ローファイながらもバラエティー富んだサウンドがユニーク
Title:On All Fours
Musician:Goat Girl
イギリスはサウスロンドン出身のガールズバンド、Goat Girl。セルフタイトルとなったデビュー作である前作が評判を呼んだ、いわゆるポストパンクバンドと位置付けられるバンドで、本作は彼女たちの約3年ぶりとなるニューアルバム。前作「Goat Girl」の時はノーチェックだったのですが、今回のアルバムは高い評判を呼んでいることからも、遅ればせながら彼女たちのアルバムをチェックしました。
楽曲的には、気だるい雰囲気の女性ボーカルをメインとしたローファイ気味なオルタナ系ギターロックチューンがメイン。1曲目「Pest」はまさにそんな雰囲気の楽曲で、アルバムを象徴するかのような作風の曲調になっています。2曲目「Badibaba」も、これにシンセの音色も加わった軽快なギターポップチューン。ちょっと怪しげな雰囲気のサビも印象的なギターロックチューンに仕上がっています。
そんなギターロックチューンを主軸にしつつ、所々でバリエーションあるサウンドが妙にひっかかりを持つのがこのアルバムの大きな特徴。例えば「Once Again」は出だしこそ、人なつっこさも感じるローファイ気味なギターポップナンバーながらも、後半はサイケなサウンドが導入され、雰囲気が一変します。先行PVもリリースされている「Sad Cowboy」も疾走感あるナンバーで、シンセの音色が軽快にリズミカルに展開される楽曲。先行シングルとなった「The Crack」もノイジーなギターサウンドでロッキンなサウンドを聴かせたかと思えば、ホーンセッションの入った祝祭色あるサウンドが入ってきたりと、3分強の中に多彩な音楽性をのぞかせます。
「Closing in」もニューウェーブ色を感じる軽快でリズミカルなポップチューンに仕上がっていますし、かと思えば「Anxiety Feels」はメランコリックでフォーキーな作風に。最後を飾る「A-Men」もメランコリックなメロディーラインをしっかりと聴かせるポップチューンかと思いきや、妙に歪んだサウンドはサイケですし、メロとは異なって妙に自己主張をするパーカッションもユニークですし、一風変わったサウンドが耳を惹く楽曲で締めくくられています。
基本的にはローファイなギターロック路線で統一感を出しているものの、この妙に印象に残るバラエティー富んだサウンドが実にユニーク。メロディーラインも淡々としているものの、メロウだったり意外とキュートだったりと耳を惹きつけます。また、歌詞についても世界の不正や社会的偏見をテーマとして取り上げた歌詞が特徴的な社会派のバンドで、先行シングルとなった「The Crack」の
「Cracks form when the earth's torn, can't go back」
(訳詞 地球に引き裂かれたヒビが生まれ、それは元に戻ることが出来ない)
という歌詞は、様々なところで分断が生じている今の世界の状況を示唆的にあらわしているなど、示唆的な歌詞も多く見受けられます。
決して派手さはないのですが、聴き終わった後、妙にそのサウンドに惹きつけられる彼女たち。ただ、そのサウンドにもメロにも妙に惹きこまれてきます。日本でも徐々に注目度が集まりそう。特にオルタナ系ギターロック好きには要チェックのグループです。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
Ignorance/The Weather Station
女優としても活動するカナダのシンガーソングライター、タマラ・リンデマン率いるフォークロックバンドの新作。ピアノやストリングスを主軸としたアコースティックなポップソングを聴かせてくれるバンドなのですが、なによりも清涼感あふれるタマラ・リンデマンのボーカルが大きな魅力。ここに外連味のないシンプルなポップソングがのります。清涼感あるボーカルと、シンプルでフォーキーなサウンドやメロディーのバランスもバッチリ。いい意味でもっと売れそうな印象もする、広い層に支持されそうなバンドです。
評価:★★★★★
Tombouctou/Al Bilali Soudan
今さら感も強いのですが・・・まだ1枚聴き洩らしていました、2020年の各種メディアのベストアルバムのうち、私がリアルタイムで聴かなかったアルバムを後追いで聴いた作品。本作はMusic Magazine誌ワールドミュージック部門第4位のアルバム。砂漠のブルースを奏でるTINARIWENや同じくTAMIKRESTの活躍でおなじみの、アフリカはマリのトゥアレグ族によるグループによる作品。ノイジーなギターリフとボーカルの掛け合いが非常にアグレッシブで、かつ、ループするサウンドがトランシーに響き、聴いていて軽くトリップできるようなサウンドを繰り広げられています。アフリカ音楽にロックの要素を取り入れた音楽性が特徴的ながらも、TINARIWENやTAMIKRESTとは異なる方向性を感じるサウンドに。これ、ライブが最高に気持ちよさそうだなぁ・・・。年間ベストで上位に食い込んでくるのも納得の1枚でした。
評価:★★★★★
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