今回は間違いなく「ライブアルバム」!
Title:workshop 3
Musician:OGRE YOU ASSHOLE
OGRE YOU ASSHOLEというバンドは、オリジナルアルバムでは極限まで絞り込んだサウンドでサイケデリックな世界を聴かせる傑作アルバムをリリースし続けているバンドですが、その一方で、ライブではオリジナルアルバムとは全く異なる、ギターノイズで埋め尽くした圧巻のサウンドを展開するなど、オリジナルとは全く別物として楽曲を構築してくるライブバンドとしても知られています。そんな彼らはいままで、「workshop」と題するライブアレンジのアルバムを2枚リリースしてきました。本作はその第3弾となるアルバムとなります。
ただ今回のアルバムはいままでの2枚の「workshop」とは大きく異なります。いままでの2作品は、ライブの中で培ってきたライブアレンジを、あらためてスタジオにて録音した作品であり、ライブアルバムというよりは「ライブアレンジアルバム」といっていいような作品になっています。一方、今回のアルバムは2017年から2019年に行われたライブ音源を収録した名実とものライブアルバム。オリジナル楽曲がライブにおいて変貌を遂げ、ファンに披露された瞬間を切り取ったアルバムに仕上がっています。
そして本作でもあきらかにアレンジの異なるライブならではのOGREの楽曲が収録されています。2012年のアルバム「100年後」の収録曲となる「素敵な予感」では、警告音のようだったオリジナルのシンセの音色がヘヴィーなギターノイズに置き換わり、無機質さが不気味だったオリジナルと比べ、バンドサウンドでよりドロドロとした不気味さが強調されたアレンジになっています。同じく「100年度」収録の「記憶に残らない」は、こちらも原曲と比べると、ギターノイズとバンドサウンドにより、よりドリーミーな雰囲気の曲へと変化しています。
また、今回のアルバムは現時点での最新アルバム「新しい人」リリース後のライブということもあり、同作からの楽曲も多く取り上げられています。OGRE流ディスコアルバムといった様相だった同作ですが、ただ、ライブアレンジではエレクトロ的な要素はなくなり、よりグルーヴィーでサイケデリックな要素が強調されたようなアレンジになっています。冒頭を飾る「新しい人」や「わかってないことがない」もそうなのですが、「ありがとう」でもオリジナル以上に重低音を強調し、ダークな雰囲気を醸し出すアレンジになっていました。
もっとも今回のアルバム、ライブ音源ということなのですが、録音状態は非常によく、彼らの演奏をしっかりと聴ける反面、観客の歓声などはほとんどなく(といっても彼らのライブは歓声を上げるようなライブではないのですが・・・)正直なところ、ライブの空気感がさほど伝わってこないのはちょっと残念なところ。ライブでの演奏ということで、いままでの「workshop」シリーズよりも緊張感はあるものの、もっとライブの雰囲気を感じたかったかも、ということも思ってしまいました。
しかし、おそらくそんな感想を承知した上でラストに配されている「動物的/人間的」では、冒頭にあいさつが収録されているほか、録音状態も正直あまりよくありませんが、その結果、ライブ会場の空気が伝わってくるような録音となっています。おそらく、録音状態の悪さも、ライブの雰囲気を出すためにわざとこのような録音状態の楽曲を収録したのではないでしょうか。最後の最後に、よりライブの空気感のわかる録音もしっかりと収録されていました。
そんな訳で彼ら初となる「ライブアルバム」でしたが、ライブバンドとしての彼らの実力を存分に感じることが出来る傑作に仕上がっていました。あらためてOGREというバンドのすごさを感じた作品。また、コロナも早く収まり、彼らのライブに心置きなく行ける日を待ちわびて・・・それまでは、このライブアルバムで、彼らの世界に浸っていたいと思います。
評価:★★★★★
OGRE YOU ASSHOLE 過去の作品
しらないあいずしらせる子
フォグランプ
浮かれている人
homely
100年後
confidential
ペーパークラフト
WORKSHOP
ハンドルを放つ前に
新しい人
workshop 2
ほかに聴いたアルバム
夜行秘密/Indigo la End
前作から約1年4か月ぶり、6枚目となるIndigo la Endのニューアルバム。バラエティーに富んで実験的なゲスの極み乙女。と比べると、こちらはとことん歌詞とメロディーにこだわった、哀愁感たっぷりのメロをしっかりと聴かせるアルバムになっています。脂ののりきっていた前々作「PULSATE」に比べて、前作「濡れゆく私小説」は若干、無難にまとめている感がありましたが、本作も、良くも悪くも非常に安定した良作が並んでいるといった印象のアルバムに。ただ、前作に比べると、バンドサウンドでよりダイナミックに聴かせる「たまらゆ」や、Indigo流ダンスチューンといえる「固まって喜んで」、ジャジーな「さざなみ様」のように、前作よりバラエティー富んだ作風に仕上がっていました。
評価:★★★★
Indigo la End 過去の作品
あの街レコード
幸せが溢れたら
藍色ミュージック
Crying End Roll
PULSATE
塗れゆく私小説
HOME TOWN~Cover Songs~/土岐麻子
土岐麻子によるカバーアルバム。「HOMEをテーマに、「HOMEで楽しむ」「温もりを感じる」 「変わらない場所」3つの軸でセレクト」したそうですが、アジカンの「ソラニン」、くるりの「Jubilee」、スピッツの「楓」など、中堅/ベテランのロック、ポップス系の曲がメインとなっていて、選曲については意外性はなく卒がない印象。それらの曲をジャズの要素を加えつつも、基本的にはポップにまとめあげています。暖かさを感じる彼女の歌声は、比較的いろいろな曲にマッチしており、意外性のあるようなカバーはなかったものの、名曲の数々を楽しめるカバーアルバムに仕上がっていました。
評価:★★★★
土岐麻子 過去のアルバム
TALKIN'
Summerin'
TOUCH
VOICE~WORKS BEST~
乱反射ガール
BEST! 2004-2011
CASSETTEFUL DAYS~Japanese Pops Covers~
HEARTBREAKIN'
STANDARDS in a sentimental mood ~土岐麻子ジャズを歌う~
Bittersweet
PINK
HIGHLIGHT-The Very Best of Toki Asako-
SAFARI
TOKI CHIC REMIX
PASSION BLUE
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