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2021年4月12日 (月)

切ない歌詞が目立つ1枚

Title:どうしたって伝えられないから
Musician:aiko

途中、ベスト盤のリリースを挟み、オリジナルアルバムとしては約2年9ヶ月ぶりとなるaikoのニューアルバム。ここ最近のaikoのアルバムは、正直なところ決して目新しさはないのですが、非常に高いクオリティーを持ったポップソングを安定的にリリースしているといった印象があります。そして今回のアルバムも、いつも通りのaikoのアルバム、なのですが、やはり非常に高いクオリティーを保った良質なポップアルバムとなっていました。

ただ、今回のアルバムはそんな中でも特に歌詞の部分が印象に残る作品になっていました。今回のアルバムでは、失恋や別れた恋人を思って歌った、比較的悲しい歌詞の曲が目立っていました。そんな中でもふとした日常の中で心象を反映させたような歌詞は見事。例えば「ハニーメモリー」

「いつも悪いなって思ってたよ
夜明け前に帰ると洗面所だけ電気が付いてた
ごめんねでも 素直になれなかった」
(「ハニーメモリー」より 作詞 AIKO)

という歌詞ひとつで、その風景や、風景に反映された2人の心象が伝わってくるその描写が実に見事。「一人暮らし」も、洗濯という日常の行為に、別れた恋人との心象を重ね合わせる描写が強く印象に残ります。今回も、この恋をする人の心象を見事に描いた歌詞が全編に展開されるアルバムに仕上がっています。

一方で今回、メロディーラインという側面においては、ちょっとインパクトが薄く、いつものaiko節といった感じの独特な節回しが魅力的な曲はちょっと少な目だったように感じます。ただ、それでも彼女らしい独特の節回しの複雑なメロディーラインの曲ももちろん本作でも聴くことが出来、そのうちの1曲が「シャワーとコンセント」。固有名詞をタイトルにもってきているのがaikoらしい感じの曲なのですが、メロディーラインも非常に複雑。にもかかわらず、易々と歌い上げ、なおかつポップにまとめ上げている点、彼女の実力を感じます。さらにラストを締めくくる「いつもいる」は、まさにaikoらしい、ブルージーな節回しを感じさせる曲調になっており、最後の最後に、「そう、このメロディー展開がaikoだよ!」と感じさせる曲になっていました。

個人的には、メロディーラインがちょっと地味で、いかにもaiko節といった感じの曲が少な目だった点、前作や前々作の方がよかったかな、とは思います。ただ、今回のアルバムも傑作であることは間違いありません。しっかしとaikoの魅力を感じられる良質なポップスアルバム。彼女の実力を存分に感じた1枚でした。

評価:★★★★★

aiko 過去の作品
秘密
BABY
まとめI
まとめII

時のシルエット
May Dream
湿った夏の始まり
aikoの詩。


ほかに聴いたアルバム

Remember/Spangle call Lilli line

昨年は20周年記念のオールタイムベストもリリースしたSpangle call Lilli lineの最新作。相変わらずエレクトロサウンドでドリーミーなポップが魅力的な彼女たちですが、最新作ではシティポップの要素を取り入れたポップチューンも目立つ作品に仕上がっています。ただ、良質で、かつ挑戦的な要素もあるポップスという路線は相変わらずなのですが、インパクトの薄さが否めず。いまひとつ後に残る印象が薄いアルバムというのはいままで通り。悪いバンドではないと思うのですが、もう一工夫が欲しいんだよなぁ。

評価:★★★★

Spangle Call Lilli Line 過去の作品
VIEW
forest at the head of a river

New Season
Piano Lesson
SINCE2
ghost is dead
Dreams Never End
SCLL

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