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2021年4月25日 (日)

実験的ながらもポピュラリティーも

Title:Deacon
Musician:serpentwithfeet

アメリカはLAを中心に活動を続けるエクスペリメンタルR&Bのミュージシャンserpentwithfeet(サーペントウィズフィート)ことJosiah Wiseのニューアルバム。2018年にリリースされたアルバム「Soil」も随所で大絶賛を受けたそうですが、本作はそれに続くニューアルバムということで話題となっています。

彼の音楽がカテゴライズされている「エクスペリメンタルR&B」というジャンル、「エクスペリメンタル」とは「実験的な」という意味で、文字通り、実験性の強いR&Bというジャンルとなっています。確かに、彼の楽曲は、特にサウンドの側面で非常に凝った、聴かせるものになっている点が大きな特徴であり魅力的。アルバムの冒頭「Hyacinth」は、ピアノの音色を美しく聴かせてスタートするのですが、途中からエレクトロサウンドが登場し、彼のファルセットボーカルも含めて、非常に美しく、かつ奥行のあるサウンドに仕立て上げられています。続く「Same Size Shoe」も美しいピアノの音色とエレクトロサウンドを上手く組み合わせた、清涼感ある音色が魅力的。アコースティックギターとエレクトロサウンドを上手く組み合わせて哀愁感あるサウンドにまとめた「Amir」も魅力的。ラストの「Fellowship」もパーカッシブなリズムを上手く楽曲の中に生かしています。

全体的には女性ボーカルのNaoをフューチャーし、幻想的なサウンドを聴かせる「Heart Storm」のような分厚いサウンドを聴かせる曲もあるものの、比較的音数を絞ったシンプルかつ音の間の空間を聴かせるようなサウンド構成が魅力的で、非常に清涼感のあるサウンドに仕上げています。「Malik」「Wood Boy」など、強いビートを聴かせる、今どきなサウンドの曲調も取り入れている一方、インターリュード的な作品ではあるものの「Dawn」のような、荘厳さを感じさせるアカペラナンバーもあり、全体的には最近の音楽から、古き良きソウルミュージックの影響まで感じられる作風も大きな魅力でした。

また、「実験的なR&B」とはいっても、サウンドも含めて小難しさはほとんどありません。むしろ非常にメロディアスで聴かせるメロディーラインが魅力的なR&Bのナンバーが並ぶ作品になっています。冒頭を飾る「Hyacinth」は、どこか切なさを感じるメランコリックなメロが印象的ですし、続く「Same Size Shoe」もファルセットボーカルで聴かせるメロディーラインは非常に美しく、心に響きます。その後も基本的にはポップでメロディアスな「歌」が主軸になった作品が並んでおり、基本的にはあくまでも「歌」を聴かせる作品になっています。そういう意味でも小難しさ的な要素はほとんどありません。

実験的、というよりは挑戦的で独創的なサウンドが非常に魅力的な一方、歌をメインとした作風は比較的幅広い層にアピールできそうな、そんな魅力的な傑作アルバム。実験性とポピュラリティーが両立しているほか、「今どきの音楽」と「昔からの伝統的な作風」も同居しているようなそんな幅広い音楽性も魅力的。今年を代表する傑作の1枚でした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Love Goes: Live at Abbey Road Studios/Sam Smith

昨年10月に実施されたオンラインライブの模様を収録したライブアルバム。その歌声を非常に美しく聴かせるパフォーマンスが印象的で、その声の魅力をより堪能できるアルバムになっています。特にライブならではのカバー曲も収録。「Time After Time」など、ちょっと意外な選曲に思われるのですが、彼の歌声とメロディアスな原曲の印象がピッタリマッチした絶妙なカバーに仕上がっています。Sam Smithの魅力をじっくりと味わえるライブ盤でした。

評価:★★★★★

Sam Smith 過去の作品
IN THE LONELY HOUR
Thrill It All
Love Goes

Allen Ginsberg's The Fall of America: A 50th Anniversary Musical Tribute

ビート文学を代表するアメリカの詩人、アレン・ギンズバーグの詩集「THE FALL OF AMERICA: Poems of These States 1965-1971(アメリカの没落)」の50周年を記念するトリビュートアルバム。ヨ・ラ・テンゴ、サーストン・ムーア、エド・サンダースなどが参加している中、日本から坂本慎太郎が参加していることでも話題となっています。

楽曲は、基本的に彼の詩の朗読をベースに、各自、サウンドを重ねているスタイル。全体的にダウナーな雰囲気の曲調が多いのですが、その中でもストリングスやピアノ、ホーンやエレクトロサウンドなどを入れて、各自思い思いに、アレン・ギンズバーグの詩を彩る音を探し出している印象を受けます。坂本慎太郎が参加した「Manhattan Thirties Flash」は日本語の語りがそのまま登場。どこか空白を感じさせるサウンドに、彼らしさを感じます。

語りの部分について、日本人にとっては、その意味をストレートに理解できないのは残念なのですが、それぞれのミュージシャンが思い思いにその才能を発揮しており、全体的に地味な印象はあるものの最後まで楽しめるアルバムでした。

評価:★★★★

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