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2021年5月

2021年5月31日 (月)

バンド「氣志團」の実力

Title:Oneway Generation
Musician:氣志團

今年、メイジャーデビュー20周年を迎える氣志團。メイジャーデビュー前後、「One Night Carnival」が大きな話題となり「おもしろいバンドがいる」という評判になったのは、その当時、足しげくライブに通っていたこともあり強烈な印象として残っています。あれからもう20年というのは、自分も年を取ったなぁ・・・と思います。ただ、20年前でも既に「懐かしいもの」となっていた90年代の不良スタイルをそのままに、BOOWYのパロディーのような曲で登場してきた彼らは、はっきり言えば出オチの感も強く、典型的な一発屋の感もありました。そんなバンドが(それもスタイルを全く変えず)20年。一時期に比べて人気はちょっと落ち着いたとはいえ、いまだに十分「人気バンド」としての地位を保ちつつ活動を続けている事実には驚かされます。

そんな彼らが今回リリースしたのは、昨年10月に亡くなった日本歌謡界を代表する作曲家、筒美京平の楽曲を集めたカバーアルバム。先日も、このサイトで筒美京平のトリビュートアルバムを紹介しましたが、本作は、そんな筒美京平へのトリビュートアルバムを、氣志團というバンド1つで行ってしまった作品となります。

筒美京平と言えば、それこそ1960年代から、2000年以降に至るまで、膨大な数の曲を世に送り込んだ作家ですが、今回のアルバムで取り上げられているのは、おもに80年代のポップスがメインとなります。ご存じ1985年のC-C-Bによる大ヒット曲「Romanticが止まらない」からスタートし、沖田浩之の「E気持」な、早見優「真夜中のナンシー」。さらにもうちょっと時代が下り、90年代J-POP全盛の頃のオザケンの「強い気持ち・強い愛」や藤井フミヤ「タイムマシーン」なども取り上げた上、最後はアルバムタイトルにもなった本田美奈子.の「Oneway Generation」で締めくくっています。

確かボーカルの綾小路翔は、年齢非公開なのですが、私と同じ年のはず。私は80年代ポップスはリアルタイムではあまり聴いてこなかったのですが、小学生の頃から、テレビの音楽番組を見ていたのであれば、リアルタイムに聴いていた曲が多いと思われます。今回の選曲は、彼にとって原点となった筒美京平の曲を取り上げたのでしょう。

しかしあらためてこうやって筒美京平の曲を並べると、その幅広さにあらためて驚きます。「Romanticが止まらない」は80年代のニューウェーブ風ですし、「Oneway Generation」は後のJ-POPの源流とも言えるようなポップス。さらに「強い気持ち・強い愛」はそんなメインストリームのポップスに対するカウンターカルチャーとして出てきた渋谷系の楽曲ですし、このポップスならばなんでもOKという幅広さには、あらためて驚いてしまいます。

そして今回のアルバムで、筒美京平の魅力以上に強く感じたのが氣志團のバンドとしての実力でした。ニューウェーブ風にカバーした「Romanticが止まない」から、軽快なロカビリー風にまとめた「時代遅れの恋人たち」、ラテン調に爽やかにカバーした「夏のクラクション」に、パンク調の「夏色のナンシー」。さらにはアコースティックなサウンドをメインにファンキーなリズムを入れた「強い気持ち・強い愛」に、「Oneway Generation」はモータウン風のリズムをより強調して軽快に聴かせてくれます。

原曲が実は持っていた音楽的要素を上手く引き出し、氣志團としての味付けをしっかりほどこしつつ、かつ原曲の持つ魅力を失わないカバーに仕上げており、非常に理想的なカバーに仕上がっています。今回、編曲はすべて氣志團のメンバーのみで行ったようですが、彼らのミュージシャンとしての実力を強く感じる仕事ぶりを見せてくれています。そして、そんなバリエーションのある楽曲を卒なくこなすバンドの演奏力も特筆すべきでしょう。その見た目とは異なり、彼らが決して色物ではなく、実力派ミュージシャンなんだ、ということを示したトリビュートアルバムになっていました。

20年前に彼らをはじめて知った時は、正直、もって数年だな、と思っていましたが、それがこれだけ長い間、人気を維持できたのは、なにより彼らのバンドとしての実力があったからだ、ということを強く感じましたし、それを再認識させられたトリビュートアルバムだったと思います。筒美京平の魅力も存分に感じましたが、それと同時に氣志團の実力を強く感じた1枚でした。

評価:★★★★★

氣志團 過去の作品
房総魂~Song For Route 127
木更津グラフィティ
蔑衆斗 呼麗苦衝音
日本人
氣志團入門
不良品
万謡集


ほかに聴いたアルバム

開幕宣言/Novelbright

人気上昇中のポップスロックバンドによる、メジャー初となるフルアルバム。非常にわかりやすいJ-POPといった印象で、オーケストラアレンジを入れて、わざとらしくスケール感を出した曲や歌謡曲的な楽曲、いかにもなビートロックなど、そこそこインパクトのあるポップなメロディーラインは悪くはないものの、全体的には少々陳腐というイメージを抱いてしまいました。良くありがちなJ-POPバンドという印象で、Novelbirghtだけが持っている個性が薄い印象。もう一皮むけてほしいのですが。

評価:★★★

Novelbright 過去の作品
WONDERLAND

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2021年5月30日 (日)

ここが彼女の"Terminal"か?

Title:Terminal
Musician:YUKI

途中、Chara+YUKIとしてのアルバムリリースはあったものの、自身名義のオリジナルアルバムとしては約2年ぶりとなる新作。その2年前の前作「forme」は数多くの豪華ミュージシャンが参加したものの、その個々のミュージシャンの個性も生かせず、かつYUKIの作品としてもいまひとつ中途半端な作品に仕上がっていました。

ある意味、バラバラといった印象も受けた前作に比べると、今回のアルバムに関してはYUKIとしての方向性が明確になっているように感じます。方向的には、今時のポップス。R&B的な要素を多く入れた、いかにも今風のアレンジがほどこされた作品になっています。冒頭の「My lovely ghost」では歌詞の中でも「シティポップ」という言葉が飛び出すなど、ちょっと露骨ともいえるシティポップのナンバー。続く「Baby,it's you」は彼女ののびやかなボーカルを聴かせる、YUKIらしい歌を聴かせてくれますが、リズムトラックにトラップの要素を入れた今風のアレンジが目立ちます。

さらに続く「good girl」ではホーンセッションの使い方など、K-POPからの影響を強く感じますし、「ご・く・ら・く terminal」などは不穏な雰囲気のエレクトロチューンで、ラップも取り入れた完全にK-POP風のナンバーなど、あきらかの今時のポップスといったイメージを受ける楽曲になっています。

一方、後半はジャジーな「泣かない女はいない」に(歌詞の節回しが旦那のYO-KINGっぽいのは気のせい?)「チューインガム」はソウルからの影響を強く感じるなど、ブラックミュージックからの影響を感じさせるものの、ここらへんはもっとルーツ志向に。また「NEW!!!」などは、マイケルジャクソン的な要素も感じる80年代風のR&Bチューン。いままでの作品に比べると、グッとR&Bやソウル志向が顕著に感じさせます。

このソウルやR&B的な要素を取り入れつつ、全体的には軽快なポップにまとめあげているという点も、いかにも今どきの、時にアメリカのヒットシーンからの影響を感じます。アリアナ・グランデとか、あのあたりを志向しているのでしょうか?前作「forme」も、いかにもサブカル狙い的な感があり、それがマイナス要素だったのですが、今回もこの音楽的な方向性は、若干「狙いすぎ」といった印象も受けてしまいます。

ただ、そういった点を差し引いてもアルバムとしては良く出来た作品に仕上がっていたと思います。まずやはりポップとしての強度が強い点が大きなプラスでしょう。今風なアレンジの曲の間に「NEW!!!」みたいなわかりやすい形でのインパクトのある80年代ポップスを入れてきたり、中盤も「ベイビーベイビー」など、インパクトあるポップチューンを入れてきたりと、アルバム全体としてはポップなメロディーが楽しめる作品になっていました。

また、いかにも狙ったような今風の作品にしても、YUKIのボーカルが入ることにより、しっかりYUKIの作品になっている点が見事。これはさすがソロになってから20年以上のキャリアを誇る彼女らしい、ボーカリストとしての実力の裏付けを感じさせます。前作は、それでも全体的に中途半端な作風になっていたのですが、今回のアルバムは作品全体としての方向性もしっかりしており、そういう意味でもアルバムとして非常によくまとまった作品になっていたように感じました。

ソロとして20年以上、いままで様々な作風のアルバムをリリースしてきた彼女。今回のアルバムタイトル「Terminal」は英語で「終端」という意味。そういう意味では、この作品が、彼女の行きついた先、といった感じになるのでしょうか。まあ、「行きついた先」にしては、アルバムの内容として今風のR&Bから、80年代ポップ、ソウルチューンまで並んでおり、「じゃあ、このうちどれが彼女の『行きついた先』?」と思わなくもないのですが・・・。次はどのような作品をリリースしてくるのでしょうか?まあ、それはさておいて本作。YUKIというボーカリストの実力を感じさせる傑作アルバム。ちょっと「狙いすぎ」な部分も含めて十二分に楽しめる作品でした。

評価:★★★★★

YUKI 過去の作品
five-star
うれしくって抱きあうよ
megaphonic
POWERS OF TEN
BETWEEN THE TEN
FLY
まばたき
YUKI RENTAL SELECTION
すてきな15才
forme
echo(Chara+YUKI)

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2021年5月29日 (土)

「歌」により焦点をあてて

Title:袖の汀
Musician:君島大空

ここでも取り上げた2nd EP「縫層」から約5ヶ月。早くも新たなEP盤がリリースされました。タイトルは・・・今回も若干、難読気味のタイトルで、これで「そでのみぎわ」と読むそうです。前作「縫層」(こちらは「ほうそう」と読みます)も素晴らしい傑作アルバムでしたが、それに続く本作も、前作に引き続き、彼の才能を存分に感じられる傑作に仕上がっていました。

ハイトーンボーカルにアコースティックベースのサウンドで聴かせるというスタイルは前作と同様。「音を紡ぐ」といったイメージもピッタリと来るような、ひとつひとつの音、言葉を丁寧に歌いこむようなスタイルが印象に残ります。ジャケット写真には、今にもつながりそうな手と手が印象的ですが、歌詞の世界も、どこか寂しさ、わびしさを感じさせる風景の中で、「僕」と「君」のつながりをもとめようとする歌詞の世界観が印象的。

「僕がきっと何度もここで
ここで君を見つける」
(「光暈(halo)」より 作詞 君島大空)

「忘れたくなる世界で君の目をみている」
(「向こう髪」より 作詞 君島大空)

「なんだか怖くて目をつむったふたりは
どこへも行けそうね、って小さく…
何度も頬をつねって、小さく笑うよ」
(「きさらぎ」より 作詞 君島大空)

など、世界の中で「君」と「僕」だけにスポットをあてて、その2人を結びつけるような描写の歌詞が印象に残ります。

一方、アコースティックなサウンドをベースに、それだけではないバリエーションを感じるのは本作も同様で、「星の降るひと」ではエレクトロサウンドを用いて、タイトルから想像できるような星空の世界観をサウンドでも表現していますし、「白い花」でもドリーミーなエレクトロサウンドを聴かせてくれます。

ただ、アコギをつむぎながら聴かせる「光暈(halo)」をはじめ、続く「向こう髪」、ラストの「銃口」と、アコースティックギター1本で静かに歌を聴かせる曲が目立ちました。前作は、比較的バリエーションのあるサウンドで、彼の音楽的な広がりを感じさせる内容になっていましたが、今回の作品は、よりアコースティックなサウンドにシフトし、彼の歌に、より焦点があてられたアルバムに仕上がっていました。

ハイトーンボイスと清涼感のある美しい歌声、というスタイルは前作から大きな変化はありません。ただ、そんな中でも微妙にそのスタイルを変えた前作と本作。君島大空というミュージシャンの魅力が、この2枚のアルバムで大きく広がったような印象を受けます。さあ、次は待望のオリジナルアルバムでしょうか。それとも次のEPで彼の新たな魅力を見せてくれるのでしょうか?これからの彼の活躍にも注目です。

評価:★★★★★

君島大空 過去の作品
縫層

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2021年5月28日 (金)

アメリカ産日本の時代劇アニメのサントラ

Title:YASUKE
Musician:Flying Lotus

ジャズをベースとした独特のエレクトロサウンドで、アルバムをリリースする毎に大きな話題を集めるアメリカのミュージシャン、Flying Lotus。その新作は、なんとアニメのサントラ盤。もともと、彼自身、日本のアニメのファンだそうで、以前放送されたアニメ「キャロル&チューズデイ」にも楽曲を提供したりしていましたが、今回は本格的に音楽プロデューサーとして参加。Netflixで配信されている同作は、織田信長に仕えていたといわれる黒人の武士「弥助」を主人公とした話。とはいえ、このアニメ、日本の作品ではなく、ラション・トーマスというアメリカの監督による作品。信長に弥助という黒人が使えていたという話は、ある程度歴史に詳しい人なら知られている話ですが、その弥助をアメリカの監督がアニメの素材として目をつけるあたり、ちょっと驚きですし、逆にこういう話を日本人が手をつけなかったことが残念にすら感じます。

さて今回のアルバム、アニメのサントラということもあり全43分という長さながら26曲入りという、1曲あたり平均2分弱という曲が並びます。ただ、この手のサントラにありがちな一瞬、ワンアイディアの音が鳴って1曲終了、というような、完全な「効果音」的な曲はなく、基本的にはどの曲もFlying Lotusの曲として成立した曲が並んでいます。そういう意味では純粋にFlying Lotusのオリジナルアルバムとして聴いていて最後までしっかりと聴かせる内容になっていました。

まずアルバムはアニメのオープニングを彷彿とさせる「War at the Door」からスタート。ある種のベタさを感じさせるスケール感あるオープニングではあるのですが、勇壮さを感じさせつつ同時にメランコリックな雰囲気のトランペットと細かく刻むエレクトロのリズムにちょっとジャジーな雰囲気を加えており、Flying Lotusらしい作品になっています。そしてスタートするのがオープニング曲「Black Gold」。こちらはThundercatをフューチャー。ハイトーンで聴かせるボーカルも心地よいメロディアスな楽曲になっています。ジャジーな要素を取り込んだエレクトロサウンドの中、どこか「和」な要素を感じさせるのもユニークな部分。

中盤で耳を惹くのがDenzel CurryしたHIP HOPチューン「African Samurai」でしょう。シンプルでテンポよいリズムの中でラップが登場するのですが、日本人の耳にとっては唐突に登場する「ノブナガ」「ハラキリ」の日本語が非常にユニーク。ラップの中に「ノブナガ」なんて言葉が登場するのは、この曲が唯一でしょう。しかし、このHIP HOPチューン、戦国時代を描いたアニメの中でどのように登場するんだろうか・・・気になります。

最後を締めくくる「Between Memories」も女性ボーカルNiki Randaをフューチャーした歌モノのポップ。サントラの位置づけ的にエンディング曲でしょうか?こちらも2分弱の短い曲ながらもドリーミーな雰囲気が印象的な美しいポップチューンに仕上がっています。

そして今回の作品で一番ユニークかつ特徴的だったのは、舞台が日本だったからでしょう、「和風」なサウンドが多く登場します。同じくNiki Randaをフューチャーした「Hiding in the Shadows」は彼女のハイトーンボーカルを幻想的に聴かせる美しいナンバーですが、その幻想的な雰囲気に琴の音色が重要な役割を果たしています。「Fighting Without Honor」も力強い和太鼓のリズムを聴かせつつ、トランペットの音色で壮大さを演出している曲ですし、「Your Lord」でも琴や尺を彷彿とさせる音が登場するなど、日本を舞台にしているから当たり前といえば当たり前なのですが、日本的な雰囲気を醸し出している楽曲が続きます。

ただ、外国人がつくる「和風」の曲というと、日本人にとってはあまりにベタに和楽器が登場したり、和風というよりも中華に近い雰囲気になっていたりと、違和感を抱く曲も少なくありません。しかし、本作については、確かに若干、琴や和太鼓など、わかりやすい「和」の世界である点は否めないものの、さほど違和感はありません。和楽器の要素がFlying Lotusのサウンドに上手く融合しているのが大きな要因ですし、また彼自身、日本のアニメなどをよく知っているため、昔ながらも「ハラキリ・サムライ・ゲイシャ」的な日本のイメージに染まっていない点も大きいのかもしれません。Flying Lotusらしいメランコリックなジャズ風のエレクトロサウンドに、ほどよい和の要素が加わっている音楽性には私たち日本人にも親近感を抱きながら、純粋にそのサウンドを楽しむことが出来る内容になっていました。

前述のとおり、アニメのサントラ盤ではあるものの、純粋にFlying Lotusの新作として楽しむことが出来るアルバム。和の要素は私たちにも耳なじみありますし、アニメのサントラという目的があるからでしょうか、いつもの彼のサウンド以上にポピュラリティーがあり、いい意味で聴きやすい作品だったと思います。しかしサントラが良かったこともあるのですが、アニメ本体もその内容からしてかなり気になります。日本でも普通にみられるみたいなので、これは見てみたいなぁ・・・。

評価:★★★★★

Flying Lotus 過去の作品
Cosmogramma
PATTERN+GRID WORLD
UNTIL THE QUIET COMES
Flamagra


ほかに聴いたアルバム

SWEEP IT INTO SPACE/Dinosaur Jr.

Dinosaur Jr.約5年ぶりとなるニューアルバム。ご存じJ.Mascisと、今回はThe War On Drugsの元メンバーであり、Courtney Barnettとのコラボでも話題となったギタリストKurt Vileとの共同プロデュースによる作品。とはいえ、基本的にはいつも通りのDinosaur Jr.であり、普段と何も変わらない、ノイジーで心地よく軽快なギターを中心としたバンドサウンドにテンポよくメロディアスなメロディーラインがのるスタイル。ある意味、いつも通りで代わり映えがしないといえば代わり映えしないのですが、まあそれはそれで下手な挑戦をするよりもよっぽどいいといった感じで。いい意味で安心して聴ける間違いない1枚でした。

評価:★★★★

Dinosaur Jr. 過去の作品
beyond
Farm
Give a Glimpse of What Yer Not

Landscape Tantrums/The Mars Volta

現在、事実上の解散状態となっているロックバンドThe Mars Voltaが、突如配信でリリースした作品。本作は2003年のデビューアルバム「De-Loused in the Comatorium」の未完成オリジナルレコーディングをおさめた未発表音源集。ただ「未完成」といってもデモっぽい雰囲気の曲はなく、ダイナミックなバンドサウンドに複雑なリズムとサウンドという彼ららしいサウンドに、メランコリックなメロディーラインが載るというスタイルでそれなりに出来上がっており、完成音源と比較するのも楽しいのですが、これはこれで十分楽しめるアルバムに。久しぶりに彼らの作品を聴き、いいバンドだったよなぁ・・・とあらためて実感した作品でした。

評価:★★★★★

THE MARS VOLTA 過去の作品
The Bedlam In Goliath(ゴリアテの混乱)
OCTAHEDRON
Noctoumiquet

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2021年5月27日 (木)

「鬼滅の刃」の効果は持続するか?

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週の1位は「鬼滅の刃」主題歌で一気に知名度を上げたあの女性シンガーが1位獲得です。

今週1位はLiSAのミニアルバム「LADYBUG」が獲得。CD販売数は2位ながらもダウンロード数2位、PCによるCD読取数3位といずれも上位に食い込み、総合順位で見事1位獲得となりました。いままで、「アニソン歌手」として、「アニメファン」を向いて活動していた感の強かった彼女ですが、今回のアルバムでは、B'zの松本孝弘やゆずの北川悠仁といった面子も作家陣として加わり、アニメファンに留まらない広いリスナー層への遡及を目指した感のあるアルバムとなっています。ただ、オリコン週間アルバムランキングでは初動売上3万枚と、前作「LEO-NiNE」の初動6万6千枚からダウン。ミニアルバムといった形態も影響しているでしょうし、また大ヒットした「炎」も収録されていない点も影響があったかもしれません。彼女が「『鬼滅の刃』の歌手」という枠組みを抜け、一般リスナー層にどれだけ人気を波及できるのかは、これからが勝負でしょう。

2位は先週6位だった韓国の男性アイドルグループNCT DREAM「Hot Sauce:NCT DREAM Vol.1」が先週の6位からランクアップ。オリコンでも先週の6位からランクアップし、3万9千枚を売り上げて、1位にランクインしています。Hot AlbumsでもCD販売数1位を獲得。ただ、ダウンロード数は34位、PCによるCD読取数は33位に留まったため、総合順位では2位となりました。このアルバム、輸入盤なのですが、なぜかHot AlbumsでもCD売上が加味されています。ここらへんの違いは何なのでしょうか?また、先週からCDの売上がランクアップしてきたのは、タワレコやHMVの販売日が5月16日、17日となっているので、取扱いにタイムラグが生じたのでしょうか?

3位はももいろクローバーZ「ZZ'sⅡ」がランクイン。セルフリメイクアルバムの第2弾で、配信のみでのリリースとなっており、ダウンロード数で1位を獲得し、ベスト3入りを果たしました。

続いて4位以下の初登場盤ですが、4位に藤井風「HELP EVER HURT COVER」がランクイン。もともとアルバム「HELP EVER HURT NEVER」の初回盤特典として同封されていたカバーアルバムをあらためて復刻したもの。CD販売数3位、ダウンロード数4位、PCによるCD読取数15位でベスト10入りを果たしました。ちなみに「HELP EVER HURT NEVER」の方も今週9位にランクイン。今週で通算8週目のベスト10入りとなりました。

5位にはPastel*Palettes「TITLE IDOL」が初登場。CD販売数4位、ダウンロード数24位、PCによるCD読取数14位。アニメキャラによるガールズバンドプロジェクト「BanG Dream!」に登場するバンドによるデビューアルバム。オリコンでは初動売上1万枚で5位初登場。

6位には韓国の男性アイドルグループSHINeeのメンバー、テミンによるミニアルバム「Advice:3rd Mini Album」がランクイン。輸入盤のため、ダウンロード数のみ3位にランクインしています。

今週の初登場は以上ですが、今週はベスト10返り咲きが何枚か。まずBTS「BE」が先週の34位から8位に大きくランクアップ。3週ぶりのベスト10返り咲きとなりました。特にCD販売数は72位から5位に大幅にアップ。デジタルシングル「Butter」リリースの影響でしょうか。

さらに大瀧詠一「A LONG VACATION」が先週の18位から10位にアップ。8週ぶりのベスト10返り咲きとなっています。

一方、ロングヒット盤ですが、YOASOBI「THE BOOK」は先週の4位から3ランクダウンの7位。PCによるCD読取数は1位をキープしていますが、ダウンロード数は4位から5位にダウン。これで20週連続のベスト10ヒットとなりましたが、下落傾向が続いています。また宇多田ヒカル「One Last Kiss」は今週12位にダウン。ベスト10ヒットは10週連続でストップとなりました。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2021年5月26日 (水)

ベスト3は新譜

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週は1位から3位に初登場曲が並びました。

まず1位はジャニーズ系。King&Prince「Magic Touch」がランクイン。CD販売数及びPCによるCD読取数1位、Twitterつぶやき数2位、ラジオオンエア数20位、You Tube再生回数30位。サウンド的にはトラップ風のリズムを入れてくるなど、かなり今時の音に寄せてきたナンバー。オリコン週間シングルランキングでは初動売上46万3千枚で1位初登場。前作「I promise」の56万7千枚(1位)からはダウンしています。

2位は韓国の男性アイドルグループBTS「Butter」がランクイン。配信限定シングルで、ダウンロード数、ストリーミング数、Twitterつぶやき数及びYou Tube再生回数で1位を獲得。ラジオオンエア数は23位で総合順位は2位となりました。BTSは「Dynamite」が先週の10位からランクアップし8位にランクインしており、これで2曲同時ランクインに。「Dynamite」はこれで40週連続のベスト10入りとなりました。

3位も配信限定シングル。BUMP OF CHICKEN「なないろ」がランクイン。ダウンロード数及びラジオオンエア数2位、ストリーミング数48位、Twitterつぶやき数25位、You Tube再生回数24位。NHK連続テレビ小説「おかえりモネ」主題歌。1位2位が今時なアレンジで、比較的冷たい雰囲気のエレクトロサウンドに対して、この曲はストリングスも入れた暖色なサウンドで、1位2位と3位の曲の雰囲気の相違もおもしろいところです。

今週は1位から3位に初登場が並びましたが、一方、4位以下には初登場曲がありませんでした。その影響もあり、先週、軒並みダウン傾向だったロングヒット曲が今週は持ち直し。前述のBTS「Dynamite」もそうですが、YOASOBI「夜に駆ける」も今週11位から10位にアップし、ベスト10返り咲き。これで通算56週目のベスト10ヒットとなっています。ただ、ストリーミング数及びYou Tube再生回数6位、ダウンロード数20位とやはり失速気味なのは否めず。ヒットもここまでといった感じでしょうか。ただ今週も「もう少しだけ」が先週から変わらず4位をキープ。「怪物」も先週から変わらず7位となり、18週連続のベスト10ヒットに。今週はYOASOBIの曲が3曲同時ランクインとなっています。

そして優里「ドライフラワー」も6位から5位にランクアップ。これで27週連続のベスト10ヒットとなりました。

このように、先週に比べて全体的にロングヒット曲が持ち成した今週。ただ、いずれの曲もいままでのような勢いにはちょっと欠いている感じも。一方、先週も紹介した藤井風「きらり」が先週から変わらず5位をキープするなど、次のロングヒットになりそうな予感も。さすがにHot100、もうちょっと入れ替わりがあった方がおもしろいと思うのですが・・・。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2021年5月25日 (火)

エキゾチックなボーカルとサウンドで

Title:Vulture Prince
Musician:Arooj Aftab

今回紹介するアルバムは、まだ特に日本ではほとんど無名のミュージシャンによるアルバムのようです。Pitchforkで高い評価を得ていたため聴いてみたのですが、Google検索をかけてみても日本語のサイトのヒットはほとんどありませんでした。そのため彼女について詳細な情報は不明なのですが、アメリカはニューヨーク・ブルックリンで活躍するパキスタン出身の女性シンガーソングライターのようで、本作が3枚目になるアルバムのようです。ジャケット写真にしても彼女の名前にしても、かなりエキゾチックな雰囲気が伝わってきます。

そんな前情報ほとんどなしの状態でアルバムを聴いたのですが、これが非常に素晴らしい傑作アルバムに仕上がっており、一気に彼女の世界に魅了される結果となりました。まず冒頭を飾る「Baghon Main」から素晴らしい作品。ゆっくりとしたストリングスやアコースティックギター、静かなベースによって奏でられるファンタジックな雰囲気のサウンドがまずは惹きつけられます。特に楽曲全体に流れるハープのような音色のストリングスの響きに非常に魅せられるのですが、そして、それに載る、彼女の歌声も実に素晴らしいの一言。微妙にこぶしが入り、迫力を出しつつも、清涼感ある伸びやかな歌声が魅力的。彼女の歌にも、どこかトライバルな雰囲気もあり、独特な雰囲気を出している点も大きな魅力でした。

2曲目「Diya Hai」はPVも作成された、このアルバムの中での中心となるような1曲。Badi Assadというブラジルの著名なギタリストが参加しているのですが、彼女の奏でるアコギの音色も表現力豊かで耳を惹きつけられます。全体的にメランコリックな雰囲気の作風に、ストリングスの音色ももの悲しく響く、美しい作品に仕上がっていました。

3曲目「Inayaat」も美しいハープの音色で聴かせる、清涼感あるアコースティックなナンバー。冒頭3曲で、しんみり美しいアコースティックギターをメインとした曲が続くのか・・・と思いきや、それがグッと変わるのが4曲目「Last Night」で、こちらも基本的にはアコースティックな雰囲気でスタートするのですが、途中からヘヴィーで歪んだサウンドを出すエレキギターも登場。さらにダブの要素を入れたサイケなサウンドが重なり、一種独特の妖艶な雰囲気が漂います。音数も少なく緊迫感もある楽曲になっており、アコースティック主体のアルバムの中ではちょっと異色のナンバーとなっているものの、大きなインパクトを持っています。

さらに「Mohabbat」ではトライバルなパーカッションが入り、こちらもより勇壮な雰囲気の楽曲となってアルバムにバリエーションを加えています。そしてなによりも彼女の美しい歌声を聴かせるのが「Saans Lo」。静かなギターをベースとしたシンプルで静かなサウンドをバックに伸びやかでどこかエキゾチックに歌い上げる彼女の歌声が魅力的。そしてラストを締めくくる「Suroor」はトライバルなリズムにエキゾチックなストリングスの音色が乗る異国感あふれるナンバーに。最後を締めくくるこの曲も、楽曲にバリエーションを加える曲になっていました。

彼女の伸びやかで美しい歌声とエキゾチックな雰囲気あふれるアコースティックなサウンドが実にうまく融合し、独特の幽玄的なサウンドを作り出している本作。彼女の歌声にも、そのサウンドにも強く耳を惹かれる傑作アルバム。日本でほとんど無名という事実が実にもったいなく感じる、素晴らしいアルバムで、間違いなく年間ベストクラスの傑作だったと思います。アコースティックでシンプルなサウンドを主体としつつ、意外とバラエティーに富んだサウンドもユニークですし、聴けば聴くほどボーカルの面でもサウンドの面でもはまっていく奥深さも感じます。まだまだ日本では無名の彼女ですが、要チェックの傑作です。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

UnEasy/Vijay Iyer

現代ジャズシーンで注目のピアニスト、Vijay Iyerが、ベースシストのLinda May Han Oh、マルチインストゥルメンタル奏者のTyshawn Soreyと組んでリリースしたトリオアルバム。フリーキーなピアノを聴かせる曲もありつつ、基本的にはメランコリックなピアノの音色をメロディアスに聴かせるジャズアルバム。いい意味で聴きやすさも感じる作品でした。

評価:★★★★

'Til We Meet Again/Norah Jones

ノラ・ジョーンズ初となるライブアルバム。2017年から2019年にかけての、アメリカ、フランス、イタリア、ブラジル、アルゼンチンで行われたライブ音源を収録した、ベスト音源的な様相を持つライブ盤。タイトルからして、このコロナ禍の中、ライブもままならない状況で、次にライブで会える時まで、このライブ盤で・・・という想いを感じます。基本的にピアノを中心としたシンプルなサウンドでしんみり聴かせるスタイルですが、彼女の歌声はオリジナル音源よりもより力強く、より胸に響く感情のこもったライブパフォーマンスを聴かせてくれます。彼女のライブパフォーマンスの魅力を存分に感じるアルバム。コロナ禍が明けたら、彼女のライブに是非行きたい・・・そう感じさせるライブ盤でした。

評価:★★★★★

NORAH JONES 過去の作品
THE FALL

...FEATURING NORAH JONES(ノラ・ジョーンズの自由時間)
LITTLE BROKEN HEARTS
COVERS(カヴァーズ~私のお気に入り)
foreverly(BILLIE JOE+NORAH)
DAY BREAKS
First Sessions
Begin Again
Pick Me Up Off The Floor

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2021年5月24日 (月)

「異常空間Z」にて

THE MATSURI SESSION

ZAZEN BOYS/NUMBER GIRL

会場 日比谷野外音楽堂(オンライン) 日時 2021年5月4日(火)

最近、ちょっとご無沙汰になっていたオンラインでのライブ観戦。昨年末のライブまとめでも書いた通り、正直、オンラインライブはやはり物足りなさが否めず、ちょっと気持ちが遠のいていました。また、コロナ禍の中での対策も取られるようになり、徐々に客数を減らしつつ、ライブが行われるようになり、そのためオンラインライブが少なくなってきた、という影響もあります。

そんな中、久々に「これは見なくては!」と思ったのがNUMBER GIRLとZAZEN BOYSの対バンライブ!当初は観客を入れてのライブを予定していましたが、東京での非常事態宣言発令に伴い、急遽無観客でのライブとなった本公演。久しぶりのオンラインライブ観戦となりました。

スタート前、映像は観客が誰もいない日比谷野音が映し出されます。やはり誰もいない野音はあまりにも寂しい・・・・・・。やがてスタートの時間になると、向井秀徳の鼻歌が流れ、そしてまずはNUMBER GIRLのメンバーが登場。ライブがスタートとなります。

NUMBER GIRL

メンバーが集結すると、「異常空間Z」と叫んだかと思えば、まずは「日常を生きる少女」からスタート。無観客とはい、通常のライブとは全く変わらない非常に迫力のある演奏からスタート。さらに「鉄風 鋭くなって」「タッチ」とおなじみのナンバーが続きます。無観客の寂しさを吹き飛ばすかのような、かなり力の入った演奏。特に向井秀徳のボーカルはいぜんにましてドスが強くなったような感じすらします。

さらに「ZEGEN vs UNDERCOVER」で圧倒した後、誰もいない客席に向井秀徳が軽く一礼。再び「異常空間Z」と叫んだあと「透明少女に逢ったら伝えてくれ。必ず迎えに行く、って」という短いMCから、おなじみ「透明少女」へ!!この展開にはゾクゾク来るものがあります。観客が入ってたら大歓声だったんだろうなぁ・・・でも、観客の歓声が聴こえてくるようでした。

曲の後に、「提供は異常空間Z!」という謎のコメントを残し、力強い向井秀徳のギターソロと鼻歌からゆっくりスタートし、「YOUNG GIRL SEVENTEEN SEXUALLY KNOWING」へ。ノイジーなギターを前面に押し出したサウンドで、中尾健太郎が飛びまくるステージも印象的。その後、向井秀徳の「water color girl」という紹介から、「水色革命」へ。

その後、また「異常空間Z!」と叫んだあと、軽くMCで「私の映画の師匠であります塩田明彦監督が新作をつくりました」という紹介から、なんと新曲を披露!おそらく「排水管」というタイトルだと思われるのですが、ミディアムテンポの重低音がを聴かせつつ、しっかりと歌を聴かせる楽曲に。塩田明彦監督の新作映画の主題歌なのでしょうか?ついに発表されたナンバガの新曲。これはかなりうれしいニュースでした。

さらにチャコちゃんのおなじみのギターリフからスタートする「TATOOあり」へ。そしておなじみの「福岡市博多区からやってまいりましたNUMBER GIRLです。ドラムス、アヒトイナザワ」から「OMOIDE IN MY HEAD」へ!また観客の大歓声が聴こえてくるようでした。そしてそのままラストの「I don't know」へ。これまた無観客になってしまったうっぷんを叩きつけるような力強い演奏に。いつもながら、その演奏に圧巻されてしまいます。

そして最後に簡単なメンバー紹介があり、全員で深く一礼をすると、静かにステージを去っていきます。約1時間強のステージ。無観客という状況でしたが、いつもと全く変わらない迫力あるステージに終始圧巻された1時間でした。

ZAZEN BOYS

その後は普通にライブ配信のためセットチェンジに。20分近くかけてようやく終了。ZAZEN BOYSのステージがはじまります。まず「自問自答」からスタート。メロウな雰囲気のギターサウンドに向井秀徳のラップがのるスタイルでNUMBER GIRLのステージの雰囲気とはガラッと変わります。

またここで再び「異常空間Z!」と叫ぶと「Honnoji」へ。サイケでファンキーなサウンドにより、また会場の空気感がグッと変わります。さらに「HIMITSU GIRL'S TOP SECRET」「COLD BEAT」とファンキーなリズムのナンバーが続きます。NUMBER GIRLのステージと異なり、メンバーはステージ中央部に集まり、向井秀徳を除く3人は中心部で対峙するように演奏を行っていました。サウンドはよりエッジが効いており、NUMBER GIRL以上に緊迫感のあるステージングを聴かせてくれます。

さらにジャムセッション的な「泥沼」から「weekend」へ。そしていつものようにビールを手にすると、再び「提供は異常空間Z」と謎のMCを残すと、今後はギターを置き、ポケットに手をつっこみながら「ポテトサラダ」さらには「はあとぶれいく」を聴かせてくれます。

その後は「杉並の少年」と曲紹介をすると、NUMBER GIRLに続きZAZEN BOYSも新曲を発表!エッジの効いたサウンドでファンキーさも感じれるセッションはZAZEN BOYSらしく、向井秀徳の歌が加わるスタイル。さらに「破裂音の朝」へ。こちらも同じく向井秀徳の歌が前に出てくるスタイルに。歌モノ・・・というとちょっと違和感はあるのですが、歌を主体にした曲が続きます。

本編ラストは「Abosi」へ。またジャムセッション的な迫力ある演奏を聴かせてくれます。日もすっかり沈み、真っ暗な中、緑色のライブで浮かび上がるメンバーが非常に妖艶で印象に残ります。最後はジャムセッションが続くのかと思いきや、比較的シンプルに本編は終了。最後は向井秀徳の「乾杯」の一言で、とりあえず本編は終了となります。

さらにアンコールも。アンコールでは向井秀徳1人だけ登場。ご存じ向井秀徳アコースティック&エレクトリックのスタイルで、なんとサカナクションの「忘れられないの」をカバー。ちょっと意外な選曲にビックリ。こちらはうってかわってギター1本のみのスタイルで聴かせますそしてラストは「KIMOCHI」へ。これで最後とばかり、ダイナミックで激しいバンドサウンドを響かせます。さらに途中からなんとLEO今井が登場。LEO今井のボーカルにより「KIMOCHI」を聴かせてくれました。最後はアカペラで歌いながら、向井秀徳とLEO今井が肩を組んで会場から去り、ライブは幕を下ろしました。

NUMBER GIRLで1時間強、ZAZEN BOYSで1時間強、途中のセットチェンジ合わせて約3時間弱のライブでした。昨年はコロナ禍の中でライブに一切足を運べず、オンラインでのライブだけ見てきました。結果として正直なところ、通常のライブに比べるとオンラインライブの物足りなさにここ最近はオンラインライブから遠のいていました。ただ、久しぶりにこうやってライブ映像を見ると、やはり映像を通じてとはいえライブはいい!!特にNUMBER GIRL、ZAZEN BOYS共に、音源以上にライブに定評のあるミュージシャンなだけに、どちらもその演奏に圧倒されました。

また轟音で圧倒するNUMBER GIRLとエッジの効いた、ファンキーさも感じさせるサウンドで聴かせるZAZEN BOYS。同じ向井秀徳のバンドでもあらためて、その違いの大きさに実感しました。確かに、ZAZEN BOYSとしての活動だけだったら、NUMBER GIRLみたいな音も出したくなるよなぁ・・・今回の再結成の訳もなんとなくわかったように思います。

この日はとにかく向井秀徳が気に入ったみたいで「異常空間Z」と叫びまくっていました。おそらく、コロナ禍で無観客となり、夜、人通りも少なくなってしまった今の東京を表現しているのでしょう。あらためてNUMBER GIRLとZAZEN BOYSのカッコよさを思い知ったライブ。早く「異常空間Z」が終わって、彼らのライブを見ていたい・・・そう強く感じたオンラインライブでした。

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2021年5月23日 (日)

くるり、すごいが・・・

Title:天才の愛
Musician:くるり

2021年3月をもって、くるりのメンバーだったファンファンが卒業を発表。率直に言うと「またか・・・」という感は否めません。ご存じの通り、くるりといえば、目まぐるしくメンバーが入れ替わることでも知られているバンド。ギターボーカルで大半の曲の作詞作曲を実施している岸田繁と、ベースの佐藤征史の2人はオリジナルメンバーで結成当初から変わらないものの、その他のメンバーがなかなか長く定着しません。2011年にはいきなり5人組になったかと思えば、わずか半年で1人が脱退、なんてこともありました。とはいえ、何気にファンファンが加入したのは2011年なので、10年間、くるりのメンバーだったことになります。これはいままで最長だったオリジナルメンバーのもっくんこと森信行を抜いて、岸田・佐藤以外ではくるり最長在籍期間を記録したことになります。かなり意外な印象も・・・。

そんな訳で3人組バンドくるりとしてはラストとなるアルバム。昨年は未発表曲集「thaw」をリリースしていますが、純然たる新作としては2018年の「ソングライン」以来、約2年7ヶ月ぶりとなるニューアルバムとなります。アルバム毎にその色合いを変えてくる彼らですが、今回の新作に関しては、良く言えばバラエティー豊富、微妙な表現を使えば、つかみどころのなアルバムといった印象を受ける作品になっていました。

アルバムはまず序盤、「I Love You」「潮風のアリア」と爽快で伸びやかなナンバーからスタートするのですが、続く「野球」は野球の応援歌をモチーフとしつつ、過去のプロ野球の名選手を読み込んだ趣味性の高い作品(個人的にはドラゴンズの選手がほとんど登場しないのが激しく不満)になっています。

さらに「益荒男さん」は、戦前のポップスを今風に解釈したかのようなポップながらも実験性も感じさせる作品になっていますし、インストチューンの「大阪万博」はプログレ的かつフリーキーな、かなり挑戦心を感じる作品に。「waituti」はブルースロック風のギターがくるりにとっては異色作と感じさせる曲調になっていますし、「less than love」もジャジーなピアノやベースラインの入ったムーディーなインストナンバーに仕上がっています。

ある意味、終盤の「コトコトことでん」はくるりらしい曲。Homecomingsの畳野彩加をゲストボーカルに加えたナンバーで、くるりらしいシンプルながらもしっかりとインパクトを残すメロディーラインが印象的なポップチューンになっています。ちなみに「ことでん」とは、その愛称で親しまれる、香川県の高松琴平電気鉄道のこと。ことでん開業100周年のイベントで披露された曲らしく、鉄ちゃんの岸田繁の趣味性が、こちらも曲にダイレクトに反映された曲になっています。

そんな今まで以上にバラエティー豊富な、一方では、つかみどころがないとも言える今回のアルバム。ただ1曲1曲の出来は素晴らしく、非常に凝っている作品が並んでおり、かつくるりとしての挑戦心も感じさせます。前作「ソングライン」はポップな歌を聴かせる曲が多く、その前の「THE PIER」は岸田繁の宅録のような挑戦的な作品が多かったので、今回の作品は前々作の路線に戻った作風と言えるかもしれません。

それだけに今回のアルバムも年間ベストクラスの傑作には間違いないと思うのですが・・・ただその上で、「頭でっかち」という印象を正直受けてしまったアルバムにもなっていました。前々作「THE PIER」は、そんな中でも岸田繁のメロディーラインがキラリと光っていたのですが、今回のアルバムはメロディー主導の曲も若干減ってしまっているのも「頭でっかち」に感じさせるひとつの要因かもしれません。

また、アルバム全体としてファンファンのトランペットがどうにも目立たないというのもちょっと気になってしまいました。確かに彼女のトランペットは鳴り響いているのですが、数多くサウンドのひとつ、ワンノブゼンみたいな感じになってしまっており、聴き終わった後に「あれ?そういえばファンファンのトランペットは?」なんて思ってしまうアルバムに。ファンファンの脱退は、公式には子育てを巡る事情のように記載されていましたが、第三者の憶測にすぎませんが、今のくるりの中でのファンファンのトランペットの立ち位置も影響していたのかもしれません。

そんな訳で、今回も傑作アルバム!ではあるのですが、ちょっとひっかかりも生じてしまったアルバムに。パターン的には、次はポップな歌モノ主導の作品になるのでしょうか。次は、岸田佐藤の2人体制になるのか、それともまたいきなり4人組、5人組になるのか・・・いろいろな意味で、次の展開が注目です。

評価:★★★★★

くるり 過去の作品
Philharmonic or die
魂のゆくえ
僕の住んでいた街
言葉にならない、笑顔を見せてくれよ
ベスト オブ くるり TOWER OF MUSIC LOVER 2
奇跡 オリジナルサウンドトラック
坩堝の電圧
くるりの一回転
THE PIER
くるりとチオビタ
琥珀色の街、上海蟹の朝
くるりの20回転
ソングライン

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2021年5月22日 (土)

初期SOUL SETの代表曲をリメイク

Title:SOUND aLIVE
Musician:TOKYO No.1 SOUL SET

2020年に結成から30年を迎えたTOKYO No.1 SOUL SET。ここ最近、2013年のアルバム「try∴angle」以降、目立った新作のリリースもなく、ライブ活動はコンスタントに続けていたとはいえ、夏フェスを中心に片手で数えられる程度のライブに参加するのみ、というここ最近は、かなりスローペースな活動が目立っていました。ただ昨年は、コロナ禍の中とはいえ、結成30年を記念したライブも実施。さらに今年、実に8年ぶりとなるニューアルバムがリリースされました。

とはいえ今回のアルバム、純然たるオリジナルアルバムではありません。彼らが主に90年代にリリースされた初期のアルバムの中で、ライブの定番になっている曲を中心に再録音したアルバム。ちょっと意外な感もあるのですが、90年代初頭のアルバムは既に廃盤となっており、現在では入手困難な状況のようです(もっとも中古でよければ、amazonなどを見る限り、比較的安価で入手できるようですが・・・)。90年代のTOKYO No.1 SOUL SETといえば、当時としてはまだ珍しかったHIP HOPの要素を取り入れて、時代の先端を行くような尖ったミュージシャンとして注目を集めており、アルバムはいずれも評価が高い評価を得ていただけに、そのアルバムが今や入手困難というのはちょっと意外な感もあります。

ただ、あらためて90年代の彼らの作品を聴くと、今聴いても全く色あせないサウンドが魅力的であり、今なおその楽曲は圧倒的に独特の個性を持っています。いうまでもなく彼らの楽曲は、ギターサウンドやピアノの音色を効果的に用いるラテンフレーバーなサウンドと、BIKKEの独特なポエトリーリーディング的なラップが大きな特徴。哀愁感漂わせつつ、どこかエロチシズムも感じさせるサウンドや歌詞も大きな魅力となっています。

個人的には彼らの作品は比較的初期の作品から聴いているのですが、あらためて昔の楽曲を聴くと、あらためて気が付かされたことが何点かありました。まず1点目は、彼らの楽曲に予想以上にダンサナブルな曲が多いという点。彼らの代表曲である「JIVE MY REVOLVER」も非常にダンサナブルな曲ですし、「LET'S GET DOWN」は完全に四つ打ちのビートの曲。今回冒頭に新曲「止んだ雨のあと」が収録され、こちらも彼ららしい哀愁感たっぷりの曲なのですが、リズムは非常にダンサナブルにまとめています。今回、TOKYO No.1 SOUL SETの本質の部分にダンスミュージックがあった、ということをあらためて認識しました。

そしてもう1点は、予想していた以上にバリエーションが豊富だったという点。ラテン調のサウンドにBIKKEのポエトリーリーディングという、彼らの個性は大きな魅力である一方、若干「大いなるマンネリ気味」な部分があるような印象を受けていました。ただ今回のアルバムを聴くと、ハードロック風なサウンドを織り込んだ「HEY HEY SPIDER」やブギウギなピアノも入って楽しく聴かせる「クレイジークライマー」、にぎやかなバンドサウンドで明るく聴かせる「バジリコバジリコ」など、あらためて聴くと非常にバリエーションも多く、決して「大いなるマンネリ」ではないという点を再認識させられました。

そんな訳で、あらためてTOKYO No.1 SOUL SETというバンドの魅力を再認識したアルバム。事実上の初期ベストのような内容ですし、なにより彼らが最も勢いのあった時期の代表曲が並んでいるだけに、悪い内容なわけありません。初期の作品が廃盤になっているのは非常に残念なのですが・・・このアルバムで初期の彼らの曲の魅力に触れることが出来る最適な作品になっていました。

もっとも気になる点もなきにしもあらず。初期の作品は今、聴けない状況なのですが、ただ、最近はストリーミングで廃盤になった作品も比較的容易に聴くことが出来るミュージシャンも少なくありません。彼らはどうも、本作もフルで配信していないようで、権利の関係か本人たちのこだわりかは不明ですが、全作品ストリーミング解禁となっていないようです。権利関係がクリアできれば、廃盤になった初期の作品こそ、ストリーミングや配信で聴けるようにしてほしいのですが・・・。

また、8年ぶりの新作・・・が過去のリメイクという点も気にかかります。新曲「止んだ雨のあと」は初期の作品と並べても遜色ない内容なだけに、ミュージシャンとしての衰えはないと信じたいのですが・・・次こそは、全曲新曲の純然たるオリジナルアルバムを期待したいところです。

評価:★★★★★

TOKYO NO.1 SOUL SET 過去の作品
No.1
Beyond The World
Best Set
全て光
Grinding Sound
try∴angle


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2021年5月21日 (金)

フォーキーな雰囲気の中に感じる違和感

Title:VI
Musician:ミツメ

最近話題のインディーロックバンド、ミツメのタイトル通り6枚目となるニューアルバム。なんでもスカート、トリプルファイアーと並んで「東京インディー三銃士」と呼ばれているとかいないとか・・・。ミツメという名前自体は以前から知っていたのですが、いままでなんとなくアルバムを聴き逃していて、このアルバムがはじめて聴く1枚となります。

楽曲はフォーキーな雰囲気で郷愁感あるメロディーとサウンドが特徴的。イントロに続いて事実上の1曲目となる「フィクション」は、そんなフォーキーな雰囲気で聴かせるポップスになっていますし、続く「変身」も、メランコリックで郷愁感あるメロディーが特徴的。そのほかにも「VIDEO」や本編ラストになる「トニック・ラブ」のような郷愁感を感じさせつつメロディアスに聴かせる楽曲が並びます。

一方ではロックバンド然とした部分も垣間見れ、「睡魔」ではサイケなサウンドを聴かせてくれたりしますし、「システム」はオルタナ系のギターロックバンドを彷彿とさせるようなノイジーなギターが流れており、バンドサウンドの色合いも強い曲も聴かせてくれます。ただ、その点も含めて、いかにもインディー然とした雰囲気のフォーキーなサウンドに、最初聴いた時は実は京都方面のバンドかと勘違いしていました。

しかし、そう感じながら聴き進めていくと、フォーキーなサウンドの中に、意外とスタイリッシュでシティポップにも通じるようなサウンドもまぎれこんだりしているのがユニーク。例えば「変身」で聴かせてくれるギターのサウンドなどは、シティポップの色合いを強く感じますし、「VIDEO」などもそのサウンドからはどこかシティポップ的なにおいを感じます。実際、CD盤のボーナストラックにはSTUTSとのコラボ「Basic」が収録されており、R&B系との親和性も感じます。ここらへんのあか抜けた雰囲気は、いかにも東京のバンドといった印象も受けます。

また、さらによくよく聴いていくうちに、フォーキーと感じていたサウンドから違和感を覚えるようになりました。そのサウンドはどこかクラブサウンド的なものを感じました。ここらへんの違和感は本編を聴く限りでは単なる「違和感」だったのですが、CD盤でDisc2として付属されてくるインスト版を聴いて、その違和感の理由がわかりました。このインスト版であらためてミツメのサウンドの面をよく聴くことが出来たのですが、彼らのバンドサウンドはループするようなサウンドが多く取り入れられていることに気が付きました。このサウンドのループ感に一種今風のクラブサウンド的な要素を感じ、それが違和感につながっていたのではないでしょうか。この郷愁感あるフォーキーな雰囲気と、その逆にスタイリッシュで都会的なサウンドと違和感が、彼らの大きな魅力のひとつのように感じました。

個人的にはメロディーラインの面などであと一歩インパクトが欲しいかなぁ、という部分もあるのですが、その点を差し引いても、非常に魅力的なバンドであることは間違いなく、「東京インディー三銃士」という(ちょっと微妙なネーミングではあるのですが)異名も伊達ではない、という印象を受けました。決して大ブレイクするタイプのバンドではないのですが、今後、さらにその知名度をあげていきそう。これからの活躍も楽しみです。

評価:★★★★★

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2021年5月20日 (木)

GW明けのチャート

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

先週は対象週がGW中で初登場も少なかったチャートでしたが、今週は新譜が目立ちました。

まず1位初登場は元AKB48の指原莉乃プロデュースによる声優アイドルグループ=LOVEのデビューアルバム「全部、内緒。」がランクイン。CD販売数1位、ダウンロード数6位、PCによるCD読取数24位。オリコン週間アルバムランキングでも初動売上4万3千枚で1位初登場となりました。

2位には平井堅「あなたになりたかった」がランクイン。CD販売数2位、ダウンロード数3位、PCによるCD読取数12位。途中、ベスト盤のリリースはあったもののオリジナルアルバムとしては約4年10ヶ月ぶりという、ちょっと久々なリリースに。その前も約5年のスパンが空いているので、ここに来てちょっと寡作気味なのが気になります。オリコンでは初動売上1万6千枚で2位初登場。オリジナルアルバムの前作「THE STILL LIFE」の3万4千枚(4位)より大幅ダウン。直近のリリースとなるベスト盤「Ken Hirai Singles Best Collection 歌バカ2」の4万枚(2位)からもダウンしています。

3位には女性声優東山奈央「off」が初登場。CD販売数4位、ダウンロード数12位、PCによるCD読取数35位。「休みと癒し」をテーマとした6曲入りのコンセプトミニアルバムとなります。オリコンでは初動売上6千枚で4位初登場。前作「Special Thanks!」の8千枚(3位)からはダウンしています。

続いて4位以下の初登場盤です。まず6位には韓国のアイドルグループNCTから派生したNCT DREAM「Hot Sauce:NCT DREAM Vol1」がランクイン。韓国盤のため、Hot Albumsではダウンロード数のみランクインし、ダウンロード数2位でベスト10入り。一方、オリコンでは輸入盤の売上が考慮されるため、初動売上5千枚で6位初登場。同じく韓国盤の前作「Reload」(2位)からは横バイ。

7位も韓国の男性アイドルグループNU'EST「Romanticize」が入ってきました。こちらはCD販売数5位でそのほかのチャートは圏外。オリコンでは発売日の都合か、先週からランクアップする形で6千枚を売り上げ5位にランクイン。前作「DRIVE」の1万枚(7位)よりダウンしています。

初登場最後は8位に「TVアニメ ガールズ&パンツァー 最終章 オリジナル・サウンド・トラック 『GIRLS und PANZER das FINALE Episode1~Episode3 OST』」がランクイン。映画「ガールズ&パンツァー 最終章」の「第1話」から「第3話」をまとめたサントラ盤。ってか、「最終章」にも関わらず「第3話」っていつまで続くんだろう??オリコンでは初動売上3千枚で10位初登場。

一方ロングヒット組は、今週、ついに「夜に駆ける」がベスト10から陥落したYOASOBIですが、アルバムは快調で、「THE BOOK」は今週、2ランクダウンの4位ですが、ダウンロード数及びPCによるCD読取数はいずれも1位をキープしています。これで19週連続のベスト10ヒットに。また宇多田ヒカル「One Last Kiss」は4位から10位にダウン。これでベスト10ヒットを10週連続としましたが、後がなくなってきました。さらに、米津玄師「STRAY SHEEP」は残念ながら今週12位にダウン。ベスト10返り咲きは1週のみとなりました。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2021年5月19日 (水)

ついにあの曲が!

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

まず今週はベスト10圏内ではなく、「圏外」の話から。今週は比較的初登場の多い週だったのですが、ついにYOASOBI「夜に駆ける」が11位にダウン。昨年の4月29日付チャート以来、1年以上にわたりベスト10をキープしてきたこの曲が、ベスト10陥落となりました。これで連続ベスト10記録は55週でストップとなりました。

今週はほかにもAdo「うっせぇわ」が12位にランクダウン。こちらもベスト10ヒットは17週連続でストップ。話題性の高い曲だったのですが、思ったほどロングヒットにはなりませんでした。ちょっと癖が強すぎるという面もあるからでしょうか。ほかにも優里「ドライフラワー」が3位から6位にダウンしたほか、BTS「Dynamite」も8位から10位にダウンと、ロングヒット曲が軒並みダウンとなっています。「ドライフラワー」はこれで26週連続、「Dynamite」は39週連続のベスト10ヒットとなり、さすがに飽きられはじめたのか・・・という感もありますが、とはいえ、「ドライフラワー」は今週もストリーミング数及びカラオケ歌唱回数で1位をキープ。「Dynamite」もストリーミング数はワンランクダウンながらも3位、You Tube再生回数は2位をキープしていますので、まだまだ根強い人気は感じます。今週ベスト10落ちした2曲と共に、まだ巻き返しの可能性はありそうです。

さらに今週、YOASOBIについては、新曲「もう少しだけ」が4位に初登場。ダウンロード数1位、ストリーミング数4位、ラジオオンエア数6位、Twitterつぶやき数42位、You Tube再生回数18位。なんと、同作はフジテレビ系「めざましテレビ」テーマソング。確かに、お天気お姉さんによる天気予想が聴こえてきそうな、爽やかなナンバーになっています。YOASOBIの知名度もお茶の間レベルになったということでしょう。また「怪物」は4位から7位と3ランクダウンながらもこちらはベスト10をキープ。これで17週連続のベスト10ヒットとなり、今週もYOASOBIは2曲同時ランクインとなりました。

一方、1位については今週もジャニーズ系が獲得。Hey!Say!JUMP「ネガティブファイター」が初登場で1位。CD販売数、PCによるCD読取数及びTwitterつぶやき数で1位獲得。ラジオオンエア数14位、You Tube再生回数41位。日テレ系ドラマ「探偵☆星鴨」主題歌。オリコン週間シングルランキングでも初動売上21万5千枚を売り上げて1位初登場。前作「Your Song」の21万枚(1位)から若干のアップ。

2位もアイドル系。AKB48の姉妹グループで福岡は博多を中心に活動するHKT48「君とどこかへ行きたい」がランクイン。CD販売数2位、PCによるCD読取数20位、Twitterつぶやき数89位。オリコンでは初動売上14万1千枚で2位初登場。前作「3-2」の16万1千枚(1位)からダウン。

3位には韓国の女性アイドルグループTWICE「Kura Kura」が先週の32位からCDリリースに合わせてランクアップし、ベスト10入り。CD販売数3位、PCによるCD読取数6位、ラジオオンエア数11位でしたが、一方、ダウンロード数20位、ストリーミング数37位、Twitterつぶやき数16位、You Tube再生回数30位と幅広くランクインしているのですが、若干順位的には低調な印象も。オリコンでも初動売上7万5千枚は前作「BETTER」の9万3千枚からダウン。7月にニューアルバム「Perfect World」のリリースが予定されている影響もあるのでしょうが、前々作「Fanfare」が初動20万8千枚を記録していたことから考えると、失速傾向が目立ちます。NiziU人気に食われてしまった形なのでしょうか?

そんな訳で今週は、前述のYOASOBI含め、4曲の新曲がランクイン。ほかにも藤井風「きらり」が5位、Official髭男dism「Cry Baby」が10位から8位にじわりとアップするなど、ベスト10の顔ぶれの入れ替わりを感じます。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2021年5月18日 (火)

ラップ+タブラ=?

Title:たのしみ
Musician:U-zhaan×環ROY×鎮座DOPENESS

タブラ奏者として多岐にわたり活躍を続けるU-zhaanとラッパー、環ROYと鎮座DOPENESSのユニットによる初のアルバム。いままでのこのユニットで継続的に活動を続けていましたが、ここに来て初のアルバムリリース。タイトルもそのままストレートに「たのしみ」なのですが、気の合う3人が肩の力を抜いて音楽を楽しんでいる、そんなアルバムに仕上がっていました。

楽曲はどれもタブラの奏でるリズムにラップが重なるスタイル。非常にシンプルながら、普通のドラムスともパーカッションとも、もちろんリズムマシーンの4つ打ちのリズムとは異なるタブラのリズムがとても独特で、気が付いたらそのタブラのリズムにグイグイと惹きこまれ聴きこんでしまいます。さらにこのタブラのリズム、単なるビートではなく、抑揚のあるサウンドには表現力があり、まるで歌っているようにも感じます。この歌っているようなタブラの音色とラップの絡みが実にユニークながらも見事にマッチしています。

また、さりげない日常を綴ったラップもとてもユニーク。この点もメンバーが肩の力を抜いており、純粋にラップを楽しんでいることが伝わってきます。「最近脂モノが食べられなくなった」と率直にラップする「七曜日」からスタートし、ビスケットのギンビスへの愛情を綴った「ギンビス」、なぜかあの世の温泉をテーマとしつつ、素直に温泉の楽しさをラップした「地獄の温泉」に、タイトル通りのおでんをテーマとしつつ、ほっこりとした歌も聴かせる「おでん」など、身の回りをテーマとしたラップにユニークさを感じます。

ただ、そんな中、耳を惹くのが「BUNKA」。ラップでHIP HOPの歴史とタブラの歴史を重ねて綴る内容に、ラップされる通り、先人達へのリスペクトを感じると同時に、メンバーのHIP HOPやインド音楽への愛情を感じさせる作品になっています。さらに「にゃー」では矢野顕子も参加。タイトル通りの猫をテーマとした音楽なのですが、矢野顕子がかわいらしい猫の歌声で参加しています。ラストの「星の下、しばし」ではボーカルでSalyuが参加。暖かい雰囲気の歌を聴かせるポップスに仕上がっています。

肩の力を抜いた、身の回りをテーマにしたユーモア感覚あふれるラップ・・・というとスチャダラパーを彷彿とさせます。もともと鎮座DOPENESSはスチャダラパーからの影響によりラップをはじめたようですし、その影響はかなり顕著。というか、本作ではスチャダラパーの「サマージャム'95」もカバーしていますし、スチャダラが好きなら間違いなく楽しめる1枚だと思います。

歌うようなタブラのリズムとラップの相性は抜群。3人のメンバーは楽しく音楽を演奏していますし、シンプルでユニークなラップは聴いただけでタイトル通り、楽しくなってくるようなアルバム。独特なリズムが非常に楽しめる1枚でした。

評価:★★★★★

U-zhaan 過去の作品
TABLA ROCK MOUNTAIN
2 Tone(蓮沼執太&U-zhaan)
HENCE(OREN AMBARCHI,JIM O'ROURKE AND U-ZHAAN)

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2021年5月17日 (月)

純粋に「曲」を聴かせるトリビュート盤

Title:筒美京平SONG BOOK

昭和歌謡史に残る数多くのヒット曲を世に生み出した作曲家、筒美京平。いわゆる昭和歌謡曲に大きな痕跡を残しただけでなく、90年代の渋谷系にも影響を与え、その後のJ-POPシーンにも多くの楽曲を送り出してきた彼ですが、昨年10月、80歳で惜しまれつつこの世を去りました。そんな筒美京平を忍んで、様々な企画が立ち上がっているようですが、本作もそんな企画のひとつ。筒美京平へのトリビュートアルバムとなります。

ただ正直なところ、最初、このアルバムにはほとんど惹かれませんでした。というのもこの手のトリビュートアルバムでまず注目する歌い手にいまひとつ食指が引かれなかったため。参加しているのはLiSA、JUJU、乃木坂46の生田絵梨花、Little Glee Monster、TUBEの前田亘輝、T.M.Revolution西川貴教・・・と、いわば売れ線J-POPのシンガーたち、もっと言えばアイドル系シンガーも目立ち、トリビュートとしては正直どうなの??という感覚を持っていました。

しかし、本作は、通常のトリビュートアルバムのようなシンガーを主軸としたトリビュートアルバムではありませんでした。公式サイトの紹介でも、シンガーの紹介より先にプロデューサーの紹介が来ているように、あくまでもこのトリビュートアルバムで筒美京平をトリビュートしているのはプロデューサー。そう考えると、本作で参加しているのは武部智司、亀田誠治、本間昭光、松尾康陽、西寺郷太というそうそうたる顔ぶれ。このメンバーで一気に食指が動かされます。

そのため本作においてはボーカルはあくまでも楽曲の素材のひとつ。その結果として、それぞれの楽曲にマッチしたボーカリストがしっかりと起用されていました。また、プロデュースワークにしても、必要以上にプロデューサーの個性を前に出している訳ではありません。例えば小西康陽プロデュースによる「シンデレラ・ハネムーン」。小西康陽といえば、サウンドが特徴的ですが、一青窈をボーカルとして起用したこの曲は、ジャジーな雰囲気を醸し出しつつ、必要以上に小西サウンドを押し出さず、曲を持つ素材の良さを見事に調理しています。松尾潔プロデュースによる「魅せられて(エーゲ海のテーマ)」も、原曲よりもファンク色を押し出しているあたりに松尾潔らしさを感じますが、あくまでも原曲がもともと持っていたファンクの要素を引き出しただけにすぎず、こちらもLittle Glee Monsterの芹奈、かれんのセクシーさすら感じるボーカルで上手く原曲の良さを上手く調理しています。

他の曲にしても、あくまでも原曲の良さを生かし、純粋に曲を聴かせる作品ばかりで、武部聡志プロデュースの「人魚」も見事。ストリングス主体のアレンジも原曲に準拠していますが、LiSAのボーカルも予想していたよりも表現力豊かに聴かせます。LiSA本人の楽曲は、アレンジの悪い意味でのJ-POP的な平坦なアレンジに興味を惹かれないのですが、こう聴くと、ボーカリストとしてのLiSAの実力を感じさせます。

ちょっとウィスパー気味で切なさを醸し出す武部聡志、本間昭光プロデュース、橋本愛ボーカルの「木綿のハンカチーフ」も聴かせる曲の1つ。ピアノを聴かせつつ、ドリーミーにまとめた本作は、このアルバムの中では比較的原曲のイメージから異なったモチーフを聴かせてくれるのですが、それでも原曲の持つ、切なさを上手く調理しています。

予想外に秀逸だったのが武部聡志、亀田誠治プロデュースによる乃木坂46の生田絵梨花による「卒業」。原曲の持つ、はかなさと切なさが彼女のボーカルにピッタリマッチ。もともと原曲自体、斉藤由貴によるアイドルポップだったのですが、ボーカリストの持つアイドル的な清純さが曲にマッチ。非常に胸を締め付けられるようなカバーになっています。

ユニークなところでは本間昭光プロデュースによるmiwa「サザエさん」もユニーク。以前からいろいろなところで指摘されているようにモータウンからの影響が垣間見れる本作を、よりモータウンビートを前に押し出すような形にアレンジを聴かせます。miwaの陽性の高いボーカルも楽曲にピッタリとマッチしています。

全体的には男性ボーカル曲よりも女性ボーカル曲の方が秀逸な曲が多かったのですが、男性ボーカルの中でもユニークだったのが武部聡志プロデュースによる前田亘輝「さらば恋人」でしょう。こちらはプロデュースワーク以上に、完全に堺正章とシンクロした前田のボーカルが楽しめるカバーに。こちらはボーカリストとしての実力も感じます。

基本的にはどの曲も、筒美京平の持つ曲のよさをしっかり生かした秀逸なプロデュースワークの目立つアルバムとなっており、なによりも筒美京平の曲の良さ自体にスポットのあてられた、非常に素晴らしいトリビュートアルバムに仕上がっていました。あらためて筒美京平の才能を感じさせる理想的なトリビュートアルバム。ボーカリストのファンかどうか関係なく、ポップス好きには無条件でお勧めしたい文句なしの作品です。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

yesworld/TK from 凛として時雨

TK from 凛として時雨の約1年ぶりとなる新作は、全5曲入りのEP。マイナーコード主体の、これでもかといったほど哀愁感を詰め込んだサウンドと、それに呼応するかのような、叫ぶような焦燥感たっぷりの楽曲スタイルは相変わらず。良くも悪くも大いなるマンネリな部分は否めず、正直、フルアルバムのボリュームだと最後の方は飽きが来そうなのですが、5曲入り程度のEPだと、それよりも楽曲の持つインパクトの強さが前に出て、最後まで文句なしに楽しめる作品になっていました。

評価:★★★★★

TK from 凛として時雨 過去の作品
flowering
contrast
Fantastic Magic
Secret Sensation
white noise
彩脳

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2021年5月16日 (日)

成長するアルバム

今回紹介するのはドレスコーズによるちょっとユニークな試みのアルバムです。

Title:バイエル(Ⅰ.)
Musician:ドレスコーズ

まず、今年4月7日に突如配信でリリースされたのが「バイエル(Ⅰ.)」と名付けられた本作。著名なピアノ教則本と同じ名前のタイトルのアルバムは全11曲、静かなピアノの音色のみが収録されたピアノ曲が収録されていました。楽曲はいずれも「練習曲」と名付けられ、それが第1番から第11番まで続く内容に。この奇妙なアルバムについて志磨遼平は「まなびと成長」がテーマと語っており、「成長するアルバム」であると語っています。

そして、続く23日にリリースされたのが「バイエル(Ⅱ.)」と名付けられた続編。

Title:バイエル(Ⅱ.)
Musician:ドレスコーズ

「バイエル(Ⅰ.)」でピアノ曲として披露されていた曲が弾き語りに成長。さらに歌詞もつきました。1つの曲について成長の過程を見せるという試みは非常にユニーク。ちなみに6月にはパッケージ版のリリースが予定されています。この弾き語り版よりもさらに進化しているのでしょうか?

この「バイエル(Ⅰ.)」から「バイエル(Ⅱ.)」への成長は、単なるピアノのインスト曲に歌がついた、というだけではなく、間違いなく成長している点もユニーク。「練習曲 第6番」はほかと同様のピアノインスト曲だったのですが、「しずかなせんそう」ではピアノ曲ではなくアコギの弾き語りへと進化。「よいこになる」も同じく、アコギでしんみり聴かせる楽曲に。ピアノオンリーだった「バイエル(Ⅰ.)」と比べてアコギ曲が加わりますが、成長の過程で、この曲にはアコースティックギターの方がふさわしい、という判断があったのでしょう。ここらへんの聴き比べも楽しめます。

そんな成長を遂げた「バイエル(Ⅱ.)」ですが、このコロナ禍の中で家にこもってつくったアルバムということもあって、コロナ禍がダイレクトに反映された曲になっている点が大きな特徴。1曲目はそのものズバリ「大疫病の年に」ですし、続く2曲目「はなれている」もこのコロナの状況を彷彿とさせます。「ちがいをみとめる」も、ここ最近の、特にネット上での激しい意見相違による対立を彷彿とさせますし、「しずかなせんそう」というのも、このコロナ禍の状況を彷彿とさせる描写になっています。

基本的にそれらの曲も、コロナをストレートに反映させた社会派の曲ではなく、シンプルなラブソングなのですが、ちょっと異色的だったのが「不要不急」でしょう。非常事態宣言の中、「不要不急」な外出を控えるようにというアナウンスが政府からしきりに発表されましたが、そんな中で自分のことを「不要不急」と歌うこの曲は、ある意味、「不要不急」な扱いをされているミュージシャンたちの叫びのように感じました。

弾き語りの曲を含めて、シンプルなサウンドがメインなだけに、メロディーラインがより際立つこれらのアルバム。特に今回感じたのは、志磨遼平の書くメロディーラインのあくの強さでした。特に「バイエル(Ⅰ.)」の「練習曲」については、ピアノでメロディーラインを弾くだけのシンプルな曲だからこそ、聴いていて一発で志磨遼平のメロディーだ、とわかるような曲が並んでいました。あまりにも彼の個性が強すぎて「あれ、既発表曲だったっけ?」と思ったほど。ただ、ピアノだけで聴くと、ちょっと癖が強すぎる印象を受けたのですが、これまた癖の強い彼の歌声にのると、癖の強さ同士でちょうど中和しあって、ほどよいポップスとしてのバランスを保っているのがユニークなところ。今回のアルバムでの新たな発見でした。

未完成な状況で発表し、その後アップデートする手法自体は、以前、カニエ・ウェストがアルバム「The Life Of Pablo」にて、一度配信したアルバムをアップデートしていくという手法を試みたことがあります。それいえばKANちゃんも、ライブ会場限定で、発表前の曲をCDにてリリースしたことがありました。そういう意味で配信によってミュージシャンが比較的容易に、自分の楽曲を発表できる状況の中、曲の成長を見せるという手法自体はさほど斬新ではないかもしれません。ただ、ピアノオンリーのインストから弾き語りへと成長させることにより、志磨遼平のコアな部分がよりあらわになったアルバムであることは変りませんし、非常にユニークな試みであることには間違いないでしょう。

ただ少々残念だったのは「バイエル(Ⅱ.)」のリリースに合わせて「バイエル(Ⅰ.)」の配信が終了してしまった点。パッケージ版「バイエル」の初回盤に「バイエル(Ⅰ.)」の内容がCD音源としてついてくるみたいなのですが、やはり「バイエル(Ⅱ.)」と容易に比較する意味でも、配信は続けてほしかったなぁ・・・。ちなみにパッケージ版ではさらなる成長を遂げているのでしょうか?Twitterの発言などからすると、今後も成長を遂げそうな予感もあり、ひょっとしたらパッケージ版の次に「バイエル(Ⅲ.)」としてあらたな配信もありうるかも。この挑戦、これからも要注目です。

評価:
バイエル(Ⅰ.) ★★★★
バイエル(Ⅱ.) ★★★★★

ドレスコーズ 過去の作品
the dresscodes
バンド・デ・シネ
Hippies.E.P.

オーディション
平凡
ジャズ


ほかに聴いたアルバム

NEW GRAVITY/Nulbarich

Nulbarichフルアルバムとしては約2年2ヶ月ぶりとなるニューアルバム。最近ではSuchmosの活動休止などもあり、一時期話題となった、彼らのようなジャズ、ブラックミュージックをベースとしたバンドのブームも若干下火になっていますが、そんなことはお構いなしに、彼らは彼らのスタイルを貫いています。特に作品では80年代ニューウェーブの影響も取り入れたエレクトロサウンドの作品も目立ち、新しさと懐かしさを同居させたようなシティポップを聴かせてくれています。今回のアルバムは2枚組で、Disc2では他のミュージシャンとのコラボが収録されていますが、こちらも80年代的な色合いが強い作風に。若干メロディーラインのフックの弱さは前作までの作品同様、気になる部分もあるのですが、概していままでのアルバムでは一番楽しめた作品でした。

評価:★★★★★

Nulbarich 過去の作品
Who We Are
Long Long Time Ago
H.O.T
The Remixies
Blank Envelope
2ND GALAXY

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2021年5月15日 (土)

大ベテランと若手の融合

Title:McCartney III Imagined
Musician:Paul McCartney

昨年12月にリリースされ、随所で大絶賛により迎え入れられた大御所、Paul McCartneyの新作「McCartneyIII」。1970年にリリースされたアルバム「McCartney」、1980年にリリースされた「McCartneyII」の続編にあたる作品としても大きな話題を呼びました。その話題となった「McCartneyIII」のリリースから約5ヶ月。この「McCartneyIII」を様々なミュージシャンが再構築したリミックスアルバムがリリースされました。

このリミックスアルバムでなによりユニークだったのがその人選。いうまでもなくPaul McCartneyといえば、The Beatlesのメンバーとして音楽史にその名を燦然と輝かせる大御所中の大御所。ただ一方、やはりメインとなるリスナー層もThe Beatlesをリアルタイムで聴いたか、もうちょっと下の世代がメインなのではないでしょうか。

しかし、今回のリミックスでは新進気鋭の若手ミュージシャンが多くリミックスに参加しています。「Pretty Boys」は、昨年アルバム「Mordechai」が話題となったKhruangbinがリミックス。タイ式ファンクグループと言われ、独特のグルーヴ感を出している彼らですが、「Pretty Boys」も、完全に彼らの土俵にのった、サイケなグルーヴ感を醸し出しています。「Women And Wives」では、アルバムをリリースする毎に大きな話題を呼ぶSt.Vincentがリミックス。ホーンセッションやピアノを入れて、原曲をよりムーディーな雰囲気に仕上げています。

「Deep Down」もご存じBlood Orangeがリミックス。原曲のメロはそのままに、エレクトロアレンジにより「今風」な作品に衣替え。「Seize The Day」も昨年アルバム「Punisher」が大きな話題を呼んだシンガーソングライターのPhoebe Bridgersが担当。リミックスというよりはカバーといった感じなのですが、メロディアスなポップが彼女のボーカルにも見事マッチしたカバーに仕上がっています。

おそらくこのあたりのシンガーは、「McCartneyIII」を聴くリスナー層的には「誰?」といった感じのミュージシャンかもしれません。ただ、この大ベテランの曲を若手ミュージシャンがリミックスするという構図が非常にユニーク。良くも悪くも昔かたぎな部分も否定できない彼の作品が、今風のアレンジで生まれ変わっています。ただ結果としては、今風のサウンドにもしっかり耐えられる優れたメロディーラインを持っている曲ということを再認識させられ、あらためてポールのすごさを感じます。

一方ではポールにしてみれば「ひよっこ」かもしれませんが、一般的には十分ベテランの域に達しているミュージシャンも参加。冒頭「Find My Way」はBeckがリミックスを担当。彼らしい軽快で楽しいポップチューンに仕上がっています。「Long Tailed Winter Bird」はデーモン・アルバーンがリミックス。エレクトロアレンジがほどこされ、原曲のイメージを保ちつつ、また異なる雰囲気のアレンジが楽しい曲に。さらにQueens Of The Stone AgeのJosh Hommeは「Lavatory Lil」をカバー。こちらは彼らしいハードロックスタイルのアレンジの曲に仕上がっています。

そんな訳で、「McCartneyIII」の曲が様々なミュージシャンによって生まれ変わった非常にユニークなリミックスアルバム。また一方ではどのようなアレンジ、カバーをほどこされてもしっかりと曲の魅力が伝わる内容となっており、ポールの曲の持つ、メロディーラインの強靭さをあらためて実感し、彼の実力を再認識させられる内容にもなっていました。特に大御所と新進気鋭の若手ミュージシャンの組み合わせがユニークだった本作。これではじめて知った、というミュージシャンのアルバムも、一度聴いてみては?音楽の世界が広がるかもしれません。

評価:★★★★★

PAUL McCARTNEY 過去の作品
Good Evening New York City
NEW
Egypt Station
McCartneyIII

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2021年5月14日 (金)

本領発揮の3枚目

Title:FRUITFUL
Musician:堀込泰行

ご存じ、かつては兄堀込高樹と共にバンド、キリンジで活躍した弟、堀込泰行の、ソロとして3枚目となるオリジナルアルバム。バンドとしてかなり積極的に活動した兄高樹率いるKIRINJIは、バンド形式となってからオリジナルアルバムを4枚リリース。かなり積極的な活動が目立ちました。一方、弟泰行はオリジナルアルバムとしては本作で3枚目。ただ、その間も他のミュージシャンとのコラボEP「GOOD VIBRATIONS」シリーズ2作や、カバーアルバム「"Choice" by 堀込泰行」をリリースしており、兄に負けず劣らず積極的な活動が目立ちました。

ただ、ソロ1作目「One」も、2作目「What A Wonderful World」も、傑作アルバムであることには間違いないものの、キリンジ時代と比べると積極的に音楽性の幅を広げ、バンドとしての可能性を追求していったKIRINJIの作品に比べると、ちょっと物足りなさというか、インパクトの不足を感じるアルバムになっていたようにも感じます。特にバンドKIRINJIとしてのラスト作「cherish」がキリンジとしての可能性を広げた、2019年を代表する傑作だったに対して、残念ながら堀込泰行のアルバムは、キリンジのイメージの枠内にとどまっていたようにも感じました。

しかし、そんな中リリースされた3枚目の本作は、ポップミュージシャン堀込泰行の本領が発揮された、非常に良質なポップアルバムの名盤といって間違いない作品になっていたように感じます。まず、アルバムの冒頭を飾る「Stars」が素晴らしい名曲に。ファルセットも活用しつつ、伸びやかに歌い上げるミディアムテンポのナンバーですが、コーラスラインなどにゴスペルの要素を入れつつ、祝祭色の強い楽曲に仕上がっており、まずは非常に心地よさを感じさせる作品となっています。

そんなポップチューンから2曲目「Here,There And Everywhere」ではいきなりギターリフが切り裂くイントロからスタートするロック調の楽曲に。コミカルでユーモアタッチの曲調ながらも、よくよく読むと微妙に怖いような気もする歌詞も、彼らしさを感じさせる楽曲になっています。

そしてここからは彼らしいメロウなポップチューンが続きます。「光線」はシンプルながらも単純な描写の中に恋人の心理がしっかり描かれている歌詞が秀逸なのですが、こちらは同作で唯一、他の作家による作詞曲で、シンガーソングライターの阿部芙蓉美が作詞を手掛けています。堀込泰行らしいいうと、その次の「5月のシンフォニー」でしょう。ピアノやアコースティックギターを主軸としたサウンドが実に美しく、清涼感あふれる歌詞の世界もとても心地よい、非常に明るさを感じるポップチューンに仕上がっています。

続く「Sunday Driver」はこのアルバム唯一のインストチューンなのですが、ブルージーなスライドギターが印象に残る作品。アルバムの中でちょうどよいアクセントになっていますし、「Sunday Driver」なんていう曲名の選択のユニークさにも彼らしさを感じます。さらに「君と僕」もシンプルな歌詞も魅力的な爽やかなポップチューンが魅力的ですし、続くバラードナンバー「マイガール・マイドリーム」もAORな曲調が印象に残る曲。さらに切ないメロが魅力的な「涙をふいて」と、後半もインパクトあるメロウなポップチューンが続き、ラストは再び「Stars -reprise」で祝祭色ある明るい雰囲気でアルバムは締めくくられます。

インストチューンを含めて捨て曲が1曲もないという、実に魅力的なポップスが並んだ本作。歌詞も彼らしいシンプルな優しい言葉の使いまわしをしつつ、独特な言い回しでしっかりと独自の世界観を作り上げているという、キリンジから続く堀込泰行らしさが最大限に発揮された作品になっていました。文句なしにソロでの最高傑作と言えますし、また、本年度を代表しそうな傑作の1枚の登場、といっても過言ではないでしょう。堀込泰行の本領発揮となる、彼の魅力がつまった傑作アルバムでした。

評価:★★★★★

堀込泰行 過去の作品
River(馬の骨)
"CHOICE" BY 堀込泰行
One
GOOD VIBRATIONS
What A Wonderful World
GOOD VIBRATIONS 2

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2021年5月13日 (木)

カオスなサウンドの中にポップなメロが

Title:ULTRAPOP
Musician:The Armed

最近、イギリスでもアメリカでも、次々と勢いのあるロックバンドが話題となっているような印象を受けます。今回紹介するバンドもそんなバンドの一組。アメリカはデトロイト出身のハードコアバンド、The Armed。デビューは2009年ですので、バンドとしては既に「中堅」の域に入っているバンドですが、デビュー作から一貫してダウンロードでのリリース+アナログ盤というリリース形態を貫いてきました。そしてフルアルバムとしては4作目となる本作で、はじめてCDでリリース。だから、という訳ではありませんが、本作も各所で高い評価を受けており、私もはじめて彼らのアルバムを聴いてみました。

彼らはいわゆるハードコアバンド、さらには「カオスティック・ハードコア」と呼ばれるそうで、ヘヴィーでノイジーなギターサウンド、力強くダイナミックなバンドサウンド、シャウト気味のボーカルというサウンドの中に、さらにエレクトロサウンドを加えてくるという楽曲を展開。まさに「カオスティック」という表現がピッタリとくるハードコアなサウンドを聴かせてくれています。

ただ、そんなサウンドを主軸にしつつ、今回のアルバムのタイトル「ULTRAPOP」。この表現は決して皮肉でもなんでもなく、所々に狂おしいほどのポップな要素を入れてくるというのが、本作の大きな特徴でした。タイトルチューンの1曲目「ULTRAPOP」などがまさにそう。アルバムのイントロ的な役割も果たす本作は、ミディアムチューンの出だしは、むしろ美しいサウンドにのせた歌声が流れてきます。しかし、この美しい歌声を切り裂くかのようなノイズが走ってくるのが本作の特徴。そしてそのままながれこむ2曲目「ALL FUTURES」もノイジーなサウンドとボーカルのシャウトが主軸となりつつも、アップテンポなサウンドには、意外にもポップなメロディーを感じさせます。

ノイジーなバンドサウンドで埋め尽くされる「A LIFE SO WONDERFUL」も、ポップパンクとも言えるようなメロディーラインが流れているのが特徴的。続く「AN ITERATION」もギターノイズのイントロからスタートするのですが、歌がはじまると、意外とポップでキュートさすら感じるメロディーラインが流れ出します。

「AVERAGE DEATH」もダイナミックなビートを聴かせつつ、メロにはメランコリックさを感じさせますし、「REAL FOLK SONG」もハードコアでノイジーなバンドサウンドの中に、確実にメロディアスな「歌」を感じさせる楽曲となっています。一方では「BIG SHELL」「FAITH IN MEDICATION」のような、ボーカルのシャウトと、これでもかというほどノイジーで激しいバンドサウンドをダイナミックに聴かせる楽曲もあり、「カオスティック・ハードコア」の真骨頂ともいえるような楽曲ももちろん少なくありません。

ただ、このノイジーなバンドサウンド+ポップなメロという組み合わせは、シューゲイザー系もそうですし、先日紹介したSPIRIT OF THE BEEHIVEもそうですし、決してパターンとしては珍しくありません。ただ、そんな中で彼らがよりユニークだったのは、これだけ狂暴なサウンドを繰り広げながらも、楽曲全体の雰囲気としては、ダウナーだったりダークだったりすることなく、むしろ明るくポップさを感じさせる点でしょう。ミュージックビデオでもコスプレを披露するなど、冗談なのか本気なのかよくわからないコミカルな作品を見せてくれているそうですが、音楽的にも、どこかコミカルな明るさを感じさせる部分があり、それが彼らの大きな魅力になっているように感じました。

個人的にはかなり壺にはまった、2021年を代表する1枚といっても間違いなさそうな傑作アルバムだったと思います。ロック好きなら間違いなく楽しめる1枚。今後、日本でも知名度があがっていきそうな予感も。これからが楽しみになる傑作でした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

The Best of The Merrymakers/The Merrymakers

97年にリリースされたシングル「Monument of Me」がスマッシュヒットを記録し、日本でも話題となったスウェーデン出身のポップスロックバンドThe Merrymakers。本作は、そんな彼らの日本独自企画によるベスト盤。なにげにThe Merrymakersをしっかりと聴くのはこれがはじめてなのですが、ビートルズ(それも初期)直系のメロディーをさらにスウィートにしたポップなメロディーと、ほどよく「ロック」しているバンドサウンドの調合具合が絶妙で、一気に魅了されました。確かに、ベスト盤として20曲以上の内容を聴くと、メロディーラインはちょっとくどい「ベタ」な印象は否めず、若干一本調子な部分もあり、90年代後半一世を風靡していながら、そのあとが続かなかった理由もなんとなくわかるのですが、ただ、スウィートでキュートなメロディーラインの連続にそんなことはどうでもよくなるような魅力がこのベスト盤には間違いなくあります。全ポップスリスナー必聴の至極のポップアルバムです。

評価:★★★★★

Let The Bad Times Roll/THE OFFSPRING

約9年ぶりとなるTHE OFFSPRINGのニューアルバム。曲が流れた瞬間に「あ、オフスプだ!」と一発でわかってしまうあたりに、彼らの強さを感じます。確かに内容的には、完全にいつものオフスプといった感じで目新しさはゼロなのですが、逆に、大いなるマンネリ的に安心感もある作品とも言えるかも。マイナーコード主体のアップテンポなメロディーにも関わらず、これだけ楽しい雰囲気を醸し出すのはオフスプならではといった感じでしょうか。素直に楽しめたアルバムでした。

評価:★★★★

THE OFFSPRING 過去の作品
RISE AND FALL,RAGE AND GRACE
DAYS GO BY

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2021年5月12日 (水)

今週はジャニーズ系が1位獲得

今週は集計対象週がGWということで、特にHot Albumsで初登場は少な目。そのため、Hot100、Albums同時更新となります。

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

ここ最近、K-POP系のアイドルの1位獲得が続きましたが、今週はジャニーズ系が1位獲得となりました。

今週1位はジャニーズWEST「サムシング・ニュー」。CD販売数、PCによるCD読取数及びTwitterつぶやき数で1位、ラジオオンエア数23位を獲得し、総合順位で1位獲得。作詞作曲はあいみょんが担当しているのですが、メロディーもアレンジもどこかミスチルっぽいのですが、気のせいでしょうか?オリコンでは初動売上21万7千枚で1位初登場。前作「週間うまくいく曜日」の22万7千枚(1位)よりダウン。

2位は、今もっとも話題の男性シンガーソングライターともいえる藤井風「きらり」がランクイン。Honta「VEZEL」CMソング。配信限定シングルながら、ダウンロード数及びラジオオンエア数で1位獲得。ストリーミング数12位、Twitterつぶやき数及びYou Tube再生回数30位を記録し、総合順位は見事ベスト10入り。楽曲は軽快でファンキーなシティポップ風の作品に仕上げています。今後のロングヒットが期待されますが、ちょっとストリーミング数とYou Tube再生回数の順位が低いのが気になるところです。

3位は優里「ドライフラワー」が5位から2ランクアップで3週ぶりのベスト3返り咲き。ストリーミング数は1位をキープしているほか、ダウンロード数が9位から3位に大幅アップ。You Tube再生回数も7位から6位にアップ。これで25週連続のベスト10ヒット&通算12週目のベスト3ヒットとなりました。

続いて4位以下の初登場曲ですが、今週初登場は1曲のみ。10位にOfficial髭男dism「Cry Baby」がランクイン。アニメ「東京リベンジャーズ」主題歌。ダウンロード数2位、ラジオオンエア数で4位を記録しましたが、そのほかはストリーミング数48位、Twitterつぶやき数61位のみ。ダークな雰囲気のカッコいいナンバーなのですが、ランキング的にはあまり伸びていない模様。今後の奮起が期待されます。

そんな訳で、先週は初登場曲が多かった影響でロングヒット曲のランクダウンが目立ちましたが、今週は一転、ロングヒット勢の巻き返しが目立ちました。まずYOASOBI「夜に駆ける」が先週の10位から7位に再びランクアップ。これで55週連続のベスト10ヒットとなっています。ストリーミング数が4位で横ばい、You Tube再生回数は9位から7位、ダウンロード数も14位から12位にアップ。一方「怪物」は3位から4位にダウン。ストリーミング数3位はキープしているものの、ダウンロード数は7位から10位にダウン。ただし、You Tube再生回数は5位から3位に再びアップ。これで16週連続のベスト10ヒットとなりました。

BTS「Dynamite」は7位から8位にワンランクダウン。ただ、ストリーミング数は2位をキープ。You Tube再生回数も3位から2位にアップしています。これで38週連続のベスト10ヒットとなりました。

Ado「うっせぇわ」も先週から変わらず9位をキープ。これで17週連続のベスト10ヒットに。こちらもダウンロード数が6位から9位にダウンしたものの、ストリーミング数は6位をキープ。You Tube再生回数も6位から4位にアップしています。ちなみに先週4位にランクインしてきた「踊」は今週ワンランクダウンの5位に。You Tube再生回数は今週も1位をキープしており、今後のヒットが期待されます。


今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

Hot Albumsは今週もK-POPが1位獲得・・・。

今週1位初登場は韓国の男性アイドルグループMonsta X「Flavors of love」。CD販売数1位、ダウンロード数47位。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上1万2千枚で2位初登場。前作「Phenomenon」の4万5千枚(2位)よりは大きくダウンしています。

実は今週、初登場盤はこの1枚のみ。初登場が少なかったため、2位以下はロングヒット盤や返り咲きとなるアルバムが並びます。

2位は先週10位までランクダウンしていたYOASOBI「THE BOOK」が一気にランクアップし、6週ぶりにベスト3返り咲き。これで18週連続のベスト10入りとなります。ダウンロード数及びPCによるCD読取数がいずれも1位を獲得。ただ、先週もダウンロード数2位、PCによるCD読取数1位とさほど各種チャートは上昇していないため、ランクアップは初登場盤が少なかったことによる相対的な影響が大きいようです。また3位は先週1位のENHYPEN「BORDER:CARNIVAL」が2ランクダウンながらもベスト3をキープしています。

4位以下での返り咲き盤は、まず米津玄師「STRAY SHEEP」が13位から5位にランクアップ。3週ぶりのベスト10返り咲きを果たし、通算27週目のベスト10ヒットとなりました。さらに今週、藤井風「HELP EVER HURT NEVER」が先週の14位からランクアップし、昨年の8月26日付チャート以来38週ぶりのベスト10返り咲きを果たしています。言わずもがなHot100でもランクインしてきた新曲「きらり」の影響でしょう。ダウンロード数も7位から2位、CD販売数も21位から7位に大きくアップ。オリコンでも10位にランクインしてきています。さらにゲームのサントラ盤「『ウマ娘 プリディーダービー』WINNING LIVE 01」が先週の22位から10位にランクアップ。3週ぶりのベスト10返り咲きを果たしています。

ロングヒット盤では宇多田ヒカル「One Last Kiss」が先週の3位からワンランクダウンの4位。これで9週連続のベスト10ヒットを記録しています。

今週のチャート評は以上。また来週の水曜日に!

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2021年5月11日 (火)

4作まとめて立派なライブアルバム

コロナ禍で「ステイホーム」が強制され、ライブ開催もままならない中、ご存じの通り、最近は様々なミュージシャンが過去のライブ音源をYou Tubeなどの動画サイトにアップし、話題を呼んでいます。その中で、3月下旬からU2が、彼らのキャリアの中でもっとも「伝説的」といえる4つのパフォーマンス映像を「The Virtual Road」としてYou Tube上にアップして話題となりました。さらに、そのライブ映像の中から数曲をピックアップして4組のEPが配信限定でリリースされています。今回紹介するのは、その4組のEP。

Title:The Virtual Road – U2 Go Home: Live From Slane Castle Ireland EP
Musician:U2

まず第1弾が2001年9月1日にアイルランドはダブリンのスレイン城で行われたライブ。ダブリンといえばご存じU2の故郷であり、タイトル通り、彼らが故郷に錦を飾った凱旋ライブとも言えるのがこのライブです。このライブからピックアップされた4曲入り20分弱の内容。その当時、最新アルバムだった「All That You Can't Leave Behind」の中から「Beautiful Day」「Stuck In A Moment You Can't Get Out Of」と1、2曲目が並びます。特に「Beautiful Day」はスケール感もあり、会場の雰囲気にもピッタリ。さらに「All I Want Is You」を挟み、ラストは名盤「The Joshua Tree」から「Where The Streets Have No Name」。このパフォーマンスには会場も大興奮だったようで、歓声もしっかりと収められています。

そんな訳で凱旋ライブにピッタリのスケール感のある4曲が収録されたアルバム。「All I Want Is You」の後半では観客に歌わせたりと、会場の盛り上がりが伝わってくるライブパフォーマンスになっています。おそらく大盛り上がりだったであろう当日のライブ。その断片を垣間見れるEPでした。

評価:★★★★

Title:Live At Red Rocks: Under A Blood Red Sky EP
Musician:U2

そして本作が第2弾。「WAR(闘)」ツアーより、1983年6月5日のアメリカ・コロラド州のレッドロックス・アンフィシアターでライブからの抜粋。もう40年(!)近く昔のステージで、彼らにとっては、まだブレイクしたての新人時代のライブということになります。楽曲はもちろん、その「WAR(闘)」から、今ではロック界のスタンダードナンバーとなった「Sunday Bloody Sunday」に、同じく同アルバムから「New Year's Day」「"40"」、アルバム「Boy」から「I Will Follow」と、当たり前ですが、今となっては初期の作品が並びます。

ステージも、ベテラン然とした今のステージと比べると、サウンドにもエッジが効いていて、若干荒々しさもあるでしょうか。ただ、演奏にはスケール感も感じられ、まだ若手バンドながらも、大物バンド然とした雰囲気も感じさせるステージになっています。そのため、他のライブEPと並べても、違和感のない演奏を楽しめる作品に。ブレイク直後から、やはり彼らは他とは違う、いい意味での大物だったということを感じさせるライブ盤でした。

評価:★★★★

Title:The Virtual Road – PopMart Live From Mexico City EP
Musician:U2

そして第3弾は「POP」ツアーから、1997年12月3日に、メキシコのフォロ・ソル・スタジアムで行われたライブの模様を収録したEP。その当時の最新アルバム「POP」から「Gone」「Staring At The Sun」「If You Wear That Velvet Dress」の3曲と、アルバム「Achtung Baby」から「Even Better Than the Real Thing」の4曲が収録されています。正直、「POP」はU2のアルバムの中でも若干微妙な立ち位置の作品ではあるのですが、ただ、やはりメキシコというお国柄があるのでしょうか、ライブの盛り上がりはこの4組のEPの中でもピカ一。特に、「Even Better Than the Real Thing」はイントロから大盛況で、最高に盛り上がるステージパフォーマンスを聴かせてくれています。

評価:★★★★

Title:The Virtual Road – iNNOCENCE + eXPERIENCE Live In Paris EP
Musician:U2

そして第4弾がこちらになりますが、こちらは比較的最近。2015年12月7日に行われた、アルバム「Songs of Innocence」のワールド・ツアーの最終日、パリでの公演の模様を収録した作品。このライブ、もともとは11月に開催される予定だったものの、パリ同時多発テロの影響で振替られた公演となります。

すっかりベテランの大御所バンドとなった彼らですが、1曲目「Vertigo」はいきなりヘヴィーなギターリフからスタート。ロックバンドらしい力強い演奏を聴かせてくれていますし、「Unter The End Of The World」でも、スケール感はあるもののロックバンド然とした力強い演奏を披露。今回の4作の中ではもっとも最近のライブなのですが、もっともロックバンドらしいパフォーマンスを聴かせてくれますし、ともすればもっとも若々しいのでは?とすら感じさせるライブを聴かせてくれます。

評価:★★★★

そんな訳で4作のEP。1作あたりの長さはいずれも4曲20分弱程度とちょっと物足りなさを感じるのですが、4作揃うと、全16曲80分弱の立派なライブアルバムになります。1作あたりの評価は★★★★ですが、4作まとめると★★★★★の出来栄え。特にブレイク間際から、最近のライブパフォーマンスまで網羅していて、彼らの歩みを感じられるのも特徴的。若手の頃から、ベテランらしい安定感やスケール感を覚える一方、むしろ最近の作品の方がロックバンドとしての勢いや若々しさすら感じてしまう点、U2のすごさも感じます。音源的には、既にDVDとしてリリースされている作品ばかりで貴重価値はあまりありませんが、配信で簡単に聴けるだけに、まずは気軽にU2のライブの魅力に触れることが出来る配信盤でした。

U2 過去の作品
No Line on the Horizon
Songs of Innocence
Songs Of Experience


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2021年5月10日 (月)

サウンドのバリエーションも増した傑作

Title:よすが
Musician:カネコアヤノ

個人的に、今もっとも注目している女性シンガーソングライターのひとり、カネコアヤノ。もっとも、注目をしているのはもちろん私だけではなく、前作「燦々」が第12回CDショップ大賞<青>に選出されるなど、彼女に対する注目は急速に高まっています。そしてリリースされたのが純然たるオリジナルアルバムとしては、約1年半ぶりとなるニューアルバム。今回の作品に関しても、前作以上に彼女の魅力がつまった傑作アルバムに仕上がっていました。

まず何といっても魅力的なのが、ミディアムテンポで温かさを感じる郷愁感のあるフォーキーなサウンドとメロディーライン。そして、そんなフォーキーな作風ながらも、登場人物の体温が感じられる、もうちょっと生々しい言い方をすると肉感のある歌詞が大きな魅力。1曲目の「抱擁」など、まさに彼女らしい作風の曲で、メロディーラインはフォーキーながら「抱擁をまっていた/胸の中で」とかなりストレートな肉感のあるラブソングとなっています。

「春の夜へ」もしんみり聴かせるフォーキーなメロも大きな魅力なのですが

「昼過ぎ起床の今日の朝へ
インスタントコーヒーをいれるために
熱いお湯を沸かす
やかんが震える空気の部屋」
(「春の夜」より 作詞 カネコアヤノ)

という風景描写からも、どこかまったりとした恋人同士の空気感が感じられ、耳に残る歌詞になっています。

歌詞が印象的というと、「栄えた街の」の歌詞も印象的。「今年はもうきっと何処へも行けない」というスタートの歌詞は、このコロナ禍を彷彿とさせます。カントリー調の軽快で明るい歌詞とはうらはらに、自分たちを「栄えた街の屋上で干されたシーツ」に例えたこの曲は、街の中で無防備な自分たちと、だからこそ2人で手を取り合って進んでいこうとする恋人同士の心証が上手く描かれた歌詞になっています。

そんな感じで、メロディーや歌詞が大きな魅力なのは間違いないのですが、ただなんといっても彼女の最大の魅力は、そのサウンドでしょう。サイケやロック、さらにカントリーやハワイアン、トラッドなどの要素も入ったサウンドに聴いていて強く耳を奪われます。アルバムの冒頭「抱擁」のインストから、いきなりサイケなサウンドからスタートしますし、「手紙」でもサイケ感のあるギターでドリーミーなサウンドが大きな魅力。「栄えた街の」ではカントリーやハワイアンの要素が見え隠れします。

個人的に耳を惹いたのは「閃きは彼方」でしょう。ミディアムテンポで聴かせるナンバーなのですが、ソウルフラワーユニオンあたりを彷彿とさせるようなアイリッシュトラッドなサウンドを取り入れており、郷愁感たっぷりに聴かせてくれます。さらに「腕の中でしか眠れない猫のように」はNIRVANAを彷彿とさせるようなヘヴィーなギターサウンドからスタート。メロは郷愁感あるポップに仕上がっているのですが、ギターリフが終始流れており、ヘヴィーロックの要素が垣間見れる作品になっています。

シンプルなサウンドで空間を聴かせるようだった前作に比べると、音数は増した感もありますが、一方で楽曲のバリエーションも増えた感のある作品で、彼女のあらたな一歩を感じさせます。文句なしの傑作アルバムですし、今年を代表する傑作の1枚とも言えるだけの内容だったと思います。女性シンガーソングライターが好きな方はもちろん、ロックリスナーにも是非とも聴いてほしい傑作です。

評価:★★★★★

カネコアヤノ 過去の作品
燦々
燦々 ひとりでに


TWO-MIX 25th Anniversary ALL TIME BEST/TWO-MIX

今や「大御所」レベルの実力派声優となった高山みなみが作詞家の永野椎菜と組んで活動したユニットTWO-MIX。いわば声優系ミュージシャンの走りのような存在で、90年代後半にヒット曲を次々とリリースしたものの2004年に活動休止。その後は散発的な活動はあったものの、まとまった形での活動はありませんでした。そして昨年、結成25周年を記念してプロジェクトが始動。コロナ禍の影響などでリリース延期にもなっていたのですが、このたび無事、25周年記念のオールタイムベストがリリースされました。

なにげにかつてはデジタルロックの流れで彼女たちの曲も聴いていたので、久しぶりに懐かしさもあってこのベスト盤を聴いてみました。確かに「JUST COMMUNICATION」や「RHYTHEM EMOTION」など懐かしいなぁ、と思いながら聴いていたのですが、うーん、ある程度予想はしていたのですが、やはり今聴くと少々厳しいものが・・・。1曲1曲は悪くはないのですが、ベタな四つ打ちのビートに、どの曲もさほど大差のない曲調で、聴いていて徐々に飽きが来てしまう・・・。せめて1枚に圧縮されていればそれなりに聴けたとは思うのですが。

評価:★★★

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2021年5月 9日 (日)

さらにポップなフラテリスに

Title:Half Drunk Under a Full Moon
Musician:The Fratellis

約2年ぶりとなるフラテリスのニューアルバム。前作「In Your Own Sweet Time」は陽気で楽しい、彼らのポップミュージシャンとしての側面を強調したアルバムに仕上がっていました。今回のアルバムも前作に引き続き、デビュー作「Costello Music」のプロデュースを手掛けたトニー・ホッファーをプロデューサーとして起用。結果として、前作と同様、いや、むしろ前作以上に陽気なポップチューンが楽しいアルバムに仕上がっていました。

1曲目のタイトルチューン「Half Drunk Under a Full Moon」もストリングスの爽やかなサウンドで魅力的なのですが、ポップミュージシャンとしての、本領がまず発揮されているのが続く「Need a Little Love」でしょう。80年代を彷彿とさせるような爽やかなシンセで軽快なポップチューン。ちょっと切ないメロディーラインも非常に魅力的で、この80年代的なサウンドは、ちょっとABBAあたりにつながるような部分すら感じられます。この80年代的なキラキラした雰囲気の爽やかなポップは他にも見受けられ、「The Last Songbird」も同じく、爽快なサウンドに、ちょっと切なさを感じるようなメロディーラインが魅力的。ちょっとノスタルジーな感じを受けるのも大きな魅力です。

80年代的といえば、続く「Lay Your baby Down」もこのノスタルジック感のあるサウンドとメロディーラインが魅力的。こちらは80年代ポップというよりもフォークソングといった感じでしょうか。「Living In The Dark」も同じくフォーキーな雰囲気でノスタルジーな感覚を覚えるポップソング。こちらもメロディーが魅力的なポップチューンとなっています。

「Action Replay」もピアノの音色で美しく聴かせるサウンドが、非常にコッテリとした分厚さがあり、ウォール・オブ・サウンズ的な重厚さと美しさを感じるポップチューンに。さらに「Six Days In June」もホーンセッションも入って軽快で明るいポップチューンに仕上がっており、ワクワク感が増します。

80年代風のポップチューンや、さらに70年代あたりの空気を感じるフォーキーなポップチューンなども並びつつ、全体的には無条件で楽しめる軽快なポップスが並ぶ本作。前作同様、デビュー作「Costello Music」のような突き抜けてキャッチーこそありませんが、それを差し引いても十分ポップなメロディーラインにインパクトがある楽しいポップソングが並んでいました。前作同様、聴いていてワクワクするような、ポップアルバムの傑作。バンドとしてもいい意味での安定感を覚える作品とも言えるかもしれません。これからもどんどんと楽しいポップチューンを聴かせてくれそう。これからも楽しみになる1枚でした。

評価:★★★★★

The Fratellis 過去の作品
Here We Stand
We Need Medicine
EYES WIDE,TONGUE TIED
In Your Own Sweet Time


ほかに聴いたアルバム

Fearless (Taylor's Version)/Taylor Swift

2008年にリリースした彼女の2ndアルバム「Fearless」を再録。同時制作されながらも未発表となっていた6曲を含めた全26曲入りのアルバムとして生まれ変わったアルバム。最近は、カントリーというジャンルを離れて、ポストロック路線にまで近づいてきた彼女ですが、あくまでも彼女の出自はカントリーである、ということを再認識するかのように、再録といってもカントリーの曲のアレンジをガラリと変えるようなことはせず、あくまでも今の彼女が歌うカントリーという体裁の作品となっています。カントリーの、というよりは純粋にシンガーとしての彼女の魅力を良く伝えてくれるアルバムでした。

評価:★★★★

TAYLOR SWIFT 過去の作品
FEARLESS
RED
1989
REPUTATION
Lover
folklore
evermore

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2021年5月 8日 (土)

アバンギャルドながらもキュートなメロも

Title:ENTERTAINMENT,DEATH
Musician:SPIRIT OF THE BEEHIVE

ちょっと馬鹿ジャケ気味なジャケットが印象に残る本作は、アメリカはフィラデルフィア出身のインディーロックバンドの、これで4作目となるニューアルバム。しかし、このジャケット写真に反して(?)本作は、非常に凝った中身を持つ、インパクトのあるかつ独特なサウンドを聴かせてくれるロックアルバムの傑作に仕上がっていました。

本作の特徴を一言で言ってしまうと、様々な音を取り入れたアバンギャルドなサウンドを展開させつつ、キュートとも言えるようなメロディアスなメロディーラインを聴かせるというスタイル。1曲目「ENTERTAINMENT」がまさにそんな作風の楽曲で、冒頭、いきなり様々な音をサンプリングさせながら、破壊的なビートでアバンギャルドにスタート。メロディーさえ流れていないノイズからスタートするのですが、中盤にはそれが一転。メロウなボーカルでメロディアスに聴かせるAORナンバーに早変わりを果たします。ただ、そのバックにも微妙に歪んだエレクトロサウンドが流れ続けているのですが。

続く「THERE'S NOTHING YOU CAN'T DO」も同様。前半はメロをズタズタに切られたような作品からスタートするのですが、このメロディーはよくよく聴くと、非常にポップでメロウなナンバー。後半はシャウトも登場し、ハードコア風な展開となりつつ、そこにノイズものるダイナミックな構成になっています。

ポップなメロがはっきりと流れてくるのが「BAD SON」でしょうか。けだるい雰囲気のAORが流れるポップチューン。ただ、途中でいきなりサウンドがぐにゃっとゆがんだり、ノイズが入ってきたりと、ポップとアバンギャルドのバランスが非常にユニークに。「RAPID&COMPLETE RECOVERY」もウィスパー気味のボーカルで聴かせるシティポップ風の作品なのですが、微妙に歪んだサウンドが耳を惹きます。

「WAKE UP(IN ROTATION)」は、このアルバムで一番明るく軽快なポップナンバーとなっているのですが、それでも様々なサウンドをサンプリングした複雑なサウンド構成が耳を惹きますし、さらにある意味アルバムのハイライトとも言えるのが、この作品で一番の長尺曲となっている「I SUCK THE DEVIL'S COCK」でしょう。最初、軽快で明るいサウンドからスタートし、軽快なギターロックの作品かと思えば、ノイズやエレクトロサウンドで実験的な作風に。かと思えば女性ボーカルをメロウに聴かせる作風に変化したり、サイケなサウンドでしんみり聴かせたりと、7分弱のサウンドの中で彼らの様々な挑戦が試みられる作品になっています。

このノイズなども取り入れたアバンギャルドな作風と、キュートと言えるメロも聴かせるポップなメロディーラインの両立というスタイル、なにげにシューゲイザー系と共通する構図だったりします。実際、アルバムを聴いていると、シューゲイザーを彷彿とさせるような瞬間もあり、個人的にはかなり壺な作風。そんな好みの部分を差し引いても、凝った聴かせどころも多い作品ですし、実験的な部分とポップな部分のバランスも絶妙。そういう意味でも文句なしの傑作ですし、個人的には年間ベストクラスの傑作アルバムだったと思います。名前も含めて完全にはじめて聴いたバンドですが、かなりはまってしまいました。ロック好き、特にシューゲイザー系が好きならぜひとも聴いてほしい1枚です。

評価:★★★★★

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2021年5月 7日 (金)

戦前ジャズの奥深さを感じる

Title:The LOST WORLD of JAZZ 戦前ジャズ歌謡全集・続々タイヘイ篇

戦前のSPレコードの復刻専門レーベル、ぐらもくらぶ。日本の大衆歌謡史を今に伝える貴重な音源を数多く復刻しているレーベルで、当サイトでもたびたび取り上げています。そんなぐらもくらぶの新作は、戦前のレーベル、タイヘイ・レコードからリリースされた戦前ジャズのSPをまとめた1枚。といっても、このタイヘイ篇はタイトル通り、本作が第3弾。昨年の9月に「続タイヘイ篇」がリリースされており、それから半年も満たないスパンでの第3弾となりました。

ただ、それだけタイヘイ・レコードに残された優れた音源が多い、ということなのでしょう。もっとも、ここで言う「ジャズ」は、今、一般的にイメージされるような「ジャズ」ではなく、もっと幅広い、西洋の音楽の要素を取り入れたポップスを「ジャズ」という当時のポピュラーなジャンル名で代用しているところが見受けられます。ちょっと前まで、バンドサウンドを取り入れていれば、猫も杓子も「ロック」と呼ばれていたような現象に似ている感じです。今の言葉で言えば「J-POP」という意味合いが強いのでしょうか。

そのため、今の耳で聴くと、「ジャズ」からはちょっと程遠い感じの曲も少なくありません。「窓の青空」は、今の感覚で言えば、完全に演歌やムード歌謡という「昔ながらの日本歌謡曲」にカテゴライズされそうな曲ですし、「夢のキャラバン」も、異国情緒を感じさせるナンバーですが、こちらも今、ジャンルをつけるとしたらムード歌謡に入れられそうです。

「片思ひ Ukulele Lullaby」は、ジャズというよりもむしろハワイアンな曲。第1弾の「タイヘイ篇」でも第2弾の「続タイヘイ篇」でもハワイアンの曲がありましたから、いかに当時、ハワイアンが日本に浸透していたのかをうかがわせます。伸びやかなミッキィ松山のボーカルも魅力的です。「だけどだけど」も今で言えば完全に演歌の範疇になりそうな楽曲。ただ、丸山和歌子のかわいらしいボーカルと歌詞が魅力的で、今でも通用しそうな魅力的なポップスに仕上がっています。

もちろん軽快なホーンセッションを聴かせてバタ臭い感の強い、スウィングやビッグバンドの影響も強い、いかにもジャズ的な曲も少なくなく、特に「愛の夢 Liebestraum」「オーバーゼアー Over There」など、内本實の歌うこれらの曲は、特にジャズ的な要素の強い作品になっていました。

前作もそうでしたが、「戦前ジャズ」の奥深さを感じさせる優れた企画盤。タイヘイ・レコードというレーベルの魅力を感じさせてくれる1枚でした。次回はタイヘイ・レコードの第4弾でしょうか?それとも別のレーベル?どちらにしろ、いつも優れた企画アルバムをリリースしてくれるぐらもくらぶなだけに、次回作も非常に楽しみです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Caramel Guerrilla/浅井健一

約1年半ぶりとなる浅井健一ソロ名義によるニューアルバム。初っ端から、浅井健一らしいくすんだ雰囲気の空気がむんむんに漂うナンバーで、哀愁感ありつつも、どこか危険な香りのするメロディーラインが実に彼らしさを感じる作品に。「危険な香り」とはいいつつ、良くも悪くも彼らしいという点で「大いなるマンネリ」気味なのは否定できず、その点はマイナスポイントなのですが、実に浅井健一らしいアルバムといった作品になっていました。

評価:★★★★

浅井健一 過去の作品
Sphinx Rose
PIL
Nancy
METRO(浅井健一&THE INTERCHANGE KILLS)
Sugar(浅井健一&THE INTERCHANGE KILLS)
BLOOD SHIFT

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2021年5月 6日 (木)

アルバムもK-POPが・・・

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週もHot100、Hot Albums共に「K-POP系」が1位獲得となりました。

まず今週初登場で1位獲得となったのは韓国の男性アイドルグループENHYPEN「BORDER:CARNIVAL」。CD販売数1位、ダウンロード数3位、PCによるCD読取数92位。オリコン週間アルバムランキングでも初動売上8万3千枚を記録し、1位初登場。前作「BORDER:DAY ONE」の7万1千枚(2位)よりアップしています。

2位にはYUKI「Terminal」が初登場。約2年ぶり、オリジナルアルバムとして10枚目となる作品となります。ダウンロード数は本作が1位獲得。CD販売数2位、PCによるCD読取数18位で総合順位は2位に。オリコンでは初動売上1万6千枚で2位初登場。前作「forme」の2万2千枚(5位)からはダウンしています。

3位には宇多田ヒカル「One Last Kiss」が先週の6位から3ランクアップでベスト3返り咲き。これで8週連続のベスト10入りとなりました。ご存じ映画「シン・エヴァンゲリオン劇場版」のテーマ曲を含む、宇多田ヒカルがかつて「エヴァンゲリオン」の主題歌として提供した曲をまとめた本作。「シン・エヴァンゲリオン」も大ヒットしているようで、Hot 100では「One Last Kiss」はベスト10から陥落してしまいましたが、Hot Albumでは根強い人気を見せています。特にCD販売数が7位から4位にアップ。オリコンでも今週も1万枚を売り上げ3位にランクインしていますが、「エヴァンゲリオン」のファンの年齢層的に、やはり配信よりCDを好むような世代が多いということでしょうか。

続いて4位以下の初登場盤です。まず4位にはNovelbright「開幕宣言」が初登場でランクイン。CD販売数8位、ダウンロード数4位、PCによるCD読取数42位。人気上昇中のロックバンドによるメジャーデビュー後初となるフルアルバム。オリコンでも初動売上8千枚で6位初登場。前作「WONDERLAND」の4千枚(8位)から大きくアップしています。

5位には女性アイドルグループGirls2「Girls Revolution/Party Time!」がランクイン。タイトル曲の2曲+そのほかの曲2曲に、それらの曲のカラオケ4曲が収録という事実上のシングルのような作品なのですが、アルバムとしてランクインしています。CD販売数3位、PCによるCD読取数94位。オリコンでは初動売上9千枚で5位初登場。前作「ジャパニーズSTAR」の3千枚(19位)からアップ。

6位初登場はくるり「天才の愛」。CD販売数9位、ダウンロード数8位、PCによるCD読取数26位。3月にメンバーのファンファンが脱退し、再び2人組となった彼ら。メンバーの入れ替わりが激しいだけに「またか・・・」と思ってしまいます。本作は3人組としての最後のアルバム。ただ、なにげにファンファンの在籍期間は10年近くに及んでいて、岸田繁、佐藤征史以外のメンバーとしては在籍期間は最長となっていたんですね。オリコンでは初動売上7千枚で7位初登場。直近作は未発表曲集「thaw」で、同作の初動5千枚(6位)よりアップ。ただ、オリジナルアルバムとしての前作「ソングライン」の1万3千枚(5位)からはダウンしてしまいました。

7位には女性声優楠木ともり「Forced Shutdown」がランクイン。CD販売数5位でしたが、PCによるCD読取数74位、ダウンロード数ランク圏外で総合順位も7位に留まりました。オリコンでは初動売上1万枚で4位初登場。前作「ハミダシモノ」の9千枚(6位)からアップしています。

さらに9位にはGLAY「ONE LOVE Anthology」が初登場でランクイン。「アンソロジー」シリーズとしての過去作のリマスターシリーズの第7弾で、今回は2001年にリリースされたアルバム「ONE LOVE」のリマスター版。CD販売数6位、ダウンロード数47位。オリコンでは初動売上6千枚で9位初登場。前作はベスト盤「REVIEWⅡ-BEST OF GLAY-」で同作の初動6万4千枚(1位)からはさすがに大幅ダウン。「アンソロジー」シリーズの前作「HEAVY GAUGE Anthology」の5千枚(8位)よりは若干のアップとなっています。

今週の初登場盤は以上。一方、ロングヒット盤ではYOASOBi「THE BOOK」が先週の9位からワンランクダウンの10位に。これで17週連続のベスト10ヒットとなりましたが、さすがに厳しい状況になってきました。ただ、ダウンロード数は先週の1位からダウンしたものの2位をキープ。PCによるCD読取数はいまだ1位を維持しており、まだまだ強さを感じます。

今週のHot100は以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2021年5月 5日 (水)

今週もK-POP系が・・・

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週もK-POP系の男性アイドルグループが1位獲得です。

今週1位を獲得したのはJO1「Born To Be WIld」。CD販売数及びPCによるCD読取数1位、ダウンロード数53位、Twitterつぶやき数2位、You Tube再生回数43位で総合順位は1位に。K-POPといっても「PRODUCE 101 JAPAN」の合格者11人で構成された日本人のアイドルグループで、「韓国製日本人アイドルグループ」といった感じ。要するにNiziUの男性版といったところでしょうか。楽曲自体は紛うことなきK-POPに仕上がっています。オリコン週間シングルランキングでも同曲を含むシングル「CHALLENGER」が初動売上25万4千枚で1位初登場。前作「STARGAZER」の28万3千枚からダウンしています。

2位には星野源「不思議」が初登場。TBS系ドラマ「着飾る恋には理由があって」主題歌で、配信限定のシングル。シティポップからの影響も感じる、今どきのエレクトロポップチューンに仕上がっています。ダウンロード数で見事1位を獲得。ストリーミング数21位、ラジオオンエア数3位、Twitterつぶやき数8位で総合順位はこの位置に。

3位はYOASOBI「怪物」が先週と同順位の3位をキープ。これで15週連続のベスト10ヒットに。ただ、ストリーミング数は3位をキープしていますが、ダウンロード数は2位から7位、You Tube再生回数は3位から5位にダウンしており、若干の下落傾向。一方、「夜に駆ける」は10位にダウン。ついに後がなくなりました。とはいえ今週は珍しく初登場曲が多い週だったので、来週は再びランクアップする可能性はありますが・・・。また「群青」は10位から14位にダウン。3曲同時ランクインは1週で終了しました。

続いて4位以下の初登場です。まず4位に、「うっせぇわ」のヒットで一躍注目を集めたAdo「踊」がランクイン。ダウンロード数2位、Twitterつぶやき数3位、さらにYou Tube再生回数で1位を獲得。ストリーミング数12位、ラジオオンエア数58位で総合順位はこの位置に。作曲編曲にTeddyLoidが参加しており、かなり凝ったエレクトロビートのサウンドを聴かせてくれます。この方向性が吉と出るか凶と出るか・・・。ちなみに「うっせぇわ」は7位から9位に2ランクダウン。これで16週連続のベスト10ヒットとなりましたが、後がなくなってきています。

8位にはハロプロ系アイドルグループJuice=Juice「DOWN TOWN」が初登場。CD販売数は2位、ラジオオンエア数は4位ながら、ダウンロード数39位、PCによるCD読取数22位、Twitterつぶやき数18位に留まり、総合順位はこの位置に。ご存じ山下達郎や大貫妙子が所属していた伝説のバンド、シュガーベイブの代表曲のカバー。いろいろなミュージシャンがカバーしているカバー曲の定番ですが、ハロプロ系で今、この選曲はちょっと意外な感も。

今週の初登場は以上。ここ最近では珍しく、初登場曲も多い週となりました。そのためロングヒット曲は比較的下落傾向。「夜に駆ける」「うっせぇわ」もダウンしましたがBTS「Dynamite」も6位から7位にランクダウン。ただベスト10ヒットを37週連続に伸ばしています。さらにAwesome City Club「勿忘」は今週13位にダウン。ベスト10ヒットは連続11週でストップとなりました。ストリーミング数は今週も5位をキープしていますが、それ以外のチャート指標がなかなか伸びないのが厳しいところです。

そんな中、唯一がんばっているのが優里「ドライフラワー」。先週と変わらず5位をキープ。ストリーミング数も1位をキープしているほか、カラオケ歌唱回数も1位をキープ。これで24週連続のベスト10ヒットとなっていますが、なにげにかなり強い人気を維持しています。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2021年5月 4日 (火)

スポークン・ワードを取り入れた注目のロックバンド

Title:New Long Leg
Musician:Dry Cleaning

若干、バンド名は「ダサカッコいい」的なイメージも抱いてしまうのですが、サウスロンドンを拠点とするポストパンクバンドのデビューアルバム。最近、特にイギリスでは注目のロックバンドが次々と誕生し、一時期はHIP HOP勢などにおされていたロック勢が息を吹き返しつつありますが、彼女たちもそんな注目のロックバンドの一組です。

そんな彼女たちの奏でるサウンドは、基本的にシンプルなオルタナ系のギターロック。決して奇をてらったものではなく、あえて言ってしまうと、さほど目新しさはありません。ただ、そんな中で彼女たちの楽曲の大きな個性となっているのが、ボーカル、フローレンス・ショウのスタイル。彼女はこの曲の中で一切歌っておらず、詩を詠むようなスタイルを取っています。いわゆるスポークン・ワードというスタイルらしく、特に彼女たちが拠点としているサウスロンドンではこのスポークン・ワードのイベントも多く行われているそうです。そんな中で彼女たちのバンド活動がスポークン・ワードと結びついたのも極々自然のことなのかもしれません。

そんな訳で、楽曲の中に「歌」が一切ないスタイルなのですが、作品として決して聴きにくい感はなく、むしろバックのバンドサウンドを含めて、非常にポップにまとまっており、いい意味で聴きやすさを感じる作品になっていました。例えば冒頭を飾る「Scratchard Lanyard」はシンプルなギターリフを主導とするギターロックの作品なのですが、ギターリフの奏でるメロディーが意外とポップで聴きやすく、「Unsmart Lady」もダイナミックさのあるバンドサウンドが心地よさを感じる作品になっています。

中盤の「Her Hippo」やタイトルチューンでもある「New Long Leg」にはギターサウンドにメランコリックさを感じますし、「More Big Birds」はスポークン・ワードというスタイルながらも、メロディアスとすら感じさせます(というか、この曲の中ではフローレンス・ショウもちょっとだけですが歌を歌っています)。

サウンドは全体的にローファイ気味なのですが、それがまた、フローレンスの詩を詠むスタイルにもちょうどマッチしており、ここらへん、バンドサウンドとフローレンスのスポークン・ワードのバランスも絶妙で、彼女の読む詩がすんなり耳に入ってくる反面、バンドサウンドもしっかりとその音を主張しており、両者のバランスの良さを感じさせます。

そんなフローレンスの「詩」は無作為に言葉を並べたような、全体的に散文的な内容が多くなっています。ただ、正直なところ、ここらへんの詩の世界観は、日本人にとってはちょっと距離感を覚えてしまうのは残念なところ。本当は英語の響きを含めて、その世界を味わえるような内容になっているのでしょうが・・・。ただ、その点を差し引いても、彼女の淡々としたボーカルスタイルは楽曲の中で独特かつ不思議な響きとして伝わってきており、私たちにとってもアルバムの中で十分すぎるほど魅力的に感じることが出来るでしょう。

「歌」がないだけに、日本で大ブレイク、というタイプのバンドではないでしょうが、今後、まだまだ徐々に注目を集める予感のするバンドです。特にオルタナ系のインディーギターロックバンドが好きなら間違いなくはまるタイプのバンドだと思います。今後のロックシーンを担う存在になりそうな予感のする、そんな魅力的な傑作アルバムでした。

評価:★★★★★

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2021年5月 3日 (月)

ボーダーライン

Title:ケツノパラダイス
Musician:ケツメイシ

メジャーデビュー20周年を記念してリリースされたケツメイシのベストアルバム。「ケツメイシって、この間、4枚同時リリースのオールタイムベストをリリースしたばかりじゃん」と一瞬思ったのですが、その4枚同時リリースのベストアルバムがリリースされたのがちょうど10年前という事実に愕然としてしまいました・・・月日が経つのは早いなぁ・・・。その後、オリジナルアルバムも4枚リリースされていますし、まあ2枚目のベスト盤がリリースされるとしても妥当といった感じでしょうか。4枚組という内容が、少々ボリューム過多だったイメージのある前作に比べて、本作は2枚組と比較的コンパクトにまとめられており、ケツメイシの歩みのわかるベスト盤となっています。

さて、今回のベスト盤、内容を聴くより先に、ジャケット写真に若干の違和感を覚える方が多いのではないでしょうか。いつものケツメイシのアルバムジャケットと同じように、首里城をバックにメンバー4人の写真なのですが、その4人にどこか違和感が・・・。これ、本人たちが首里城の前で写真を撮ったわけではなく、コロナ禍の影響で沖縄に行けなくなったメンバーに代わって、スタッフが現地に彼らの等身大パネルを持ち込み撮影した写真だそうです。今の時代、CG技術を使えば、おそらくもっと自然な写真を撮ることができたでしょうし、もっと言えば、時期を選べたメンバーも沖縄まで行けたのでは?(そもそもスタッフは行っているわけだし)とも思うのですが、あえてこういう形の写真にしたのに彼らのユーモアセンスを感じます。ひょっとしたら、コロナ禍という時代性を反映させるため、という意図もあるのかもしれません。

彼らが10年前にリリースしたベストアルバムの時に、まずは感じたのが、「売れ線J-POPと実力派のボーダーライン上にいるようなグループ」というイメージでした。いわば典型的な売れ線J-POPのような、「仲間」ソングや「前向き応援歌」的な歌を歌いつつ、一方では現実に立脚した心に響くような歌にも出会える、そんな「売れ線グループ」として切り捨てるには惜しいすぎる名曲も多い反面、「実力派」としてもろ手をあげて評価するには、かなり違和感を覚える微妙な曲も少なくない、そんなグループというイメージがありました。ただ、彼らのオリジナルアルバムに関して言えば、ここ最近のアルバムは、ベテランバンドらしい地に足をつけた安定感ある楽曲に、大人らしい現実味ある歌詞を重ねつつ、新たなサウンドにも挑戦する、という「実力派」の側面を前に出した良作が続いており、そういう意味ではバンドとして、ひとつ上のランクに到達した感があります。

今回のベスト盤に関しても、例えば2002年にリリースした彼らの代表曲である「さくら」。いわゆるその頃に、雨後の筍のように次々とリリースされた「さくら」ソングの一環として、ともすれば「ベタな売れ線J-POP」のようなタイプの曲なのですが、その歌詞の出だし

「さくら舞い散る中に忘れた記憶と
君の声が戻ってくる」
(「さくら」より 作詞 ケツメイシ)

このたった冒頭のワンフレーズだけで、さくらが舞い散る春先の光景と、その中でおそらく主人公は彼女と別れたということ、その別れた彼女とは、「さくら」にまつわる思い出があるという物語性を彷彿とさせ、あらためて聴くと、非常によく出来たポップスだということに気が付きます。ある意味、ベタなヒット曲なのですが、その中に彼らの実力をしっかりと感じることが出来ます。

ただ一方、正直今回のベストアルバムでは、彼らの楽曲の気になる側面、いわゆるベタなヒット曲らしい「仲間」ソングや「前向き応援歌」的な曲が目立ってしまっているような感もありました。今回のベスト盤は2枚組なのですが、発売順ではなく、おそらく1枚目は明るいラテン調のサマーチューンを集め、2枚目には前向きな応援歌的な曲を集めた構成になっているのですが、特にその2枚目、「トモダチ」「仲間」「幸せをありがとう」・・・・・・タイトルを書いているだけで恥ずかしくなってくるような曲が並びます。郷愁感もあるメロディーラインで曲自体は決して悪いわけではないのですが、聴いていてかなり微妙な気分にさせられたように感じます。

今回のベスト盤は「関係者を中心におすすめのケツメソングを収録」ということですので、熱心なファンにとっては、こういった路線の曲を求めているということでしょうか。その点はちょっと気になりますし、今回のベスト盤では、ここ最近のケツメイシのもっと地に足をつけた感じをあまり感じられなかったが若干残念に感じます。ただ一方、魅力的な曲も少なくなく、そういった意味では、前回のベスト盤と同様、「ボーダーラインにいるバンド」というイメージを強く感じた内容になっていました。ただ、前述の通り、ここ最近の作品は、彼らの成熟したミュージシャンとしての一歩を感じます。それだけに次の10年にさらなる期待をしたいところ。これからの彼らの活躍も楽しみです。

評価:★★★★

ケツメイシ 過去の作品
ケツノポリス5
ケツノポリス6
ケツノポリス7
ケツの嵐~春BEST~
ケツの嵐~夏BEST~
ケツの嵐~秋BEST~
ケツの嵐~冬BEST~

KETSUNOPOLIS 8
KETSUNOPOLIS 9
KTMusic(KTMusic)
KETSUNOPOLIS 10
ケツノポリス11


ほかに聴いたアルバム

THE ESSENCE OF SOIL/SOIL&"PIMP"SESSIONS

SOILの新作は、彼ら初となるカバーアルバム。タイトル通り、彼らの「エッセンス」となった、彼らが影響を受けたジャズナンバーのカバー。スタンダードナンバーから知る人ぞ知る楽曲まで収録されています。原曲に敬意を表しつつ、彼ららしさはしっかりと感じられるナンバーになっており、しっかりとSOILのアルバムに仕上がっていたアルバムでした。

評価:★★★★

SOIL&"PIMP"SESSIONS 過去の作品
PLANET PIMP
SOIL&"PIMP"SESSIONS presents STONED PIRATES RADIO
MAGNETIC SOIL
"X"Chronicle of SOIL&"PIMP"SESSINS
Brothers & Sisters
BLACK TRACK
DAPPER
MAN STEALS THE STARS

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2021年5月 2日 (日)

現状の不安から未来の希望へ

Title:G_d's Pee AT STATE'S END!
Musician:Godspeed You! Black Emperor

カナダのポストロックバンド、Godspeed You! Black Emperorの約3年7か月ぶりとなるニューアルバム。もともと1994年に結成。2000年にリリースされたアルバム「Lift Your Skinny Fists Like Antennas to Heaven」が日本でも話題となり一躍注目を集めました。その後、2003年に活動を休止するものの、2010年に活動を再開。その後もコンスタントなアルバムリリースを続けています。

そんな彼らの最新作ですが、1曲目「A Military Alphabet (five eyes all blind) (4521.0kHz 6730.0kHz 4109.09kHz)」はいきなり不気味な雰囲気で、何かの声をコラージュしたような作品からスタート。実はこの曲、軍が機密利用する周波数を盗み取り、その音声をコラージュしたという、かなり大胆不敵な作品。もともと、彼らは非常に社会的なメッセージ性の強いバンドで、この作品でも「あらゆる形態の帝国主義の廃止」「刑務所の廃止」「富裕層への貧富格差がなくなるまでの課税」「警察権力の撲滅」をテーマとして掲げているなど、かなり過激とも言えるメッセージを秘めた作品を作り上げています。

もっとも、基本的にインストバンドである彼らは、そういったメッセージを明確に「歌」に載せることはありません(ちなみにボーカルを置かないスタイルは、特定のリーダー、中心人物を作らない方針からくるようです)。ただ、1曲目からスタートし、不気味に展開していくサウンドは、彼らが不満に感じる、今の社会の様相をあらわしている、と言えるかもしれません。ストリーミング盤での1曲目から4曲目までの約20分間がLP盤では1曲目としてつながっており、そのLP盤による1曲目はいずれも不気味な雰囲気の中、メランコリックなメロディーラインを聴かせるスタイルなのですが、最後を締めくくる「where we break how we shine (ROCKETS FOR MARY)」は静かな自然の音の中に、銃声が響いてくる「楽曲」。通して聴くとインターリュード的な作品なのですが、軍の機密情報をサンプリングした1曲目から続く曲の最後ということを考えると、非常に不気味な未来を暗示するような結末となっています。

そんな不気味な雰囲気から続く5曲目(LP盤では2曲目)「Fire at Static Valley」は非常に悲しい雰囲気のメロディーラインが展開されるメランコリックでメロディアスなギターインストナンバー。分厚いギターノイズの中で展開される悲しげなサウンドが胸をうつ楽曲になっており、圧巻のサウンドに思わず聴き入ってしまうでしょう。

LP盤だと「B面」となる「"GOVERNMENT CAME" (9980.0kHz 3617.1kHz 4521.0 kHz)」も、こちらはどういうサウンドか不明だったのですが、こちらも何等かの傍聴した電波から流れてくる音をサンプリングした音からスタート。こちらも途中からは、メランコリックなメロディーラインで高揚感のあるバンドサウンドが途中から展開されて、聴く人の耳を奪います。

ここからの3曲(LP盤では2曲)も、いずれもメランコリックなメロディーラインが流れるのが特徴的ですが、不気味な雰囲気だった前半(LP盤のA面曲)とは対照的に、「Cliffs Gaze / cliffs' gaze at empty waters' rise / ASHES TO SEA or NEARER TO THEE」では分厚いギターノイズが流れるダイナミックなバンドサウンドの中、どこか爽やかな雰囲気で楽曲は幕を下ろしますし、ラストの「OUR SIDE HAS TO WIN (for D.H.)」も分厚いギターノイズが流れる中、厳かな雰囲気のストリングスが響き、荘厳な雰囲気の作品は、どこか未来への希望を感じる明るさがあります。不気味な雰囲気が貫かれて、現状への不安を感じた前半に比べて、後半は、未来への希望を感じさせる展開になっており、聴き終わった後、明るさを感じさせる展開になっていました。

基本的にノイジーなギターサウンドを中心に、ストリングスなども積極的に取り込んだダイナミックな作風のインストチューンという構成は以前と同様。前作「Luciferian Tower」はダイナミックなサウンドは控えめに美しいメロディーラインが耳を惹く作品になっていました。今回の作品に関しては、前作よりは高揚感のあるサウンドを聴かせてくれているものの、そのサウンドでリスナーを圧倒しようとするよりは、メランコリックなメロディーをしっかり聴かせようとする作風が目立ち、そういう意味では前作の方向性を踏襲するような作品。また、音で圧倒するよりもメロディーを聴かせようとするスタンスは、彼らがいい意味で「大人になった」ようにも感じます。とはいえ、サウンド面も含め全52分、リスナーの耳を惹きつけて離さないサウンドを次々と繰り広げる傑作アルバム。その構成も見事でしたし、彼らの実力を感じさせる1枚でした。

評価:★★★★★

Godspeed You! Black Emperor 過去の作品
'Allelujah! Don't Bend! Ascend!
Asunder, Sweet and Other Distress
Luciferian Towers

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2021年5月 1日 (土)

いきものがかりらしさをしっかりと抑える

Title:WHO?
Musician:いきものがかり

活動再開後2作目となるいきものがかりのニューアルバム。正直言うと、現在の状況はいきものがかりとして決して順風とは言えません。活動開始前ラストにリリースした「FUN!FUN!FANFARE!」は初動売上が10万枚を超え、人気ミュージシャンとしての地位を確固たるものにしていたのですが、活動開始後、最初の作品である前作「WE DO」は初動売上が3万7千枚と大幅ダウン。本作に至っては、初動売上は1万9千枚と前々作の十分の一程度にまで落ち込んでしまいました。もちろん、「FUN!FUN!FANFARE!」がリリースされた2014年に比べて、CD販売をめぐる状況は大きく変化してきた、という環境面の影響もあります。また、ボーカル吉岡聖恵が2020年に結婚した、という点も売り上げ減の大きな要因かもしれません。

また、ここ最近の彼女たちの活動も、逆風気味である点はいなめません。同作にも収録している配信シングル「生きる」は、昨年初頭、大ブームにもなったTwitter上の漫画「100日後に死ぬワニ」とのコラボという、満を持しての新曲・・・・・・となったのですが、ご存じのように、この「100日後に死ぬワニ」は、連載終了と同時に、様々なタイアップが発表されたこともあり、「最初から広告代理店によって仕組まれたブームだったのでは?」と大炎上。さらには、その直後のコロナ禍もあって、一時期のブームが嘘のようにあっという間に話題がしぼんでしまい、それに伴い、満を持して発表されたいきものがかりの新曲も、むしろ「100日後に死ぬワニ」の「作られたブームの一貫を担っている」とみなされて、全く話題に上ることなく忘れ去られてしまいました。

そんな状況の中でリリースされたのが今回のアルバム。彼らにとっては厳しい状況の中でのリリースとなりました。しかし、その逆風をもろともせず、むしろアルバムの内容については、グループとしての充実ぶりを感じさせる出来栄えに仕上がっています。特に良い意味で最後までリスナーを飽きさせないバラエティーの豊富さと、楽曲の安定感は、長年、人気ポップグループとしてJ-POPを支えてきたという、彼らの矜持を感じさせる出来栄えに仕上がっていました。

1曲目「TSUZUKU」は、正直ほとんど話題になっていないといっていい映画「100日間生きたワニ」の主題歌に起用されています。映画自体は、まだ、あの企画を持たせるの?と思ってしまうのですが、ただ楽曲の出来栄えとしては、ストリングスを取り入れて伸びやかにきかせるいかにもいきものがかりらしい楽曲に。目新しさという点では乏しいかもしれませんが、いきものがかりらしさという壺をしっかりと抑えた楽曲に、彼らの実力を感じます。

続く「BAKU」は一転、ホーンセッションを入れたマイナーコード主体の哀愁感のある楽曲に。ムーディーさと妖艶さを感じさせる楽曲で1曲目との振れ幅の大きさにバリエーションの豊富さを感じさせつつ、3曲目「きらきらにひかる」はストリングスで哀愁感たっぷりに聴かせる歌謡曲テイストの作品。この冒頭の3曲は、いずれもいきものがかりらしい作風なのですが、一方で、そういう「らしさ」をきっちりと抑えてくるあたりにもポップミュージシャンとしての実力を感じさせます。

その後も「からくり」ではギターにブルージーな要素を感じたり、「チキンソング」ではニューオリンズ的な要素を感じたりと、ここらへんはいきものがかりとしての新しさを感じますが、楽曲全体としては「いきものがかり」としてリスナーがイメージさせる範囲内にしっかりとおさめてきており、ここらへんの匙加減の上手さも彼らの実力と言えるでしょう。

そしてラストを締めくくる良くも悪くも話題となった「生きる」は、やはり楽曲としては素直によくできたバラードナンバーだと思います。正直、先行シングルの「TSUZUKU」や「BAKU」は、インパクトの面で、全盛期の彼女たちの楽曲に比べると、ちょっと薄味だな、と感じてしまうのですが、この「生きる」は楽曲としてのインパクトの強さと合わせて、売り方を間違わなければ、もっとヒットしたのでは?と感じてしまいました。

収録曲数は9曲と、オリジナルアルバムとしてはちょっと短めなのですが、一方、それだけにしっかりと楽曲を厳選した、ということを感じさせるアルバム。前作「WE GO」は、良くも悪くも大いなるマンネリ気味な部分が目立ち、いまひとつに感じてしまったのですが、今回のアルバムはしっかりといきものがかりとして期待されている楽曲に応えつつ、そんな中でもいろいろな要素を入れてくるなど、ポップミュージシャンとしての彼女たちの実力を感じさせる作品になっていました。

吉岡聖恵のボーカルも、以前に比べて低音部に安定感が増し、表情も増えてきており、ボーカリストとしての成長…という以上に、いい意味で年齢なりに深みを感じるボーカリストになってきたように感じます。いきものがかりとしてすでに一世を風靡し、ミュージシャンイメージもついてしまっているため、今後、さらにブレイクというのは難しいかもしれません。ただ、ポップミュージシャンとしてさらに上にステージにむかいつつあることを感じた作品。個人的には「I」以来の傑作だと思います。今後のさらなる活躍を期待したいところです。

評価:★★★★★

いきものがかり 過去の作品
ライフアルバム
My Song Your Song
ハジマリノウタ
いきものばかり
NEWTRAL
バラー丼
I
FUN! FUN! FANFARE!
超いきものばかり~てんねん記念メンバーズBESTセレクション~
WE DO


ほかに聴いたアルバム

KAELA presents on-line LIVE 2020 “NEVERLAND”/木村カエラ

彼女にとってはじめてとなるオンラインライブ「KAELA presents on-line LIVE 2020 “NEVERLAND"」の模様を収録したライブ盤。映像作品としてリリースされましたが、配信限定で音源のみでのリリースとなっています。比較的ベスト盤的な選曲になっている本作は、最初から最後までとことんポップで楽しめるアルバムに。コロナ禍の中で鬱々とした雰囲気の中だからこそ、彼女のような明るいポップソングがより胸に響きます。終始、明るいポップソングを素直に楽しめたライブ盤でした。

評価:★★★★★

木村カエラ 過去の作品
+1
HOCUS POCUS
5years
8EIGHT8
Sync
ROCK
10years
MIETA
PUNKY
¿WHO?
いちご
ZIG ZAG

発光帯/ハナレグミ

約2年7ヶ月ぶりとなるハナレグミ8枚目となるニューアルバム。タイトル曲「発光帯」は、元SUPER BUTTER DOGの盟友、レキシこと池田貴史作曲、クラムボンの原田郁子作詞という豪華なラインナップでも話題に。全体的にはアコースティックベースのサウンドで、ほっこりと暖かくも、非常に明るい雰囲気の曲調が魅力的な内容になっています。ただ、良質な大人のポップスが並んでいるのですが、この「大人のポップス」という要素が、良い方向にも悪い方向にも作用した作品で、ゆったりと安心して聴ける反面、若干パンチ不足なのが気になります。楽曲的には前作よりバリエーションも増えた感はあるのですが、その点を考慮してもおとなしいという印象を受けるアルバムになっていました。良作なのは間違いないと思うのですが・・・。

評価:★★★★

ハナレグミ 過去の作品
あいのわ
オアシス
だれそかれそ
どこまでいくの実況録音145分(ハナレグミ,So many tears)
What are you looking for
SHINJITERU
Live What are you looking for

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