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2021年5月14日 (金)

本領発揮の3枚目

Title:FRUITFUL
Musician:堀込泰行

ご存じ、かつては兄堀込高樹と共にバンド、キリンジで活躍した弟、堀込泰行の、ソロとして3枚目となるオリジナルアルバム。バンドとしてかなり積極的に活動した兄高樹率いるKIRINJIは、バンド形式となってからオリジナルアルバムを4枚リリース。かなり積極的な活動が目立ちました。一方、弟泰行はオリジナルアルバムとしては本作で3枚目。ただ、その間も他のミュージシャンとのコラボEP「GOOD VIBRATIONS」シリーズ2作や、カバーアルバム「"Choice" by 堀込泰行」をリリースしており、兄に負けず劣らず積極的な活動が目立ちました。

ただ、ソロ1作目「One」も、2作目「What A Wonderful World」も、傑作アルバムであることには間違いないものの、キリンジ時代と比べると積極的に音楽性の幅を広げ、バンドとしての可能性を追求していったKIRINJIの作品に比べると、ちょっと物足りなさというか、インパクトの不足を感じるアルバムになっていたようにも感じます。特にバンドKIRINJIとしてのラスト作「cherish」がキリンジとしての可能性を広げた、2019年を代表する傑作だったに対して、残念ながら堀込泰行のアルバムは、キリンジのイメージの枠内にとどまっていたようにも感じました。

しかし、そんな中リリースされた3枚目の本作は、ポップミュージシャン堀込泰行の本領が発揮された、非常に良質なポップアルバムの名盤といって間違いない作品になっていたように感じます。まず、アルバムの冒頭を飾る「Stars」が素晴らしい名曲に。ファルセットも活用しつつ、伸びやかに歌い上げるミディアムテンポのナンバーですが、コーラスラインなどにゴスペルの要素を入れつつ、祝祭色の強い楽曲に仕上がっており、まずは非常に心地よさを感じさせる作品となっています。

そんなポップチューンから2曲目「Here,There And Everywhere」ではいきなりギターリフが切り裂くイントロからスタートするロック調の楽曲に。コミカルでユーモアタッチの曲調ながらも、よくよく読むと微妙に怖いような気もする歌詞も、彼らしさを感じさせる楽曲になっています。

そしてここからは彼らしいメロウなポップチューンが続きます。「光線」はシンプルながらも単純な描写の中に恋人の心理がしっかり描かれている歌詞が秀逸なのですが、こちらは同作で唯一、他の作家による作詞曲で、シンガーソングライターの阿部芙蓉美が作詞を手掛けています。堀込泰行らしいいうと、その次の「5月のシンフォニー」でしょう。ピアノやアコースティックギターを主軸としたサウンドが実に美しく、清涼感あふれる歌詞の世界もとても心地よい、非常に明るさを感じるポップチューンに仕上がっています。

続く「Sunday Driver」はこのアルバム唯一のインストチューンなのですが、ブルージーなスライドギターが印象に残る作品。アルバムの中でちょうどよいアクセントになっていますし、「Sunday Driver」なんていう曲名の選択のユニークさにも彼らしさを感じます。さらに「君と僕」もシンプルな歌詞も魅力的な爽やかなポップチューンが魅力的ですし、続くバラードナンバー「マイガール・マイドリーム」もAORな曲調が印象に残る曲。さらに切ないメロが魅力的な「涙をふいて」と、後半もインパクトあるメロウなポップチューンが続き、ラストは再び「Stars -reprise」で祝祭色ある明るい雰囲気でアルバムは締めくくられます。

インストチューンを含めて捨て曲が1曲もないという、実に魅力的なポップスが並んだ本作。歌詞も彼らしいシンプルな優しい言葉の使いまわしをしつつ、独特な言い回しでしっかりと独自の世界観を作り上げているという、キリンジから続く堀込泰行らしさが最大限に発揮された作品になっていました。文句なしにソロでの最高傑作と言えますし、また、本年度を代表しそうな傑作の1枚の登場、といっても過言ではないでしょう。堀込泰行の本領発揮となる、彼の魅力がつまった傑作アルバムでした。

評価:★★★★★

堀込泰行 過去の作品
River(馬の骨)
"CHOICE" BY 堀込泰行
One
GOOD VIBRATIONS
What A Wonderful World
GOOD VIBRATIONS 2

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