バンドの変遷がよくわかるベストアルバム
Title:20th Anniversary BEST 花鳥風月
Musician:MONKEY MAJIK
今年で活動20周年を迎えたロックバンドMONKEY MAJIKのベストアルバム。日本在住のカナダ人2名+日本人2名という国籍を超えたバンドということでも話題を呼んだ彼ら。2006年にはシングル「Around The World」がヒットを記録し、一躍人気バンドの仲間入りを果たしました。その後も「空はまるで」が有線で話題になったりと、根強い人気を確保しているものの、楽曲単位でのヒットは「Around The World」を超えるヒットには恵まれず、現在に至っています。
今回のベストアルバムでは、活動時期を4年毎に区切り「花」「鳥」「風」「月」という4枚のCDで構成されたアルバムとなっています。いわば彼らの楽曲を活動順に並べた作品になっているのですが、彼らの作品を時系列順で聴くと、思った以上にMONKEY MAJIKというバンドが様々なスタイルに変遷していったんだなぁ、ということがあらためてわかる構成に仕上がっていました。
まず1枚目の「花」は、2001年から2005年の楽曲を収めた作品。いわば「Around The World」がヒットする前、インディーズ時代の楽曲が収録されているのですが、この時期の作品は洋楽テイストの強いオルタナ系のギターロックバンドの色合いが強かったんだな、ということをはじめて知りました。特に冒頭の3曲「tired」「wait」「フミダスチカラ」はノイズギターを前に押し出し、バンドサウンドをより聴かせる構成となっており、彼らのスタートは、意外とロックバンド然とした活動からはじまっていたんだな、ということに驚かされました。
ただ、メジャーデビュー以降、そのスタイルは大きく変わります。メジャーデビュー作「fly」もそうなのですが、シンプルなバンドサウンドというよりも、よりポップな部分を前に押し出したようなスタイルに変化し、良くも悪くも「J-POP」なバンドとなっていきました。フロントマンの2人が在日カナダ人という特色もあってか、英語を使ったり、洋楽的な節回りを取り入れたりもしているのですが、あくまでもJ-POPというフォーマットの中での「彩り」的な要素にすぎず、むしろこの時期の作品では吉田兄弟とコラボした「Change」や和風な作風の「あかり」といったような、「西洋人が和風な作品に挑戦しようとしている」という、日本人から見た「ジャポニズム」的なつくりを感じさせます。
この方向性はDisc3「風」になるとより顕著となり、「木を植えた男」や「Headlight」みたいな、いかにもJ-POP的な、ストリングスを入れてスケール感をとりあえず出しておきました、的な作品が目立つようになります。正直、この時期の作品は、楽曲的に大味な感じがあり、外国人的な発音のボーカルスタイルにも関わらず、サウンドは悪い意味でのJ-POP的とチグハグ。それなりにインパクトのあるメロディーを書けるバンドなので、決して「悪い」曲ではないけど、あまり面白みがない・・・という印象を抱いてしまいます。
ただ、これがDisc4「月」の作品になるとグッと楽曲が良くなってくるのが不思議なところ。実際、2016年のアルバム「southview」以降、ここに来てバンドの最盛期か?と思うほどの脂ののった傑作アルバムを連発するようになった彼らですが、確かにこのようなベスト盤で過去の作品を並べて聴いても、Disc4の作品から、楽曲の質が明らかに変わります。この時期の作品から、洋楽的な要素をグッと前に押し出したような作品に変化し、変に「凝った」アレンジによってスケール感を無理やり出そうとするような楽曲がなくなります。無理に「売り」を狙うような作品がなくなったからでしょうか。これがMONKEY MAJIKらしさなんだろうな、ということを感じさせる楽曲が並びます。
以前からここ最近のアルバムを聴いて、バンドとしての勢いが増してきたなぁ、ということを感じていたのですが、このベスト盤を聴いて、その印象が事実だったんだということをあらためて裏付けられました。また、楽曲的にさほど大きな変化のないポップスバンドというイメージのあった彼らですが、あらためて聴くと、様々な音楽的な変遷を経て今に至っているバンドということを認識させられるベスト盤になっていました。Disc1とDisc4は、★★★★★といった感じでしょうか。特にここ最近、バンドとしてのスタイルを今となって確立してきただけに、これからのさらなる活躍に期待したいところ。ここ最近、ヒット作がないのですが、これだけの作品をここ最近リリースし続けているだけに、久々のヒットも期待できるかも?これからの活躍が楽しみです。
評価:★★★★
MONKEY MAJIK 過去の作品
TIME
MONKEY MAJIK BEST~10years&Forever~
westview
SOMEWHERE OUT THERE
DNA
Colour By Number
southview
enigma
COLLABORATED
northview
ほかに聴いたアルバム
theory/おいしくるメロンパン
おいしくるメロンパン5枚目となるミニアルバム。前作あたりから、よりバンドとしてサウンドを聴かせる方向へのシフトを感じされたのですが、今回の作品ではその方向性がより明確に。いままでの彼らに対する印象以上にヘヴィネスなサウンドを聴かせてくれ、それがひとつのインパクトとなっていました。メロディーラインにはもうちょっとフックが欲しい印象は変わらないのですが、そのインパクトの弱さをバンドサウンドで補ってきた印象も。そしてその方向性は案外と良い方向にも向かっているように感じます。そろそろフルアルバムでバンドとしての全貌を聴きたいところですが。
評価:★★★★
おいしくるメロンパン 過去の作品
indoor
hameln
flask
36.2℃/フラワーカンパニーズ
フラカンのニューアルバム。当初、アルバム制作は予定されていなかったものの、コロナ禍によりライブツアーが中止。そんな中で急遽作成されたアルバムだそうで、いわばコロナ禍の副産物というべきアルバムとなっています。ただ、出来としては良くも悪くも無難といった印象のアルバム。フラカンらしさは感じるのですが、これといったインパクトのある作品はなく・・・。悪いアルバムではないのですが、いまひとつ印象に残らないアルバムでした。
評価:★★★
フラワーカンパニーズ 過去の作品
フラカン入門
ハッピーエンド
新・フラカン入門
Stayin' Alive
夢のおかわり
ROLL ON 48
50×4
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