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2021年3月 6日 (土)

懐かしさは感じるが

Title:ミリオンデイズ〜あの日のわたしと、歌え。〜 mixed by DJ和
Musician:DJ和

2017年にリリースした、2000年代のヒット曲を集めてDJミックスとして編集したアルバム「ラブとポップ ~好きだった人を思い出す歌がある~ mixed by DJ和」が大ヒットを記録して一躍注目を集めたDJ和。こちらは主に90年代のヒット曲を集めてDJミックスとしてつないだアルバム。個人的には、ちょうど中高生の頃のヒットした曲がメインであり、ターゲットとなる世代にドンピシャな選曲。そんな選曲の懐かしさに惹かれて聴いてみました。

まあ、そんな訳で、懐かしさにつられて聴いてみた、というこのアルバムの戦略にすっぽりはまって聴いてみた訳ですが、ただ、このアルバムに関しては(というか以前リリースされた「ラブとポップ」なんかも同じなのですが)率直に感じるものがあります。それはこの内容のアルバムなら、自分にもつくれるんじゃない??という身もふたもない感想。はっきりいって、このアルバムにDJ和なるDJの才能や実力はほとんど感じられません。選曲された曲は、「90年代のヒット曲」と言われて多分10人中10人が選びそうな無難なセレクト。妙にビーイング系の選曲が多いのは「バックにビーイングが協力しているんじゃない?」と大人の事情を感じてしまいますし、同じく、ソニー系が妙に多いのも(以下略)。曲の並びにしても、アップテンポな曲はアップテンポな曲でつなげて、ミディアムテンポな曲はミディアムテンポで、と特に工夫は感じませんし、つなぎの部分についても、特にこれといって特徴もありません。はっきり言ってしまえば、DJ和なる人物を取り上げなくても、ソニーミュージックの社員による企画で同じようなCDを作れちゃうんじゃない?とは思ってしまいます。

ただ一方で同時に感じるのは「そうはいってもコロンブスの卵で、この発想力と企画力はやはり評価されるべきなのでは?」とも思います。もともとWikipediaでDJ和なるものの経歴を調べると、通常の洋楽中心のDJで活動していたのですが、その中にJ-POPの曲を混ぜるとフロアが盛り上がることに気づき、J-POPをかけはじめたのだとか。クラブシーンにはさほど詳しくありませんが、彼がDJとしてデビューした頃には、すでにJ-POPをクラブでかけるような人がいたようにも記憶しているだけに、このスタイルの先駆的存在かどうかは不明なのですが・・・ただ、DJというスタイルにJ-POPを取り入れるという方法論の面では先見の明があったということが言えるのかもしれません。

さて、そんなアルバムの選曲なのですが、前述のとおり、主に中学生から高校生、さらには大学生の頃に聴いた曲の連続に唯々懐かしいな、と感じる一方で、正直言って、30年近く前の曲にも関わらず、楽曲としてあまり変化がない、ここらへんの曲が「今」リリースされていても、なにも不思議でないあたり、薄々感じていたのですが、ポピュラーミュージックの停滞ようなものも感じてしまいます。

あと、これはちょうど私が中高生の頃にあたるからなのかもしれませんが、ヒット曲の内容から考えると、非常に音楽シーンが濃かったな、ということを感じます。このアルバムの中の選曲の中で一番古いのはおそらくプリンセスプリンセスの「Diamonds」、一方、比較的新しいと思うのはORANGE RANGEの「花」。「Diamonds」というと、かなり昔の曲と感じる反面、「花」は比較的最近の・・・と思ってしまうのですが、「Diamonds」が89年、「花」が2004年の曲なので、この間、わずか15年程度なんですよね。逆に「花」はもう、18年も前の楽曲になってしまう訳で・・・。15年の間に数多くのミリオンヒットが生まれたこの時期は、本当に日本の音楽シーンが盛況だったんだな、ということをあらためて感じてしまいます。

ただし、90年代のヒット曲ということですが、ミスチルもスピッツもチャゲアスもB'zもサザンも未選曲。ここらへんは、レコード会社の都合を感じてしまいます。おそらく許可が下りなかったんだろうなぁ。そういう意味でも「企画もの」の域を超えるアルバムではなく、DJ和としての実力はほとんど感じられなかったのですが、純粋に企画ものとして懐かしさを感じたいのならば、聴いてみて損はないかと思います。もっとも、DJミックスですので、途中でブツ切りになってつながっている内容で、フルバージョンは聴けませんので、その点だけご注意ください。

評価:★★★

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