フォーキーな雰囲気の中に感じる違和感
Title:VI
Musician:ミツメ
最近話題のインディーロックバンド、ミツメのタイトル通り6枚目となるニューアルバム。なんでもスカート、トリプルファイアーと並んで「東京インディー三銃士」と呼ばれているとかいないとか・・・。ミツメという名前自体は以前から知っていたのですが、いままでなんとなくアルバムを聴き逃していて、このアルバムがはじめて聴く1枚となります。
楽曲はフォーキーな雰囲気で郷愁感あるメロディーとサウンドが特徴的。イントロに続いて事実上の1曲目となる「フィクション」は、そんなフォーキーな雰囲気で聴かせるポップスになっていますし、続く「変身」も、メランコリックで郷愁感あるメロディーが特徴的。そのほかにも「VIDEO」や本編ラストになる「トニック・ラブ」のような郷愁感を感じさせつつメロディアスに聴かせる楽曲が並びます。
一方ではロックバンド然とした部分も垣間見れ、「睡魔」ではサイケなサウンドを聴かせてくれたりしますし、「システム」はオルタナ系のギターロックバンドを彷彿とさせるようなノイジーなギターが流れており、バンドサウンドの色合いも強い曲も聴かせてくれます。ただ、その点も含めて、いかにもインディー然とした雰囲気のフォーキーなサウンドに、最初聴いた時は実は京都方面のバンドかと勘違いしていました。
しかし、そう感じながら聴き進めていくと、フォーキーなサウンドの中に、意外とスタイリッシュでシティポップにも通じるようなサウンドもまぎれこんだりしているのがユニーク。例えば「変身」で聴かせてくれるギターのサウンドなどは、シティポップの色合いを強く感じますし、「VIDEO」などもそのサウンドからはどこかシティポップ的なにおいを感じます。実際、CD盤のボーナストラックにはSTUTSとのコラボ「Basic」が収録されており、R&B系との親和性も感じます。ここらへんのあか抜けた雰囲気は、いかにも東京のバンドといった印象も受けます。
また、さらによくよく聴いていくうちに、フォーキーと感じていたサウンドから違和感を覚えるようになりました。そのサウンドはどこかクラブサウンド的なものを感じました。ここらへんの違和感は本編を聴く限りでは単なる「違和感」だったのですが、CD盤でDisc2として付属されてくるインスト版を聴いて、その違和感の理由がわかりました。このインスト版であらためてミツメのサウンドの面をよく聴くことが出来たのですが、彼らのバンドサウンドはループするようなサウンドが多く取り入れられていることに気が付きました。このサウンドのループ感に一種今風のクラブサウンド的な要素を感じ、それが違和感につながっていたのではないでしょうか。この郷愁感あるフォーキーな雰囲気と、その逆にスタイリッシュで都会的なサウンドと違和感が、彼らの大きな魅力のひとつのように感じました。
個人的にはメロディーラインの面などであと一歩インパクトが欲しいかなぁ、という部分もあるのですが、その点を差し引いても、非常に魅力的なバンドであることは間違いなく、「東京インディー三銃士」という(ちょっと微妙なネーミングではあるのですが)異名も伊達ではない、という印象を受けました。決して大ブレイクするタイプのバンドではないのですが、今後、さらにその知名度をあげていきそう。これからの活躍も楽しみです。
評価:★★★★★
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