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2021年3月20日 (土)

レジェンドの血を継ぐものたち

Title:Legacy+
Musician:Femi Kuti&Made Kuti

主に70年代から80年代にかけて活躍した、アフロビートの創始者として知られるミュージシャン、Fela Kuti。今でもその世界的にも彼が生み出したアフロビートは様々な影響を与えています。さらにその息子であるFemi KutiとSeun kutiは彼の遺志をつぐべくアフロビートのミュージシャンとしての活躍し、日本でも大きな話題となっています。

今回紹介するアルバムは、Femi Kutiと、さらにその息子であるMade Kutiによるコラボレーションアルバム。Femi Kutiのアルバム「Stop The Hate」と、Made Kutiのデビューアルバム「For(e)ward」が2枚組のセットとなったアルバムで、デビュー作でいきなり親子の共演となっており大きな話題となっています。

そんな親子の共演となったアルバム。どちらもFela Kutiの生み出したアフロビートを引き継いでいるのですが、2人でその方向性が微妙に異なる点が非常にユニークに感じます。まずFemi Kutiは、いわばFela Kutiの生み出したアフロビートを現在にアップデートさせつつ、基本的にはそのまま継承しているスタイル。パーカッションやホーンセッションを入れた賑やかなサウンドでハイテンポなビートをファンキーに展開する、ある意味王道的なスタイルともいえるアフロビートを忠実に引き継いでいます。メッセージにしても「Stop The Hate」「No Bigmanism Spoil Government」「You Can't Fight Corruption With Corruption」など、タイトルそのまま社会派なメッセージへとつながっている、こちらもFela Kutiの正当な継承者ともいえる内容の楽曲が目立ちます。

一方、ユニークさを感じさせるのがMade Kutiの楽曲。今回、彼はボーカル、リズム・セクション、サックスなど、ほぼすべてのパートを彼自身が演奏するというスタイル。ある意味、宅録とも言える作品になっており、バンドとしての一体感がひとつの魅力でもあるアフロビートのイメージからも大きく異なるものとなっています。

楽曲もメランコリックなメロを歌い上げる歌が目立つような楽曲になっており、アフロビートのサウンドが鳴っているものの、サウンドにしてもメロにしても、祖父のFelaや父親のFemiの泥臭さが抜けて、どこか都会的な雰囲気も感じさせます。育ちのよさを感じるというのでしょうか、どこか感性的な部分が先に走るFelaやFemiのアフロビートに比べて、理性的というか、あか抜けた部分をMadeの作品からは感じます。

曲のタイトルにしてもストレートな社会派だったFemiに比べると「Free Your Mind」「Higher You'll Find」など、内省的な要素を感じさせるタイトルの曲が目立つのも特徴的。ここらへんも状況が変わってきた現代っ子ならでは?といった感じなのでしょうか。もっともアフロビートとしてただ先代のサウンドをそのまま引き継ぐだけではなく、デビュー作からしっかりと自分なりの色を付けようとするMadeのスタイルには頼もしさも感じられ、まだまだ粗削りな部分もあるのですが、今後に注目したくなるデビュー作になっていたと思います。

ただ、ちょっと気になるのですが、欧米でもそうですし、日本でも親子でミュージシャンとして引き継いで活動を続ける人ってほとんどいないように感じます。特に親子3代というと皆無ではないでしょうか。あえて日本で親子3代作曲家として活動しているというと、服部良一、克久、隆之の3代くらいでしょうか?親子でミュージシャンとして活動を引き継ぎ、活躍するというのは稀有なケース。それだけFelaの血の濃さが残っているのか、それともお国柄、父親の職業を子どもが継ぐべきという風習が残っているのでしょうか??

評価:★★★★★

FEMI KUTI 過去の作品
NO PLACE FOR MY DREAM
ONE PEOPLE ONE WORLD


ほかに聴いたアルバム

The Highlights/The Weeknd

日本独自企画という形でのリリースはあったものの、全世界リリースとしては初となるベスト盤。ある意味、安心して聴けるポップチューンが並んでおり、メランコリックな方向性には若干一本調子的な部分は感じるものの、それでもアルバムをまったくダレることなく聴けてしまうあたりにポップソングとしてのクオリティーの高さ、メロディーセンスの良さを感じます。先日、自身のアルバムがグラミー賞にノミネートされなかったことから、グラミー賞を永久ボイコットすると宣言しニュースとなった彼ですが、グラミー賞なんて関係ないグッドミュージックをこれからも作り続けてくれそうです。

評価:★★★★★

The Weeknd 過去の作品
Kiss Land
Beauty Behind The Madness
STARBOY
My Dear Melancholy,
The Weeknd In Japan
After Hours

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