バンド「氣志團」の実力
Title:Oneway Generation
Musician:氣志團
今年、メイジャーデビュー20周年を迎える氣志團。メイジャーデビュー前後、「One Night Carnival」が大きな話題となり「おもしろいバンドがいる」という評判になったのは、その当時、足しげくライブに通っていたこともあり強烈な印象として残っています。あれからもう20年というのは、自分も年を取ったなぁ・・・と思います。ただ、20年前でも既に「懐かしいもの」となっていた90年代の不良スタイルをそのままに、BOOWYのパロディーのような曲で登場してきた彼らは、はっきり言えば出オチの感も強く、典型的な一発屋の感もありました。そんなバンドが(それもスタイルを全く変えず)20年。一時期に比べて人気はちょっと落ち着いたとはいえ、いまだに十分「人気バンド」としての地位を保ちつつ活動を続けている事実には驚かされます。
そんな彼らが今回リリースしたのは、昨年10月に亡くなった日本歌謡界を代表する作曲家、筒美京平の楽曲を集めたカバーアルバム。先日も、このサイトで筒美京平のトリビュートアルバムを紹介しましたが、本作は、そんな筒美京平へのトリビュートアルバムを、氣志團というバンド1つで行ってしまった作品となります。
筒美京平と言えば、それこそ1960年代から、2000年以降に至るまで、膨大な数の曲を世に送り込んだ作家ですが、今回のアルバムで取り上げられているのは、おもに80年代のポップスがメインとなります。ご存じ1985年のC-C-Bによる大ヒット曲「Romanticが止まらない」からスタートし、沖田浩之の「E気持」な、早見優「真夜中のナンシー」。さらにもうちょっと時代が下り、90年代J-POP全盛の頃のオザケンの「強い気持ち・強い愛」や藤井フミヤ「タイムマシーン」なども取り上げた上、最後はアルバムタイトルにもなった本田美奈子.の「Oneway Generation」で締めくくっています。
確かボーカルの綾小路翔は、年齢非公開なのですが、私と同じ年のはず。私は80年代ポップスはリアルタイムではあまり聴いてこなかったのですが、小学生の頃から、テレビの音楽番組を見ていたのであれば、リアルタイムに聴いていた曲が多いと思われます。今回の選曲は、彼にとって原点となった筒美京平の曲を取り上げたのでしょう。
しかしあらためてこうやって筒美京平の曲を並べると、その幅広さにあらためて驚きます。「Romanticが止まらない」は80年代のニューウェーブ風ですし、「Oneway Generation」は後のJ-POPの源流とも言えるようなポップス。さらに「強い気持ち・強い愛」はそんなメインストリームのポップスに対するカウンターカルチャーとして出てきた渋谷系の楽曲ですし、このポップスならばなんでもOKという幅広さには、あらためて驚いてしまいます。
そして今回のアルバムで、筒美京平の魅力以上に強く感じたのが氣志團のバンドとしての実力でした。ニューウェーブ風にカバーした「Romanticが止まない」から、軽快なロカビリー風にまとめた「時代遅れの恋人たち」、ラテン調に爽やかにカバーした「夏のクラクション」に、パンク調の「夏色のナンシー」。さらにはアコースティックなサウンドをメインにファンキーなリズムを入れた「強い気持ち・強い愛」に、「Oneway Generation」はモータウン風のリズムをより強調して軽快に聴かせてくれます。
原曲が実は持っていた音楽的要素を上手く引き出し、氣志團としての味付けをしっかりほどこしつつ、かつ原曲の持つ魅力を失わないカバーに仕上げており、非常に理想的なカバーに仕上がっています。今回、編曲はすべて氣志團のメンバーのみで行ったようですが、彼らのミュージシャンとしての実力を強く感じる仕事ぶりを見せてくれています。そして、そんなバリエーションのある楽曲を卒なくこなすバンドの演奏力も特筆すべきでしょう。その見た目とは異なり、彼らが決して色物ではなく、実力派ミュージシャンなんだ、ということを示したトリビュートアルバムになっていました。
20年前に彼らをはじめて知った時は、正直、もって数年だな、と思っていましたが、それがこれだけ長い間、人気を維持できたのは、なにより彼らのバンドとしての実力があったからだ、ということを強く感じましたし、それを再認識させられたトリビュートアルバムだったと思います。筒美京平の魅力も存分に感じましたが、それと同時に氣志團の実力を強く感じた1枚でした。
評価:★★★★★
氣志團 過去の作品
房総魂~Song For Route 127
木更津グラフィティ
蔑衆斗 呼麗苦衝音
日本人
氣志團入門
不良品
万謡集
ほかに聴いたアルバム
開幕宣言/Novelbright
人気上昇中のポップスロックバンドによる、メジャー初となるフルアルバム。非常にわかりやすいJ-POPといった印象で、オーケストラアレンジを入れて、わざとらしくスケール感を出した曲や歌謡曲的な楽曲、いかにもなビートロックなど、そこそこインパクトのあるポップなメロディーラインは悪くはないものの、全体的には少々陳腐というイメージを抱いてしまいました。良くありがちなJ-POPバンドという印象で、Novelbirghtだけが持っている個性が薄い印象。もう一皮むけてほしいのですが。
評価:★★★
Novelbright 過去の作品
WONDERLAND
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