King Gnuの評価も一変したアルバム
Title:THE MILLENNIUM PARADE
Musician:millennium parade
2019年から2020年にかけておそらく最もブレイクしたミュージシャンの一人といえばKing Gnuでしょう。「白日」が大ヒットを記録し、その後リリースされたアルバム「CEREMONY」も大ヒット。2019年には紅白歌合戦にも出場し、一躍脚光を浴びました。このKing Gnuの大ブレイク以前、特にポップスシーンでは、メロウなジャズやソウルの要素を楽曲に取り入れたバンドが目立ちました。ただ、そんなバンドの中で、King Gnuについてはその実力を若干図りかねる部分がありました。というのも、彼らのサウンドは確かにジャズやHIP HOP、ネオソウルなどの要素を取り込んだ作風ながらも、メロディーラインがあまりにベタで悪い意味でJ-POP的な強く、彼らが本物の「実力派」なのかブームにのって出てきただけの「ハイプ」なのか、いまひとつわかりかねる部分がありました。
さて、そんな中、リリースされた本作は、King Gnuの作詞作曲を手掛ける常田大希を中心とする音楽プロジェクト集団、millennium paredeのニューアルバム。実質的に、常田大希のソロアルバムがリリースされたに等しいとも言えるのですが、King Gnuとして大ブレイク中に、あえてソロ作をリリースしてくるというのは非常に異例なように感じます。しかし、個人的にはこのアルバムを聴いて、King Gnuに対するイメージがグッと変わりました。というのも、いままでの彼らに対する評価を変えざるを得ないような傑作アルバムだったからです。
基本的な方向性はKing Gnuと同様に、ジャズやネオソウル、HIP HOPの要素を取り入れたポップスというものになるのでしょうが、ここからKing Gnuの楽曲に感じたベタなJ-POP的要素が完全に消え、代わりに今風なビートミュージックの要素を加えて、非常にユニークかつアバンギャルドなサウンドを楽しむことが出来る作品に仕上がっています。典型的なのが「Trepanation」で、メロウなボーカルなバックで、タイトなサウンドを鳴らすエレクトロのリズムが鳴っており、アバンギャルドで非常にカッコいいナンバーに仕上がっており、耳を惹きます。
ほかにもピアノを軸とした美しいサウンドながらも、アグレッシブなエレクトロビートとのバランスが絶妙な「lost and found」、ヘヴィーなギターリフからスタートし、ロッキンなサウンドを展開させつつ、そこに祝祭色も感じる美しいストリングスをのせてくる「2992」、ゴシック調の怪しげなサウンドにテンポよいラップが耳を惹く「Philip」など、様々な要素を加えた挑戦的な楽曲が次々と展開し、耳を楽しませます。
全体的に比較的サウンドは多めで、にぎやかな楽曲構成になっているのですが、しっかりと緩急をつけており、決して過剰なサウンドになっていないのも特徴的。ラストを締めくくる「FAMILIA」も、歌い上げるメランコリックなメロディーラインに、エレピやバンドサウンド、打ち込みなども入れた、神秘的な雰囲気を入れつつ、ダイナミックなサウンドに仕上がているのですが、サウンド過多といったイメージはなく、かつ、しっかりとサウンドのスケールを感じさせつつアルバムを締めくくっています。
間違いなく傑作アルバムと言える本作ですし、また、常田大希のコアな部分の実力を感じることにより、King Gnuというバンドの実力も図ることが出来たアルバムで、個人的には本作でKing Gnuというバンドの評価は大きく変わりました。King GnuはあえてJ-POP的な要素を取り入れたバンド、ということらしいのですが、確かに、このmillennium paredeのアルバムでその話が事実だったということをあらためて感じさせました。そして、だからこそKing Gnuが大ブレイクした今、あえてKing Gnuの新作をリリースするのではなく、millennium paredeのアルバムをリリースし、彼のコアな部分を外に知らせたかった、今回のソロ作にはそういう意図があったのではないでしょうか。そんな印象を強く受けた1枚でした。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
あめりか/Hosono Haruomi Live in US 2019/細野晴臣
タイトル通り、2019年に行われたアメリカでの単独ライブの模様を収録したライブ盤。ブルースやカントリーなどルーツミュージック志向にアレンジした曲が並び、非常に円熟味あふれるボーカルと演奏でしっかりと聴かせる作品に。ルーツ志向の作風となっているのは、やはりアメリカへのリスペクトというところがあるのでしょうか。ただ、海外公演でありながらも、そうとは感じさせないアットホームな暖かさもあふれ、いい意味で肩の力が抜けたようなライブ演奏に。細野晴臣の包容力も感じされる傑作アルバムでした。
評価:★★★★★
細野晴臣 過去の作品
細野晴臣アーカイヴスvol.1
HoSoNoVa
Heavenly Music
Vu Ja De
HOCHONO HOUSE
HOSONO HARUOMI Compiled by HOSHINO GEN
HOSONO HARUOMI Compiled by OYAMADA KEIGO
Live Loud/THE YELLOW MONKEY
こちらもライブアルバム。20周年を記念して行われたライブツアー。2019年のナゴヤドーム、2020年2月の京セラドームのライブ実施後、ファイナルとなる予定だった4月の東京ドーム公演がコロナ禍で中止。その後、11月に東京ドームでのライブが実施されたのですが、そのライブの模様を収録したライブアルバム。コロナ禍前後でのライブの模様が1枚のCD収録されているという意味ではある種「貴重」とも言えるのですが、もちろんそこに大きな差はなく、THE YELLOW MONKEYとしてのありのままのライブが収録されています。ライブ音源は原曲に比べると、よりバンドとしてのグルーヴ感がまし、迫力を感じさせる内容で、THE YELLOW MONKEYのライブバンドとしての実力を感じさせます。それだけに早くライブが何の懸念もなく実施出来る日が1日も早く訪れることを願うのですが。
評価:★★★★★
THE YELLOW MONKEY 過去の作品
COMPLETE SICKS
イエモン-FAN'S BEST SELECTION-
砂の塔
THE YELLOW MONKEY IS HERE.NEW BEST
9999
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