« 女性ソロシンガーの作品が1位2位 | トップページ | ソロデビューから早くも10年! »

2021年4月23日 (金)

コロナ禍に翻弄された(?)ベスト盤

Title:Where's My History?
Musician:[Alexandros]

最近では「ドロス」という愛称もすっかり定着し、人気バンドの仲間入りを果たした[Alexandros]の初となるベストアルバム。もともとはインディーズデビュー10周年を記念して昨年5月にリリース予定だったのですが、新型コロナウイルスの影響で夏に延期。さらには、今年1月に再延期されたものの、再び緊急事態宣言が発令されたことにより3月に再延期。そしてようやくリリースとなりました。ある意味、コロナ禍に翻弄されることになったベストアルバム。ただ3月の時点でも状況はおさまっていないので、それなら昨年の夏あたりにリリースさればよかったのでは?といまさらながら思ってしまいますが。

さて、[Alexandros]といえば、最近ではすっかりその名前が定着しましたが、デビュー当初は[Champagne]という名前で活躍していたことは、特にここ最近ファンになったような方では、ひょっとしたら「知らない」という方すらいるのかもしれません。ひょっとしてらバンドとしてもそろそろ[Champagne]と名乗っていた事実は黒歴史になってきているのでは??なんて疑念を抱いたのですが、今回のアルバム、Disc1は[A]盤、Disc2は[C]盤と名乗り、それぞれ[Alexandros]時代の曲と[Champagne]時代の曲を収録した選曲に仕上がっています。彼らにとって、[Champagne]と名乗っていたということは重要な歴史なんだな、ということを感じさせてくれます。

そのため彼らの活動の初期の作品と最近の作品が比較できるような形になっている本作。一番顕著だったのはそのサウンドで、[C]盤の曲は、「Cat 2」だったり「Don't Fuck With Yoohei Kawakami」だったりと、比較的シンプルなギターロックの曲がメインとなっている構成。いわゆるインディー系のギターロックバンドという雰囲気が強くあらわれた曲が目立ちます。一方[A]盤の曲は楽曲としてのスケール感もまし、「Girl A」のようなエレクトロビートを取り入れた曲だったり、「Philosophy」のようなピアノやストリングスを入れた曲も並び、サウンドの幅も広がった感があります。

一方、メロディーラインに関しては、初期の作品もここ最近の曲も比較的共通しており、メランコリックさが強く感じる曲が並んでいます。[A]盤だと「Mosquito Blue」などノイジーなギターサウンドをバックに歌われるメランコリックなメロが印象的ですし、「LAST MINUTE」などもファルセットボイスを入れつつメランコリックな歌を聴かせてくれます。[C]盤でも「For Freedom」「Run Away」などメランコリックなナンバーが並びます。哀愁感あるメロディーをより聴かせるという点では[C]盤の方がより目立ったかもしれませんが、このメランコリックさが彼らの大きな魅力の一つなのは間違いないでしょう。

個人的に[Alexandros]というと、特に直近のオリジナルアルバム「EXIST!」「Sleepless in Brooklyn」の出来がよく、ここ最近、グッとその実力を増してきたという印象を受けます。ただ、このベスト盤であらためて過去の作品を見ると、[Champagne]時代の作品でも魅力的な楽曲が少なくなかったな、ということを再認識させられました。特に初期の作品の方がよりロック度の高い作品が目立ち、疾走感あるギターロックがカッコいい「Don't Fuck With Yoohei Kawakami」みたいに、個人的にかなり壺にはまる作品も少なくありませんでした。

ただちょっと気になったのは、メランコリックな曲調が魅力的ではあるものの、それだけで売りにできるようなインパクトのある「美メロ」のようなものは少なく、メロディーだけを売りにしようとするとちょっと弱い部分があるかな、というのが気になりました。その分、サウンドなどで補って魅力ある作品には仕上げているのですが、その点が若干彼らの弱点のようにも感じました。

そのような気になる部分はあるものの、ベスト盤だけに魅力的な作品がたくさんつまった、彼らの実力を強く感じることが出来る作品に仕上がっています。ここ最近、脂ののった傑作オリジナルアルバムを連発しているだけに、これからの活躍がまだまだ期待できる彼ら。このベスト盤リリースを区切りに新たな一歩を踏み出すのでしょうか。これからも楽しみです。

評価:★★★★★

[Alexandros] 過去の作品
Schwarzenegger([Champagne])
ALXD
EXIST!
Sleepless in Brooklyn
Bedroom Joule

|

« 女性ソロシンガーの作品が1位2位 | トップページ | ソロデビューから早くも10年! »

アルバムレビュー(邦楽)2021年」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 女性ソロシンガーの作品が1位2位 | トップページ | ソロデビューから早くも10年! »