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2021年3月 7日 (日)

アレンジャー4名で新たな挑戦

Title:蓮の花がひらく時
Musician:柴田淳

途中、カバーアルバム「おはこ」を挟んだものの、オリジナルアルバムとしては約2年2ヶ月ぶりとなるしばじゅんのオリジナルアルバム。今回のアルバムの大きな特徴としては、アレンジャーが4人に増やしたという点。いままでの彼女の楽曲にも参加してきた松浦晃久、森俊之に加えて、冨田恵一、山本隆二という2人のアレンジャーを追加し、アレンジャー全4名体制という中で制作されたアルバムとなっています。

今回は、この「サウンド」面にも相当力が入っているようで、初回盤は収録曲のインスト版が収録されたアルバムがDisc2としてついてくるあたり、その力の入れようがわかります。また、実際に全体的にはよりバラエティーに富んだサウンドに仕上がっている点が大きな特徴。4人のアレンジャーの個性がよく出ている作品になっており、序盤の「はじまりはじまり」「ループ」を手掛けた松浦晃久は、ロック系のダイナミックな音作りが特徴的。しばじゅんのボーカルに比べて前に出てくるアレンジになっているため、賛否はわかれそうなアレンジなのですが、アルバムの中ではひとつのアクセントとなっていました。

富田恵一は全編、プログラミングにより手掛けたアレンジが特徴的。ラテン調に挑戦した「ハイウェイ」などバラエティーに富んでおり、全編彼による打ち込みであるため、きめ細やかさを感じさせるアレンジが魅力的。そして山本隆二と森俊之はストリングスやピアノなどアコースティックな楽器を用いて、比較的シンプルなアレンジでしばじゅんの声を前に出して生かそうとするアレンジになっていました。

結果としてはバラエティー富んだ作風になっている一方、統一感に欠ける部分もあり、そういう意味では良い側面と悪い側面が同時に出たかな、という印象もあります。ただ、その一方で今回のアルバムは、バラエティーあるサウンドを前に押し出すために、あえて統一感をはからなかったのではないか、という印象も受けました。あらたな挑戦ということもあるのでしょうが、アレンジャーそれぞれにしばじゅんのボーカルをどのように味付けしていくのか、楽曲毎に比較の出来る作品だったと思います。

ただ、その上で、それだけ挑戦心のある試みでありながら、ちょっと無難にまとまっていたかな、という印象も受けました。松浦晃久はかなり攻めているのですが、結果、アレンジの主張が強すぎ、逆に山本隆二や森俊之はしばじゅんの声を生かそうとしているのですが、少々無難な感じに。富田恵一も、若干彼らしい個性は薄いような感じがします。ラテンやビックバンドなど、それなりに挑戦した曲もあったのですが、アレンジャーを前に押し出すのなら、しばじゅんのボーカルとの意外な相性を感じさせるユニークなアレンジがあってもよかったのではないかな、とも感じてしまいました。

一方、歌詞については、今回も悲しい失恋の歌がメイン。ここ最近、この胸をしめつけさせるような失恋の歌に純化したようなアルバムが続いていました。ただ、今回のアルバム、「はじまりはじまり」「ループ」「ハイウェイ」と、かなりヘヴィーな失恋の曲が並びつつ、後半になるに従い、徐々に明るさや希望も感じさせるような曲も増えてきています。「シャンデリアの下で」でも、未知の世界に踏み出そうとする人に対してエールを送るような曲になっていますし、ラストの「エンディング」も内容的には失恋のナンバーながらも、

「いつかこの人生を歩んだ意味を
知れたらいいと思う
君と出逢えた僕 という奇跡を」
(「エンディング」より 作詞 柴田淳)

とかなり前向きな姿勢で、次へ進む姿が見て取れます。

今回のアルバム、本人曰く「自信作」と語っているように、いろいろなところ、特にアレンジに力の入ったアルバムになっているように感じました。ただ、個人的にはこれといったインパクトのあるフレーズもありませんし、サウンドにしても、もうちょっと挑戦した方がおもしろかったのかも、とも思うアルバムになっていました。全体的にはいいアルバムだと思いますし、歌詞の面でもボーカルでもしばじゅんの魅力を強く感じる作品なのは間違いないと思います。今回、様々なアレンジャーと組んだ結果が、次のアルバムにどう生かされてくるのか・・・その点も注目です。

評価:★★★★

柴田淳 過去の作品
親愛なる君へ
ゴーストライター
僕たちの未来
COVER 70's
あなたと見た夢 君のいない朝
Billborda Live 2013
The Early Days Selection
バビルサの牙
All Time Request BEST~しばづくし~
私は幸せ
プライニクル
おはこ

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