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2021年5月11日 (火)

4作まとめて立派なライブアルバム

コロナ禍で「ステイホーム」が強制され、ライブ開催もままならない中、ご存じの通り、最近は様々なミュージシャンが過去のライブ音源をYou Tubeなどの動画サイトにアップし、話題を呼んでいます。その中で、3月下旬からU2が、彼らのキャリアの中でもっとも「伝説的」といえる4つのパフォーマンス映像を「The Virtual Road」としてYou Tube上にアップして話題となりました。さらに、そのライブ映像の中から数曲をピックアップして4組のEPが配信限定でリリースされています。今回紹介するのは、その4組のEP。

Title:The Virtual Road – U2 Go Home: Live From Slane Castle Ireland EP
Musician:U2

まず第1弾が2001年9月1日にアイルランドはダブリンのスレイン城で行われたライブ。ダブリンといえばご存じU2の故郷であり、タイトル通り、彼らが故郷に錦を飾った凱旋ライブとも言えるのがこのライブです。このライブからピックアップされた4曲入り20分弱の内容。その当時、最新アルバムだった「All That You Can't Leave Behind」の中から「Beautiful Day」「Stuck In A Moment You Can't Get Out Of」と1、2曲目が並びます。特に「Beautiful Day」はスケール感もあり、会場の雰囲気にもピッタリ。さらに「All I Want Is You」を挟み、ラストは名盤「The Joshua Tree」から「Where The Streets Have No Name」。このパフォーマンスには会場も大興奮だったようで、歓声もしっかりと収められています。

そんな訳で凱旋ライブにピッタリのスケール感のある4曲が収録されたアルバム。「All I Want Is You」の後半では観客に歌わせたりと、会場の盛り上がりが伝わってくるライブパフォーマンスになっています。おそらく大盛り上がりだったであろう当日のライブ。その断片を垣間見れるEPでした。

評価:★★★★

Title:Live At Red Rocks: Under A Blood Red Sky EP
Musician:U2

そして本作が第2弾。「WAR(闘)」ツアーより、1983年6月5日のアメリカ・コロラド州のレッドロックス・アンフィシアターでライブからの抜粋。もう40年(!)近く昔のステージで、彼らにとっては、まだブレイクしたての新人時代のライブということになります。楽曲はもちろん、その「WAR(闘)」から、今ではロック界のスタンダードナンバーとなった「Sunday Bloody Sunday」に、同じく同アルバムから「New Year's Day」「"40"」、アルバム「Boy」から「I Will Follow」と、当たり前ですが、今となっては初期の作品が並びます。

ステージも、ベテラン然とした今のステージと比べると、サウンドにもエッジが効いていて、若干荒々しさもあるでしょうか。ただ、演奏にはスケール感も感じられ、まだ若手バンドながらも、大物バンド然とした雰囲気も感じさせるステージになっています。そのため、他のライブEPと並べても、違和感のない演奏を楽しめる作品に。ブレイク直後から、やはり彼らは他とは違う、いい意味での大物だったということを感じさせるライブ盤でした。

評価:★★★★

Title:The Virtual Road – PopMart Live From Mexico City EP
Musician:U2

そして第3弾は「POP」ツアーから、1997年12月3日に、メキシコのフォロ・ソル・スタジアムで行われたライブの模様を収録したEP。その当時の最新アルバム「POP」から「Gone」「Staring At The Sun」「If You Wear That Velvet Dress」の3曲と、アルバム「Achtung Baby」から「Even Better Than the Real Thing」の4曲が収録されています。正直、「POP」はU2のアルバムの中でも若干微妙な立ち位置の作品ではあるのですが、ただ、やはりメキシコというお国柄があるのでしょうか、ライブの盛り上がりはこの4組のEPの中でもピカ一。特に、「Even Better Than the Real Thing」はイントロから大盛況で、最高に盛り上がるステージパフォーマンスを聴かせてくれています。

評価:★★★★

Title:The Virtual Road – iNNOCENCE + eXPERIENCE Live In Paris EP
Musician:U2

そして第4弾がこちらになりますが、こちらは比較的最近。2015年12月7日に行われた、アルバム「Songs of Innocence」のワールド・ツアーの最終日、パリでの公演の模様を収録した作品。このライブ、もともとは11月に開催される予定だったものの、パリ同時多発テロの影響で振替られた公演となります。

すっかりベテランの大御所バンドとなった彼らですが、1曲目「Vertigo」はいきなりヘヴィーなギターリフからスタート。ロックバンドらしい力強い演奏を聴かせてくれていますし、「Unter The End Of The World」でも、スケール感はあるもののロックバンド然とした力強い演奏を披露。今回の4作の中ではもっとも最近のライブなのですが、もっともロックバンドらしいパフォーマンスを聴かせてくれますし、ともすればもっとも若々しいのでは?とすら感じさせるライブを聴かせてくれます。

評価:★★★★

そんな訳で4作のEP。1作あたりの長さはいずれも4曲20分弱程度とちょっと物足りなさを感じるのですが、4作揃うと、全16曲80分弱の立派なライブアルバムになります。1作あたりの評価は★★★★ですが、4作まとめると★★★★★の出来栄え。特にブレイク間際から、最近のライブパフォーマンスまで網羅していて、彼らの歩みを感じられるのも特徴的。若手の頃から、ベテランらしい安定感やスケール感を覚える一方、むしろ最近の作品の方がロックバンドとしての勢いや若々しさすら感じてしまう点、U2のすごさも感じます。音源的には、既にDVDとしてリリースされている作品ばかりで貴重価値はあまりありませんが、配信で簡単に聴けるだけに、まずは気軽にU2のライブの魅力に触れることが出来る配信盤でした。

U2 過去の作品
No Line on the Horizon
Songs of Innocence
Songs Of Experience

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