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2021年5月23日 (日)

くるり、すごいが・・・

Title:天才の愛
Musician:くるり

2021年3月をもって、くるりのメンバーだったファンファンが卒業を発表。率直に言うと「またか・・・」という感は否めません。ご存じの通り、くるりといえば、目まぐるしくメンバーが入れ替わることでも知られているバンド。ギターボーカルで大半の曲の作詞作曲を実施している岸田繁と、ベースの佐藤征史の2人はオリジナルメンバーで結成当初から変わらないものの、その他のメンバーがなかなか長く定着しません。2011年にはいきなり5人組になったかと思えば、わずか半年で1人が脱退、なんてこともありました。とはいえ、何気にファンファンが加入したのは2011年なので、10年間、くるりのメンバーだったことになります。これはいままで最長だったオリジナルメンバーのもっくんこと森信行を抜いて、岸田・佐藤以外ではくるり最長在籍期間を記録したことになります。かなり意外な印象も・・・。

そんな訳で3人組バンドくるりとしてはラストとなるアルバム。昨年は未発表曲集「thaw」をリリースしていますが、純然たる新作としては2018年の「ソングライン」以来、約2年7ヶ月ぶりとなるニューアルバムとなります。アルバム毎にその色合いを変えてくる彼らですが、今回の新作に関しては、良く言えばバラエティー豊富、微妙な表現を使えば、つかみどころのなアルバムといった印象を受ける作品になっていました。

アルバムはまず序盤、「I Love You」「潮風のアリア」と爽快で伸びやかなナンバーからスタートするのですが、続く「野球」は野球の応援歌をモチーフとしつつ、過去のプロ野球の名選手を読み込んだ趣味性の高い作品(個人的にはドラゴンズの選手がほとんど登場しないのが激しく不満)になっています。

さらに「益荒男さん」は、戦前のポップスを今風に解釈したかのようなポップながらも実験性も感じさせる作品になっていますし、インストチューンの「大阪万博」はプログレ的かつフリーキーな、かなり挑戦心を感じる作品に。「waituti」はブルースロック風のギターがくるりにとっては異色作と感じさせる曲調になっていますし、「less than love」もジャジーなピアノやベースラインの入ったムーディーなインストナンバーに仕上がっています。

ある意味、終盤の「コトコトことでん」はくるりらしい曲。Homecomingsの畳野彩加をゲストボーカルに加えたナンバーで、くるりらしいシンプルながらもしっかりとインパクトを残すメロディーラインが印象的なポップチューンになっています。ちなみに「ことでん」とは、その愛称で親しまれる、香川県の高松琴平電気鉄道のこと。ことでん開業100周年のイベントで披露された曲らしく、鉄ちゃんの岸田繁の趣味性が、こちらも曲にダイレクトに反映された曲になっています。

そんな今まで以上にバラエティー豊富な、一方では、つかみどころがないとも言える今回のアルバム。ただ1曲1曲の出来は素晴らしく、非常に凝っている作品が並んでおり、かつくるりとしての挑戦心も感じさせます。前作「ソングライン」はポップな歌を聴かせる曲が多く、その前の「THE PIER」は岸田繁の宅録のような挑戦的な作品が多かったので、今回の作品は前々作の路線に戻った作風と言えるかもしれません。

それだけに今回のアルバムも年間ベストクラスの傑作には間違いないと思うのですが・・・ただその上で、「頭でっかち」という印象を正直受けてしまったアルバムにもなっていました。前々作「THE PIER」は、そんな中でも岸田繁のメロディーラインがキラリと光っていたのですが、今回のアルバムはメロディー主導の曲も若干減ってしまっているのも「頭でっかち」に感じさせるひとつの要因かもしれません。

また、アルバム全体としてファンファンのトランペットがどうにも目立たないというのもちょっと気になってしまいました。確かに彼女のトランペットは鳴り響いているのですが、数多くサウンドのひとつ、ワンノブゼンみたいな感じになってしまっており、聴き終わった後に「あれ?そういえばファンファンのトランペットは?」なんて思ってしまうアルバムに。ファンファンの脱退は、公式には子育てを巡る事情のように記載されていましたが、第三者の憶測にすぎませんが、今のくるりの中でのファンファンのトランペットの立ち位置も影響していたのかもしれません。

そんな訳で、今回も傑作アルバム!ではあるのですが、ちょっとひっかかりも生じてしまったアルバムに。パターン的には、次はポップな歌モノ主導の作品になるのでしょうか。次は、岸田佐藤の2人体制になるのか、それともまたいきなり4人組、5人組になるのか・・・いろいろな意味で、次の展開が注目です。

評価:★★★★★

くるり 過去の作品
Philharmonic or die
魂のゆくえ
僕の住んでいた街
言葉にならない、笑顔を見せてくれよ
ベスト オブ くるり TOWER OF MUSIC LOVER 2
奇跡 オリジナルサウンドトラック
坩堝の電圧
くるりの一回転
THE PIER
くるりとチオビタ
琥珀色の街、上海蟹の朝
くるりの20回転
ソングライン

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