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2021年4月18日 (日)

美しい歌声とシンプルなメロが魅力的

Title:Chemtrails Over The Country Club
Musician:Lana Del Rey

前作「Norman Fucking Rockwell!」も各所で大絶賛を受け、高い評価を受けているシンガーソングライターLana Del Reyの約1年半ぶりとなるニューアルバム。海外の大物ミュージシャンとしては比較的短いスパンでの新譜リリースに、彼女の勢いを感じさせるのですが、そのアルバムの内容は、確かに前作に匹敵するようなどこか懐かしさを感じさせる美しいメロディーラインが流れる傑作となっていました。

ピアノをバックにファルセットのボーカルを美しく聴かせる「White Dress」から、まず非常に心に響く楽曲を聴かせてくれますが、続く「Chemtrails Over The Country Club」も清涼感ある彼女のボーカルでしんみりと聴かせるメロディーラインが印象的。アコースティックテイストにスタートするのですが、後半ではボーカルやサウンドにエフェクトがかかり、どこか幻想的な雰囲気となる展開もユニークです。

先行シングルとなっている「Let Me Love You Like A Woman」もピアノをバックに静かに歌い上げるバラードとなっていますし、続く「Wild At Heart」も明るさと切なさが同居したような、メロディアスなメロディーラインが印象に残る1曲。前半はピアノが主体に聴かせる楽曲が並ぶのですが、後半「Not All Who Wander Are Lost」「Yosemite」はアコースティックギターをバックに美しい歌声を聴かせる楽曲。特に「Yosemite」の透き通るような歌声でハイトーンボイスで歌い上げるボーカルは非常に印象に残ります。

終盤はブルージーなギターで哀愁感たっぷりに聴かせる「Breaking Up Slowly」に同じく哀愁感あるメロが印象的な「Dance Till We Die」とメランコリックなナンバーが続き、ラストは再びピアノの美しい音色が登場。「For Free」ではピアノをバックに爽やかに歌い上げるボーカルが印象的な、スケール感も覚える楽曲で、後味よくアルバムは幕を下ろします。

前作もピアノを主体としたシンプルなサウンドで彼女の歌声を主軸に置いた楽曲がメインとなっていたのですが、今回のアルバムも、基本的にはシンプルなサウンドでしっかりと歌を聴かせる楽曲がメイン。前半はピアノ曲主体、後半にアコギで聴かせるナンバーを配するなど、それなりに展開のある構成にはなっているのですが、楽曲のバリエーションは決して多くはありません。ただ、その美しいメロディーラインと歌声ゆえに、最後まで飽きることなく、その世界観に入り込むことが出来るアルバムになっています。

彼女の売り文句として「50年~60年代の古き良きアメリカ音楽を取り入れて」というものがあります。確かにその楽曲からはどこか懐かしさを感じさせ、それが大きな魅力になっています。ただ、そんなに私たちがイメージするようなレトロポップか、と言われるとそういった感じはなく、あまり「古さ」のようなものは感じられません。ひょっとしたらアメリカ人が聴いたら、私たち以上に郷愁感を覚えるのかもしれませんが・・・。

ただ、そういう点を踏まえても、清涼感あふれる美しい歌声とそのメロディーラインは非常に魅力的。シンプルだからこそ、その実力がより感じられる傑作になっています。前作に引き続き傑作アルバムとなった彼女。彼女の活躍はまだまだ続きそうです。

評価:★★★★★

Lana Del Rey 過去の作品
Born To Die
Ultraviolence
Norman Fucking Rockwell!


ほかに聴いたアルバム

Little Oblivions/Julien Baker

アメリカの女性シンガーによる約4年ぶり3枚目となるアルバム。バンドサウンドでダイナミックに聴かせる楽曲から、ピアノで荘厳に歌い上げるナンバー、メランコリックな楽曲などバラエティーに富んだ作風。ゆっくりメロディアスでローファイ気味な楽曲も魅力的。基本的にはポップな歌をしっかり聴かせるアルバムに。もうちょっとインパクトは欲しかったかも。

評価:★★★★

R+R=Now Live/R+R=Now

新進気鋭のジャズピアニスト、ロバート・クラスパーが、ケンドリック・ラマ―との活動でも注目を集めるサックス奏者、テラス・マーティンらと組んで結成したバンドR+R=Nowの初となるライブ盤。基本的にジャズバンドながらも、HIP HOPやソウルなどの要素を取り込んだ自由度の高いサウンドが特徴的。一方、メロは意外とポップでいい意味で聴きやすいという特徴があったのがR+R=Nowのオリジナル作。ライブ音源ではそれに加えて彼らのアグレッシブな演奏はかなりの迫力があり、聴くものを惹きつけるパワーを感じさせます。オリジナルアルバムは正直、その評判の割りにさほどピンと来なかったのですが、ライブ盤ではオリジナルアルバムでは物足りなく感じさせたバンドメンバーのパワーを感じさせる傑作になっていました。

評価:★★★★★

R+R=Now 過去の作品
Collagically Speaking

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