80歳目前でのアルバムデビュー!
Title:Found! One Soul Singer
Musician:Sonny Green
今回紹介するミュージシャンは「知る人ぞ知る」的な存在だったらしい、アメリカはルイジアナ出身の男性ソウルシンガー。来年80歳になるという超ベテランミュージシャンなのですが、なんと、これがデビューアルバムとなるそうです。ただもっとも、80歳間際で超遅咲きのデビューを果たしたシンガー、という訳ではなく、1969年にシングルデビュー。1973年にはシングル「Don't Write A Check WIht Your Mouth」がR&Bチャートで89位にランクインするスマッシュヒットも記録しているそうです。ただ、その後はコンピレーションアルバムなどへのゲスト参加はあったものの録音は途絶え、音楽フェスなどに参加するなど、歌い続けてはいたそうですが、アルバムをリリースする機会には恵まれなかったそうです。
そんな「知る人ぞ知る」的な存在だった彼ですが、なんと、ここに来てアルバムリリースを果たし、齢80歳間際になり、待望のアルバムデビューとなりました。個人的には、そんな彼を知ったのは雑誌「BLUES&SOUL RECORDS」誌で取り上げられていたのがきっかけなのですが、アルバムを聴いてみて、ソウルシンガーとしてのパワーにまずは驚かされます。アルバムはボビー・ブランドのカバー「I'm So Tired」からスタートするのですが、ドスの効いた力強いだみ声のボーカルをまずは聴かせます。声に伸びがあり、艶すら感じられるその歌声は、80歳間際だとは信じられないくらい。緩急つけたボーカルも感情たっぷりで、これだけの力を持ったソウルシンガーが、いままで埋もれてきたことにもビックリ。70年代から録音が途切れていた彼ですが、現役感が全く失っていないのは、その後も歌い続けてきたからでしょう。
アップテンポでパワフルなソウルボーカルを聴かせるような曲も素晴らしいのですが、それ以上に彼のシンガーとしての実力を感じさせるのがバラードナンバーで、「Are You Sure」は、震えるようなボーカルも聴かせる、まさに泣きのバラード。感情こもったピアノをバックに聴かせるボーカルが素晴らしく、やさしい歌声を聴かせてくれたかと思えば、一転、パワフルなボーカルでリスナーの耳を奪い取ります。60年代70年代の彼のシングル曲は聴いたことないのですが、おそらくボーカリストとしての衰えが全くないであろうことを感じさせます。
8曲目の「If You Want Me To Keep Loving You」も本作の聴きどころの1曲。もともとは1971年にリリースされたシングル「Jody's On The Run」のB面曲だったそうですが、次のシングル「Come And See Me」のB面にも収録され、彼の「代表曲」とも言える楽曲だそうで、今回のアルバムでもリメイクされ収録されているあたりに、彼のこの曲の対する思い入れの深さを感じます。確かに、ミディアムブルースのこの曲は、彼がそのボーカルをパワフルに歌い上げている、ボーカリストとしての持ち味をよく発揮されているブルースナンバーとなっており、思い入れの深さも納得。彼のボーカリストとしての実力を存分に感じる曲になっています。
アップテンポなソウルナンバーではパワフルに歌い上げるボーカルを聴かせ、ブルースナンバーでは、感情こもったボーカル、さらにソウルバラードでは、伸びやかで艶のあるボーカルでリスナーを魅了する・・・これだけのソウルシンガーがいままで埋もれていたのが不思議になるのと当時に、それだけアメリアのミュージックシーンの奥の深さを感じてしまうアルバムでした。ラストを飾る「Be Ever Wonderful」もタイトル通り、まだまだソウル/ブルースシンガーとして現役だ、ということを主張するようにファルセット気味のボーカルも入れて、伸びやかな歌声を聴かせるバラードナンバー。タイトル通り、まさにソウルシンガーを見つけた!!と主張したくなるような、驚くべき魅力的なボーカルを最後の最後まで聴かせてくれます。
衰えのない現役感あふれるボーカルでこれだけ魅力的な歌声を聴かせてくれるだけに、80歳とはいえ、まだまだこれからの活躍も期待したくなってしまう1枚。とはいえ、年齢が年齢なだけに「ご無理しないように・・・」とは言いたくなってしまうのですが、でも、次のアルバム、さらには可能であれば来日ライブまで期待したくなってしまうほど!まさに「見つけた!」と言いたくなるシンガーでした。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
Song of Sage: Post Panic!/Navi Blue
本作が2作目となるアメリカのラッパーによるアルバム。ピアノやストリングスを用いた、美しいトラックをループさせ、その上に語るようなスタイルのラップを載せるスタイルが印象的。非常に美しいサウンドが終始、耳を惹くアルバムになっており、聴いていて心地よさを感じます。淡々と語るような落ち着いたラップもサウンドに絶妙にマッチ。ついつい聴き惚れてしまう、そんな傑作アルバムでした。
評価:★★★★★
Heaux Tales/Jazmine Sullivan
フィラデルフィア出身の女性ソウルシンガーによる4枚目のオリジナルアルバム。全14曲入りのアルバムですが、うち約半数は様々な女性の語りによるトラック。伸びやかで美しい歌声で歌い上げる正統派のソウルに、ラップなどの要素も加わり、トラック的にも今どきへしっかりとアップデートされた作品に。ただ、アカペラ的な「Lost One」やアコギをバックにしんみり聴かせる「Girl Like Me」など、やはり彼女の歌声を中心に据えてしっかりと聴かせる楽曲が大きな魅力になっている作品でした。
評価:★★★★★
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