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2021年4月20日 (火)

ノスタルジーとコロナと

Title:55 STONES
Musician:斉藤和義

35歳の時には「35 STONES」を、45歳の時には「45 STONES」をリリースしてきた斉藤和義。その「45 STONES」から10年、55歳となったせっちゃんがリリースしてきたのが「55 STONES」です。前作「45 STONES」はちょうど東日本大震災直後にリリースされた作品で、原発行政を痛烈に皮肉った「ずっとウソだった」をYou Tubeでアップし、大きな話題となりましたが、あれからもう10年も経つんですね・・・。

さて、その55歳の年にリリースした本作ですが、まず2つ、大きな特徴がありました。まず1つ目は「コロナ」。1曲目はYMOの「BEHIND THE MASK」のカバーからスタートするのですが、まさにこの選曲からして、明らかにコロナ禍でほぼすべての人がマスクをしている現状から選曲されたのは明らかでしょう。さらにアルバムの中でも印象に残るのが「2020 DIARY」。タイトル通り、そのままストレートにコロナ禍を歌った作品になっており、時代性をストレートに反映しています。「もっと冷静に/もっと寛大に/働いてくださる皆さんに 心から感謝しなくちゃ」というは、「45 STONES」ではストレートに怒りを表現していた彼からすると、55歳になってちょっと丸くなっちゃったのかなぁ、なんて思ったりもするのですが、一方では「いつも通り官僚は 杓子定規でぼんやり/真面目な顔で誇らしげに マスクを二枚配る人」と、かなりストレートにアイロニックな歌詞には、せっちゃんらしさを感じます。

そしてもう1点は、55歳という年齢だからでしょうか、どこかノスタルジックな雰囲気を感じさせる曲も目立ちます。まず典型的なのが「Boy」。浦沢直樹によるアニメPVも話題になった本作ですが、少年へのエールを綴った歌詞には、同時にノスタルジックな感覚とジュブナイル的な表現も目立ちます。「魔法のオルゴール」も、妻への愛情を綴ったラブソングながらも、ノスタルジックさを彷彿とさせる歌詞が印象的ですし、「シグナル」も、別れた恋人との思いでの中で、昔を懐かしむような表現もあらわれ、ノスタルジックな雰囲気を感じさせる楽曲に仕上がっています。

「〇〇 STONES」シリーズの前作も、原発への怒りをストレートに表現していたりして、比較的、彼が歌いたいことを自由に歌っていたような楽曲が目立ちましたが、今回のアルバムも、「コロナ」といいノスタルジックな歌詞といい、55歳という彼の身近で起こったことをそのまま歌ったような、いわば斉藤和義のパーソナルな部分にスポットをあてたような曲が多かったように感じます。年齢的に区切りの年に、特にそういうパーソナルな歌を歌うというのが彼のスタンスなのでしょうか。彼にとってはタイトル通り「マイルストーン的」なアルバムと言えるでしょう。

また、パーソナル的といえば、サウンド的にもバンドサウンドというよりも、様々なタイプのサウンドを入れた、比較的「宅録的」な作風になっているのも特徴的。1曲目の「BEHIND THE MASK」もエレクトロサウンドを入れていますし、ほかにも「Strange man」「Lucky Cat Blues」など、エレクトロテイストの目立つ曲が並びます。「一緒なふたり」でもブルージーなギターで聴かせたりと、サウンドの面でもバンドとして音を作り上げるというよりも、斉藤和義が1人で楽しんでいる側面の目立つ構成となっていたように感じます。

そんな斉藤和義としてのパーソナリティーが前面に出た本作。個人的には前作「202020」ほどではないものの、本作も文句なしの傑作アルバムに仕上がっていたと思います。特に歌詞については「2020 DIARY」をはじめ、ついつい聴き入ってしまうようなインパクトある歌詞も多く、彼の魅力が存分に発揮された曲になっていたと思います。この「〇〇 STONES」シリーズは、また次は10年後でしょうか。で、その10年後は、もう65歳なんですね・・・・・・いや、でも、そのころもまた、まだまだ元気いっぱいに活躍してそうです。そしてその頃、私の年齢も・・・・・・。

評価:★★★★★

斉藤和義 過去の作品
I (LOVE) ME
歌うたい15 SINGLES BEST 1993~2007
Collection "B" 1993~2007
月が昇れば
斉藤“弾き語り”和義 ライブツアー2009≫2010 十二月 in 大阪城ホール ~月が昇れば 弾き語る~
ARE YOU READY?
45 STONES
ONE NIGHT ACOUSTIC RECORDING SESSION at NHK CR-509 Studio
斉藤
和義

Kazuyoshi Saito 20th Anniversary Live 1993-2013 “20<21" ~これからもヨロチクビ~ at 神戸ワールド記念ホール2013.8.25
KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2014"RUMBLE HORSES"Live at ZEPP TOKYO 2014.12.12
風の果てまで
KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2015-2016“風の果てまで” Live at 日本武道館 2016.5.22
斉藤和義 弾き語りツアー2017 雨に歌えば Live at 中野サンプラザ 2017.06.21
Toys Blood Music
歌うたい25 SINGLES BEST 2008~2017
Kazuyoshi Saito LIVE TOUR 2018 Toys Blood Music Live at 山梨コラニー文化ホール2018.06.02
KAZUYOSHI SAITO 25th Anniversary Live 1993-2018 25<26 〜これからもヨロチクビーチク〜 Live at 日本武道館 2018.09.07
小さな夜~映画「アイネクライネナハトムジーク」オリジナルサウンドトラック~
弾き語りツアー2019 "Time in the Garage" Live at 中野サンプラザ 2019.06.13
202020

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