ボーカリストあべまの実力がわかるカバーアルバム
Title:MY INNER CHILD MUSEUM
Musician:阿部真央
シンガーソングライター阿部真央の初となるカバーアルバム。タイトルからも想像つく通り、彼女が幼少期から親しんできた楽曲をカバーした作品・・・・・・はいいんですが、楽曲のタイプはかなりバラバラ。SIAの「Alive」や宇多田ヒカルの「SAKURAドロップス」はわかりやすいのですが、「ロマンスの神様」や「津軽海峡・冬景色」、「もののけ姫」まで収録されていますし、さらには「千本桜」とか、本当に「幼少期から親しんできた」の??なんか、「千本桜」の選曲って、ネットユーザー層にいかにも媚びた感じの選曲に感じてしまうのですが・・・。
なんて感じで聴き始めた今回のカバーアルバム。それだけにネガティブな印象の中で聴きはじめたのですが、これが予想以上に良いカバーアルバムに仕上がっていました。その最大の理由は、ボーカリストとしての阿部真央の実力。それこそJ-POPからボカロ系、洋楽から演歌まで様々なジャンルを網羅した今回のカバーアルバムですが、そのバラエティー富んだ曲を易々と歌い上げています。
SIAの「Alive」では英語を上手く感情を込めて歌いこなし、かと思えば和風なメロとサウンドの「千本桜」は、和風なドスを効かせたようなボーカルで歌い上げます。「SAKURAドロップス」も伸びやかな歌声は宇多田ヒカルに負けていませんし、「奏」も暖かさを感じるボーカルに涙腺が熱くなるカバーに仕上げています。
「もののけ姫」も、米良美一がカウンターテナーの歌声で力強く聴かせる難曲なのですが、こちらもハイトーンボイスで見事に歌いこなしています。「津軽海峡・冬景色」も石川さゆりのこぶしを効かせた力強いボーカルと比較されてしまう難しいカバーだと思うのですが、こちらも正直、石川さゆりを向こうにまわしても決して負けていない、こぶしを効かせたボーカルを聴かせてくれています。「ロマンスの神様」も広瀬香美のハイトーンボイスを易々を乗り越え、伸びのあるボーカルをしっかりと聴かせてくれていました。
基本的には彼女が慣れ親しんできた曲のカバーだけに、原曲を大きく逸脱するようなカバーはありませんでしたが、一方でしっかりと阿部真央のボーカリストとしての魅力を伝えているカバーになっていました。なにより、彼女のオリジナルではそこまで感じなかった彼女の歌の上手さと表現力の幅広さに驚かされました。さらに洋楽からJ-POP、演歌やクラシック、男性ボーカル曲まで自在に歌いこなす器用さも見事。阿部真央というと、初期の作品は、曲調があまりに統一感がなく、個人的にはそれが大きなマイナスポイントとなっていたのですが、確かにこれだけ器用に、様々な曲を歌いこなすボーカリストとしての実力があれば、様々なタイプの曲に挑戦したくなるのはわかるような気がします。いまさらながら、初期の彼女が、なぜあれだけ曲調がバラバラだったのか、理解できるような気がしました(それが良いとはいいませんが)。
そんな訳で、ボーカリストあべまの実力がよく出ているカバーアルバム。なにげにカバーシンガーとしても魅力的なだけに、第2弾、第3弾も聴きたいかも。阿部真央のあらたな魅力に触れることの出来る1枚でした。
評価:★★★★★
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