7人7曲7様
Title:Duets
Musician:坂本真綾
デビューから25年を迎えた坂本真綾。その第1弾企画としてベストアルバムのリリースがありましたが、本作はそれに続く第2弾アルバム。今回は7人のミュージシャンとのデゥエット作を収録したコンセプトアルバム。作曲や編曲を担当するのもそれぞれ別々のミュージシャンが手掛け、ジャンルもそれぞれバラバラ。オリジナルアルバムとしての直近作「今日だけの音楽」では、彼女のボーカリストとしての挑戦を感じたのですが、今回のアルバムは、その前作に続くような、ボーカリストとしての挑戦を感じさせるアルバムとなっています。
個人的にまず耳を惹いたのが堂島孝平とのデゥオ「あなたじゃなければ」。ホーンも入って明るいアレンジの、堂島孝平らしい楽しいポップチューンになっています。ポップス職人としての堂島孝平としての魅力がキラリと光る作品。坂本真綾の清涼感あるボーカルにもピッタリとマッチしています。そして、その清涼感あるボーカルを上手くすくいあげていたのが3曲目土岐麻子とのデゥオ「ひとくちいかが?」でしょう。土岐麻子も、坂本真綾と同様の清涼感あるボーカルが魅力的なシンガーなのですが、同じベクトルを示すボーカルなのに、両者の微妙な違いが上手くマッチしており、メロウな楽曲とあわせて、透き通るようなポップチューンに仕上がっています。
ちょっと異色と言えるのがthe band apartのベーシスト原昌和とのデゥオ「でも」でしょう。バンアパでも巨漢のベーシスト原昌和が、意外とポップな歌声を聴かせるこのナンバーは、the band apartにも通じるファンクやジャズの要素を取り入れた軽快なポップチューン。こちらも坂本真綾とのボーカルにもピッタリとマッチした楽曲に仕上がっています。
さらに注目なのがラスト2曲。「星と星のあいだ」ではミュージカル俳優の井上芳雄とのデゥオ。伸びやかでスケール感あるナンバーは作詞作曲を坂本真綾本人が担当。東京芸大声楽科出身という井上芳雄のボーカルの力強さがまずは引き立つナンバーで、坂本真綾はどちらかというと作詞作曲、またコーラス的な位置づけでサポートしているような楽曲となっているのですが、井上芳雄のボーカルをしっかりと生かした曲作りに、坂本真綾の別の側面での実力を感じます。
そしてラストは小泉今日子とのデゥオ「ひとつ屋根の下」。小泉今日子はボーカリストとしては「・・・」な部分はあるのですが、鈴木祥子楽曲により、両者の持ち味をしっかりと生かしたかわいらしいポップチューンに仕上がっています。最後を締めくくるにふさわしい明るく爽やかなポップチューンになっています。
h-wonder名義でアレンジャーなどとしても活躍している和田弘樹とのデゥオ「Duet!」も軽快で楽しいビックバンド風のナンバー。la la larksの内村友美とのデゥオ「sync」は、良くも悪くも疾走感のあるJ-POP風のナンバーといった感じでしょうか。良くも悪くもアニソン歌手的なイメージのあるポップスになっていました。
そんな訳で7人7曲7様のポップソングがそろったアルバム。坂本真綾のボーカルは、清涼感ある一方、「癖がない」という点がボーカリストとして強みでもあり弱みでもあるのですが、その「強み」の部分をしっかりと生かして、デゥエット相手を時には引っ張って、時には対等に、また、時には相手を引き立てるスタイルで、様々なジャンルにもピッタリとマッチした歌声を聴かせてくれました。まさに坂本真綾のボーカリストとしての実力を存分に発揮したコンセプトアルバムと言えるでしょう。今回、タッグを組んだ相手とは、今後も何らかの形でタッグを組みそうな予感も。ボーカリスト坂本真綾の魅力を存分に感じるアルバムでした。
評価:★★★★★
坂本真綾 過去の作品
かぜよみ
everywhere
You can't catch me
Driving in the silence
シングルコレクション+ ミツバチ
シンガーソングライター
FOLLOW ME UP
今日だけの音楽
シングルコレクション+アチコチ
ほかに聴いたアルバム
cure/SIRUP
新進気鋭のR&Bシンガーソングライターとして注目を集めるSIRUPの2枚目となるフルアルバム。日本国内のみならず、オランダやイギリス、さらにはK-POPで注目を集める韓国のクリエイターが参加した、ワールドワイド志向のサウンドが特徴的。まさに「今風」のR&Bを聴かせており、そのクオリティーの高さは間違いないものの、一方では「最近よくあるタイプのR&B」という印象が否めず、SIRUPならではの個性が薄い印象を受けてしまうのが残念。今後、大化けする可能性も低くないのですが。
評価:★★★★
SIRUP 過去の作品
FEEL GOOD
evergreen2/秦基博
2014年にリリースした「evergreen」に続く、秦基博の弾き語りアルバム第2弾。基本的にアコースティックギターでしんみりと聴かせる作品が並びます。シンプルな歌で、シンガーソングライターとしての本領発揮となる作品で、良質な、比較的シンプルなポップスが楽しめるアルバムとなっています。ただ、前作「evergreen」に比べると、少々メロディーラインのインパクトが薄かったような感じがして、全2枚組1時間50分弱という長さの中で、最後の方は若干ダレてきてしまった感もありました。どうしても楽曲のタイプが似てしまう弾き語りアルバムなので仕方ない部分はあるとは思うのですが・・・。
評価:★★★★
秦基博 過去の作品
コントラスト
ALRIGHT
BEST OF GREEN MIND '09
Documentary
Signed POP
ひとみみぼれ
evergreen
青の光景
All Time Best ハタモトヒロ
コペルニクス
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