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2021年4月24日 (土)

ソロデビューから早くも10年!

Title:TWILIGHT WANDERERS -BEST OF YUJI NAKADA 2011-2020 -
Musician:中田裕二

ソロデビューから10年。もう「元椿屋四重奏の」という肩書は不要でしょうね。椿屋四重奏は結成10年で解散したので、これからはソロとしてのキャリアの方が長くなってくることになります。シンガーソングライター中田裕二の、ソロデビュー10周年を記念してリリースされた初のベストアルバム。2枚組全33曲。うち2曲が新曲という構成の、かなりボリューム感のある作品になっています。

さて、その中田裕二の楽曲の大きな特徴としては、なんといってもマイナーコード主体の哀愁感あふれるメロディーラインでしょう。これは椿屋四重奏時代からも一貫しており、ある意味、そのメロディーラインの方向性は徹底されている感もあります。ともすれば一本調子な感は否めないのですが、ただそれでもこのベスト盤を聴くと、メランコリックなメロディーを主軸としつつ、バラエティーのある楽曲への挑戦がうかがえました。

「ベール」ではどこかエキゾチックさが漂う作風になっていますし、「UNDO」はギターサウンドにファンキーな要素を感じます。Disc1で異色的だったのが「MIDNIGHT FLYER」で、こちらは中田裕二流のディスコサウンドといった感のある、テンポよいリズミカルな曲調が特徴的な作品となっています。

Disc2に入ると、さらに楽曲のバリエーションは増して、「ただひとつの太陽」はブルージーなギターを聴かせつつ、どこかゴスペルな要素も感じさせる曲。「正体」では韻を踏んだ歌詞が、どこかHIP HOP的なものを感じさせますし、「ランナー」に至っては、最初、なんとラップまで登場します。「BACK TO MYSELF」ではエレクトロのサウンドを入れてきていますし、どの曲も彼らしい哀愁感あふれるメロディーが貫かれているのですが、そんな中でのバリエーションの広さを感じさせます。

一方では、この哀愁感あふれるメロディーラインを前面に押し出した歌謡曲的な楽曲も少なくなく、「灰の夢」「ユートピア」あたりが典型的でしょうか。さらに「誘惑」などは女性視点の歌詞となっており、この歌詞のウェットな世界観も含めて、実に「歌謡曲」らしい楽曲となっていました。ここらへんは、彼のメロディーセンスがフルに発揮された曲と言えるでしょう。

そんな感じで意外とバリエーションも多く、哀愁感あふれるメロディーラインで中田裕二の魅力を存分に楽しめるベスト盤であることは間違いないのですが・・・・・・ただ、そうとはいっても全33曲、2時間半を超えるフルボリュームの内容で、最後は正直、飽きが来てしまったというのが率直な感想。これが10曲1時間程度の内容ならば、十分楽しめると思うのですが、さすがにジャンル的にバリエーションを持たせているとはいえ、メロディーが若干一本調子である点は否めず、良くも悪くもおなか一杯になってしまいました。

もっとも、そうといっても急に明るい曲調の、まったく違うタイプの曲を書けばいいのでは?という話ではないですし、純粋に、今回のベストはちょっと詰め込みすぎたといった感があるのかもしれません。また、メロディーラインがもっと圧倒的なインパクトのあるキャッチーな曲が何曲かあれば印象は変わったのかもしれませんが。

このベスト盤の後、ソロとしての活動が、椿屋四重奏の活動より長くなるわけで、ある意味、彼にとっても新たな挑戦と言えるのかもしれません。おそらく今後も、このような哀愁感漂うメロディーの作品をたくさん作り続けるでしょうが、その中で、どのような挑戦に挑むのでしょうか。彼の次の10年にも期待したいところです。

評価:★★★★

中田裕二 過去の作品
ecole de romantisme
SONG COMPOSITE
BACK TO MELLOW
LIBERTY
thickness
NOBODY KNOWS
Sanctuary
DOUBLE STANDARD
PORTAS

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