隙間を埋めるような歌詞とサウンド
Title:SEKAI NO OWARI 2010-2019
Musician:SEKAI NO OWARI
2020年にデビュー10周年を迎えたSEKAI NO OWARI。本作は、もともとそのデビュー10周年を記念して、昨年の5月にリリースされる予定だったベスト盤ですが、ご承知の通り、コロナ禍が直撃し、同作も販売延期を余儀なくされました。そして2021年、あらためて「メジャーデビュー10周年」としてリリースが決定。ようやく発売となったベストアルバムが本作となります。
基本的に、以前から・・・というよりもここ最近特にセカオワについて感じているのは、メロディーセンスは素晴らしいが歌詞が酷いという点。特に歌詞については、中2病の世界観が炸裂している自意識過剰系のミュージシャンであり、それが良くも悪くも売りになっている、という点は以前から認識はしていたのですが、あらためて彼らの曲を聴くと、特に初期の作品については自意識過剰というよりも自意識が暴走しているような感のある曲が目立ちました。
特に自意識暴走系と感じるのが「天使と悪魔」や「Love the warz」あたりで、なんとなく何を歌いたいのかはわかるのですが、それをわかった上で「何が言いたいんだ、この人は??」と頭の中ではてなマークがグルングルン回り出すような歌詞という印象を強く受けます。中2病という言葉そのもの、14歳あたりの少年が、「自分は世の中のことをわかっているんだぞ」という自意識の暴走むき出しに、いかにも独自の視点の意見のつもりで歌詞を書きつつも、大人から見ると、失笑でしかない、誰もがそういうことを感じつつ、その上で自分の経験の中で解決していくような、そんな「ありふれた」ことを語っている歌詞、という印象を受けてしまいます。
さすがにここまでの自意識暴走系は、彼らも年を経るごとに薄れていくのですが、それでも以前にもここに書いた通り、ここ最近の歌詞に至るまで歌詞の中ですべて状況を説明してしまうような情報過多な歌詞が目立ち、それがかなり気になります。例えば比較的最近の曲で、このベスト盤でも最後に収録している「RAIN」でも
「虹が架かる空には 雨が降っていたんだ
虹はいずれ消えるけど雨は草木を育てていたんだ」
という歌詞がありつつ最後には
「雨が止んだ庭に 花が咲いてたんだ」
(「Rain」より 作詞 Fukase,Saori)
と締めくくっているんですが、最後に「花が咲いてた」という描写を入れるのなら、わざわざ「雨は草木を育てていたんだ」という説明的な一説は不要に思います。彼らの歌詞はこういう「行間を読ませない」歌詞が多く、ここらへんの余韻をほとんど感じられません。
この説明過多な歌詞と同様、サウンドに関してもファンタジックというイメージが強いのですが、音の間を詰め込むようなサウンドが多く、そういう意味ではサウンド的な側面でも「説明過多」と言えるのかもしれません。簡単に言うと、歌詞にしろサウンドにしろ、隙間を詰め込もうとするのが彼らの楽曲の特徴で、今回のベスト盤で、その特徴を再認識しました。
ただメロディーラインについては、デビュー当初の作品からここ最近の曲に関しても、人なつっこくポップでキュートなメロディーラインを書いてきており、以前にも書いた通り、メロディーラインについては間違いなく天性の才を感じさせます。個人的にはこのメロディーラインで、変な装飾をつけずにシンプルなサウンドにシンプルな歌詞で聴いてみたい、といった印象を受けてしまうのですが、こればっかりは彼らの「趣味」の問題もあり難しいんだろうなぁ。メロディーセンスというせっかくの素材の良さを、過剰なサウンドと歌詞というこってりとした味付けで殺してしまっているような印象すら受けてしまい、そういう意味では非常に惜しい感もあります。
もっとも、この自意識過剰系の歌詞とこってりとしたファンタジーなサウンドだからこそ彼らは「売れている」訳で、そういう意味ではもっとシンプルにしてほしいというのは、単なる私の好みに過ぎないのかもしれませんが、ただ、やはりもうちょっと違う側面も見てみたい、そう感じてしまったベストアルバムでした。
評価:★★★★
SEKAI NO OWARI 過去の作品
EARTH
ENTERTAINMENT
Tree
Lip
Eye
Chameleon(End of the World)
ほかに聴いたアルバム
ONE WISH e.p./MAN WITH A MISSION
新曲4曲に、昨年7月に行われた配信ライブでの音源を収録した8曲を追加した、計12曲入りの、一応扱い的にはミニアルバム。新曲4曲は、アップテンポで疾走感のあるギターロックチューンとなっており、特に「All You Need」はシンセも取り入れた打ち込みのリズムでトランシーな曲に仕上がっています。好みの問題もあるけど、個人的にはちょっと軽すぎる印象があり、もっとガツンと来るようなサウンドを聴きたかったかも。
評価:★★★★
MAN WITH A MISSION 過去の作品
Trick or Treat e.p.
MASH UP THE WORLD
Beef Chicken Pork
Tales of Purefly
5 Years 5 Wolves 5 Souls
The World's on Fire
Out of Control(MAN WITH A MISSION x Zebrahead)
Dead End in Tokyo European Edition
Chasing the Horizon
MAN WITH A "B-SIDES & COVERS" MISSION
MAN WITH A "REMIX" MISSION
MAN WITH A "BEST" MISSION
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