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2021年3月 5日 (金)

究極のオールタイムベスト

Title:ここにいるよ
Musician:中島みゆき

今回紹介するのは、中島みゆきの「セレクトアルバム」という位置づけでリリースされたニューアルバム。公式サイトに記載された「売り文句」によると、コロナ禍の中で、彼女の「糸」や「時代」「ファイト!」などに勇気を得て、それらの曲へのリクエストやCDアルバムに注文が集中したことから企画されたアルバムだそうで、全2枚組の内容で、1枚目が「エール盤」、2枚目が「寄り添い盤」と名付けられ、それぞれのコンセプトに沿った彼女の楽曲が収録されています。

そんなこともあって、アルバムのスタンスとしてはコンセプチュアルなセレクションアルバム、という立ち位置の作品ではあるのですが、選曲的には彼女の「オールタイムベスト」と言ってもいいような、代表曲を惜しみなく並べたような作品になっています。中島みゆきのベスト盤はいままで何度か発売されていますが、彼女の代表曲、特に大ヒット曲が網羅的に収録されるベスト盤は意外と発売されていません。直近のベストアルバムは「中島みゆき・21世紀ベストセレクション『前途』」ですが、こちらはタイトル通り、2000年以降にリリースされた曲だけ収録されているので、大ヒットした「地上の星」は収録されていますが、90年代以前のヒット曲は未収録です。90年代の大ヒット曲が比較的網羅されているのはミリオンセールスを記録した2002年の「Singles2000」ですが、こちらは「空と君のあいだに」から「地上の星」までのシングルが網羅されているものの、「時代」のようなそれ以前の曲は未収録となっています。

しかし、今回のベストアルバムは、Disc1の1曲目からいきなり「空と君のあいだに」からスタート。さらに「旅人のうた」と続き、その後も「糸」「ファイト!」「時代」そして「地上の星」と、大ヒット曲が出し惜しみなく続きます。Disc2もいきなりデビュー作「アザミ嬢のララバイ」からスタートし、「悪女」「たかが愛」のような代表曲、「タクシードライバー」のようなアルバム収録曲ながらも人気の高いナンバーもしっかりと網羅。初期のナンバーから最近のナンバーまでしっかりと網羅しています。

彼女のヒット曲の中で収録されていないのは、あとは「わかれうた」「浅い眠り」あたりでしょうか。ここらへんは、さすがにテーマに沿ってないと判断されたのか未収録になっているのはちょっと残念。ただ、その点を差し引いても、40年以上のキャリアを持つ彼女の、数多くのヒット曲、代表曲のうち、特に有名な曲をわずかCD2枚という短さで網羅的に聴けるという意味では、「究極のオールタイムベスト」といっても過言ではないセレクトだったと思います。

楽曲の良さについてはいまさら言うまでもありません。特に歌詞については、「エール盤」「寄り添い盤」という名前の通り、人々に対する「応援歌」的な位置づけになっているか・・・と思いきや、厳しい現実にしっかりと立脚し、甘くない現状を見せつける歌詞の世界は、まさに見事のひとこと。単純にうわべだけの応援歌になっていないからこそ、逆に、人々の心に深く刻み込まれるのでしょう。典型的なのが「ファイト!」で、ともすればサビの部分だけで単純な応援歌と誤解されがちなのですが、歌詞の中に登場してくるのは、現実社会の中で立ち行かなくなった一人の女性。「ファイト!」はそんな女性が自分を鼓舞するために歌うフレーズであり、その言葉はずっしりと鉛のように重くのしかかってきます。

あと、今回のアルバムであらためて感じたのが、彼女の曲のメロディーが持つ強度。一度聴いたら忘れられないフレーズが連発されているだけではなく、思わず一緒に歌いだしてしまうような、いい意味でわかりやすいメロディーラインが大きな特徴。その歌の力強さをあわせて、このアルバムを聴いてから、いまでも中島みゆきの曲が頭の中でかけめぐっています(笑)。あらためて彼女の曲の持つすごさを感じました。

そんな訳で、わずか2枚組の中島みゆきの入門的には最適なベストアルバムですし、また、彼女の代表曲をあらためて聴いてみたい方にもおすすめできるアルバム。ただ、そういえば彼女って、オールタイムベストってリリースしていないよなぁ。そろそろ、4枚組くらいのオールタイムベストを聴いてみたい気もするのですが・・・。

評価:★★★★★

中島みゆき 過去の作品
DRAMA!
真夜中の動物園
荒野より
常夜灯
十二単~Singles4~
問題集
組曲(Suite)

中島みゆき・21世紀ベストセレクション『前途』
中島みゆきConcert「一会」(いちえ)2015~2016-LIVE SELECTION-

相聞
中島みゆき ライブ リクエスト -歌旅・縁会・一会-
CONTRALTO


ほかに聴いたアルバム

モルモットラボ/キュウソネコカミ

バンド結成10周年と「ねずみ年」が重なった2020年。対となる2枚のミニアルバムをリリースし、昨年、1作目として「ハリネズミズム」をリリースしましたが、本作はその2作目となるミニアルバム。タイトル通り、ちょうど3分の内容となっている「3minutes」からスタートし、序盤は彼ららしい疾走感あるパンキッシュなナンバーからスタート。ヘヴィーなギターリフを聴かせる「囚」や、逆にポップ色の強い「薄皮」「シュレディンガー」に、フォーキーな「ぬいペニ」のような楽曲まで、いままでにないバラエティーの豊富さが楽しめます。終盤も「シャチクズ」「ポカリ伝説」みたいなユニークな歌詞の曲も。毎作、キュウソネコカミらしさをしっかりと感じさせつつ、傑作というには少々パンクロック的な勢いに頼りすぎな感があった彼らですが、本作は、勢いのあり、なおかつバラエティー富んだ作風でバンドとしての底力を感じさせる傑作になっていました。次はフルアルバムでしょうか。楽しみです。

評価:★★★★★

キュウソネコカミ 過去の作品
チェンジ ザ ワールド
ハッピーポンコツランド
人生はまだまだ続く
キュウソネコカミ -THE LIVE-DMCC REAL ONEMAN TOUR 2016/2017 ボロボロ バキバキ クルットゥー
にゅ~うぇいぶ
ギリ平成
ハリネズミズム

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