラック・サバス、さらには今回のアルバムの元ネタとも言えるVAN HALENの影響を強く受けていたそうです。

そんな訳で、次のアルバムが「Van Weezer」になるという話は2019年頃から流れており、レコーディングも開始されたようですが、昨年のコロナ禍の中で制作が中止。代わりにリリースされたのが前作「OK HUMAN」だったそうです。しかし、それから約1年。徐々にレコーディングが進められたようで、ついにタイトルそのまま「Van Weezer」がリリースされました。ジャケットもいかにもHR/HMといった感じのジャケットで、彼らのHR/HMへの敬愛ぶりが感じられます。

そんなHR/HMに強い影響を受けた今回のアルバム。1曲目「Hero」の冒頭から、バリバリのハードロックテイストのギターサウンドからスタートしますし、続く「All the Good Ones」も冒頭のギターの「キュイーン」と鳴る音からして、いかにもハードロック。3曲目の「The End of the Game」のエッジの効いたギターもいかにもVAN HALENっぽい感じですし、「Blue Dream」も疾走感あるサウンドにのるテンポよいギターサウンドもハードロックテイスト。終始、HR/HMからの影響を強く感じさせるバンドサウンド、特にギターサウンドが強く鳴り響くアルバムになっています。

ただ、そんなHR/HMのアルバムなのですが、どうしても伝わってくるのはWeezerらしいメロディーライン。結局、どんなにハードロックなギターが鳴り響いていようが、WeezerはWeezerなんだな、ということも強く感じました。1曲目「Hero」もイントロはハードロックですし、ギターはハードロックのそれなのですが、メロディーライン自体は紛うことなくWeezer。典型的なのが「Beginning of the End」で、かなり力強くハードなサウンドが鳴り響いているのですが、メランコリックなメロディーラインはいかにもWeezer節。Weezerとしての個性をしっかりと感じられました。

ある意味「怖い」雰囲気のあるハードロックのイメージと、逆に「ナード」なWeezerのメロディーラインというアンバランスさが絶妙にマッチした楽曲になっており、ユニークながらもWeezerだからこそ出来る作品になっていたように感じます。昔、憧れがあったもののちょっと怖くてできなかったハードロックのサウンドを、おそるおそる、でも素直な敬愛たっぷりに取り組んでいる・・・そんな彼らの素直な気持ちを感じさせる作品になっていました。小難しいこと抜きにして、純粋にHR/HMが好き、この音を鳴らしたかった、ということが強く伝わってくる作品だったと思います。

HR/HM好きには賛否がわかれるかもしれませんが、ただ純粋に音楽を楽しんでいるポップなアルバムという点は間違いないでしょう。そういう意味でも素直にその楽しいサウンドとメロを味わうべき作品のように感じました。もっとも、ここ最近、ちょっと「異色作」ともいえるアルバムが続いている彼ら。次あたりは再び、彼ららしい王道のパワーポップなアルバムを聴きたいところなのですが・・・。

評価:★★★★★

WEEZER 過去の作品
WEEZER(Red Album)
RADITUDE
HURLEY
DEATH TO FALSE METAL
Everything Will Be Alright in the End
WEEZER(White Album)
Pacific Daydream
Weezer(Teal Album)
Weezer(Black Album)
OK HUMAN


ほかに聴いたアルバム

日本のシングル集/Bob Dylan

昨年4月に予定していた来日公演に合わせてリリースされたコンピレーションアルバム。日本におけるシングルを集めたBob Dylanのシングルコレクション。ご存じの通り、かつては日本と本国アメリカではシングルとしてリリースされる曲も異なり、日本では、特に日本人受けしそうな作品をシングルカットしていたのですが、それだけにボブディランの日本における受容史を知ることの出来るコンピ盤になっています。もちろん、本国でもシングル化され、収録曲は既にアルバムなどに収録済のものばかりなので、ファンにとっては目新しさはないかもしれませんが、全体的に日本人向けということもあってか、メロディアスで聴きやすい、ポップな側面が強い作品ばかり。コロナ禍で来日公演は残念ながら中止されてしまいましたが、作品自体は興味深く、ボブディランの入門的にも楽しめる作品でした。

評価:★★★★★

BOB DYLAN 過去の作品
Together Through Life
Tempest
Triplicate
Rough And Rowdy Ways

The Battle At Garden's Gate/Greta Van Fleet

「現代版レッド・ツェッペリン」とも称され、セカンドEP「From the Fires」がアカデミー賞を受賞するなど大きな話題となったロックバンドの、フルアルバムとしては2作目となる作品。確かに、レッド・ツェッペリンの名前が出てくるのも納得できるような、70年代的な雰囲気も感じさせる懐かしいハードロックサウンドを聴かせてくれます。メロディーラインも哀愁感たっぷりで、その点も含めて、懐かしさを感じさせるバンド。昔ながらのロックバンド然としたバンドで、なんだかんだ言って、みなさんこういう音が好きなんですね・・・。

評価:★★★★

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