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2021年4月

2021年4月30日 (金)

エレクトロサウンドにからむ歌声が美しく印象的

Title:Menneskekollektivet
Musician:Lost Girls

Menneskekollektivet

今回紹介するのは、ノルウェーのオスロー出身のシンガーソングライター、Jenny Hvalが、同じくノルウェーのミュージシャン、Håvard Voldenと組んで結成した新プロジェクト、Lost Girlsのアルバム。ちなみに聴きなれないアルバムタイトルはノルウェー語で「人間の集団」という意味らしいです。ちなみにJenny Hvalは以前、当サイトでもアルバム「Practice of Love」を紹介したことがあり、その時はその魅力的なサウンドに惹かれました。

そして今回のアルバムもまた、その美しいサウンドに惹かれる傑作アルバムに仕上がっていました。以前聴いたJenny Hvalはドリーミーなエレクトロサウンドに重なる彼女の美しい歌声が大きな魅力の作品でした。今回のアルバムも基本的な方向性はソロ作と同じ。今回のアルバムは44分という比較的コンパクトな長さながらも、そこに収録されている曲数はわずか5曲。10分を超える長尺の楽曲2曲と、6分超のそこそこ長い楽曲2曲、5分弱のコンパクトな作品1曲という構成ですが、それぞれに彼女たちのアイディアがつまった魅力的な作品が収録されていました。

長尺の中で展開する構成がユニークなのが1曲目のタイトルチューン「Menneskekollektivet」。最初は伸びやかなエレクトロサウンドをバックに「語り」からスタートするのですが、中盤あたりからトライバルな様相を帯びたリズムトラックが登場。後半にはさらにエレクトロトラックが重なり分厚いサウンドとなる中、Jenny Hvalが美しい歌声を聴かせる楽曲へと変化を遂げていきます。どこか感じるエキゾチックな雰囲気も魅力的な作品になっていました。

続く「Losing Something」もリバーブのかかったエレクトロトラックとハンドクラップ音でスペーシーに聴かせるエレクトロチューンなのですが、後半、Jenny Hvalの歌声が登場すると、荘厳な雰囲気が加わり、サウンドのイメージがガラッと変わるのもユニーク。そして3曲目は「Carried by Invisible Bodies」はリズミカルなビートが心地よいエレクトロダンスチューン。こちらにもJenny Hvalのハイトーン気味のハミングが美しくエレクトロサウンドと絡むのが印象的。疾走感あるダンスチューンになっていて、ここまでの曲の中ではいい意味でグッと「ポップ」な作品に仕上がっています。

そして「Love,Lovers」も15分強にも及ぶ長尺の曲で、こちらもトライバルなリズムトラックから静かにスタート。徐々にリズムトラックのテンポが速くなり、リズミカルなサウンドが心地よい楽曲になります。ここに重なるJenny Hvalの「語り」が清涼感あって美しいこと。後半は、ここにギターサウンドが加わり、彼女の歌声ともうまく絡み合い、ダイナミックなサウンドが展開されます。さらにラストの「Real Life」も同じく、軽快なリズムトラックにJenny Hvalの歌声が美しく重なるナンバー。こちらは後半にノイジーなギターサウンドが登場し、ロックテイストも強い作品に仕上がっています。

そんな訳で5曲が5曲とも様々な様相をリスナーに聴かせる楽曲なのですが、どの曲もエレクトロサウンドにJenny Hvalの清涼感ある美しいボーカルを上手くからめていて、独自のサウンドを作り上げている点が共通点ですし、かつ大きな魅力となっています。さらにエレクトロサウンドで実験的な作風に仕上げているのも関わらず、Jenny Hvalのボーカルの美しさと、意外とポップなメロディーラインがしっかりと流れてい入る点からも、小難しさがなく、ポップに聴けてしまうという点も大きな魅力でしょう。特にリズミカルなテンポを刻むダンストラックを持つナンバーも目立ち、いい意味での聴きやすさを作り出す大きな要素となっています。

実験性とポピュラリティーを上手く両立させた、非常に優れたポップアルバムの傑作といっても間違いない本作。ドリーミーだったJenny Hvalのソロ作同様、ドリーミーな雰囲気がありつつ、もっとリズムトラックを前に押し出した楽曲が目立ったような印象も受けます。わずか5曲44分という内容ながらも、魅力的なサウンドがつまった1作。最後まで楽しめた1枚でした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Promises/FLOATING POINTS, PHAROAH SANDERS & THE LONDON SYMPHONY ORCHESTRA

Egloレーベル主宰者としても知られ、エレクトロミュージックシーンで活躍するFloating Pointsが、ジャズサックスミュージシャンの巨匠、Pharoah Sanders、さらにはロンドン交響楽団と組んでリリースしたアルバム。エレクトロミュージック、ジャズ、クラシックと異ジャンルのコラボが非常にユニークですが、楽曲的にもエレクトロサウンドを軸にしつつ、ジャジーな要素が加わったり、かと思えばストリングスやオーケストラアレンジが加わったりと非常にユニークな構成。全9トラックで1曲のような構成になっており、Floating Pointsの実験精神がよくわかる、興味深いコラボに仕上がっていました。

評価:★★★★

Floating Points 過去の作品
Crush

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2021年4月29日 (木)

アルバムチャートもK-POP勢

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

Hot100に続いて、Hot AlbumsもK-POPの男性アイドルグループが1位獲得となりました。

今週の1位はBTS「BE」。先週の47位からランクアップし、9週ぶりのベスト10及び1位返り咲き。これはグラミー賞授賞式の衣装を着用したメンバーの未公開写真使用の限定フォトカード付セットが発売された影響らしく、CD販売数で1位獲得。オリコン週間アルバムランキングでも2万1千枚を売り上げて、1位にランクインしています。

2位初登場は男性声優江口拓也「EGUISM」がランクイン。本作がデビュー作となるミニアルバムで、CD販売数2位、ダウンロード数7位、PCによるCD読取数25位で総合順位も2位につけました。オリコンでも初動1万7千枚で3位に初登場しています。

3位初登場は堤博明,照井順政,桶狭間ありさ「『呪術廻戦』オリジナル・サウンドトラック」がランクイン。TBS系アニメ「呪術廻戦」のサントラ盤。CD販売数4位、PCによるCD読取数18位でしたが、ダウンロード数2位で総合順位もベスト3入り。ポスト「鬼滅の刃」的で人気を博している漫画ですが、まだ「鬼滅の刃」ほどの国民的ブームには至っていません。ただ、固定ファンが買うCDの売上よりも、ライトユーザーが購入するダウンロード数の順位が伸びているあたり、広い層への人気も伺わせます。今後のさらなるブレイクはなるのでしょうか?

続いて4位以下の初登場盤です。4位にはhololive IDOL PROJECT「Bouquet」がランクイン。バーチャルYou Tuberの事務所「ホロライブプロダクト」所属のアイドルによるプロジェクトhololive IDOL PROJECTのデビューアルバム。CD販売数3位、ダウンロード数5位、PCによるCD読取数24位。オリコンでは初動売上1万4千枚で4位初登場となっています。

5位には日韓合同の男性アイドルグループORβIT「Enchant」が初登場。CD販売数5位、ダウンロード数9位、PCによるCD読取数76位。オリコンでは初動売上1万7千枚で2位初登場。前作「00」の2万9千枚(3位)からダウンしています。

7位にはさだまさし「さだ丼~新自分風土記Ⅲ~」が入ってきました。CD販売数6位、ダウンロード数15位、PCによるCD読取数39位。2019年にリリースされた「新自分風土記I~望郷篇~」「新自分風土記II~まほろば篇~」に続くセルフカバーアルバム第3弾。オリコンでは初動売上1万1千枚で6位初登場。直近のオリジナルアルバム「存在理由~Raison d'etre~」の1万枚(6位)から微増。また、前作のセルフカバーアルバム「新自分風土記I~望郷篇~」「新自分風土記II~まほろば篇~」の9千枚(7位)、1万枚(6位)からも若干アップしています。

最後10位には「NieR Replicant ver.1.122474487139...Original Soundtrack」がランクイン。CD販売数及びダウンロード数8位、PCによるCD読取数23位。2010年にスクウェア・エニックスからリリースされたアクションRPG「NieR RepliCant」のバージョンアップ作品「NieR Replicant ver.1.122474487139...」のサントラ盤。オリコンでも初動売上7千枚で8位に初登場しています。

一方、ロングヒット盤はYOASOBI「THE BOOK」が5位から9位にダウン。ダウンロード数及びPCによるCD読取数は1位を獲得しているものの、新譜ラッシュに押される形でランクダウンしています。また先週、ベスト10に返り咲いた米津玄師「STRAY SHEEP」は今週13位にダウン。残念ながら返り咲きは1週に留まりました。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2021年4月28日 (水)

今週はK-POP

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

先週のAKB系と入れ替わり、今週はK-POPの男性アイドルグループが1位獲得です

今週1位初登場は韓国の男性アイドルグループSEVENTEEN「ひとりじゃない」が獲得。CD販売数及びTwitterつぶやき数1位、PCによるCD読取数4位。ダウンロード数は45位、ストリーミング数24位と奮わず、固定ファン層以外への広がりはまだ限定的な模様。とはいえ、オリコン週間シングルランキングで初動売上31万4千枚を記録するなど、CD販売数で他を圧倒し、初登場1位となりました。オリコンの初動売上は前作「舞い落ちる花びら (Fallin' Flower)」の初動33万4千枚(1位)からダウン。

2位はNiziU「Take a picture」が先週から変わらず同順位をキープ。You Tube再生回数は4週連続で1位をキープ。PCによるCD読取数も先週の2位から1位にアップ。先週まで同時ランクインだった「Poppin' Shakin'」は今週14位にダウンしていましたが、こちらは圧倒的な強さを見せつけています。

3位には、先週4位のYOASOBI「怪物」がワンランクアップでベスト3返り咲き。これで4週ぶりのベスト3ヒット+14週連続のベスト10ヒットとなりました。ダウンロード数が6位から2位にアップしたほか、ストリーミング数が5位から3位、You Tube再生回数も6位から3位と軒並みアップ。「夜に駆ける」並みのヒットになりそうな勢いがあります。一方「夜に駆ける」は5位から8位にダウン。下落傾向になっています。ただ、同作、ベスト10初ランクインが昨年の4月29日付チャートでしたので、これでついに、1年間ランクインを続けていた脅威のヒットとなりました。これで53週連続のベスト10ヒットに。さらに今週「群青」が13位から10位にアップし、5週ぶりのベスト10返り咲きに。これでYOASOBIは3曲同時ランクインとなっています。

続いて4位以下ですが、今週は初登場曲はゼロ。またロングヒット曲がズラリと並んでいます。

まず優里「ドライフラワー」は3位から5位にダウン。ただ、ストリーミング数1位、You Tube再生回数5位は先週と同順位をキープ。ダウンロード数が4位から6位にダウンしていますが、まだまだ強さを感じるチャートとなっています。これでベスト10ヒットは23週連続。

BTS「Dynamite」は今週も6位をキープし、これで3週連続6位にランクイン。ただここに来て、ストリーミング数が3位から2位、You Tube再生回数も3位から2位にアップしています。こちらはこれで36週連続のベスト10ヒット。

Ado「うっせぇわ」に関しても、こちらも先週から変わらず7位をキープ。一時期、一気に下落していきましたが、ここに来て踏みとどまっています。You Tube再生回数は4位をキープ。ストリーミング数は8位から9位にダウンする一方、ここに来てダウンロード数が8位から4位にアップしています。これで15週連続のベスト10ヒット。

一方、同じようにロングヒットは続けているものの、なかなか上位の壁を破れないのが9位のAwesome City Club「勿忘」。11週連続のベスト10ヒットを記録しているものの、これで4週連続の9位。You Tube再生回数が13位から16位にダウンしていますが、一方、ダウンロード数は16位から15位にアップ。ストリーミング数も6位から5位にアップしています。そろそろ、さらに上位を狙ってほしいところなのですが・・・。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2021年4月27日 (火)

全く異なる解釈がユニーク

Title:40:42
Musician:Vampire Weekend

4042

今回紹介するのはVampire Weekendの新作・・・というよりも、たった2曲入りのEP盤。直近のアルバム「Father Of The Bride」に収録されていた「2021」を、新進気鋭のサックス奏者、Sam Gendelと、ベルギー出身の4人組エレクトロロックバンドGooseがリミックスを手掛け、カバーした作品。それぞれ20分21秒に及ぶ作品になっており、アルバムタイトル通り、合計40分42秒という長さのアルバムとなっています。

オリジナル音源となっている「2021」は、直近のアルバムの中の1曲なのですが、2分に満たない長さの楽曲。エレクトロサウンドを取り入れて、新たな挑戦を感じさせつつ、メランコリックなメロディーを短いながらもしっかり聴かせるポップな作品になっています。ただ、その短さゆえに、アルバムの中ではインターリュード的な感じとなっている作品。それが本作では、まさに「主役」に抜擢されています。

もっとも、それだけ短い作品だったからこそ、それぞれのミュージシャンがそれぞれの解釈で自由に楽曲をいじれた、ということが言えるのかもしれません。2組のミュージシャンが、それぞれこの「2021」という楽曲を全く異なる解釈をほどこし、全く異なる手法で楽曲を再構築した楽曲が並びます。

まず1曲目。「2021(in the space between two pieces of wood)」と名付けられたSam Gendelによる作品は、エレクトロアレンジがほどこされた作品。冒頭はサックスやホーンの音色で静かにスタートし、楽曲のメロディーラインを使用したメランコリックな雰囲気からスタートするのですが、途中からエレクトロサウンドにシフト。元曲のボーカルをサンプリングした上にズタズタにカットしたコラージュを楽曲の中にちりばめた実験的な作風を聴かせてくれたかと思いきや、ラストは自然の音をサンプリングしつつ、AOR的でジャジーなサウンドでしんみり締めくくり。かなり挑戦的なサウンドで、原曲を様々な方向から調理したようなアレンジの作品になっています。

逆にGooseによるリミックス「2021(January 5th,to be exact)」は、原曲のもつ「歌」としての部分を強調しつつ、ロック的な肉感の強いアレンジに仕上げています。冒頭はまず「歌」をしっかり聴かせつつ、途中からはバンドサウンドによるジャムセッションにシフト。特に中盤以降、力強いドラムやピアノの音色も加わり、若干サイケ的なサウンドを加味しつつ、かなりダイナミックなサウンドを聴かせてくれています。そしてラストは再び「歌」を聴かせ、20分以上にも及ぶセッションを締めくくり。こちらは「挑戦的」というよりも、むしろロックバンドとしては王道を行くようなリミックスと言えるかもしれません。

わずか2分弱の曲が、ミュージシャンによって全く異なるアレンジがほどこされ、20分以上の楽曲となり、全くことなる感じの楽曲に仕上がったというのが非常にユニークなEP。ただ一方で、「全く異なる」とはいえ、いずれも「2021」という楽曲がもともと持っていた要素を再構築した結果出来上がったような楽曲となっており、そういう意味では「2021」の持つ魅力をしっかりと表現したリミックスになっていました。短いインターリュード的な楽曲でも、しっかりとVampire Weekendとしての魅力、実力を楽曲の中に具備していたという事実がこのリミックスで再認識できた、という意味でも非常に興味深い試みだったと思います。ある意味、非常に実験的な試みゆえ、わずか2曲のEP盤なので熱心なファン以外はスルーしそうな企画ですが、そうするにはあまりにももったいない、素晴らしい企画盤でした。

評価:★★★★★

VAMPIRE WEEKEND 過去の作品
VAMPIRE WEEKEND
CONTRA
Modern Vampire Of The City
This Life/Unbearably White
Father of the Bride


ほかに聴いたアルバム

La Face de Pendule à Coucou/Elvis Costello

エルヴィス・コステロの最新EPは、直近のオリジナルアルバム「Hey Clockface」の収録曲をフランス語でカバーしたという、ユニークな試みのよるアルバム。さらに「No Flag(Chante)」ではイギーポップがボーカルで参加し、フランス語で歌っている点も話題になっています。フランス語で歌われている影響か、どこか感じる異国情緒な雰囲気が新たな魅力として加わっている印象も。原曲とはまた一風変わった雰囲気を味わえるアルバムとなっていました。

評価:★★★★

Elvis Costello 過去の作品
Momofuku(Elvis Costello&the Imposters)
Secret,Profane&Sugarcane
National Ransom
Wise Up Ghost(Elvis Costello&The Roots)
LOOK UP(Elvis Costello&the Imposters)
Purse(Elvis Costello&The Imposters)
Hey Clockface

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2021年4月26日 (月)

率直な女性の本音を歌う

Title:純愛クローゼット
Musician:コレサワ

熊をモチーフとした愛らしいキャラクターを前面に押し出しているのも印象的な女性シンガーソングライター、コレサワの約2年半ぶりとなるニューアルバム。基本的には顔出しNGということで、「れ子」という熊のキャラクターの被り物をインタビューの時でも被っているようで、その独特なプロモーション活動もインパクトがあります。(もっとも、インディーズ時代は顔を出していたようで、彼女の容姿はネット上で容易に見つけ出せるのですが・・・)

楽曲的には比較的シンプルなポップミュージックがメイン。以前はギターロックの色合いが強く、今回のアルバムでも1曲目の「あたしが死んでも」をはじめ、「右耳のピアス」などギターサウンドを前に押し出した曲も目立つのですが、一方では「愛を着て」「Drama」などピアノを軸として聴かせるような楽曲や、今どきのエレクトロポップに仕上げた「スーパーでデート」、アコギで聴かせる「いただきます」など、バリエーションが出てきた・・・というよりは、ギターロックに縛られないような、ソロらしい楽曲が増え、「シンガーソングライター」としての様相がより強くなってきたように感じます。

ただ、彼女の大きな特徴は、そんなサウンド面よりもやはり女性の心境をストレートに吐露したその歌詞でしょう。かなり情熱的なラブソングがメイン。それも恋愛にのめりこんでいるような歌詞が多く、若干の「怖さ」も感じさせるのが特徴的で、例えば「あたしが死んでも」では、「私がもうすぐ死んじゃうといったらどうする?」という彼女からの質問に「いつでもそばにいるようにするよ」という回答に対して「一緒に来てはくれないのね」(=死んでくれないのね)と答える歌詞は、比較的明るく歌われるのですが、よくよく聴くと、かなり怖さを感じます。

「右耳のピアス」も、よくよく読むと、おそらく彼女がいる男性とつきあっている自分が、わざと彼女といるはずの彼の家にピアノを落としてくるという話で、結構怖いストーリー。「この恋はスクープされない」も、彼との2人切りという恋愛にのめりこんでいる姿を感じさせ、恋愛に対する強い情熱を感じさせます。

一方では、もっと素直でかわいらしいラブソングも印象的で、彼との夜、お風呂に一緒に入っている瞬間に幸せを感じる(ちょっと考えるとエロい歌詞の)「バスタイム」や、好きな人が出来て、世の中の景色が明るくなった女の子の心境をつづった「ミッドナイトでかけぬけて」、さらに「二人がいる場所ならそこが特別なステージ」と歌う「スーパーでデート」など、かわいらしい女の子の恋愛に対する心境描写も魅力的となっています。

そんな歌詞が魅力的な彼女ではあるのですが、正直なところ、歌詞のフレーズが後に残るか、と言われると微妙な点も否めません。一度聴いたら忘れられないようなインパクトのあるフレーズは少なく、それを補うようなメロディーラインの独自性やインパクトがあるかと言われると、その点も弱く・・・。こういってしまうと申し訳ないのですが、いまのままだと「aikoの下位互換」といった感も否めません。

もっとも、これで飛び道具のように、aikoとは全く違う方向性やサウンドを目指すというのも、それはそれで「彼女らしさ」がなくなってしまうのでしょうが・・・もうちょっと歌詞に「これは!」といったフレーズを登場させるか、誰にでも書けないような、コレサワらしい世界観を確立させるか・・・そうすれば、間違いなくブレイクできるミュージシャンだとは思うのですが。魅力的な歌詞を書いてくるミュージシャンですが、まだ乗り越えるべき壁は大きい、そうも感じてしまう1枚でした。

評価:★★★★

コレサワ 過去の作品
コレでしょ
失恋スクラップ

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2021年4月25日 (日)

実験的ながらもポピュラリティーも

Title:Deacon
Musician:serpentwithfeet

アメリカはLAを中心に活動を続けるエクスペリメンタルR&Bのミュージシャンserpentwithfeet(サーペントウィズフィート)ことJosiah Wiseのニューアルバム。2018年にリリースされたアルバム「Soil」も随所で大絶賛を受けたそうですが、本作はそれに続くニューアルバムということで話題となっています。

彼の音楽がカテゴライズされている「エクスペリメンタルR&B」というジャンル、「エクスペリメンタル」とは「実験的な」という意味で、文字通り、実験性の強いR&Bというジャンルとなっています。確かに、彼の楽曲は、特にサウンドの側面で非常に凝った、聴かせるものになっている点が大きな特徴であり魅力的。アルバムの冒頭「Hyacinth」は、ピアノの音色を美しく聴かせてスタートするのですが、途中からエレクトロサウンドが登場し、彼のファルセットボーカルも含めて、非常に美しく、かつ奥行のあるサウンドに仕立て上げられています。続く「Same Size Shoe」も美しいピアノの音色とエレクトロサウンドを上手く組み合わせた、清涼感ある音色が魅力的。アコースティックギターとエレクトロサウンドを上手く組み合わせて哀愁感あるサウンドにまとめた「Amir」も魅力的。ラストの「Fellowship」もパーカッシブなリズムを上手く楽曲の中に生かしています。

全体的には女性ボーカルのNaoをフューチャーし、幻想的なサウンドを聴かせる「Heart Storm」のような分厚いサウンドを聴かせる曲もあるものの、比較的音数を絞ったシンプルかつ音の間の空間を聴かせるようなサウンド構成が魅力的で、非常に清涼感のあるサウンドに仕上げています。「Malik」「Wood Boy」など、強いビートを聴かせる、今どきなサウンドの曲調も取り入れている一方、インターリュード的な作品ではあるものの「Dawn」のような、荘厳さを感じさせるアカペラナンバーもあり、全体的には最近の音楽から、古き良きソウルミュージックの影響まで感じられる作風も大きな魅力でした。

また、「実験的なR&B」とはいっても、サウンドも含めて小難しさはほとんどありません。むしろ非常にメロディアスで聴かせるメロディーラインが魅力的なR&Bのナンバーが並ぶ作品になっています。冒頭を飾る「Hyacinth」は、どこか切なさを感じるメランコリックなメロが印象的ですし、続く「Same Size Shoe」もファルセットボーカルで聴かせるメロディーラインは非常に美しく、心に響きます。その後も基本的にはポップでメロディアスな「歌」が主軸になった作品が並んでおり、基本的にはあくまでも「歌」を聴かせる作品になっています。そういう意味でも小難しさ的な要素はほとんどありません。

実験的、というよりは挑戦的で独創的なサウンドが非常に魅力的な一方、歌をメインとした作風は比較的幅広い層にアピールできそうな、そんな魅力的な傑作アルバム。実験性とポピュラリティーが両立しているほか、「今どきの音楽」と「昔からの伝統的な作風」も同居しているようなそんな幅広い音楽性も魅力的。今年を代表する傑作の1枚でした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Love Goes: Live at Abbey Road Studios/Sam Smith

昨年10月に実施されたオンラインライブの模様を収録したライブアルバム。その歌声を非常に美しく聴かせるパフォーマンスが印象的で、その声の魅力をより堪能できるアルバムになっています。特にライブならではのカバー曲も収録。「Time After Time」など、ちょっと意外な選曲に思われるのですが、彼の歌声とメロディアスな原曲の印象がピッタリマッチした絶妙なカバーに仕上がっています。Sam Smithの魅力をじっくりと味わえるライブ盤でした。

評価:★★★★★

Sam Smith 過去の作品
IN THE LONELY HOUR
Thrill It All
Love Goes

Allen Ginsberg's The Fall of America: A 50th Anniversary Musical Tribute

ビート文学を代表するアメリカの詩人、アレン・ギンズバーグの詩集「THE FALL OF AMERICA: Poems of These States 1965-1971(アメリカの没落)」の50周年を記念するトリビュートアルバム。ヨ・ラ・テンゴ、サーストン・ムーア、エド・サンダースなどが参加している中、日本から坂本慎太郎が参加していることでも話題となっています。

楽曲は、基本的に彼の詩の朗読をベースに、各自、サウンドを重ねているスタイル。全体的にダウナーな雰囲気の曲調が多いのですが、その中でもストリングスやピアノ、ホーンやエレクトロサウンドなどを入れて、各自思い思いに、アレン・ギンズバーグの詩を彩る音を探し出している印象を受けます。坂本慎太郎が参加した「Manhattan Thirties Flash」は日本語の語りがそのまま登場。どこか空白を感じさせるサウンドに、彼らしさを感じます。

語りの部分について、日本人にとっては、その意味をストレートに理解できないのは残念なのですが、それぞれのミュージシャンが思い思いにその才能を発揮しており、全体的に地味な印象はあるものの最後まで楽しめるアルバムでした。

評価:★★★★

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2021年4月24日 (土)

ソロデビューから早くも10年!

Title:TWILIGHT WANDERERS -BEST OF YUJI NAKADA 2011-2020 -
Musician:中田裕二

ソロデビューから10年。もう「元椿屋四重奏の」という肩書は不要でしょうね。椿屋四重奏は結成10年で解散したので、これからはソロとしてのキャリアの方が長くなってくることになります。シンガーソングライター中田裕二の、ソロデビュー10周年を記念してリリースされた初のベストアルバム。2枚組全33曲。うち2曲が新曲という構成の、かなりボリューム感のある作品になっています。

さて、その中田裕二の楽曲の大きな特徴としては、なんといってもマイナーコード主体の哀愁感あふれるメロディーラインでしょう。これは椿屋四重奏時代からも一貫しており、ある意味、そのメロディーラインの方向性は徹底されている感もあります。ともすれば一本調子な感は否めないのですが、ただそれでもこのベスト盤を聴くと、メランコリックなメロディーを主軸としつつ、バラエティーのある楽曲への挑戦がうかがえました。

「ベール」ではどこかエキゾチックさが漂う作風になっていますし、「UNDO」はギターサウンドにファンキーな要素を感じます。Disc1で異色的だったのが「MIDNIGHT FLYER」で、こちらは中田裕二流のディスコサウンドといった感のある、テンポよいリズミカルな曲調が特徴的な作品となっています。

Disc2に入ると、さらに楽曲のバリエーションは増して、「ただひとつの太陽」はブルージーなギターを聴かせつつ、どこかゴスペルな要素も感じさせる曲。「正体」では韻を踏んだ歌詞が、どこかHIP HOP的なものを感じさせますし、「ランナー」に至っては、最初、なんとラップまで登場します。「BACK TO MYSELF」ではエレクトロのサウンドを入れてきていますし、どの曲も彼らしい哀愁感あふれるメロディーが貫かれているのですが、そんな中でのバリエーションの広さを感じさせます。

一方では、この哀愁感あふれるメロディーラインを前面に押し出した歌謡曲的な楽曲も少なくなく、「灰の夢」「ユートピア」あたりが典型的でしょうか。さらに「誘惑」などは女性視点の歌詞となっており、この歌詞のウェットな世界観も含めて、実に「歌謡曲」らしい楽曲となっていました。ここらへんは、彼のメロディーセンスがフルに発揮された曲と言えるでしょう。

そんな感じで意外とバリエーションも多く、哀愁感あふれるメロディーラインで中田裕二の魅力を存分に楽しめるベスト盤であることは間違いないのですが・・・・・・ただ、そうとはいっても全33曲、2時間半を超えるフルボリュームの内容で、最後は正直、飽きが来てしまったというのが率直な感想。これが10曲1時間程度の内容ならば、十分楽しめると思うのですが、さすがにジャンル的にバリエーションを持たせているとはいえ、メロディーが若干一本調子である点は否めず、良くも悪くもおなか一杯になってしまいました。

もっとも、そうといっても急に明るい曲調の、まったく違うタイプの曲を書けばいいのでは?という話ではないですし、純粋に、今回のベストはちょっと詰め込みすぎたといった感があるのかもしれません。また、メロディーラインがもっと圧倒的なインパクトのあるキャッチーな曲が何曲かあれば印象は変わったのかもしれませんが。

このベスト盤の後、ソロとしての活動が、椿屋四重奏の活動より長くなるわけで、ある意味、彼にとっても新たな挑戦と言えるのかもしれません。おそらく今後も、このような哀愁感漂うメロディーの作品をたくさん作り続けるでしょうが、その中で、どのような挑戦に挑むのでしょうか。彼の次の10年にも期待したいところです。

評価:★★★★

中田裕二 過去の作品
ecole de romantisme
SONG COMPOSITE
BACK TO MELLOW
LIBERTY
thickness
NOBODY KNOWS
Sanctuary
DOUBLE STANDARD
PORTAS

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2021年4月23日 (金)

コロナ禍に翻弄された(?)ベスト盤

Title:Where's My History?
Musician:[Alexandros]

最近では「ドロス」という愛称もすっかり定着し、人気バンドの仲間入りを果たした[Alexandros]の初となるベストアルバム。もともとはインディーズデビュー10周年を記念して昨年5月にリリース予定だったのですが、新型コロナウイルスの影響で夏に延期。さらには、今年1月に再延期されたものの、再び緊急事態宣言が発令されたことにより3月に再延期。そしてようやくリリースとなりました。ある意味、コロナ禍に翻弄されることになったベストアルバム。ただ3月の時点でも状況はおさまっていないので、それなら昨年の夏あたりにリリースさればよかったのでは?といまさらながら思ってしまいますが。

さて、[Alexandros]といえば、最近ではすっかりその名前が定着しましたが、デビュー当初は[Champagne]という名前で活躍していたことは、特にここ最近ファンになったような方では、ひょっとしたら「知らない」という方すらいるのかもしれません。ひょっとしてらバンドとしてもそろそろ[Champagne]と名乗っていた事実は黒歴史になってきているのでは??なんて疑念を抱いたのですが、今回のアルバム、Disc1は[A]盤、Disc2は[C]盤と名乗り、それぞれ[Alexandros]時代の曲と[Champagne]時代の曲を収録した選曲に仕上がっています。彼らにとって、[Champagne]と名乗っていたということは重要な歴史なんだな、ということを感じさせてくれます。

そのため彼らの活動の初期の作品と最近の作品が比較できるような形になっている本作。一番顕著だったのはそのサウンドで、[C]盤の曲は、「Cat 2」だったり「Don't Fuck With Yoohei Kawakami」だったりと、比較的シンプルなギターロックの曲がメインとなっている構成。いわゆるインディー系のギターロックバンドという雰囲気が強くあらわれた曲が目立ちます。一方[A]盤の曲は楽曲としてのスケール感もまし、「Girl A」のようなエレクトロビートを取り入れた曲だったり、「Philosophy」のようなピアノやストリングスを入れた曲も並び、サウンドの幅も広がった感があります。

一方、メロディーラインに関しては、初期の作品もここ最近の曲も比較的共通しており、メランコリックさが強く感じる曲が並んでいます。[A]盤だと「Mosquito Blue」などノイジーなギターサウンドをバックに歌われるメランコリックなメロが印象的ですし、「LAST MINUTE」などもファルセットボイスを入れつつメランコリックな歌を聴かせてくれます。[C]盤でも「For Freedom」「Run Away」などメランコリックなナンバーが並びます。哀愁感あるメロディーをより聴かせるという点では[C]盤の方がより目立ったかもしれませんが、このメランコリックさが彼らの大きな魅力の一つなのは間違いないでしょう。

個人的に[Alexandros]というと、特に直近のオリジナルアルバム「EXIST!」「Sleepless in Brooklyn」の出来がよく、ここ最近、グッとその実力を増してきたという印象を受けます。ただ、このベスト盤であらためて過去の作品を見ると、[Champagne]時代の作品でも魅力的な楽曲が少なくなかったな、ということを再認識させられました。特に初期の作品の方がよりロック度の高い作品が目立ち、疾走感あるギターロックがカッコいい「Don't Fuck With Yoohei Kawakami」みたいに、個人的にかなり壺にはまる作品も少なくありませんでした。

ただちょっと気になったのは、メランコリックな曲調が魅力的ではあるものの、それだけで売りにできるようなインパクトのある「美メロ」のようなものは少なく、メロディーだけを売りにしようとするとちょっと弱い部分があるかな、というのが気になりました。その分、サウンドなどで補って魅力ある作品には仕上げているのですが、その点が若干彼らの弱点のようにも感じました。

そのような気になる部分はあるものの、ベスト盤だけに魅力的な作品がたくさんつまった、彼らの実力を強く感じることが出来る作品に仕上がっています。ここ最近、脂ののった傑作オリジナルアルバムを連発しているだけに、これからの活躍がまだまだ期待できる彼ら。このベスト盤リリースを区切りに新たな一歩を踏み出すのでしょうか。これからも楽しみです。

評価:★★★★★

[Alexandros] 過去の作品
Schwarzenegger([Champagne])
ALXD
EXIST!
Sleepless in Brooklyn
Bedroom Joule

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2021年4月22日 (木)

女性ソロシンガーの作品が1位2位

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週は女性ソロシンガーの作品が1位2位に並びました。

まず1位にはAimer「Walpurgis」がランクイン。CD販売数及びダウンロード数で1位、PCによるCD読取数で4位にランクインしています。約2年ぶりとなるフルアルバム。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上2万8千枚で2位初登場。直近作はリイシューアルバム「花の唄/I beg you/春はゆく」で、同作の1万3千枚(4位)からはアップ。オリジナルフルアルバムとしての前作で、2枚同時リリースとなった「Sun Dance」「Penny Rain」で、それぞれ初動3万7千枚(2位)、3万6千枚(3位)からはダウンしています。

そして2位は宇多田ヒカル「One Last Kiss」が先週の3位からランクアップし、この位置に。CD販売数も4位から3位にアップし、オリコンでも3位にランクインしてきています。今週、Hot100での「One Last Kiss」は残念ながらベスト10から陥落してしまいましたが、アルバムは順調にヒットを続けている模様です。

3位は先週1位の≠ME「超特急 ≠ME行き」が2ランクダウンながらもベスト3をキープしています。

続いて4位以下の初登場盤ですが、まず4位に渡辺曜(斉藤朱夏) from Aqours「LoveLive! Sunshine!! Watanabe You First Solo Concert Album ~Beginner's Sailing~」がランクイン。アニメキャラによるアイドルプロジェクトラブライブ!サンシャイン!!から登場したアイドルグループAqoursのメンバーによるソロアルバム。CD販売数4位、ダウンロード数18位、PCによるCD読取数42位。オリコンでは初動売上1万1千枚で4位初登場。同シリーズの前作、国木田花丸(高槻かなこ)from Aqours「LoveLive! Sunshine!! Kunikida Hanamaru First Solo Concert Album ~おやすみなさん!~」の1万2千枚(4位)からは若干のダウンとなっています。

6位にはアメリカのロックバンドTHE OFFSPRING「Let The Bad Times Roll」がランクイン。CD販売数及びダウンロード数5位、PCによるCD読取数63位。実に9年ぶりとなる新作。90年代後半に一世を風靡したバンドで、懐かしいという印象を強く受けてしまうのですが、それでもここまで上位にランクインしてくるあたりに根強い人気を感じます。オリコンでは初動売上3千枚で5位初登場。前作「Days Go By」の2万枚(7位)から大きくダウンしていますが、9年というブランクと、この9年間でのCD市場の変化を考えると、十分大健闘でしょう。

7位には韓国の男性アイドルグループSHINee「Atlantis:SHINee Vol. 7」がランクイン。彼らが2月にリリースしたアルバム「Don't Call Me」に表題曲など3曲を追加して再発売したリパッケージアルバム。4月22日リリースのアルバムからの先行配信で、ダウンロード数3位にランクインし、ベスト10入りを果たしています。この手のK-POP系に多い、「発売済のアルバムに数曲だけ新曲を加えて再発売する」という「リパッケージアルバム」という手法はファンに事実上、同じアルバムの2度買いを強いる手法で、ちょっと酷い商法だと思うので、批判をあびてもいいと思うのですが・・・。

今週の新譜は以上ですが、返り咲きアルバムも1枚。8位に米津玄師「STRAY SHEEP」が先週の11位からランクアップ。9週ぶりにベスト10返り咲き。通算26週目のベスト10ヒットとなっています。なにげにPCによるCD読取数はこれで5週連続の3位と、いまだに高順位をキープしているのですが、それに加えて、CD販売数が21位から18位、ダウンロード数が12位から10位にアップし、総合順位もベスト10入りを果たしています。4月からTBS系ドラマ「リコカツ」に、彼の新曲「Pale Blue」が主題歌として起用され、オンエアされた影響でしょうか。

またロングヒット盤ですが、YOASOBI「THE BOOK」は4位から5位にワンランクダウン。PCによるCD読取数は1位をキープしていますが、ダウンロード数は1位から2位にダウン。これで15週連続のベスト10ヒットとなりました。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2021年4月21日 (水)

今週は「純国産」アイドルグループが1位

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

先週の「韓国産日本人女性アイドルグループ」と入れ替わりに「純国産」のアイドルグループが1位獲得しました。

今週1位初登場は櫻坂46「BAN」が獲得。CD販売数、PCによるCD読取数1位、ダウンロード数、Twitterつぶやき数3位、ラジオオンエア数15位、You Tube再生回数90位。一方、先週1位だったNiziU「Take a picture」はワンランクダウンの2位となりました。いわば先週の韓国産の日本人アイドルグループを純国産の日本人アイドルグループが下す形になったのですが、櫻坂46の新曲は、いかにも「社会派な歌詞を取り込みました」的な感じがいかにも秋元康的で中途半端さが否めませんし、サウンドの抜けといい、楽曲の出来は完全にNiziUに軍配が下った感じがあります・・・。「BAN」はオリコン週間シングルランキングでは初動売上37万3千枚で1位初登場。前作「Nobody's fault」の40万8千枚(1位)からダウン。一方、NiziUは先週7位にランクインした「Poppin' Shakin'」が今週も10位にランクインし、2曲同時ランクインとなっています。

3位は優里「ドライフラワー」が先週から同順位をキープ。ダウンロード数は6位から4位、You Tube再生回数も7位から5位にアップしたほか、ストリーミング数が今週2位から1位にアップし、3週ぶりに1位返り咲きとなっています。これでベスト10ヒットは22週連続。通算11週目のベスト3ヒットとなりました。

続いて4位以下の初登場曲です。8位にロックバンドONE OK ROCK「Renegades」がランクイン。ダウンロード数で見事1位を獲得したほか、Twitterつぶやき数で4位を獲得。ストリーミング数43位、ラジオオンエア数36位、You Tube再生回数85位と、いずれも順位が少々低いのが気にかかりますが、総合順位では見事ベスト10入り。ちょっと意外なことに彼ら初となる配信シングルだそうで、彼ららしいスケール感ある楽曲になっています。

今週の初登場曲は以上。次にロングヒット曲ですがまずはYOASOBI「夜に駆ける」は今週も5位をキープ。これでベスト10ヒットを52週連続に伸ばしています。一方「怪物」も今週4位をキープ。これで13週連続のベスト10ヒットになります。ダウンロード数が7位から6位にアップ。ストリーミング数も6位から5位にアップしています。ちなみに先々週、突然ランク圏外となり、先週69位にアップしたYou Tube再生回数は今週6位にアップし、3週前の水準に回復しています。あまりに異常な動きに、チャートの信ぴょう性を若干疑ってしまうのですが・・・。

BTS「Dynamite」も先週から変わらず6位。これで35週連続のベスト10ヒットになっています。ただ、先週2位に初登場した「Film out」は今週11位に一気にダウン。2曲同時にロングヒットか、と思われたのですが、意外な差が発生しました。てっきり、熱心なBTSの固定ファンによる支持だと思っていたのですが、BTSというよりも「Dynamite」という楽曲自体がうけているということでしょうか?

先週8位までダウンしたAdo「うっせぇわ」は今週7位にアップ。ストリーミング数は8位で先週から同順位でしたが、ダウンロード数が13位から8位、You Tube再生回数も5位から4位にアップ。これで14週連続のベスト10ヒット。意外と早く消えていくのかと思いきや、今週はなんとか踏みこたえました。

そしてAwesome City Club「勿忘」は先週から同順位の9位をキープ。ダウンロード数は11位から16位にダウンしてしまいましたが、ストリーミング数は7位から6位にアップ。これでベスト10ヒットは10週連続となります。そろそろ、さらに上の順位を狙ってほしいのですが・・・来週以降の動向に注目されます。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2021年4月20日 (火)

ノスタルジーとコロナと

Title:55 STONES
Musician:斉藤和義

35歳の時には「35 STONES」を、45歳の時には「45 STONES」をリリースしてきた斉藤和義。その「45 STONES」から10年、55歳となったせっちゃんがリリースしてきたのが「55 STONES」です。前作「45 STONES」はちょうど東日本大震災直後にリリースされた作品で、原発行政を痛烈に皮肉った「ずっとウソだった」をYou Tubeでアップし、大きな話題となりましたが、あれからもう10年も経つんですね・・・。

さて、その55歳の年にリリースした本作ですが、まず2つ、大きな特徴がありました。まず1つ目は「コロナ」。1曲目はYMOの「BEHIND THE MASK」のカバーからスタートするのですが、まさにこの選曲からして、明らかにコロナ禍でほぼすべての人がマスクをしている現状から選曲されたのは明らかでしょう。さらにアルバムの中でも印象に残るのが「2020 DIARY」。タイトル通り、そのままストレートにコロナ禍を歌った作品になっており、時代性をストレートに反映しています。「もっと冷静に/もっと寛大に/働いてくださる皆さんに 心から感謝しなくちゃ」というは、「45 STONES」ではストレートに怒りを表現していた彼からすると、55歳になってちょっと丸くなっちゃったのかなぁ、なんて思ったりもするのですが、一方では「いつも通り官僚は 杓子定規でぼんやり/真面目な顔で誇らしげに マスクを二枚配る人」と、かなりストレートにアイロニックな歌詞には、せっちゃんらしさを感じます。

そしてもう1点は、55歳という年齢だからでしょうか、どこかノスタルジックな雰囲気を感じさせる曲も目立ちます。まず典型的なのが「Boy」。浦沢直樹によるアニメPVも話題になった本作ですが、少年へのエールを綴った歌詞には、同時にノスタルジックな感覚とジュブナイル的な表現も目立ちます。「魔法のオルゴール」も、妻への愛情を綴ったラブソングながらも、ノスタルジックさを彷彿とさせる歌詞が印象的ですし、「シグナル」も、別れた恋人との思いでの中で、昔を懐かしむような表現もあらわれ、ノスタルジックな雰囲気を感じさせる楽曲に仕上がっています。

「〇〇 STONES」シリーズの前作も、原発への怒りをストレートに表現していたりして、比較的、彼が歌いたいことを自由に歌っていたような楽曲が目立ちましたが、今回のアルバムも、「コロナ」といいノスタルジックな歌詞といい、55歳という彼の身近で起こったことをそのまま歌ったような、いわば斉藤和義のパーソナルな部分にスポットをあてたような曲が多かったように感じます。年齢的に区切りの年に、特にそういうパーソナルな歌を歌うというのが彼のスタンスなのでしょうか。彼にとってはタイトル通り「マイルストーン的」なアルバムと言えるでしょう。

また、パーソナル的といえば、サウンド的にもバンドサウンドというよりも、様々なタイプのサウンドを入れた、比較的「宅録的」な作風になっているのも特徴的。1曲目の「BEHIND THE MASK」もエレクトロサウンドを入れていますし、ほかにも「Strange man」「Lucky Cat Blues」など、エレクトロテイストの目立つ曲が並びます。「一緒なふたり」でもブルージーなギターで聴かせたりと、サウンドの面でもバンドとして音を作り上げるというよりも、斉藤和義が1人で楽しんでいる側面の目立つ構成となっていたように感じます。

そんな斉藤和義としてのパーソナリティーが前面に出た本作。個人的には前作「202020」ほどではないものの、本作も文句なしの傑作アルバムに仕上がっていたと思います。特に歌詞については「2020 DIARY」をはじめ、ついつい聴き入ってしまうようなインパクトある歌詞も多く、彼の魅力が存分に発揮された曲になっていたと思います。この「〇〇 STONES」シリーズは、また次は10年後でしょうか。で、その10年後は、もう65歳なんですね・・・・・・いや、でも、そのころもまた、まだまだ元気いっぱいに活躍してそうです。そしてその頃、私の年齢も・・・・・・。

評価:★★★★★

斉藤和義 過去の作品
I (LOVE) ME
歌うたい15 SINGLES BEST 1993~2007
Collection "B" 1993~2007
月が昇れば
斉藤“弾き語り”和義 ライブツアー2009≫2010 十二月 in 大阪城ホール ~月が昇れば 弾き語る~
ARE YOU READY?
45 STONES
ONE NIGHT ACOUSTIC RECORDING SESSION at NHK CR-509 Studio
斉藤
和義

Kazuyoshi Saito 20th Anniversary Live 1993-2013 “20<21" ~これからもヨロチクビ~ at 神戸ワールド記念ホール2013.8.25
KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2014"RUMBLE HORSES"Live at ZEPP TOKYO 2014.12.12
風の果てまで
KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2015-2016“風の果てまで” Live at 日本武道館 2016.5.22
斉藤和義 弾き語りツアー2017 雨に歌えば Live at 中野サンプラザ 2017.06.21
Toys Blood Music
歌うたい25 SINGLES BEST 2008~2017
Kazuyoshi Saito LIVE TOUR 2018 Toys Blood Music Live at 山梨コラニー文化ホール2018.06.02
KAZUYOSHI SAITO 25th Anniversary Live 1993-2018 25<26 〜これからもヨロチクビーチク〜 Live at 日本武道館 2018.09.07
小さな夜~映画「アイネクライネナハトムジーク」オリジナルサウンドトラック~
弾き語りツアー2019 "Time in the Garage" Live at 中野サンプラザ 2019.06.13
202020

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2021年4月19日 (月)

コーラスグループとしての原点

Title:アカペラ2
Musician:ゴスペラーズ

途中、ベスト盤のリリースを挟み、オリジナルアルバムとしては約2年半ぶりとなるゴスペラーズのニューアルバムは、タイトル通り、全編アカペラによるアルバム。全編アカペラによるアルバムは2002年にその名もズバリ「アカペラ」というアルバムをリリースしているので、それから実に約18年4ヶ月ぶりとなるアカペラアルバムとなっています。

そんなアカペラアルバムの本作は、まず1曲目の冒頭「INFINITY」で全員のハーモニーからスタートするあたり、これがメンバー5人の歌声だけで作り上げたアルバムである、ということを力強くアピールするような出だしからスタートしています。そしてそんな5人の歌声だけで作られたアルバムなのですが、ただ、これが実にバラエティー豊かな作品に仕上がっていたあたり、彼らの実力を感じさせてくれます。

先行シングルともなった「VOXers」は、「ケンカアカペラ」なる異名を持つ曲らしいのですが、ヒューマンビートボックスを多用しつつ、メンバー5人がそれぞれアカペラを繰り広げ、まさにメンバー同士が対峙するような形になった楽曲で、まさに彼らの実力を最大限に発揮された曲になっています。

その後も軽快なリズミカルなリズムをバックに、ハイトーンボイスのボーカルをメランコリックに聴かせる「雨あがり」、コーラスラインだけで美しいハーモニーを聴かせる「I Want You」、フィンガースナップのリズムをバックに伸びやかなコーラスラインを聴かせるバラード「離れていても~Wherever you are~」、ちょっと切なく爽やかでメロディアスなメロディーラインが印象的な「OVER&OVER」と様々なタイプの楽曲を聴かせてくれます。

後半でインパクトがあったのが、ハンドクラップでリズムを取りつつアカペラを聴かせる「マジックナンバー」。歌詞はまさにアカペラをテーマとした歌詞となっており、今回のアルバムを象徴するような楽曲になっています。さらに「嘘と魔法」は和風な雰囲気を感じつつ、楽曲に幻想的な雰囲気が加わっているのがユニーク。ラストの「インターバル」は伸びやかなアカペラをゆっくり聴かせるナンバーで、荘厳さも感じさせるナンバー。最後の曲らしく、5人のハーモニーをしっかりと聴かせて、曲は幕を下ろします。

そんな訳で、まさに5人の声だけでバリエーション富んだアルバムを作り上げた本作は、ゴスペラーズの実力をフルに発揮した1枚と言えます。昨年、デビュー25周年を迎え、ベストアルバムをリリースした彼らですが、その直後のアルバムとしてこのようなアルバムをリリースする、ということは、このデビュー25周年で活動を一区切りして、あらためて彼らのコーラスグループとしての原点に立ち返ったアルバムをリリースした、という意味のあるアルバムだと思います。このアルバムを25年目以降の彼らのスタートして、あらたな一歩を踏み出した彼ら。これからの活躍も楽しみです。

評価:★★★★★

ゴスペラーズ 過去の作品
The Gospellers Works
Hurray!
Love Notes II
STEP FOR FIVE
ハモ騒動~The Gospellers Covers~
The Gospellers Now
G20
Soul Renaissance
What The World Needs Now
G25 -Beautiful Harmony-


ほかに聴いたアルバム

2+0+2+1+3+1+1= 10 years 10 songs/RADWIMPS

2011年3月11日に発生した東日本大震災。その後、義援金プロジェクト「糸色」を立ち上げたRADWIMPSですが、その後、毎年3月11日に、被災地への想いを馳せた新曲をリリースしてきました。本作は、ちょうど震災から10年後の2021年3月11日にリリースしたアルバムで、いままで発表してきた楽曲8曲に新曲2曲を収録したコンセプトアルバムとなります。

そんな被災地への想いのこもった楽曲が収録されたアルバムになるのですが、ただ、彼らとしても相当力の入った楽曲群ということになるのでしょう。ギターをメインに楽曲によってはピアノやストリングスも取り入れた作品はスケール感と、ある種の荘厳さも感じされるのですが、一方で聴いていて非常にヘヴィー。歌詞もそうなのですが、サウンドも全体的に、ある種の「思い」ばかりが先走っている感じがしてしまい、聴いていてドッと疲れがくるようなアルバムでした。「想い」も重要ですが、ポップソングとしては同時にエンターテイメント性も重要な訳で、その観点が若干欠けているような感じがして気になります。どうも野田洋次郎って、思いが強すぎると、若干暴走気味になるような印象を受けるのですが・・・。

評価:★★★★

RADWIMPS 過去の作品
アルトコロニーの定理
絶対絶命
×と○と罰と
ME SO SHE LOOSE(味噌汁's)
君の名は。
人間開花
Human Bloom Tour 2017
ANTI ANTI GENERATION
天気の子
天気の子 complete version
夏のせいep

大阪城ホール単独公演”拝啓、少年少女たちよ”/Hump Back

コロナ禍の中、昨年11月に大阪城ホールで開催されたライブの模様を収録した、配信限定でのライブアルバム。同タイトルの映像作品から7曲をピックアップした形となっています。コロナ禍の中での開催で、観客も十分盛り上がれない中、かなり健闘してがんばっている姿が、音楽作品を通しても伝わってくるよう。途中、かなり「青臭い」MCも収録されているのですが、こういう「青臭さ」も含めて嫌いじゃないです(笑)。ガールズロックバンドが最近は増えた中でも、比較的まだめずらしいパンクロック路線を主軸に人気を獲得している彼女たち。一度ライブも見てみたいな、と思えたライブアルバムでした。

評価:★★★★★

Hump Back 過去の作品
人間なのさ

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2021年4月18日 (日)

美しい歌声とシンプルなメロが魅力的

Title:Chemtrails Over The Country Club
Musician:Lana Del Rey

前作「Norman Fucking Rockwell!」も各所で大絶賛を受け、高い評価を受けているシンガーソングライターLana Del Reyの約1年半ぶりとなるニューアルバム。海外の大物ミュージシャンとしては比較的短いスパンでの新譜リリースに、彼女の勢いを感じさせるのですが、そのアルバムの内容は、確かに前作に匹敵するようなどこか懐かしさを感じさせる美しいメロディーラインが流れる傑作となっていました。

ピアノをバックにファルセットのボーカルを美しく聴かせる「White Dress」から、まず非常に心に響く楽曲を聴かせてくれますが、続く「Chemtrails Over The Country Club」も清涼感ある彼女のボーカルでしんみりと聴かせるメロディーラインが印象的。アコースティックテイストにスタートするのですが、後半ではボーカルやサウンドにエフェクトがかかり、どこか幻想的な雰囲気となる展開もユニークです。

先行シングルとなっている「Let Me Love You Like A Woman」もピアノをバックに静かに歌い上げるバラードとなっていますし、続く「Wild At Heart」も明るさと切なさが同居したような、メロディアスなメロディーラインが印象に残る1曲。前半はピアノが主体に聴かせる楽曲が並ぶのですが、後半「Not All Who Wander Are Lost」「Yosemite」はアコースティックギターをバックに美しい歌声を聴かせる楽曲。特に「Yosemite」の透き通るような歌声でハイトーンボイスで歌い上げるボーカルは非常に印象に残ります。

終盤はブルージーなギターで哀愁感たっぷりに聴かせる「Breaking Up Slowly」に同じく哀愁感あるメロが印象的な「Dance Till We Die」とメランコリックなナンバーが続き、ラストは再びピアノの美しい音色が登場。「For Free」ではピアノをバックに爽やかに歌い上げるボーカルが印象的な、スケール感も覚える楽曲で、後味よくアルバムは幕を下ろします。

前作もピアノを主体としたシンプルなサウンドで彼女の歌声を主軸に置いた楽曲がメインとなっていたのですが、今回のアルバムも、基本的にはシンプルなサウンドでしっかりと歌を聴かせる楽曲がメイン。前半はピアノ曲主体、後半にアコギで聴かせるナンバーを配するなど、それなりに展開のある構成にはなっているのですが、楽曲のバリエーションは決して多くはありません。ただ、その美しいメロディーラインと歌声ゆえに、最後まで飽きることなく、その世界観に入り込むことが出来るアルバムになっています。

彼女の売り文句として「50年~60年代の古き良きアメリカ音楽を取り入れて」というものがあります。確かにその楽曲からはどこか懐かしさを感じさせ、それが大きな魅力になっています。ただ、そんなに私たちがイメージするようなレトロポップか、と言われるとそういった感じはなく、あまり「古さ」のようなものは感じられません。ひょっとしたらアメリカ人が聴いたら、私たち以上に郷愁感を覚えるのかもしれませんが・・・。

ただ、そういう点を踏まえても、清涼感あふれる美しい歌声とそのメロディーラインは非常に魅力的。シンプルだからこそ、その実力がより感じられる傑作になっています。前作に引き続き傑作アルバムとなった彼女。彼女の活躍はまだまだ続きそうです。

評価:★★★★★

Lana Del Rey 過去の作品
Born To Die
Ultraviolence
Norman Fucking Rockwell!


ほかに聴いたアルバム

Little Oblivions/Julien Baker

アメリカの女性シンガーによる約4年ぶり3枚目となるアルバム。バンドサウンドでダイナミックに聴かせる楽曲から、ピアノで荘厳に歌い上げるナンバー、メランコリックな楽曲などバラエティーに富んだ作風。ゆっくりメロディアスでローファイ気味な楽曲も魅力的。基本的にはポップな歌をしっかり聴かせるアルバムに。もうちょっとインパクトは欲しかったかも。

評価:★★★★

R+R=Now Live/R+R=Now

新進気鋭のジャズピアニスト、ロバート・クラスパーが、ケンドリック・ラマ―との活動でも注目を集めるサックス奏者、テラス・マーティンらと組んで結成したバンドR+R=Nowの初となるライブ盤。基本的にジャズバンドながらも、HIP HOPやソウルなどの要素を取り込んだ自由度の高いサウンドが特徴的。一方、メロは意外とポップでいい意味で聴きやすいという特徴があったのがR+R=Nowのオリジナル作。ライブ音源ではそれに加えて彼らのアグレッシブな演奏はかなりの迫力があり、聴くものを惹きつけるパワーを感じさせます。オリジナルアルバムは正直、その評判の割りにさほどピンと来なかったのですが、ライブ盤ではオリジナルアルバムでは物足りなく感じさせたバンドメンバーのパワーを感じさせる傑作になっていました。

評価:★★★★★

R+R=Now 過去の作品
Collagically Speaking

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2021年4月17日 (土)

7人7曲7様

Title:Duets
Musician:坂本真綾

デビューから25年を迎えた坂本真綾。その第1弾企画としてベストアルバムのリリースがありましたが、本作はそれに続く第2弾アルバム。今回は7人のミュージシャンとのデゥエット作を収録したコンセプトアルバム。作曲や編曲を担当するのもそれぞれ別々のミュージシャンが手掛け、ジャンルもそれぞれバラバラ。オリジナルアルバムとしての直近作「今日だけの音楽」では、彼女のボーカリストとしての挑戦を感じたのですが、今回のアルバムは、その前作に続くような、ボーカリストとしての挑戦を感じさせるアルバムとなっています。

個人的にまず耳を惹いたのが堂島孝平とのデゥオ「あなたじゃなければ」。ホーンも入って明るいアレンジの、堂島孝平らしい楽しいポップチューンになっています。ポップス職人としての堂島孝平としての魅力がキラリと光る作品。坂本真綾の清涼感あるボーカルにもピッタリとマッチしています。そして、その清涼感あるボーカルを上手くすくいあげていたのが3曲目土岐麻子とのデゥオ「ひとくちいかが?」でしょう。土岐麻子も、坂本真綾と同様の清涼感あるボーカルが魅力的なシンガーなのですが、同じベクトルを示すボーカルなのに、両者の微妙な違いが上手くマッチしており、メロウな楽曲とあわせて、透き通るようなポップチューンに仕上がっています。

ちょっと異色と言えるのがthe band apartのベーシスト原昌和とのデゥオ「でも」でしょう。バンアパでも巨漢のベーシスト原昌和が、意外とポップな歌声を聴かせるこのナンバーは、the band apartにも通じるファンクやジャズの要素を取り入れた軽快なポップチューン。こちらも坂本真綾とのボーカルにもピッタリとマッチした楽曲に仕上がっています。

さらに注目なのがラスト2曲。「星と星のあいだ」ではミュージカル俳優の井上芳雄とのデゥオ。伸びやかでスケール感あるナンバーは作詞作曲を坂本真綾本人が担当。東京芸大声楽科出身という井上芳雄のボーカルの力強さがまずは引き立つナンバーで、坂本真綾はどちらかというと作詞作曲、またコーラス的な位置づけでサポートしているような楽曲となっているのですが、井上芳雄のボーカルをしっかりと生かした曲作りに、坂本真綾の別の側面での実力を感じます。

そしてラストは小泉今日子とのデゥオ「ひとつ屋根の下」。小泉今日子はボーカリストとしては「・・・」な部分はあるのですが、鈴木祥子楽曲により、両者の持ち味をしっかりと生かしたかわいらしいポップチューンに仕上がっています。最後を締めくくるにふさわしい明るく爽やかなポップチューンになっています。

h-wonder名義でアレンジャーなどとしても活躍している和田弘樹とのデゥオ「Duet!」も軽快で楽しいビックバンド風のナンバー。la la larksの内村友美とのデゥオ「sync」は、良くも悪くも疾走感のあるJ-POP風のナンバーといった感じでしょうか。良くも悪くもアニソン歌手的なイメージのあるポップスになっていました。

そんな訳で7人7曲7様のポップソングがそろったアルバム。坂本真綾のボーカルは、清涼感ある一方、「癖がない」という点がボーカリストとして強みでもあり弱みでもあるのですが、その「強み」の部分をしっかりと生かして、デゥエット相手を時には引っ張って、時には対等に、また、時には相手を引き立てるスタイルで、様々なジャンルにもピッタリとマッチした歌声を聴かせてくれました。まさに坂本真綾のボーカリストとしての実力を存分に発揮したコンセプトアルバムと言えるでしょう。今回、タッグを組んだ相手とは、今後も何らかの形でタッグを組みそうな予感も。ボーカリスト坂本真綾の魅力を存分に感じるアルバムでした。

評価:★★★★★

坂本真綾 過去の作品
かぜよみ
everywhere
You can't catch me
Driving in the silence
シングルコレクション+ ミツバチ
シンガーソングライター
FOLLOW ME UP
今日だけの音楽
シングルコレクション+アチコチ


ほかに聴いたアルバム

cure/SIRUP

新進気鋭のR&Bシンガーソングライターとして注目を集めるSIRUPの2枚目となるフルアルバム。日本国内のみならず、オランダやイギリス、さらにはK-POPで注目を集める韓国のクリエイターが参加した、ワールドワイド志向のサウンドが特徴的。まさに「今風」のR&Bを聴かせており、そのクオリティーの高さは間違いないものの、一方では「最近よくあるタイプのR&B」という印象が否めず、SIRUPならではの個性が薄い印象を受けてしまうのが残念。今後、大化けする可能性も低くないのですが。

評価:★★★★

SIRUP 過去の作品
FEEL GOOD

evergreen2/秦基博

2014年にリリースした「evergreen」に続く、秦基博の弾き語りアルバム第2弾。基本的にアコースティックギターでしんみりと聴かせる作品が並びます。シンプルな歌で、シンガーソングライターとしての本領発揮となる作品で、良質な、比較的シンプルなポップスが楽しめるアルバムとなっています。ただ、前作「evergreen」に比べると、少々メロディーラインのインパクトが薄かったような感じがして、全2枚組1時間50分弱という長さの中で、最後の方は若干ダレてきてしまった感もありました。どうしても楽曲のタイプが似てしまう弾き語りアルバムなので仕方ない部分はあるとは思うのですが・・・。

評価:★★★★

秦基博 過去の作品
コントラスト
ALRIGHT
BEST OF GREEN MIND '09
Documentary
Signed POP
ひとみみぼれ
evergreen
青の光景
All Time Best ハタモトヒロ
コペルニクス

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2021年4月16日 (金)

月9ドラマ主題歌にも起用された話題のSSW

Title:朝顔
Musician:折坂悠太

2018年にリリースされたアルバム「平成」が大絶賛を受け、一躍注目のミュージシャンとなったシンガーソングライターの折坂悠太。今回リリースされたのは5曲入りのミニアルバムなのですが、表題曲「朝顔」は、なんとフジテレビ系月9ドラマ「監察医 朝顔」の主題歌に起用。いきなりのドラマ主題歌というタイアップにも、その注目度の高さをうかがえます。

その話題となった「平成」は、和風なテイストを含めたメロディーラインとこぶしを利かせたボーカルに、ジャズの要素を加味したサウンドが魅力的なアルバムでした。今回のアルバムは、サウンド面に関しては比較的シンプルなものとなっており、「平成」の時のようなバリエーションはあまり感じません。ピアノやストリングスの音色などを鮮やかに聴かせるサウンドも魅力的なのですが、基本としてはあくまでも「歌」を聴かせる作品になっていました。

そのシンプルな「歌」が非常に魅力的なのが今回のアルバム。今回もまた、和風なテイストを感じさせつつも、歌謡曲的な雰囲気とは一線を画するようなメロディーラインが魅力的。この「和風でありながらも歌謡曲とは違う」というのは、歌謡曲というよりも、さらに日本人の根っこにある民謡からの影響を感じさせるような節回しを要所要所に感じられるからでしょうか。「針の穴」の節回しなどは、まさにそんな民謡的なこぶしを感じさせます。

さらに今回のアルバムでは沖縄民謡の「安里屋ユンタ」をカバー。ピアノが静かに流れる中、アコギを静かに爪弾きながら歌うこの曲は、折坂悠太自身の曲と共通するような雰囲気を感じさせます。そのため、このアルバムの中でも折坂悠太のオリジナル曲の中に非常に自然に溶け込んでいました。

そして、表題曲になった「朝顔」もまた、素晴らしい曲に仕上がっています。ゆっくりと伸びやかに聴かせる曲なのですが

「ここに願う 願う 願う
君が朝をおそれぬように
ここに願う 願う 願う
その窓を選び 降り注ぐ」
(「朝顔」より 作詞 折坂悠太)

と、非常に清涼感あふれる歌詞に、前向きなメッセージを感じさせる歌になっています。

同じく月9ドラマの挿入歌になっている「鶫」も前向きなメッセージを感じさせる曲になっており、

「ほらねごらんよ
夜が明ける
ほらね 夜が明ける
あなたに あなたに
知らせたいことがあると」
(「鶫」より 作詞 折坂悠太)

この混沌とした時代の中での前向きなメッセージになっています。どちらも「夜明け」「朝」と新たな一歩を感じさせる言葉がひとつのキーワードとなっており、聴いていて心地よい気分になる作品に仕上がっていました。

全5曲入りのアルバムで、前作ほどバリエーションの富んだ作風ではなく、折坂悠太の全貌が見える作品、という感じではありません。ただシンプルな歌とメロディーライン(1曲はインストですが)で、しっかりと彼の魅力が伝わる傑作アルバムに仕上がっていたと思います。ドラマ主題歌にも起用されて、ますますこれから彼への注目度が高まりそう。近いうちに売上の面でもブレイクもありえるかも?これからの活躍も楽しみです。

評価:★★★★★

折坂悠太 過去の作品
平成


ほかに聴いたアルバム

I Love You/フジファブリック

途中、ベスト盤のリリースを挟み、約2年2か月ぶりとなるフジファブリックのオリジナルアルバム。タイトル通り、「愛」をテーマとしたアルバムですが、そのためか、ちょっと「大人」の雰囲気も感じさせる爽やかなシティポップ路線の曲が多い作品に。ギターロックというよりもポップス志向の強くなった感もありますが、ベスト盤のリリースを挟んで、フジファブリックの今後の行方も占えるような作品になっています。

評価:★★★★

フジファブリック 過去の作品
TEENAGER
CHRONICLE
MUSIC
SINGLES 2004-2009

STAR
VOYAGER
LIFE
BOYS
GIRLS
STAND!!
FAB LIVE
F
FAB LIST 1
FAB LIST 2

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2021年4月15日 (木)

宇多田ヒカルの「すごみ」を感じる

Title:One Last Kiss
Musician:宇多田ヒカル

現在、大ヒット中の映画「シン・エヴァンゲリオン劇場版」。あの映画が発表されるために、その微妙な結末が話題となっていた「エヴァンゲリオン」が、無事、完結したという意味でも大きな話題となっている映画のようですが、その主題歌「One Last Kiss」を歌っているのが宇多田ヒカル。本作は、その「One Last Kiss」をはじめとして、彼女が「エヴァンゲリオン」の映画に提供した楽曲を集めた企画盤的なEP。以前、「EVANGELION FINALLY」を紹介した時に、宇多田ヒカルの曲が未収録だった点が気になっていたのですが、こういう形で別枠でリリースするためだったのですね・・・エヴァのファンだけではなく、宇多田ヒカルのファンも惹きつけるという点では最適なやり方でしょう。

その「One Last Kiss」もまた、彼女の才能があふれる非常に優れた作品に仕上がっています。この楽曲について、特に話題となったのは冒頭の歌詞。

初めてのルーブルは
なんてことはなかったわ
私だけのモナリザ
もうとっくに出会ってたから
(「One Last Kiss」より 作詞 宇多田ヒカル)

ネット上でもあまりの言葉の強さで一部バズったみたいですが、確かにそこいらのJ-POPシンガーが百年たっても到達できないレベルの歌詞を簡単に書いてきてしまっています。この一文に限らず、非常にシンプルな言葉遣いながらもインパクトのあるラブソングを書いてきており、彼女の作詞家としての実力を感じますし、エレクトロサウンドに今風のビートミュージックの要素を取り入れたサウンドの面もかなり凝っている本作。この1曲だけで、宇多田ヒカルというミュージシャンが並のミュージシャンではないことがはっきりとわかります。

サウンド面で凝っているのは続く「Beautiful World - Da Capo Version-」でも同様で、ピアノの音色とエレクトロサウンドのバランスが実に絶妙に聴かせますし、その「Beautiful World」自体もピアノと打ち込み、ストリングスの音色が絶妙に絡み合い、抜けのある美しいサウンドが印象に残ります。

宇多田ヒカルといえば、デビュー当初は「本場のR&Bをそのまま取り入れたシンガー」みたいな建付けで話題となってのですが、いまやR&Bという枠組みを超えて、シンガーソングライターとして格の違いを見せつけている印象を受けます。上に書いた歌詞などは、正直、日本でいえば、ユーミンや中島みゆきクラスに匹敵する実力を感じさせますし、「Beautiful World」も転調を含めたメロディーラインの妙は実に見事。和風なバラードに仕上げている「桜流し」も彼女のメロディーメイカーとしての才を存分に感じさせる傑作になっています。

「エヴァンゲリオン」の主題歌などを集めたEPなのですが、彼女の「エヴァ」に対する思い入れもあるのでしょうか、いずれも宇多田ヒカルというミュージシャンの実力をフルに発揮した名曲が並ぶEPになっていました。最新作「One Last Kiss」も含めて、傑作揃いのEP。彼女のすごさを改めて思い知ったアルバムでした。

評価:★★★★★

宇多田ヒカル 過去の作品
HEAT STATION
This Is The One(Utada)
Utada Hikaru SINGLE COLLECTION VOL.2
Fantome
初恋

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2021年4月14日 (水)

新譜は少な目

今週はHot100、Hot Albumsどちらも新譜が少な目だったので、両ランキング同時更新となります。

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

1位2位は先週から変わらず。

まず1位は先週と変わらずNiziU「Take a picture」が2週連続の1位を獲得。ストリーミング数は2位から3位にダウンしたものの、You Tube再生回数は先週と変わらず1位をキープ。さらにダウンロード数が2位から1位にアップしたほか、今週、CDリリースにあわせて、CD販売数及びPCによるCD読取数も1位獲得となりました。その他、ラジオオンエア数で8位、Twitterつぶやき数で3位を獲得。

さらに今週、その「Take a picuture」とCDシングルで両A面の扱いの「Poppin' Shakin'」も先週の17位から7位にアップ。ベスト10初登場となっています。ダウンロード数で2位、ストリーミング数12位、ラジオオンエア数60位、Twitterつぶやき数13位、You Tube再生回数2位。特にダウンロード数及びYou Tube再生回数は1、2フィニッシュとなっています。

なお、両曲が両A面となっているCDは、オリコン週間シングルランキングで初登場31万7千枚で1位初登場。前作「Step and a step:」の31万1千枚(1位)から微増となっています。

2位はBTS「Film out」がこちらも同順位をキープ。ダウンロード数が1位から3位にダウンしたものの、ストリーミング数が今週7位から1位にアップしています。またBTSは「Dynamite」が7位から6位にアップし、2曲同時のランクイン。ベスト10ヒットを34週連続に伸ばしています。

3位も優里「ドライフラワー」が先週から変わらず。ストリーミング数2位、You Tube再生回数7位は先週と変わらず。ダウンロード数は5位から6位と若干のダウン。これで21週目のベスト10ヒットとなっています。

続いて4位以下ですが、初登場曲は前述のNiziU「Poppin' Shakin'」1曲のみ。また、例のごとくロングヒット曲が並んでいます。

まずYOASOBI「怪物」が4位に、「夜に駆ける」が5位に並んでランクイン。「怪物」は先々週に3位だったYou Tube再生回数が先週圏外となり、さらに今週は69位と、若干奇妙な動きをしています。これで12週連続のベスト10ヒットに。また「夜に駆ける」は先週6位から5位にアップと再び上昇傾向。これで51週連続のベスト10ヒットとなりました。

逆にここに来て厳しいのがAdo「うっせぇわ」。今週で13週連続のベスト10ヒットとなったものの、You Tube再生回数が3位から5位、ダウンロード数も8位から13位にダウン。ストリーミング数は先週と変わらず8位をキープしたものの、総合順位は5位から8位とダウン。インパクトの強い曲だっただけに、「消費」されるのも早かったのでしょうか。予想以上に早い失速となっています。

先週で8週連続のベスト10ヒットとなったAwesome City Club「勿忘」は今週9位と先週から同順位をキープ。9週連続のベスト10ヒットとなっています。ただストリーミング数は4位から7位にダウン。You Tube再生回数も先週と変わらず13位となっており、伸び悩んでいる感があります。正直なところ、そろそろ「夜に駆ける」とか「Dynamite」とか、いい加減飽きが来ているので、こういう「新興勢力」にはもうちょっとがんばってほしいところなのですが・・・。


今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週は新人アイドルグループのデビュー作が1位獲得です。

今週1位は代々木アニメーション学院のバックアップで結成された、声優陣による女性アイドルグループ≠MEのデビューアルバム「超特急 ≠ME行き」が獲得。同じ声優陣によるアイドルグループ「=LOVE」の姉妹グループとなります。CD販売数1位、ダウンロード数28位、PCによるCD読取数45位で総合順位1位獲得。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上2万8千枚で1位初登場。

2位には男性アイドル育成ゲーム「アイドリッシュセブン」使用楽曲を集めた「アイドリッシュセブン Collection Album vol.2」がランクイン。CD販売数2位、ダウンロード数14位、PCによるCD読取数17位。オリコンでは初動売上1万7千枚で2位初登場。同シリーズの第1弾「アイドリッシュセブン Collection Album vol.1」の2万2千枚(3位)からダウンしています。

3位は宇多田ヒカル「One Last Kiss」が先週の6位からランクアップし、2週ぶりのベスト3返り咲き。ダウンロード数が3位から2位にアップしているほか、CD販売数も8位から4位にアップしています。

続いて4位以下の初登場盤ですが、今週、初登場盤は1枚のみ。それが5位初登場浜崎あゆみ「A BALLADS 2」。CD販売数は3位ながらもダウンロード数11位、PCによるCD読取数63位となり、総合順位は5位に。2003年にリリースしたバラードベスト「A BALLADS」に続く続編となります。オリコンでは3位初登場。ただ、初動売上は1万枚と「A BALLADS」の初動56万1千枚(1位)に比べると、CD販売をめぐる状況が激変しているとはいえ、見る影もありません。また、「A BALLADS」の前、2001年にリリースした「A BEST」では、宇多田ヒカルのアルバム「Distance」とのセールス争いが大きな話題となりました。宇多田ヒカルは今週も発売から5週を経たアルバムが同作の上位にランクインしています。両者、かなり差が開いてしまいました・・・。とはいえ、正直、浜崎あゆみもこれほど人気が持つとは思わなかったのですが。ちなみに前作「TROUBLE」の2万4千枚(3位)からもダウンしています。

また今週、ベスト10返り咲きとして、「『ウマ娘 プリティーダービー』WINNING LIVE01」が先週の11位からアップ3週ぶりのベスト10返り咲きとなりました。一方ロングヒットとしてはYOASOBI「THE BOOK」が先週の5位から4位にアップ。特に今週、ダウンロード数、PCによるCD読取数が共に1位を獲得。14週連続のベスト10ヒットとなっています。

今週のヒットチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2021年4月13日 (火)

シンプルながらも魅力的な軽快なギターロック

Title:When You See Yourself
Musician:Kings Of Leon

アメリカ・ナッシュビル出身の4人組ロックバンド、Kings of Leonによる約4年半ぶりとなるニューアルバム。アメリカ出身のバンドながらもイギリスから火がつき・・・という書き方は、前作「Walls」の感想と全く一緒な訳で、その前作はアメリカビルボードチャートで1位を記録するなど、本国でも飛躍の1枚となりました。ただ、残念ながら久々となる本作はイギリスでは公式チャートで1位を記録し、変わらぬ人気ぶりだったのに対して、アメリカビルボードでは最高位11位と、前作に比べると若干残念な結果となっています。

楽曲的には奇をてらわない、シンプルでちょっと泥臭さも感じられるギターロック路線、というのはいままでと同様なのですが、今回のアルバムはそんな中でも比較的、軽快でポップに聴かせるような楽曲が目立ったように感じます。冒頭を飾る「When You See Yourself,Are You Far Away」はシンセも入った軽快なサウンドが特徴的ですし、先行シングルになった「The Bandit」もメランコリックなメロが印象的な、疾走感あるギターロック。同じく先行シングルの「100,000 People」も、伸びやかで郷愁感あるメロとサウンドが胸をうつ作品になっているのですが、サウンド的には至って軽快な音を聴かせる曲になっています。

その後も「Golden Restless Age」のような軽快なギターロックや、さらには「Echoing」のような、Kings Of Leon流のダンスチューンまで登場。全体的に軽快でポップなギターロックというスタイルがアルバム全体に流れています。前作「Walls」も比較的軽快でポップな感覚のナンバーが多かったアルバムになっていましたが、今回のアルバムもその路線が貫かれ、さらにもっと軽快なポップ路線が強くなったアルバムのように感じます。

また、そんな中でも「Stormy Weather」のような軽快なビートを前に押し出したような楽曲や、ピアノとシンセで伸びやかに聴かせるバラードナンバー「A Wave」、アコギの音が入って爽快にしんみりと聴かせる「Claire&Eddie」のように全体的にはバラエティー富んだ作風も魅力的。どの曲も比較的シンプルなサウンドと、しっかりと歌を主軸に据えた楽曲が特徴的で、飛び道具のような手法を使った作品はないのですが、シンプルなギターロックという枠組みの中で様々なバリエーションの曲を入れてきており、リスナーを飽きさせません。

「Supermarket」のような比較的泥臭さを感じさせる楽曲もあったり、「Claire&Eddie」のような郷愁感たっぷりの曲も目立ったり、どこかアメリカンロック的で、なおかつ私たちが聴いても、どこか懐かしさを感じさせる楽曲は、もちろん本作でも健在。メロディーラインについては地味さを感じさせる部分はあるのですが、聴けば聴くほど味が出るような魅力的なメロディーをしっかりと聴かせてくれています。結成から20年以上が経過したベテランバンドらしい、いい意味での安定感も覚える作品になっていました。

前作も書いたのですが、なぜか日本では人気がいまひとつの彼ら。メロディーラインは日本人にとっても魅力的に感じる部分も多いですし、もっと有名になってもいいバンドだとは思うのですが・・・。今回も彼らの魅力が存分につまった傑作アルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★★

KINGS OF LEON 過去の作品
Only By The Night
COME AROUND SUNDOWN
WALLS

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2021年4月12日 (月)

切ない歌詞が目立つ1枚

Title:どうしたって伝えられないから
Musician:aiko

途中、ベスト盤のリリースを挟み、オリジナルアルバムとしては約2年9ヶ月ぶりとなるaikoのニューアルバム。ここ最近のaikoのアルバムは、正直なところ決して目新しさはないのですが、非常に高いクオリティーを持ったポップソングを安定的にリリースしているといった印象があります。そして今回のアルバムも、いつも通りのaikoのアルバム、なのですが、やはり非常に高いクオリティーを保った良質なポップアルバムとなっていました。

ただ、今回のアルバムはそんな中でも特に歌詞の部分が印象に残る作品になっていました。今回のアルバムでは、失恋や別れた恋人を思って歌った、比較的悲しい歌詞の曲が目立っていました。そんな中でもふとした日常の中で心象を反映させたような歌詞は見事。例えば「ハニーメモリー」

「いつも悪いなって思ってたよ
夜明け前に帰ると洗面所だけ電気が付いてた
ごめんねでも 素直になれなかった」
(「ハニーメモリー」より 作詞 AIKO)

という歌詞ひとつで、その風景や、風景に反映された2人の心象が伝わってくるその描写が実に見事。「一人暮らし」も、洗濯という日常の行為に、別れた恋人との心象を重ね合わせる描写が強く印象に残ります。今回も、この恋をする人の心象を見事に描いた歌詞が全編に展開されるアルバムに仕上がっています。

一方で今回、メロディーラインという側面においては、ちょっとインパクトが薄く、いつものaiko節といった感じの独特な節回しが魅力的な曲はちょっと少な目だったように感じます。ただ、それでも彼女らしい独特の節回しの複雑なメロディーラインの曲ももちろん本作でも聴くことが出来、そのうちの1曲が「シャワーとコンセント」。固有名詞をタイトルにもってきているのがaikoらしい感じの曲なのですが、メロディーラインも非常に複雑。にもかかわらず、易々と歌い上げ、なおかつポップにまとめ上げている点、彼女の実力を感じます。さらにラストを締めくくる「いつもいる」は、まさにaikoらしい、ブルージーな節回しを感じさせる曲調になっており、最後の最後に、「そう、このメロディー展開がaikoだよ!」と感じさせる曲になっていました。

個人的には、メロディーラインがちょっと地味で、いかにもaiko節といった感じの曲が少な目だった点、前作や前々作の方がよかったかな、とは思います。ただ、今回のアルバムも傑作であることは間違いありません。しっかしとaikoの魅力を感じられる良質なポップスアルバム。彼女の実力を存分に感じた1枚でした。

評価:★★★★★

aiko 過去の作品
秘密
BABY
まとめI
まとめII

時のシルエット
May Dream
湿った夏の始まり
aikoの詩。


ほかに聴いたアルバム

Remember/Spangle call Lilli line

昨年は20周年記念のオールタイムベストもリリースしたSpangle call Lilli lineの最新作。相変わらずエレクトロサウンドでドリーミーなポップが魅力的な彼女たちですが、最新作ではシティポップの要素を取り入れたポップチューンも目立つ作品に仕上がっています。ただ、良質で、かつ挑戦的な要素もあるポップスという路線は相変わらずなのですが、インパクトの薄さが否めず。いまひとつ後に残る印象が薄いアルバムというのはいままで通り。悪いバンドではないと思うのですが、もう一工夫が欲しいんだよなぁ。

評価:★★★★

Spangle Call Lilli Line 過去の作品
VIEW
forest at the head of a river

New Season
Piano Lesson
SINCE2
ghost is dead
Dreams Never End
SCLL

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2021年4月11日 (日)

名作ゲームサントラをセルフカバー

Title:MOTHER MUSIC REVISITED
Musician:鈴木慶一

1987年にリリースされたファミコン用ゲームソフト「MOTHER」。ゲーム自体も非常に評価が高い作品なのですが、鈴木慶一が手掛けた音楽自体の評価も高く、特に「EIGHT MELODIES」は音楽の教科書に採用されるなど、ゲーム音楽という枠組みを超えて高い評価を得ている1曲となっています。本作は、その鈴木慶一の音楽活動50周年を記念してリリースされた「MOTHER」サントラ盤のセルフカバーアルバム。以前リリースされたサントラ盤では歌モノについては海外の歌手を起用していたのですが、本作では鈴木慶一本人がボーカルとしてカバーしており、事実上、鈴木慶一のソロアルバムとなっています。

そういうこともあって、純粋に「MOTHER」のサントラを求めた場合には、ちょっと肩透かしを食らうかもしれません。ただ、純粋にポップスアルバムとして聴いた場合、鈴木慶一のセンスにあふれた非常に素晴らしいアルバムに仕上がっていました。「POLLYANNA(I BELIEVE IN YOU)」も、決してわかりやすいサビがあるわけではないのに、キュートでどこか印象に残るメロディーラインが、いかにも鈴木慶一といった感じですし、「THE PARADISE LINE」もホーンやストリングスなどを取り入れたユーモラスなサウンドでポップに聴かせるスタイルも、いかにも彼らしさを感じられる、聴いていてワクワク楽しくなってくる1曲となっています。

軽快なラテンの要素も入った「FLYING MAN」や、U-zhaanが参加し、タブラの演奏を聴かせてくれる「SNOW MAN」など、ワールドミュージックの要素も強く、この多彩な音楽性も大きな魅力。「ALL THAT I NEED(WAS YOU)」でエレクトロサウンドを入ったリズムで聴かせるポップなメロはどこかエキゾチックですし、鈴木慶一の魅力がまさにフルに発揮された傑作アルバムに仕上がっています。

最後を締めくくる「EIGHT MELODIES」も、ノイジーなギターからスタートするものの、その後、ピアノやアコギの音も入ってきて、どこかファンタジックでドリーミーな雰囲気が魅力的。どこかほんわかとした不思議な空気の中、アルバムは締めくくられます。

個人的にはこの「MOTHER」というゲームはプレイしたことはなく、サントラには思い入れもないのですが、今回、全面的に鈴木慶一のボーカルが入ったことにより、オリジナルのイメージが強い方には違和感もある部分もあるようです。ただ、一方では彼がボーカルを取ることによりアルバム全体としての統一感は出ていたように感じます。鈴木慶一のソロとしては文句なしの傑作アルバムに仕上がっており、まだゲーム音楽というジャンルが全く確立されておらず、ゲームというジャンル自体、今とは比較にならないほど低く見られていた1987年頃に、これだけ本気でゲーム音楽に取り組んでいたというのは驚く限りです。

さらに注目なのがDELUXE盤に収録されるDisc2。こちらは「MOTHER」のゲーム音源をそのまま収録したサンプルになっているのですが、こちらもまた、名曲が揃っている内容になっています。そして当時のファミコンのチープな音源でそんな名曲が奏でられるのですが、あれだけ音数が限られている環境の中、これほど表現力豊かに音楽を再現していることに驚かされる内容。鈴木慶一もさることながら、当時のゲーム技術者の力量も感じさせるサントラになっています。また、リアルタイムでプレイされた方にも、こちらの音源はあのころも想い出がよみがえってくるのではないでしょうか。

ゲームのサントラという枠組みを超えた、間違いなく傑作アルバムと言える本作。鈴木慶一のソロ作という色合いも濃いので、リアルタイムでゲームをプレイした方には最初、違和感を覚えるかもしれませんが、これはこれで文句なしの出来と言えるのではないでしょうか。30年以上前のゲームですが、間違いなく時代を超えた魅力を持った楽曲の数々。ゲームをプレイしたことない私はゲームもプレイしたくなってきてしまいました。

評価:★★★★★

鈴木慶一 過去の作品
シーシック・セイラーズ登場!
ヘイト船長回顧録
謀らずも朝夕45年
Records and Memories


ほかに聴いたアルバム

FIZZY POP SYNDROME/秋山黄色

新進気鋭のシンガーソングライター、秋山黄色の最新作。バンドサウンドで分厚い音を聴かせる疾走感あるサウンドが特徴的な、ロック志向のミュージシャンで、やさぐれた言語感覚も独特、と言われています。勢いのあるバンドサウンドは耳を惹きますが、一方、歌詞の世界観という側面では、今回のアルバム、前作ほど聴いていて「お?」と思えるようなフレーズには出会えなかったのが残念なところ。メロにしろサウンドにしろ歌詞にしろ、もう一歩、インパクトが欲しいと思ってしまうのですが、前作同様、あと一歩で傑作なりえた感のあるアルバムといった感じ。次回作以降に期待。

評価:★★★★

秋山黄色 過去の作品
From DROPOUT

AMUSIC/sumika

すっかり「人気バンド」としての地位を確固たるものとしてきているsumikaの3枚目となるアルバム。1曲目の「Lamp」や2曲目の「祝祭」、ラストの「センス・オブ・ワンダー」など、ホーンセッションを入れたり、トラッドミュージックの要素が入ったりと、祝祭色豊かな楽曲は非常に魅力的で勢いもあり、人気バンドとして脂がのってきている感もする一方、中盤の曲は無理にスケール感を入れようとする「なんちゃってミスチル」的な曲も目立ち、はっきりいってしまって無理にスケール感を持たせようとするJ-POPの悪い部分を取り入れてしまった感のある、ちょっと残念な曲も目立ちます。個人的には、もっとホーンやアコーディオンなどを取り入れた、トラッド系の曲にシフトした方がバンドとしての個性が出ると思うのですが。

評価:★★★★

sumika 過去の作品
Familia
Chime
Harmonize e.p

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2021年4月10日 (土)

スカの万能さをアピール

Title:SKA=ALMIGHTY
Musician:東京スカパラダイスオーケストラ

スカパラ約1年4か月ぶりとなるスカパラのニューアルバム。ゲストボーカルが参加し、様々なタイプの楽曲に挑戦するスタイルがすっかり板についた感のある彼ら。今回のアルバムも様々なゲストが参加した歌モノの楽曲がズラリと並ぶ作品になっています。また、今回は、ほぼインスト曲と歌モノ曲が交互に並ぶ作品になっており、インストと歌モノがバランスよく配された構成になっています。

そして、今回の大きな特徴としては、「SKA=ALMIGHTY」というタイトル通り、スカという音楽が、どんなタイプのジャンルにもマッチするということを主張するかのような、いままで以上にバラエティー富んだ作品が並んでいます。ムーディーでダークな、ある意味、「昔からのスカパラ」と言えるインストチューン「Salavation Ska」からスタートし、パンキッシュな「9」、[Alexandros]の川上洋平がゲストボーカルで参加する「ALMIGHTY~仮面の約束」「多重露光」はいずれも「仮面ライダーセイバー」関連の曲ということもあり、哀愁感たっぷりの歌謡曲テイストの強いナンバーになっています。

インストチューンの「Together Again」はメロウなAOR調のナンバーですし、「This Is My Life」は軽快なラテン調のナンバーかと思えば、中盤に一転、ハードコアなサウンドが入ってくる点がユニーク。ラストの「Ribbon」ではチリのバンド、Moral Distraídaが参加した本場のラテン風の楽曲に仕上がっています。

インパクトという面で言えば、中盤のタイトルそのまま「仮面ライダーセイバー」。タイトル通りテレビ朝日系「仮面ライダーセイバー」エンディングテーマで、コテコテの特撮主題歌といった感じのナンバー。良くも悪くもスカのオールマイティーさを見せつける楽曲になっています。もう1曲、注目曲なのが新進気鋭のミュージシャン、長谷川白紙をフューチャーした「会いたいね。゚(゚´ω`゚)゚。」でしょう。エレクトロサウンドを挑戦的に聴かせる長谷川白紙の世界をスカの世界と融合させた曲で、こちらもスカのオールマイティーさを見せつける曲になっています。

このように、スカというジャンルの万能さを主張するような今回のアルバム。まさに「SKA=ALMIGHTY」というタイトルそのままのバラエティー富んだ作品に仕上がっています。ただ、全体的には仮面ライダーセイバー系の楽曲が目立った影響でしょうか、「会いたいね。゚(゚´ω`゚)゚。」みたいなおもしろい曲もありつつ、売れ線の、悪い意味でのベタなJ-POP路線が目立ってしまったような感もあります。長谷川白紙とのコラボのような、もうちょっと挑戦的な作風の方がおもしろいとは思うのですが。良くも悪くも「売れ線」狙いなのがここ最近のスカパラの特徴なので、ちょっと微妙な気持ちにもあるアルバムでした。

評価:★★★★

東京スカパラダイスオーケストラ 過去の作品
Perfect Future
PARADISE BLUE
WILD SKA SYMPHONY
Goldfingers
HEROES
Sunny Side of the Street
on the remix
Walkin'
欲望
Diamond In Your Heart
SKA ME FOREVER
The Last
TOKYO SKA Plays Disney
The Last~Live~
TOKYO SKA PARADISE ORCHESTRA~Selecao Brasileira~
Paradise Has NO BORDER
GLORIOUS
2018 Tour「SKANKING JAPAN」"スカフェス in 城ホール" 2018.12.24
TOKYO SKA TREASURES ~ベスト・オブ・東京スカパラダイスオーケストラ~


ほかに聴いたアルバム

REAMP/ヒトリエ

2019年4月、バンドのボーカリストで、ほぼ全曲の作詞作曲を手掛けていたwowakaがわずか31歳という若さで急逝。多くの音楽ファンにショックを与えました。そんな中、バンドとしての動向も注目されたのですが、ギターのシノダがギターボーカルに変更。バンドとして続行ということになりました。また作詞作曲も主にシノダが担当し、2期ヒトリエがスタート。そしてリリースされた約2年ぶりのアルバムが本作となります。

楽曲は、基本的にはwowakaの路線を引き継ぐようなスタイル。ハイテンポなリズムとマイナーコード主体のメランコリックなメロディーラインはいままでと大きな変化はありません。正直、個性が薄くなり楽曲のインパクトは薄くなってしまった感はあります。ただ一方、特に後半は、いままでの彼らではあまり出会えなかったようなタイプの曲も聴くことが出来、楽曲のバリエーションは今までより増えたように感じます。特にヒトリエは少々楽曲のバリエーションに乏しかったことが課題だっただけに、この点はむしろよい方向にシフトしたとすら言えるかもしれません。バンドのメインライターが若くして亡くなり、その後、残されたメンバーでバンドを続けるという点はフジファブリックに似たスタイルですが、フジファブリックも志村正彦亡き後にメインのライターとなった山内総一郎は、その後、ライターとして成長していきました。ヒトリエも同じようにメインライターのシノダの成長が期待されるところ。楽曲のバリエーションの広がりから、これで個性とインパクトが出てきたら、むしろ以前よりおもしろいバンドにまで成長できるのでは?という予感もした1枚でした。

評価:★★★★

ヒトリエ 過去の作品
イマジナリー・モノフィクション
モノクロノ・エントランス
DEEPER
IKI
ai/SOlate
4

NEW WORLD/大橋トリオ

大橋トリオ15枚目となるオリジナルアルバム。上白石萌音とのデゥオ「ミルクとシュガー」やみやぞんとのデゥエットで話題の江崎グリコキャンペーンCMソング「何処かの街の君へ」(音源ではみやぞんは起用されていないようですが・・・)も収録。相変わらず、ジャズをベースとした非常に良質なポップソングが魅力的なのですが、良くも悪くもいつも通りといえばいつも通り。もうちょっと目新しさも・・・とは思ってはしまうのですが、ただ、このスタイル、変に変えない方がいいんでしょうね・・・。

評価:★★★★

大橋トリオ 過去の作品
A BIRD
I Got Rhythm?
NEWOLD
FACEBOOKII
L
R

FAKE BOOK III
White
plugged
MAGIC
大橋トリオ
PARODY
10(TEN)
Blue
STEREO
植物男子ベランダー ENDING SONGS
植物男子ベランダーSEASON2 ENDING SONGS
THUNDERBIRD
This is music too

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2021年4月 9日 (金)

「今の時代性」を取り込んだ作品

Title:AAI
Musician:Mouse On Mars

ドイツのエレクトロミュージックデゥオ、Mouse On Marsの最新作。前作「Dimensional People」が高い評価を集めた彼らですが、その最新作がまた、ユニークな実験性を帯びた作品ということで話題となっています。今回のアルバムタイトル「AAI」は、Anarchic Artificial Intelligenceの略称。直訳すると「無秩序なAI(=人口知能)」となる本作は、そのタイトル通り、昨今話題のAIを作曲技法の中に取り入れて使用した作品となっているそうです。

そしてもう1つの特徴が、ボストン大学の英文学教授でアフリカン・アメリカン研究の第一人者であるルイス・シュデ=ソケイの言葉を取り入れて、至るところでサンプリングとして使用しているという点。昨今のブラック・ライブス・マター運動に対してMouse On Marsから呼応しているといったところでしょうか。

そういうこともあって、全体的にアフリカンなリズムが多様されているのも本作の特徴で、イントロ的な1曲目を挟んだ事実上の1曲目「The Latent Space」から、トライバルなリズムが展開されていきますし、静かな音色にスペーシーな雰囲気も漂う「Thousand To One」もトライバルなリズムが背後に鳴っています。メタリックなサウンドがどこかユニークな「Machine Rights」でもトライバルなリズムが顔をのぞかせますし、「Cut That Fishernet」も強いトライバルなリズムが特徴的な作品になっています。

そんなアフリカンなリズムがアルバムの中でひとつの軸となっているため、AIを作曲に用いているエレクトロサウンドでありながらも、一方ではどこか肉感の強く作品になっているというアンバランスさがユニークなアルバムと言えるでしょう。とかく無機質になりがちなサウンドの中で、肉感的なリズムを取り入れるというアンバランスさが、アルバムの中で大きなインパクトとなっているように感じました。

また、そんなトライバルな作品を含み、全体的には様々なアイディアが散らばっているバリエーションの多い作風も魅力的で、これはひょっとして作曲技法としてAIを使用した結果、むしろ自由度の高い作品に仕上がったのでしょうか?どこかトラッド的な要素も感じる「Walking And Talking」や、エレクトロノイズで疾走感のある「Go Tick」、警告のようなメッセージがインパクトある「New Life Always Announces Itself Through Sound」など、様々なアイディアを詰め込んだバラエティーに富んだ作品になっています。特に、今回、全21曲という曲数ながらも、1分に満たない曲や1分、2分程度の曲も多く、それだけ様々なアイディアを詰め込んだ作品になったといえるでしょう。結果として、全体的にスピーディーに展開し、飽きのこない作品に仕上がっていたと思います。

評価の高かった前作に引き続き、今回も傑作アルバムに仕上がっていた本作。AIの導入といい、ブラック・ライブス・マターに呼応した作風といい、まさに今の時代を反映させアルバムに取り込んだ作品と言えるでしょうし、そういう時代性こそポップミュージックのだいご味と言えるでしょう。2021年という今の時代だからこそ生まれた傑作でした。

評価:★★★★★

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2021年4月 8日 (木)

Hot Albumsも1位はK-POP

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

Hot100に続き、Hot AlbumsもK-POP勢が1位を獲得しています。

1位には韓国の男性アイドルグループTREASURE「THE FIRST STEP:TREASUER EFFECT」が獲得。日本でのデビュー作。以前、先行してリリースされていた韓国盤のランクインのため、2月3日付チャートで7位にランクインしていましたが、このたび国内盤もリリース。そのCD販売数が加味された影響で、9週ぶりにベスト10に返り咲き、見事1位獲得となりました。CD販売数1位、ダウンロード数8位、PCによるCD読取数38位。オリコン週間アルバムランキングでも初動売上5万6千枚を獲得し、1位にランクインしています。

2位にはモーニング娘。'21「16th~That's J-POP~」が初登場でランクイン。CD販売数2位、ダウンロード数1位、PCによるCD読取数6位。K-POP勢の躍進の前でこのアルバムタイトルは少々むなしさも感じてしまうのですが、15曲中13曲はつんく♂の曲だそうで、売れるとすぐに飽きてしまうどこかのTKさんと異なり、いまだに責任もってモーニング娘。に関わる彼の誠実さが感じられます。オリコンでは初動売上3万7千枚で2位初登場。直近作はベスト盤「ベスト!モーニング娘。20th Anniversary」で、同作の3万4千枚(1位)からアップ。オリジナルアルバムとしての前作「⑮Thank you,too」の2万9千枚(4位)からもアップしています。

3位初登場はケツメイシ「ケツノパラダイス」。CD販売数3位、ダウンロード数5位、PCによるCD読取数23位。デビュー20周年を記念してリリースされたベストアルバムで、今回は、彼らのツアースタッフや関係者がセレクトした曲が収録されているそうです。ちなみにジャケット写真↓

は、このコロナ禍のため、首里城内にメンバーの等身大パネルを持ち込み撮影されたそうです。あきらかに違和感のある写真なのですが、合成技術などを用いず、あえてアナログな方法を採用するあたりに、ユーモアセンスを感じます。オリコンでは初動売上2万2千枚で3位初登場。直近のオリジナルアルバム「ケツノポリス11」の4万枚(1位)よりダウン。10年前にリリースされた4枚同時リリースのベスト盤のうち、最高位だった「ケツの嵐~春BEST~」の5万3千枚(2位)からもダウンしています。

続いて4位以下の初登場盤です。まず4位にはいきものがかり「WHO?」がランクイン。CD販売数4位、ダウンロード数6位、PCによるCD読取数12位。オリコンでは初動売上1万9千枚で前作「WE DO」の3万7千枚(2位)から大幅ダウン。活動休止前にリリースしていた前々作「FUN!FUN!FANFARE!」が初動10万1千枚でしたので、わずか2作で初動売上が10分の一近くに減ってしまうという、ストリーミングの普及という要素を加味しても、かなり厳しい状況となっています。

8位には林原めぐみ「30th Anniversary Best Album『VINTAGE DENIM』」がランクイン。CD販売数6位、ダウンロード数14位、PCによるCD読取数37位。昨今では人気声優が歌手として活動するケースも少なくありませんが、彼女はその走りともいえる声優で、本作は彼女が林原めぐみ名義での初シングルとなった「虹色のスニーカー」からちょうど30年ということを記念してリリースされたベストアルバム。声優としては活躍を続けているものの、歌手としてはさすがに昔と比べて人気がひと段落した感もあるのですが、それでも本作は見事ベスト10入りを果たしました。オリコンでは初動売上1万枚で6位初登場。直近のオリジナルアルバム「Fifty~Fifty」の5千枚(18位)からアップしています。

9位にはロックバンドSPYAIR「UNITE」がランクイン。CD販売数7位、ダウンロード数12位、PCによるCD読取数33位。オリコンでは初動売上7千枚で7位初登場。前作「KINGDOM」の2万枚(5位)から大幅ダウンとなっています。

初登場最後、10位にはBAE×The Cat's Whiskers×cozmez×悪漢奴等「Paradox Live 1st album "TRAP"」がランクイン。アニメキャラによるHIP HOPメディアミックスプロジェクト「Paradox Live」からのアルバム・・・って、要するにヒプノシスマイクの二番煎じってことですか(苦笑)。さすがにちょっと狙いが露骨すぎる感じもするのですが。CD販売数9位、ダウンロード数35位、PCによるCD読取数57位。オリコンでは初動売上6千枚で9位初登場。

今週の初登場盤は以上ですが、一方、ロングヒット盤は、YOASOBI「THE BOOK」が先週の2位から今週は5位にダウン。アンコールプレスもほぼ完売したのでしょうか、CD販売数は先週の2位から17位に大幅ダウン。ただPCによるCD読取数は先週から変わらず1位をキープ。ダウンロード数も3位から2位にアップしており、総合順位は5位となっています。これで13週連続のベスト10入りとなりました。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2021年4月 7日 (水)

1位2位は韓国系

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週は1位2位に初登場曲が並びましたが、いずれも韓国系のアイドルグループとなりました。

まず1位はソニーミュージックと韓国のJYPエンターテイメントの合同オーディションから誕生した「韓国製J-POPグループ」とも言える女性アイドルグループNiziU「Take a picture」がランクイン。ストリーミング数及びYou Tube再生回数で1位を獲得。ダウンロード数で2位、ラジオオンエア数12位、Twitterつぶやき数8位で総合順位1位を獲得。CDは4月7日予定ですが、先行配信分での1位獲得となりました。

2位は韓国の男性アイドルグループBTS「Film out」がランクイン。こちらは映画「劇場版シグナル 長期未解決事件捜査班」主題歌で、black numberの清水依与吏が作曲に参加している1曲。こちらはダウンロード数及びTwitterつぶやき数で1位を獲得。ストリーミング数7位、You Tube再生回数4位、ラジオオンエア数34位で総合順位2位を獲得しています。ちなみにBTSは「Dynamite」も先週からワンランクダウンの7位にランクイン。33週連続のベスト10ヒットとなっています。

3位は優里「ドライフラワー」が4位からランクアップし、2週ぶりのベスト3返り咲き。ストリーミング数はNiziUに押されて2位にダウンし、連続1位は10週でストップしましたが、ダウンロード数は6位から5位にアップ。You Tube再生回数は先週から変わらず7位をキープしており、根強い人気を感じさせます。これでベスト10ヒットは連続20週目となりました。

続いて4位以下ですが、今週も4位以下の初登場曲はゼロ。ロングヒット曲がズラリと並ぶ結果となっています。まず4位には、CDリリースに伴い先週2位までアップしたYOASOBI「怪物」が残念ながら今週は4位にダウン。CD販売数も2位から11位にダウンしているほか、ダウンロード数は3位から4位、ストリーミング数が5位から6位と全体的に下落傾向(You Tube再生回数が3位から圏外にダウンしているのですが、これは集計エラーでは?)となっています。ただ、これで通算11週目のベスト10ヒットに。一方、「夜に駆ける」は今週7位から6位に再びアップ。ただ、ダウンロード数は7位から6位にアップしているのですが、ストリーミング数は4位から5位、You Tube再生回数も5位から6位にダウンしています。なお、これでベスト10ヒットは連続50週目となりました。

5位はAdo「うっせぇわ」が先週の3位から2ランクダウン。ダウンロードが4位から8位、ストリーミング数が6位から8位、You Tube再生回数も1位から3位と全体的に下落傾向。これで12週連続のベスト10ヒットなのですが、これで落ちてしまうのか、もうひと踏ん張りがあるのか気にかかるところ。インパクトが強い曲なだけに、逆に早い段階で飽きられやすいのでしょうか?

そして今週9位のAwesome City Club「勿忘」が、今週見事に8週目のベスト10ヒットとなりました。映画「花束みたいな恋をした」のインスパイアソングとして話題となり、ヒットとなったこの曲。ただ、3月10日付チャートの5位を最高位に、ロングヒットは続けているものの、もう一歩、YOASOBIやBTS、「うっせぇわ」、「ドライフラワー」の壁を越えられず、ここに来て6位→8位→9位とじり貧気味となっています。ストリーミング数4位ながらもYou Tube再生回数は13位と、もうちょっと上位に食い込んでほしいところ。ただダウンロード数が今週16位から10位にアップしています。来週以降は上位を狙えるか、それともこのまま落ちて行ってしまうのか・・・今後の動向に注目です。

さらにこちらもなかなか上位に食い込めないEve「廻廻奇譚」が先週の9位からワンランクダウンで10位にランクイン。こちらもダウンロード数は5位から7位、ストリーミング数は9位から10位、You Tube再生回数は4位から5位と、下落傾向。ただ、これで通算10週目のベスト10ヒットとなりました。来週こそ、さらに上位を狙えるのでしょうか。

そして今週、ついにLiSA「炎」が10位から12位にダウン。ベスト10ヒットは連続23週でストップとなりました。とりあえず鬼滅の刃がらみのヒットもひと段落といった感じでしょうか。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2021年4月 6日 (火)

「勿忘」は撒き餌??

Title:Grower
Musician:Awesome City Club

映画「花束みたいな恋をした」のインスパイアソング「勿忘」(わすれな)がヒットを記録。一躍注目を集めているバンド、Awesome City Club。本作は、その「勿忘」が1曲目に収録されている彼らにとって3枚目となるオリジナルアルバムとなります。以前から注目を集めてきたバンドで、本サイトでも基本的にアルバム毎に紹介してきました。そんな以前から注目してきたバンドがこういう形で売れるというのはうれしい限り。もっともっと知名度が上がればいいのですが。

ただ、「勿忘」のヒットはうれしいのですが、正直、この曲がAwesome City Clubというバンドを象徴するような曲かと言われると微妙な感じ。男女ツインボーカルを上手くいかした構成は彼ららしく、AORの要素もふんだんに入ってはいるのですが、バンドサウンドで分厚く、スケール感を持たせつつ、わかりやすいポップなメロが流れる構成は、良くも悪くも「売れ筋のJ-POP」というイメージは否めず、ヒットしている曲なだけに、もちろん駄作ではないのですが、Awesome City Clubとしてはもっと良い曲も作っているのでは??という疑問も抱いてしまいます。

実際、その疑問は2曲目以降で解消していきました。2曲目「tamayura」はメロウなAORチューン。爽快なエレピやシンセの音色も心地よいポップナンバーに仕上がっていますし、「Nothing on my mind」もメロウなソウルチューンになっていますし、ラストの「夜汽車は走る」もアコギを入れてメロウな歌声が魅力的なナンバー。良くも悪くも「売れ筋のJ-POP」寄りの「勿忘」に比べると、いままでの彼らと同様、グッとAOR色を取り入れた作風になっていました。

ただ、今回のアルバムでは、いままでの彼らとは異なる傾向も見れました。それは、いままで、Awesome City Clubというと、シンセを入れたリズミカルなポップチューンがメインになっていたのですが、本作では、上記のように、むしろメロウに聴かせる楽曲が目立ちます。「Sing out loud,Bring it down」や、PESが参加してラップを聴かせる「湾岸で会いましょう」のようなリズミカルな楽曲もあるのですが、全体的には少なめ。むしろメロウに聴かせるソウルなナンバーが目立ち、彼らの新たな側面を感じさせるアルバムになっていました。

ある意味、J-POP的で分かりやすい「勿忘」をあえて1曲目に配し、2曲目以降は彼らの本領を発揮したようなAORナンバーが続いていく構成は、「勿忘」で彼らのことを知ったリスナーを、1曲目で釣り上げ、2曲目以降を無理やり聴かせる、要するに「勿忘」が一種の撒き餌のようになっているアルバムにも感じました。以前の彼らの曲に感じていたバリエーションの不足は本作で一気に解消された点、大きな一歩だった半面、「勿忘」に比べると、2曲目以降はもうちょっとインパクトも欲しかったかな、とも思える曲調だったのは少々残念。とはいえ、「勿忘」のヒットで知名度もあがり、またバラエティーの増した楽曲に彼らの成長も感じさせるアルバムだったと思います。これからさらにヒットが続き、彼らの知名度もあがっていくのでしょうか?それにつれてこのアルバムも順位を上げていくのか??どれだけヒットしていくのか、とても楽しみです。

評価:★★★★

Awesome City Club 過去の作品
Awesome City Club BEST
Torso
Catch The One
Grow apart


ほかに聴いたアルバム

NATURAL/YUI

2012年にYUIとしての活動を終了し、その後はロックバンドFLOWER FLOWERのメンバーとして活動を続けてきた彼女。しかし昨年、YUIとしての活動を再始動し、メジャーデビュー15周年を迎えた今年、セルフカバーミニアルバムである本作をリリースしました。過去の彼女のヒット曲をカバーした本作。FLOWER FLOWERのメンバーと共にリアレンジした作品になっているそうですが、印象的にはオリジナルから大きな変化はありません。ただ、大人になった彼女のボーカルからは、一種の余裕のようなものが感じられ、いい意味での安定感が生まれているように感じます。新生YUIの第1歩と感じられる作品でした。

評価:★★★★

YUI 過去の作品
I LOVED YESTERDAY
HOLIDAYS IN THE SUN
HOW CRAZY YOUR LOVE
GREEN GARDEN POP
ORANGE GARDEN POP

IT'S ALL ME - Vol.2/AI

昨年7月にリリースした「IT'S ALL ME」の第2弾となるミニアルバム。バラエティー豊かな音楽性でAIというミュージシャンを多角的に表現した前作同様、本作もトラップのリズムを取り入れた「Expectations」やピアノバラードの「HOPE」など、前作ほど多面的なジャンルを取り入れた、といった感じではないものの、十分すぎるほどバラエティー豊かな作品に仕上がっていました。ミニアルバムながらも、AIというミュージシャンを多面的にとらえた作品。このミニアルバムが次回作以降、どのように生かされるのか、楽しみです。

評価:★★★★

AI 過去の作品
DON'T STOP A.I.
VIVA A.I.
BEST A.I.
The Last A.I.
INDEPENDENT
MORIAGARO
THE BEST
THE FEAT.BEST
和と洋
感謝!!!!! Thank you for 20 years NEW&BEST
IT'S ALL ME - Vol.1

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2021年4月 5日 (月)

なんと、全英1位を獲得!

Title:As The Love Continues
Musician:MOGWAI

前作「Every Country's Sun」では全英チャートで6位を記録。バンド結成から26年というベテランバンドでありながら、過去最高位の順位を記録した彼ら。それから約3年半ぶりにリリースされたのが本作ですが、なんと彼ら初となる全英チャート1位を記録。いまとなった人気の面ではバンドとして最盛期を迎えている彼ら。正直、決してわかりやすいポップな楽曲を奏でるバンドではないだけに、この人気には驚きです。

特に日本では2001年の「Rock Action」あたりで最も注目を集めていただけに、ここに来てのブレイクというのは意外にすら感じられます。ただ本作を聴くと、確かに今、彼らは波にのっており、特に楽曲は、リスナーがMOGWAIに対して望んでいるサウンドに対してしっかりと応えられており、なおかつクオリティーの高い作品をしっかりと作ってきているといった印象を受けます。本作は、まさに「これぞMOGWAI!」と言いたくなるような、いい意味で実に彼ららしい作品に仕上がっていました。

まず1曲目「To the Bin My Friend, Tonight We Vacate Earth」。出だしはピアノで美しく聴かせ、途中からギターのノイズが入って徐々にダイナミズムさが増していく・・・もう、まさにMOGWAIらしく、リスナーの壺をつきまくるような構成が最高!続く「Here We, Here We, Here We Go Forever」もメランコリックなメロディーラインが心地よいですし、「Dry Fantasy」もドリーミーな雰囲気で美しく聴かせるサウンドが非常に気持ちの良い作品に仕上がっています。

そして前半の核となるのが先行配信曲になっていた「Ritchie Sacramento」。これ、坂本龍一を彼らの友人が言い間違えたことに由来した曲だそうで、疾走感あるギターロックの歌モノなのですが、ノイジーなギターにポップなメロとシューゲイザーの王道を行くようなナンバーとなっており、シューゲイザー好きにはたまらない作品になっています。

中盤以降はダイナミックなバンドサウンドを聴かせる作品が目立ち、「Drive The Nail」は静かにスタートしつつ、後半は力強いバンドサウンドを展開するという、これまた彼らの王道を行くようなナンバー。ノイジーなバンドサウンドにポップなメロディーラインがのり、これまたシューゲイザー好きにはたまらない「Ceiling Granny」、これまたMVが作られている「Pat Stains」もギターリフを主導にメロディアスなナンバーながらも中盤、ダイナミックなバンドサウンドが顔をのぞかせます。

終盤も「Supposedly, We Were Nightmares」もテンポよい明るいメロが楽しめるギターロックナンバーになっており、ラストは「It's What I Want to Do, Mum」もゆっくりメランコリックに聴かせるチルアウト的なナンバーで締めくくり。最後の最後までMOGWAIらしい楽曲が並ぶ、彼らの魅力を存分に味わえるアルバムになっています。

サウンド的には新しい挑戦といった感じではありませんし、いままでのアルバムも、基本的にMOGWAIは彼ららしい作品を多く作ってきました。ただ本作は、そんな中でも特にMOGWAIらしさにきちんと答えつつ、脂がのったともいえるインパクトのある作品をつくってきています。出来栄えはここ数作の中でも一番だと思いますし、それゆえに全英1位という快挙を成し遂げたのでしょう。ベテランの域に達しても、その勢いに衰えのない彼ら。まだまだ彼らの活躍は続きそうです。

評価:★★★★★

MOGWAI 過去の作品
The Hawk Is Howling
HARDCORE WILL NEVER DIE,BUT YOU WILL
Live at All Tomorrow's Parties,9th April 2000
Earth Division EP
Rave Tapes
Les Revenants
CENTRAL BELTERS
ATOMIC
Every Country's Sun
KIN


ほかに聴いたアルバム

Who Am I?/Pale Waves

前作「My Mind Makes Noises」が日本のメディアでも大きくプッシュされ、一躍注目を集めたイギリスのロックバンドの約2年5ヶ月ぶりとなるニューアルバム。前作で感じられた80年代、90年代的な要素を感じさせる、懐古感あるエレクトロサウンドは薄れ、ちょっとニューウェーヴ的ながらも、これといって特色のないシンセロックになってしまった感が。それなりにポップで楽しく聴かせる楽曲や、軽快なロックチューンなどが楽しめるアルバムではあるものの、Pale Wavesらしさはあまり感じませんでした。

評価:★★★

Pale Waves 過去の作品
My Mind Makes Noises

An Overview on Phenomenal Nature/Cassandra Jenkins

ニューヨーク州ブルックリンを拠点に活躍する女性シンガーソングライターによる2枚目のアルバム。ウィスパー気味のボーカルでしんみりメロディアスに聴かせるポップスがメイン。フォークやブルーズ、ジャズなどの要素を加え、暖かくアコースティックなサウンドと、それにマッチした彼女のボーカルが魅力的な1枚。非常に心地よく聴ける良質なポップスアルバムでした。

評価:★★★★★

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2021年4月 4日 (日)

ボーカリストあべまの実力がわかるカバーアルバム

Title:MY INNER CHILD MUSEUM
Musician:阿部真央

シンガーソングライター阿部真央の初となるカバーアルバム。タイトルからも想像つく通り、彼女が幼少期から親しんできた楽曲をカバーした作品・・・・・・はいいんですが、楽曲のタイプはかなりバラバラ。SIAの「Alive」や宇多田ヒカルの「SAKURAドロップス」はわかりやすいのですが、「ロマンスの神様」「津軽海峡・冬景色」「もののけ姫」まで収録されていますし、さらには「千本桜」とか、本当に「幼少期から親しんできた」の??なんか、「千本桜」の選曲って、ネットユーザー層にいかにも媚びた感じの選曲に感じてしまうのですが・・・。

なんて感じで聴き始めた今回のカバーアルバム。それだけにネガティブな印象の中で聴きはじめたのですが、これが予想以上に良いカバーアルバムに仕上がっていました。その最大の理由は、ボーカリストとしての阿部真央の実力。それこそJ-POPからボカロ系、洋楽から演歌まで様々なジャンルを網羅した今回のカバーアルバムですが、そのバラエティー富んだ曲を易々と歌い上げています。

SIAの「Alive」では英語を上手く感情を込めて歌いこなし、かと思えば和風なメロとサウンドの「千本桜」は、和風なドスを効かせたようなボーカルで歌い上げます。「SAKURAドロップス」も伸びやかな歌声は宇多田ヒカルに負けていませんし、「奏」も暖かさを感じるボーカルに涙腺が熱くなるカバーに仕上げています。

「もののけ姫」も、米良美一がカウンターテナーの歌声で力強く聴かせる難曲なのですが、こちらもハイトーンボイスで見事に歌いこなしています。「津軽海峡・冬景色」も石川さゆりのこぶしを効かせた力強いボーカルと比較されてしまう難しいカバーだと思うのですが、こちらも正直、石川さゆりを向こうにまわしても決して負けていない、こぶしを効かせたボーカルを聴かせてくれています。「ロマンスの神様」も広瀬香美のハイトーンボイスを易々を乗り越え、伸びのあるボーカルをしっかりと聴かせてくれていました。

基本的には彼女が慣れ親しんできた曲のカバーだけに、原曲を大きく逸脱するようなカバーはありませんでしたが、一方でしっかりと阿部真央のボーカリストとしての魅力を伝えているカバーになっていました。なにより、彼女のオリジナルではそこまで感じなかった彼女の歌の上手さと表現力の幅広さに驚かされました。さらに洋楽からJ-POP、演歌やクラシック、男性ボーカル曲まで自在に歌いこなす器用さも見事。阿部真央というと、初期の作品は、曲調があまりに統一感がなく、個人的にはそれが大きなマイナスポイントとなっていたのですが、確かにこれだけ器用に、様々な曲を歌いこなすボーカリストとしての実力があれば、様々なタイプの曲に挑戦したくなるのはわかるような気がします。いまさらながら、初期の彼女が、なぜあれだけ曲調がバラバラだったのか、理解できるような気がしました(それが良いとはいいませんが)。

そんな訳で、ボーカリストあべまの実力がよく出ているカバーアルバム。なにげにカバーシンガーとしても魅力的なだけに、第2弾、第3弾も聴きたいかも。阿部真央のあらたな魅力に触れることの出来る1枚でした。

評価:★★★★★

阿部真央 過去の作品
ポっぷ
シングルコレクション19-24
おっぱじめ
Babe.
YOU
阿部真央ベスト
まだいけます

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2021年4月 3日 (土)

コロナ禍の中で生まれた曲たち

Title:クチナシ
Musician:Cocco

新型コロナウイルス蔓延で非常事態宣言が発令され、外出自粛要請という事態となった昨年の春。ライブも中止となり、好む好まないに関わらず、家に待機する必要が生じてしまったミュージシャンたち。そんな中で、やはり彼ら/彼女たちが行ったのは曲をつくること、でした。日本に関わらず海外でも、ロックダウンとなってライブも中止となったミュージシャンたちが、当初は意図しない形で曲づくりを行いリリースされたアルバムが、昨年から誕生しています。

今回、約1年4ヶ月ぶりとなるCoccoのニューアルバムも、まさにそんな外出自粛要請が出されている中で生み出された1枚と言えるでしょう。もともと、外出自粛要請期間にTwitterやYou Tubeなどに投稿された「おうちdemoトラック」の曲を完成させ、多く収録された今回のアルバムは、ひょっとしたら「コロナ禍の副産物」とも言えるアルバムかもしれません。

そうやって生み出された今回のアルバムですが、大きな特徴として、とにかく曲調のバリエーションが非常に多いという点があげられるでしょう。イントロを挟んで事実上の1曲目となる「女一代宵の内」は、爽やかさも感じられる伸びやかなナンバーですが、ストリングスやホーンセッションなどを入れて、非常にダイナミックなサウンドでスケール感を覚える曲からスタート。続く「Supernova」はヘヴィーなギターのメタリックなインストからスタートするものの、曲がはじまるとピアノをバックに美しい歌声を聴かせるという、ある意味、Coccoらしさを感じる楽曲となっています。

そして、バラエティー富んだ曲調となるのはここから。続く「悲しい微熱」はムーディーなラテン歌謡。「花咲か仁慈」は沖縄の三線の音色を入れつつ、壮大なサウンドが特徴的な楽曲に。「ダンシャリアン」もヘヴィーなギターで醸し出す怪しげなサウンドが特徴的。「青葉」に至っては、ピアノ1本の演奏に合唱団の歌をバックに歌い上げる合唱曲になっていますし、「想い事」はシンプルな演奏の沖縄民謡に仕上げています。Coccoのイメージとはちょっと異なるような雰囲気の曲まで入っており、見方によっては暴走気味ともとらえられるかもしれません。

ただ、それだけバラエティー富んだ作風ながらも、一方ではアルバム全体としては、ある意味「Coccoらしい」とも言えるようなヘヴィーなバンドサウンドをバックに力強く歌い上げるような楽曲や、ストリングスなどの音を入れて爽快に歌い上げるタイプの曲が目立ちます。冒頭の「Supernova」を筆頭に、「アイドル」もシンプルでヘヴィーなギターサウンドをバックに力強く歌い上げるスタイル。「潮満ちぬ」も、分厚い爽快なサウンドで歌い上げるタイプの楽曲。「Rockstar」はタイトル通り、ヘヴィーなギターリフでゴリゴリに押してくるハードロックのナンバーになっていますし、ラストを締めくくる「真白の帆」もダイナミックなサウンドで壮大さを感じる楽曲に仕上がっています。

Coccoらしい楽曲をしっかりと踏まえて楽曲を作った上で、そのほかのバラエティー富んだ作品を組み込んできたようなアルバムになっています。そのため、アルバム全体としては、バラエティー富んだ作風にも関わらず、聴いた後、Coccoらしい作品だったな、と思うような内容となっており、既に「ベテラン」とも言える領域に入った彼女ですが、いい意味での安定感も覚える作品になっていました。

思えば初期のCoccoといえば、エッジの効いたサウンドで感情的に歌い上げるだけに、楽曲はかなり危うげで、でもその緊張感があるからこそ、とんでもない傑作が生まれてきました。デビューから20年以上が経過した今、さすがにその「危うげ」な雰囲気はありません。自分の思うがままに暴走している感すらあった初期に比べると、今回のアルバムも、ある種Coccoらしさを自ら客観視できている、安定感があります。今回のアルバムは、いままでのCoccoとは違うタイプの曲を、Coccoらしい曲に上手く組み合わせた構成になっているがゆえに、Coccoが自らのことをしっかりと客観視できるようになった、ある意味ベテランシンガーらしい安定感のあるアルバムだったように思います。

それだけに、昔のような、暴走気味の危うさを兼ね備えたとんでもない傑作、といった感じではないのですが、一方でファンなら聴いていて安心できるような良作に仕上がっていたのは間違いありません。今のCoccoだからこそ生み出せたアルバムと言ってもいいかもしれません。いい意味で安心してCoccoらしさを味わうと同時に、ほどよく彼女の挑戦も楽しむことが出来る、そんな作品でした。

評価:★★★★★

Cocco 過去の作品
エメラルド
ザ・ベスト盤
パ・ド・プレ
プランC
アダンバレエ
20周年リクエストベスト+レアトラックス
Cocco 20周年記念Special Live at 日本武道館 2days~一の巻x二の巻~
スターシャンク

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2021年4月 2日 (金)

大滝詠一からの影響が顕著だが

Title:The Best of MAMALAID RAG 2009~2018 Vol.1
Musician:MAMALAID RAG

今回紹介するバンドは2000年代の前半に、「現代のはっぴいえんど」的な呼び名で一時期注目を集めていたバンドMAMALAID RAG。2002年にセルフタイトルアルバム「MAMALAID RAG」をリリース。一時期はシングルがCMソングに起用されたり、「喫茶ロック」などのコンピレーションに収録されるなど期待されたものの、いまひとつ大ヒットにはつながらず。結果、2007年に活動を休止し、その後、2008年にはギターボーカルの田中拡邦のソロプロジェクトとして活動が再開。メジャーを離れ、自身のレーベルからアルバムをリリースしましたが、ここ最近は正直、あまりその名前を聴かなくなってしまっていました。

そんな中、リリースされたのが今回のベストアルバム。「2009~2018」と記載されている通り、インディーズ移籍後のシングル及びアルバムからピックアップされた曲が並ぶベストアルバムとなっています。彼の作品はインディーズ時代の作品も含めて、基本的にはアルバムはフォローしてきたので、今回はじめて聴く形ではないのですが、今回のベスト盤であらためて彼の作品に触れて、予想していたよりも多くの良作が並んでいる点に、あらためて彼の実力を感じる結果となりました。

楽曲的には「現代のはっぴいえんど」という呼び名も高いように、はっぴいえんど直系のフォークロック、AORが大きな特徴となっています。というよりも、かなり露骨に大滝詠一からの影響を感じさせる曲調。1曲目「D・O・K・I」のイントロからしておもいっきりナイアガラサウンドですし、サビの転調やら歌詞の言葉遣いやら、完全に大滝詠一からの影響を受けまくっています。

10曲目の「Girl Friend」も完全に大滝詠一歌謡。ロマンチックさを感じる歌詞の世界も大滝詠一をなぞっている感じ。なによりも彼の歌い方がかなり大滝詠一の色を感じさせるだけに、その影響を顕著に感じてしまいます。今回のベストアルバム、確かに良作は多いと感じる反面、この大滝詠一からの影響がかなり顕著で、もうちょっとMAMALAID RAGだけの個性が欲しいと感じる部分も少なくありませんでした。一時期、かなり注目を集めつつも、結局ブレイクに至らなかったのは、ここらへんが大きな要因かもしれません。

とはいえ、MAMALAID RAGらしい個性が垣間見れる部分も少なくはなく・・・というよりは、彼なりに個性を出そうとしていた部分はいろいろなところで感じられ、例えば「時の過ぎゆくまま」などは、もっとウェットな歌謡曲テイストの強い作品となっており、はっぴいえんど路線とはまた異なる雰囲気を感じます。もっと顕著なのが、ラスト2曲「いつでもどこでも」「Day And Night Blues」の2曲。ブルースの影響を思いっきり受けた曲調となっており、特に「Day And Night Blues」などは、オリジナル曲でありつつ、楽曲構成といい、歌詞といい、本格的な王道ブルースナンバーとなっており、彼の意外なブルースへの造詣をうかがわせます。もともと、2012年にブルースやルーツ志向の強いアルバム「Day And Night Blues」をリリースし、その方向性に意外さを感じたのですが、この並びで聴くと、彼の個性としてそれなりに機能していたように感じます。

もともと、「祈りの言葉を知らなければ」などで感じられるとおり、ブルースの要素はそれまでの楽曲でも要所要所で感じられ、MAMALAID RAGの音楽性のひとつの特徴となっています。このブルース路線とはっぴいえんど路線は、あまり上手く融合されず、それぞれ「別物」として機能しているのがちょっと残念なところで、この両者を上手く融合できれば、MAMALAID RAGの音楽がもっとおもしろくなったかもしれない・・・ということは感じてしまいました。

そういった気になる点はありますし、そういうマイナスポイントを考えると、確かにブレイクに至らなかった理由もわかるような気がします。実際、インディーズ時代のアルバムはアルバム単位ではいまひとつインパクトも薄く、あと一歩という印象も受けていました。ただ、ベスト盤で良作を並べて聴くと、やはりメロディーの良さといい、非常に優れたミュージシャンであるということに気が付かされます。Vol.1というタイトルですが、今後、Vol.2も出るのでしょうか?それも楽しみですが、それよりも次のオリジナルアルバムも聴きたなってきました。もうちょっと注目されてもいいミュージシャンだと思います。今後の活躍に期待したいところです。

評価:★★★★★

MAMALAID RAG 過去の作品
the essential MAMALAID RAG
SPRING MIST

LIVING
Day And Night Blues
So Nice

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2021年4月 1日 (木)

ヒプノシスマイクが2作同時ランクイン

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

声優によるラッププロジェクト、ヒプノシスマイク関連作品が2作同時ランクインです。

まず1位にBad Ass Temple vs 麻天狼「ヒプノシスマイク -Division Rap Battle- 2nd Division Rap Battle『Bad Ass Temple vs 麻天狼』」がランクイン。声優によるラッププロジェクト「ヒプノシスマイク」から、架空のラップチーム同士のバトルをCDとしてリリースされるアルバム。同シリーズの前作「ヒプノシスマイク –Division Rap Battle- 2nd D.R.B『Bad Ass Temple VS 麻天狼』」は宇多田ヒカルに敗れて最高位2位でしたが、本作はCD販売数1位、ダウンロード数及びPCによるCD読取数いずれも2位を獲得し、総合順位も1位。オリコン週間アルバムランキングでも初動売上9万8千枚で1位初登場で、前作「Bad Ass Temple VS 麻天狼」の8万1千枚(1位)からアップしています。ちなみに、その前作Bad Ass Temple vs 麻天狼「ヒプノシスマイク –Division Rap Battle- 2nd D.R.B『Bad Ass Temple VS 麻天狼』」は今週も7位にランクインしており、ヒプノシスマイク関連のアルバムが2作同時ランクインとなりました。

2位はYOASOBI「THE BOOK」が先週の8位から大幅アップし、9週ぶりのベスト10返り咲き。12週連続のベスト10ヒットとなっています。これは3月23日に、完全限定版だったCDのアンコールプレスが決定した影響。オリコンでも2万1千枚を売り上げ、2位にランクインしています。「最近の若者はストリーミングだけでCDは買わない」と最近はよく言われますが、なんだかんだいってもCDでほしいという層も少なくないのでしょう。

3位は宇多田ヒカル「One Last Kiss」が先週と同順位をキープ。ダウンロード数は今週も1位を獲得しており、強さを見せつける結果になりました。

続いて4位以下の初登場盤ですが、まずは4位に斉藤和義「55 STONES」がランクイン。2002年に「35 STONES」、2011年に「45 STONES」をリリースしている彼ですが、55歳を迎えた今年リリースした「STONES」シリーズの第3弾。CD販売数4位、ダウンロード数13位、PCによるCD読取数35位で総合順位は4位に。オリコンでは初動売上1万2千枚で5位初登場。前作「202020」の1万3千枚(4位)から微減。

8位にはAfterglow「ONE OF US」が初登場。CD販売数8位、ダウンロード数14位、PCによるCD読取数29位。アニメキャラによるバンドプロジェクト「BanG Dream!」から登場したアニメキャラによる架空バンドによる1stアルバム。オリコンでは初動売上9千枚で8位初登場となっています。

9位初登場は韓国の男性アイドルグループATEEZ「Into the A to Z」。本作が日本デビュー作となります。CD販売数は6位でしたが、他はランク圏外となり、総合順位ではこの位置に。オリコンでは初動売上1万枚で6位初登場。

最後、10位には「TVアニメ『ガル学。~聖ガールズスクエア学院~』コンプリート・ベスト」がランクイン。テレビ東京系「おはスタ」内のアニメ「ガル学。~聖ガールズスクエア学院~」に使用されたアニメを集めたオムニバスアルバム。CD販売数10位、PCによるCD読取数66位で、総合順位でベスト10入りとなりました。オリコンでは初動売上7千枚で11位初登場。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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