「歌」により焦点をあてて
Title:袖の汀
Musician:君島大空
ここでも取り上げた2nd EP「縫層」から約5ヶ月。早くも新たなEP盤がリリースされました。タイトルは・・・今回も若干、難読気味のタイトルで、これで「そでのみぎわ」と読むそうです。前作「縫層」(こちらは「ほうそう」と読みます)も素晴らしい傑作アルバムでしたが、それに続く本作も、前作に引き続き、彼の才能を存分に感じられる傑作に仕上がっていました。
ハイトーンボーカルにアコースティックベースのサウンドで聴かせるというスタイルは前作と同様。「音を紡ぐ」といったイメージもピッタリと来るような、ひとつひとつの音、言葉を丁寧に歌いこむようなスタイルが印象に残ります。ジャケット写真には、今にもつながりそうな手と手が印象的ですが、歌詞の世界も、どこか寂しさ、わびしさを感じさせる風景の中で、「僕」と「君」のつながりをもとめようとする歌詞の世界観が印象的。
「僕がきっと何度もここで
ここで君を見つける」
(「光暈(halo)」より 作詞 君島大空)
「忘れたくなる世界で君の目をみている」
(「向こう髪」より 作詞 君島大空)
「なんだか怖くて目をつむったふたりは
どこへも行けそうね、って小さく…
何度も頬をつねって、小さく笑うよ」
(「きさらぎ」より 作詞 君島大空)
など、世界の中で「君」と「僕」だけにスポットをあてて、その2人を結びつけるような描写の歌詞が印象に残ります。
一方、アコースティックなサウンドをベースに、それだけではないバリエーションを感じるのは本作も同様で、「星の降るひと」ではエレクトロサウンドを用いて、タイトルから想像できるような星空の世界観をサウンドでも表現していますし、「白い花」でもドリーミーなエレクトロサウンドを聴かせてくれます。
ただ、アコギをつむぎながら聴かせる「光暈(halo)」をはじめ、続く「向こう髪」、ラストの「銃口」と、アコースティックギター1本で静かに歌を聴かせる曲が目立ちました。前作は、比較的バリエーションのあるサウンドで、彼の音楽的な広がりを感じさせる内容になっていましたが、今回の作品は、よりアコースティックなサウンドにシフトし、彼の歌に、より焦点があてられたアルバムに仕上がっていました。
ハイトーンボイスと清涼感のある美しい歌声、というスタイルは前作から大きな変化はありません。ただ、そんな中でも微妙にそのスタイルを変えた前作と本作。君島大空というミュージシャンの魅力が、この2枚のアルバムで大きく広がったような印象を受けます。さあ、次は待望のオリジナルアルバムでしょうか。それとも次のEPで彼の新たな魅力を見せてくれるのでしょうか?これからの彼の活躍にも注目です。
評価:★★★★★
君島大空 過去の作品
縫層
| 固定リンク
「アルバムレビュー(邦楽)2021年」カテゴリの記事
- コンセプト異なる2枚同時作(2021.12.27)
- 彼女のスタイルを貫いたカバー(2021.12.18)
- メランコリックなメロが良くも悪くも(2021.12.13)
- リスタート(2021.12.06)
- 戦時下でも明るいジャズソングを(2021.12.05)
コメント