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2021年3月

2021年3月31日 (水)

初CDシングルが上位にランクイン

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

まず1位はジャニーズ系が獲得。

今週1位を獲得したのはSexy Zone「LET'S MUSIC」。日テレ系ドラマ「でっけぇ風呂場で待ってます」主題歌。CD販売数、PCによるCD読取数及びTwitterつぶやき数で1位、ラジオオンエア数17位を獲得し、総合順位で1位獲得となっています。オリコン週間シングルランキングでも初動売上17万2千枚で1位初登場。前作「NOT FOUND」の24万4千枚(1位)からダウンしています。

そして2位はYOASOBI「怪物」が先週の7位からランクアップ。初のベスト3入りとなりました。これは先日、CDがリリースされた影響で、CD販売数で初登場2位、PCによるCD読取数も2位にランクインし、ランクアップの主要因となっています。ただ、CDリリースに合わせて、ダウンロード数も9位から3位、ストリーミング数が7位から5位、You Tube再生回数が5位から3位とそれぞれランクアップ。CDリリースによる宣伝効果で配信系のチャートも引っ張られる形になりました。オリコンでも初動売上2万枚で2位初登場。ちなみに本作、彼らにとっては初のCDリリース。フジテレビ系アニメ「BEASTARS」主題歌。アニメ主題歌ということでより広い層への波及や、逆にアニメのファン層がファングッズとして買ってくれることを狙ってのCDリリースということでしょうか。これで通算10週目のベスト10ヒットとなりました。

ちなみにYOASOBIは「夜に駆ける」が先週の5位から2ランクダウンの7位。また「群青」は9位から11位にダウンし、「夜に駆ける」は49週連続のベスト10ヒットとなりました、「怪物」のCDリリースによる波及効果は限定的だったようです。

3位はAdo「うっせぇわ」が先週から同順位をキープ。一方、同曲とデッドヒートを繰り広げている優里「ドライフラワー」は2位から4位にダウン。4週ぶりに両者の順位が入れ替わる結果となりました。「ドライフラワー」は今週もストリーミング数1位を獲得したほか、ダウンロード数6位、You Tube再生回数7位は先週から変わらず、「うっせぇわ」もストリーミング数が5位から6位、ダウンロード数も3位から4位にダウンしている一方、You Tube再生回数は1位にアップ。その影響もあり、順位が入れ替わる結果となりました。ちなみに「うっせぇわ」はこれで11週連続、「ドライフラワー」は19週連続のベスト10ヒット。両者のヒットはまだ続きそうです。

続いて4位以下ですが、今週も1位以外に初登場はゼロ。ただ1曲、ベスト10圏外からの返り咲きがありました。それが先週の11位から9位にランクアップしたEve「廻廻奇譚」。ストリーミング数が11位から5位、You Tube再生回数も11位から4位と大幅にアップ。ストリーミング数が累計1億回を突破したことを記念して、3月26日にライブMVが公式You Tubeチャンネルで公開されたことが大きな理由でしょうか。通算9週目のベスト10ヒットとなりました。

一方、ロングヒット曲は、まずBTS「Dynamite」が先週の4位から6位にダウン。You Tube再生回数は1位から2位にダウン。一方、ストリーミング数が3位から2位にアップしています。これで32週連続のベスト10ヒットに。

そしてLiSA「炎」は先週の8位から10位にダウン。土俵際の粘りを見せている感じで、これでベスト10ヒットを23週連続に伸ばしています。そろそろ来週あたりは厳しいか?

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2021年3月30日 (火)

どこか「ヤバさ」を感じさせるサウンド

Title:MOOD
Musician:本日休演

今回紹介するのは、某所で紹介されて気になった京都在住のロックバンド、本日休演のニューアルバム。音源はおそか、名前もほとんどはじめて聴いたバンドで、ほとんど前情報なしでアルバムを聴いてみました。この本日休演というバンドは、現在、岩出拓十郎(g,vo)、在泉鮭(b,cho)、樋口拓美(ds,cho)の3人からなるバンド。もともとは5人組バンドとして2014年にデビューしたそうですが、その後、メンバーの一人、埜口敏博が急逝。さらにはギターボーカルだった佐藤拓朗が脱退し、現在に至っているようです。

それでこのアルバムではじめて彼らの音源に触れたのですが、これが非常におもしろい音を奏でるバンドで、一気に気になるバンドとなってしまいました。彼らの楽曲を一言で言うと・・・若干語弊があって、イメージ論的な言い方になってしまうかもしれませんが、「アングラ系フォークロックバンド」といった言い方が出来るでしょうか?フォーキーな雰囲気のあるメロディーラインに、ヘヴィーなバンドサウンドや、サイケなサウンドが多く入っており、一種独特な世界観を醸し出すバンドとなっています。

そもそもエンジニアとして、坂本慎太郎やOGRE YOU ASSHOLEを手掛ける中村宗一郎が参加している、という点で、彼らが目指す方向性がわかるのではないでしょうか。ゆらゆら帝国、坂本慎太郎、OGRE YOU ASSHOLEあたりが好きなら、間違いなく気に入りそうなタイプのバンドだと思います。比較的、サウンドの輪郭がクリアになっており、さらにサウンドの間の空白を明確にするようなサウンドメイキングは、彼らに共通する点も感じます。

ただフォーキーでよりメランコリックさを感じさせるメロディーやサウンド、もっとガツンとするようなバンドサウンドを聴かせるスタイルは、もちろん坂本慎太郎やOGREとは異なる、彼らだけの個性を感じさせます。1曲目「ウソの旅」もフォーキーでメロディアスな前半から終盤にはファズギターでノイズを聴かせるギターがガツンと加わりますし、そのまま2曲目「アレルギー」もギターノイズが要所要所でガツンと入ってくるヘヴィネスさを持った楽曲になっています。

一方では「何もない日」では横ノリでメロウな雰囲気の曲になっていたり、「線路」ではドリーミーなサイケポップのような曲調になっていたり、「全然、静かなまま」ではオールドスタイルなロックンロールのような曲になっていたり、サイケフォーク的な曲調を軸としつつ、全体的にはサウンドのバラエティーは豊富。「砂男のテーマ-Midnight Desert Surfin'-」もノイジーなギターサウンドを入れつつ、ちょっとレトロなサーフロックがユニークですし、「ロンリネス」もヘヴィーなギターサウンドを入れつつ、サックスやドラムスにジャズの要素を入れてくるのがユニークに感じます。

また、メロディーラインにもポップさを兼ね備えており、いい意味での聴きやすさもあります。ダウナーな雰囲気ながらも素朴なラブソングに仕上げている「Hey Baby Love」なんかは曽我部恵一あたりにつながりそうなポピュラリティーを持っていますし、終盤の「天使の沈黙」もちょっとレトロでフォーキーながらもテンポよいポップなメロが展開されています。ラストの「夏の日」も郷愁感のあるメロディーが心地よい楽曲に仕上がっています。

そして今回、同時にリリースされたのがライブ盤。

Title:LIVE 2015-2019
Musician:本日休演

ベストライブ盤のような内容になっているこのベスト盤は、3人組となった彼らが過去の活動を総括するようなアルバムと言えるのかもしれません。ただ、ライブ音源なだけに、やはりオリジナル音源よりも、よりバンドサウンド色が強いアレンジとなっています。「MOOD」に収録されている「アレルギー」は、やはりよりバンドサウンドを前に押し出したヘヴィーなサウンドに。冒頭を飾る「アラブのクエスチョン」もギターノイズを前面に出したダイナミックなバンドサウンドが魅力的な楽曲になっています。

ただ、サウンド的なバリエーションの多さと、メロディーラインの魅力は本作でも強く感じます。「MOOD」に収録されている「何もない日」ではメロウなメロを聴かせつつ、「けむにまこう」は裏打ちのリズムで軽快に聴かせるナンバー。「全てにさよなら」は、歪んだギターサウンドと力強いドラムで、よりサイケ色の強い楽曲に。「すきま風の踊り子」はテンポよい、本日休演流のダンスナンバーとも言える曲になっていますし、ラストの「ごめんよのうた」は郷愁感あるメロが魅力的なナンバーに仕上がっています。

妙に耳に残るメロディーラインとバラエティーあるサウンド、そしてどこか「アングラ」風な部分にある種の「ヤバさ」を感じられ、「MOOD」、ライブ盤、どちらも非常に楽しむことが出来た傑作アルバム。特に「MOOD」は年間ベスト候補の傑作アルバムだったと思います。こんな素晴らしいバンドがいたとは、今回はじめて知りました。本日休演、今後の活動からも目が離せなさそうです。

評価:どちらも★★★★★


ほかに聴いたアルバム

ANGLE/80kidz

途中、EP盤やコンピレーションアルバムのリリースはあったものの、オリジナルとしては約5年ぶり、久々となるエレクトロユニット80kidzのニューアルバム。軽快でリズミカル、ポップなメロディーラインの流れるエレクトロチューンが並んでおり、外連味のないエレクトロポップが楽しめる作品に。目新しさよりもリスナーを徹底的に楽しませるというスタンスは以前から変わっていません。ただ、それにしても、ちょっと陳腐さすら覚え、もうちょっと新しい音が聴きたかったような印象も・・・。

評価:★★★★

80kidz 過去の作品
THIS IS MY SHIT
THIS IS MY WORKS
WEEKEND WARRIOR
TURBO TOWN
80:XX-01020304
FACE
Gone EP
5
80:06
80:XX-05060708

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2021年3月29日 (月)

今回は間違いなく「ライブアルバム」!

Title:workshop 3
Musician:OGRE YOU ASSHOLE

OGRE YOU ASSHOLEというバンドは、オリジナルアルバムでは極限まで絞り込んだサウンドでサイケデリックな世界を聴かせる傑作アルバムをリリースし続けているバンドですが、その一方で、ライブではオリジナルアルバムとは全く異なる、ギターノイズで埋め尽くした圧巻のサウンドを展開するなど、オリジナルとは全く別物として楽曲を構築してくるライブバンドとしても知られています。そんな彼らはいままで、「workshop」と題するライブアレンジのアルバムを2枚リリースしてきました。本作はその第3弾となるアルバムとなります。

ただ今回のアルバムはいままでの2枚の「workshop」とは大きく異なります。いままでの2作品は、ライブの中で培ってきたライブアレンジを、あらためてスタジオにて録音した作品であり、ライブアルバムというよりは「ライブアレンジアルバム」といっていいような作品になっています。一方、今回のアルバムは2017年から2019年に行われたライブ音源を収録した名実とものライブアルバム。オリジナル楽曲がライブにおいて変貌を遂げ、ファンに披露された瞬間を切り取ったアルバムに仕上がっています。

そして本作でもあきらかにアレンジの異なるライブならではのOGREの楽曲が収録されています。2012年のアルバム「100年後」の収録曲となる「素敵な予感」では、警告音のようだったオリジナルのシンセの音色がヘヴィーなギターノイズに置き換わり、無機質さが不気味だったオリジナルと比べ、バンドサウンドでよりドロドロとした不気味さが強調されたアレンジになっています。同じく「100年度」収録の「記憶に残らない」は、こちらも原曲と比べると、ギターノイズとバンドサウンドにより、よりドリーミーな雰囲気の曲へと変化しています。

また、今回のアルバムは現時点での最新アルバム「新しい人」リリース後のライブということもあり、同作からの楽曲も多く取り上げられています。OGRE流ディスコアルバムといった様相だった同作ですが、ただ、ライブアレンジではエレクトロ的な要素はなくなり、よりグルーヴィーでサイケデリックな要素が強調されたようなアレンジになっています。冒頭を飾る「新しい人」「わかってないことがない」もそうなのですが、「ありがとう」でもオリジナル以上に重低音を強調し、ダークな雰囲気を醸し出すアレンジになっていました。

もっとも今回のアルバム、ライブ音源ということなのですが、録音状態は非常によく、彼らの演奏をしっかりと聴ける反面、観客の歓声などはほとんどなく(といっても彼らのライブは歓声を上げるようなライブではないのですが・・・)正直なところ、ライブの空気感がさほど伝わってこないのはちょっと残念なところ。ライブでの演奏ということで、いままでの「workshop」シリーズよりも緊張感はあるものの、もっとライブの雰囲気を感じたかったかも、ということも思ってしまいました。

しかし、おそらくそんな感想を承知した上でラストに配されている「動物的/人間的」では、冒頭にあいさつが収録されているほか、録音状態も正直あまりよくありませんが、その結果、ライブ会場の空気が伝わってくるような録音となっています。おそらく、録音状態の悪さも、ライブの雰囲気を出すためにわざとこのような録音状態の楽曲を収録したのではないでしょうか。最後の最後に、よりライブの空気感のわかる録音もしっかりと収録されていました。

そんな訳で彼ら初となる「ライブアルバム」でしたが、ライブバンドとしての彼らの実力を存分に感じることが出来る傑作に仕上がっていました。あらためてOGREというバンドのすごさを感じた作品。また、コロナも早く収まり、彼らのライブに心置きなく行ける日を待ちわびて・・・それまでは、このライブアルバムで、彼らの世界に浸っていたいと思います。

評価:★★★★★

OGRE YOU ASSHOLE 過去の作品
しらないあいずしらせる子
フォグランプ
浮かれている人
homely
100年後
confidential
ペーパークラフト
WORKSHOP
ハンドルを放つ前に
新しい人
workshop 2


ほかに聴いたアルバム

夜行秘密/Indigo la End

前作から約1年4か月ぶり、6枚目となるIndigo la Endのニューアルバム。バラエティーに富んで実験的なゲスの極み乙女。と比べると、こちらはとことん歌詞とメロディーにこだわった、哀愁感たっぷりのメロをしっかりと聴かせるアルバムになっています。脂ののりきっていた前々作「PULSATE」に比べて、前作「濡れゆく私小説」は若干、無難にまとめている感がありましたが、本作も、良くも悪くも非常に安定した良作が並んでいるといった印象のアルバムに。ただ、前作に比べると、バンドサウンドでよりダイナミックに聴かせる「たまらゆ」や、Indigo流ダンスチューンといえる「固まって喜んで」、ジャジーな「さざなみ様」のように、前作よりバラエティー富んだ作風に仕上がっていました。

評価:★★★★

Indigo la End 過去の作品
あの街レコード
幸せが溢れたら
藍色ミュージック
Crying End Roll
PULSATE
塗れゆく私小説

HOME TOWN~Cover Songs~/土岐麻子

土岐麻子によるカバーアルバム。「HOMEをテーマに、「HOMEで楽しむ」「温もりを感じる」 「変わらない場所」3つの軸でセレクト」したそうですが、アジカンの「ソラニン」、くるりの「Jubilee」、スピッツの「楓」など、中堅/ベテランのロック、ポップス系の曲がメインとなっていて、選曲については意外性はなく卒がない印象。それらの曲をジャズの要素を加えつつも、基本的にはポップにまとめあげています。暖かさを感じる彼女の歌声は、比較的いろいろな曲にマッチしており、意外性のあるようなカバーはなかったものの、名曲の数々を楽しめるカバーアルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★

土岐麻子 過去のアルバム
TALKIN'
Summerin'
TOUCH
VOICE~WORKS BEST~
乱反射ガール
BEST! 2004-2011
CASSETTEFUL DAYS~Japanese Pops Covers~
HEARTBREAKIN'
STANDARDS in a sentimental mood ~土岐麻子ジャズを歌う~
Bittersweet
PINK
HIGHLIGHT-The Very Best of Toki Asako-
SAFARI
TOKI CHIC REMIX
PASSION BLUE

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2021年3月28日 (日)

注目の7人組大所帯バンド

Title:For the first time
Musician:Black Country,New Road

最近は、サブスクの影響などもあり、以前に比べてすっかりCDショップに行く回数が少なくなってしまいました。以前はよく、CDショップの試聴機でCDを聴きながら、知らない音楽を漁っていたのですが、最近はそういう機会も少なくなってしまいました。まあ、最近はCD売上低迷もあり、タワレコもすっかり「アイドルショップ」に変貌を遂げてしまったので、おもしろそうなCDが試聴機になかなか入らなくなった、ということもあるのですが。しかし、先日CDショップへ行き、時間もあったので久しぶりに試聴機を聴いていたら、これは!というカッコいいアルバムに試聴機経由で久しぶりに出会うことが出来ました。それがこの1枚。まあ、厳密にはこれがはじめての出会い、ではなく、以前、雑誌で紹介されているのを見たことあったのですが、その時はさほど食指が動かず。今回、試聴機で実際の音源を聴いてみて気になったため、さっそく聴いてみました。

そんなことがあって今回紹介するバンドは、ロンドン出身の最近、注目を集めているバンド、Black Country,New Road。男女7人組という大所帯バンドで、本作がデビュー作。デビュー前から元Sonic Youthのキム・ゴードン、RADIOHEADのエド・オブライエンという大物2人とフランスのテレビ番組で共演など話題を呼び、本作もMy Bloody Valentineなどを手がけたアンディ・サヴァースがプロデューサーとして参加するなど、大注目のデビュー作となっています。

そしてはりきって楽しみにしてこのアルバムを聴いたのですが、まず最初に聴いたら試聴機で聴いたほどよくなかった・・・・・・というのは、この手の出会いをしたアルバムでよるある話で(笑)。ただ、これが2度3度聴くうちに印象が変わり、徐々にアルバムの良さにはまっていくというのもよくあるケース。実際、本作も何度か聴いていると、確かに試聴機で感じた直観は間違えではなかった、という印象に変わっていきました。

7人組という大所帯バンドであることを生かした分厚くダイナミックなバンドサウンドが大きな魅力で、まず1曲目「Instrumental」から、分厚いベースラインにテンポのよいドラムス、さらにそれにのるホーンセッションで、全体的にはどこか妖艶でエキゾチックな印象の漂う独特なインスト曲に仕上がっています。続く「Athens,France」はヘヴィーなギターサウンドを前に押し出したインディーロック色も強いナンバー。ただ、こちらもホーンセッションも入れたサウンドが、楽曲に重厚感を与えています。

この分厚く重厚感を醸し出しつつ、一方ではどこかオルタナ系のインディーロックバンドの匂いが楽曲の中から漂ってくるのはその後の楽曲も同様。「Science Fair」「Sunglasses」のどちらも、粗々しくノイジーなギターサウンドにローファイ気味に語るようなボーカルは、まさにインディーロックな雰囲気が漂ってきます。一方では、そこに重なるホーンセッションやストリングスなどの豪華なサウンド構成は、インディーロックではあまり見られないスタイル。荒々しいインディーロックと、重厚なサウンド構成のアンバランスさが、彼らの大きな魅力のようにも感じました。

もう1つの魅力は、冒頭を飾る「Instrumental」でも特に強く感じた、どこかエキゾチックな雰囲気の漂うサウンド。どこかトラッドやワールドミュージックからの影響も感じられ、彼らの音楽に(ジャンル的な)厚みを増している大きな要因になっているように思います。このエキゾチックな雰囲気が魅力的なのがラストの「Opus」で、疾走感あるギターロックなのですが、ホーンやストリングスの音色がどこかエキゾチックで魅力的。このエキゾチックな雰囲気が印象に残る作品に仕上がっていました。

デビューアルバムながらも独特の魅力があり、確かに注目を集めるバンドであることは間違いありません。コロナ禍でなかなか見る機会もありませんが、ライブも魅力的だろうなぁ、と感じるバンド。比較的聴きやすくポップな側面がある反面、どこかインディー的だったり、ワールドミュージック的な要素があったりと、サブカルチャー的な要素を強く垣間見れるのも、マニア心をくすぐられるような部分も。なにげに本国イギリスの公式チャートでは最高位4位を記録するなど、既にブレイクしちゃっている感もありますが、今後、日本でもさらに注目を集めそうです。コロナ禍が落ち着いたら、来日してほしいなぁ。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

2020 Grammy Nominees

毎年恒例、グラミー賞のノミネート作を収録したコンピレーションアルバム。今の音楽シーンの動向を知るにはうってつけの1枚なのですが、2020年バージョンを聴いて目立つのが女性陣の活躍。Billie Eilishをはじめ、Ariana Grande、Taylor Swift、Lana Del Rey、さらにはBeyonceと勢いのある女性陣の活躍が目立ちました。全体としても、新時代を切り開くような新しいポップソングの潮流・・・といった感じではないものの、パワフルな女性陣に押される形での勢いのある作品が目立ち、ここ数年では一番の豊作ともいえる出来栄えになっています。この女性陣たちは、これからもポップシーンを引っ張って行ってくれそうです。

評価:★★★★★

Grammy Nominees 過去の作品
2011 GRAMMY NOMINEES
2012 GRAMMY NOMINEES
2013 GRAMMY NOMINEES
2014 GRAMMY NOMINEES
2015 GRAMMY NOMINEES
2016 GRAMMY NOMINEES
2017 GRAMMY NOMINEES
2018 GRAMMY NOMINEES
2019 GRAMMY NOMINEES

Music – Songs from and Inspired by the Motion Picture/Sia

オーストラリア出身のシンガーソングライターによる新作。いままで数多くのヒットアルバムをリリースしてきた彼女ですが、実は何気に私がアルバムを聴くのは本作がはじめて。そのユーモラスなジャケットもあって、非常にポップで明るいキュートなアルバムを想像していたのですが、思ったよりメランコリックで聴かせるタイプのアルバム。メロウな曲からバラード、トライバルな曲やレゲエ風の曲まで収録され、バラエティーは豊富に感じられるのですが、良くも悪くも今どきの売れ線といったイメージも否めず。あまり目新しさを感じませんでした。

評価:★★★

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2021年3月27日 (土)

スローペースながらも着実な活動

Title:30
Musician:LITTLE CREATURES

前作「未知のアルバム」から約5年半ぶりとなるLITTLE CREATURESのニューアルバム。その前作も約5年8ヶ月ぶりでしたし、その前々作も約5年5ヶ月ぶりとなります。今回のアルバムはデビュー30周年を記念するニューアルバムなのですが、そうすると、そのうち半分の15年の間にわずかアルバム4枚しかリリースしていない計算になります。もっとも、これが8枚目のアルバムとなるので、計算的には「合っている」ことになりますが・・・寡作ながらも一方では決まったペースでのリリースは守り続けており、ここらへんが息の長い活動を続ける秘訣ということになるのでしょうか。

そんな彼らのニューアルバムですが、サウンド的にはまさに30年間という積み重ねを感じさせる、そぎ落としたようなサウンドが特徴的となっています。とはいえ、今回のアルバム、まるで断捨離したようなソリッドな作品が特徴的だった前作「未知のアルバム」のような、研ぎ澄まされたサウンドといった感じはありません。ただ、基本的にシンプルなスリーピースの音色がメイン。激しいヘヴィーなギターサウンドもなければダイナミックなドラミングを力強く聴かせるというサウンドでもなく、シンプルに息の合ったバンドサウンドを聴かせる、というスタイルを貫いています。

もっといえば、必ずしもシンプルなバンド演奏に拘っている・・・という訳でもなく、「ことわり」ではシンセの音色もなっていたりもしますので、そういう意味では必ずしもこだわっているわけではないのでしょう。ただ、このいい意味でのこだわりのなさが故に、必要以上に力が入っていない、肩の力の抜けたアルバムに仕上がっています。また、こういう変なこだわりのなさもバンドが長く続く秘訣なのかもしれません。

また、基本的にシンプルなギターロックがメインなのですが、その中でも前述の通りにシンセの音色と取り入れた「ことわり」のような曲もあれば、「ハイポジション」のような疾走感あるバンドサウンドで聴かせるギターロックナンバーもあれば、最後の「踊りかける」ようなファンキーなギターを聴かせる曲もあれば、とバラエティーもしっかり感じることが出来ます。決してわかりやすい派手なメロディーやサウンドがあるわけではないのですが、タイトなサウンドと合わせて、最後まで飽きることなく楽しめるアルバムに仕上がっています。

さらに歌詞に関してもシンプルにそぎ落とされた歌詞が特徴的なのですが、かといって決して難しくなるわけではなく、主張が比較的ストレートにつたわってくるのも印象に残ります。まず印象に残るのが「速報音楽」。音楽賛歌ともいえるこの曲は

「またこの響きあえる仲間たちと歩いて
新時代を踏み鳴らし音楽を鳴らせ」
(「速報音楽」より 作詞 青柳拓次)

という歌詞は、このコロナ禍の中で自由にみんなで音楽を鳴らせない今の状況の中での未来の希望のように感じます。

また「大きな河」も今の時代を映しているような楽曲となっており、

「うまいことゆって不満をかきあつめ
そんなコトバで騙されるわけないだろう」
「船の仕組みを作る 賢く生きる誰かに
また振り落とされ、弾かれ、泳ぐ、畝る大きな河」
(「大きな河」より 作詞 青柳拓次)

も、今の「格差社会」を象徴するような歌詞となっているように感じます。

決して派手ではないものの、ベテランらしい、いい意味での安定感と余裕も感じさせる傑作アルバム。まさに5年待ったかいのあったアルバムと言えるかもしれません。次のアルバムはもっと早く聴きたいのですが、でもこれだけのマイペースだからこそコンスタントな活動が続けられるんでしょうね。また5年後の傑作を、このアルバムを聴き続けながら待っていたいと思います。

評価:★★★★★

LITTLE CREATURES 過去の作品
LOVE TRIO
OMEGA HITS!!!

未知のアルバム


ほかに聴いたアルバム

アイラヴユー/SUPER BEAVER

アルバム単位で聴くのはこれが初となる4人組ロックバンドの7枚目となるフルアルバム。基本的には、今時なギターロックバンドといった感じなのですが、サウンドは予想していたよりもヘヴィーでパンキッシュ。メロディーラインにはメランコリックさもあり、どこか和風の要素も。骨太な歌謡ロックバンドといった様相もあるのですが、ここらへん、THE BACK HORNみたいに、もっと骨太でメランコリックな路線に突き進むのか、もっと軽快なギターロックに進むのか、ちょっと中途半端さも感じる部分もあるのですが・・・ただ、ロックを聴いたという聴き応えはある1枚でした。

評価:★★★★

Billow/須田景凪

ポスト米津玄師的な売り出され方をしているボカロP出身の男性シンガーソングライターの新作。悪い意味でいかにもボカロ出身者といったイメージのマイナーコード主体のメロディーラインは正直、ちょっと一本調子。米津玄師の背中は遠いなぁ・・・と感じてしまいました。ただ、前作で感じたボーカルの軽さはさほど気にならなくなり、また、郷愁感あるメロを聴かせる後半はちょっとおもしろいかも、とも思ったりして、次回作に期待は残すアルバムになっていたと思います。そろそろ大化けしてほしい感もありますが。

評価:★★★

須田景凪 過去の作品
porte

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2021年3月26日 (金)

ローファイながらもバラエティー富んだサウンドがユニーク

Title:On All Fours
Musician:Goat Girl

イギリスはサウスロンドン出身のガールズバンド、Goat Girl。セルフタイトルとなったデビュー作である前作が評判を呼んだ、いわゆるポストパンクバンドと位置付けられるバンドで、本作は彼女たちの約3年ぶりとなるニューアルバム。前作「Goat Girl」の時はノーチェックだったのですが、今回のアルバムは高い評判を呼んでいることからも、遅ればせながら彼女たちのアルバムをチェックしました。

楽曲的には、気だるい雰囲気の女性ボーカルをメインとしたローファイ気味なオルタナ系ギターロックチューンがメイン。1曲目「Pest」はまさにそんな雰囲気の楽曲で、アルバムを象徴するかのような作風の曲調になっています。2曲目「Badibaba」も、これにシンセの音色も加わった軽快なギターポップチューン。ちょっと怪しげな雰囲気のサビも印象的なギターロックチューンに仕上がっています。

そんなギターロックチューンを主軸にしつつ、所々でバリエーションあるサウンドが妙にひっかかりを持つのがこのアルバムの大きな特徴。例えば「Once Again」は出だしこそ、人なつっこさも感じるローファイ気味なギターポップナンバーながらも、後半はサイケなサウンドが導入され、雰囲気が一変します。先行PVもリリースされている「Sad Cowboy」も疾走感あるナンバーで、シンセの音色が軽快にリズミカルに展開される楽曲。先行シングルとなった「The Crack」もノイジーなギターサウンドでロッキンなサウンドを聴かせたかと思えば、ホーンセッションの入った祝祭色あるサウンドが入ってきたりと、3分強の中に多彩な音楽性をのぞかせます。

「Closing in」もニューウェーブ色を感じる軽快でリズミカルなポップチューンに仕上がっていますし、かと思えば「Anxiety Feels」はメランコリックでフォーキーな作風に。最後を飾る「A-Men」もメランコリックなメロディーラインをしっかりと聴かせるポップチューンかと思いきや、妙に歪んだサウンドはサイケですし、メロとは異なって妙に自己主張をするパーカッションもユニークですし、一風変わったサウンドが耳を惹く楽曲で締めくくられています。

基本的にはローファイなギターロック路線で統一感を出しているものの、この妙に印象に残るバラエティー富んだサウンドが実にユニーク。メロディーラインも淡々としているものの、メロウだったり意外とキュートだったりと耳を惹きつけます。また、歌詞についても世界の不正や社会的偏見をテーマとして取り上げた歌詞が特徴的な社会派のバンドで、先行シングルとなった「The Crack」の

「Cracks form when the earth's torn, can't go back」
(訳詞 地球に引き裂かれたヒビが生まれ、それは元に戻ることが出来ない)

という歌詞は、様々なところで分断が生じている今の世界の状況を示唆的にあらわしているなど、示唆的な歌詞も多く見受けられます。

決して派手さはないのですが、聴き終わった後、妙にそのサウンドに惹きつけられる彼女たち。ただ、そのサウンドにもメロにも妙に惹きこまれてきます。日本でも徐々に注目度が集まりそう。特にオルタナ系ギターロック好きには要チェックのグループです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Ignorance/The Weather Station

女優としても活動するカナダのシンガーソングライター、タマラ・リンデマン率いるフォークロックバンドの新作。ピアノやストリングスを主軸としたアコースティックなポップソングを聴かせてくれるバンドなのですが、なによりも清涼感あふれるタマラ・リンデマンのボーカルが大きな魅力。ここに外連味のないシンプルなポップソングがのります。清涼感あるボーカルと、シンプルでフォーキーなサウンドやメロディーのバランスもバッチリ。いい意味でもっと売れそうな印象もする、広い層に支持されそうなバンドです。

評価:★★★★★

Tombouctou/Al Bilali Soudan

Tombouctou

今さら感も強いのですが・・・まだ1枚聴き洩らしていました、2020年の各種メディアのベストアルバムのうち、私がリアルタイムで聴かなかったアルバムを後追いで聴いた作品。本作はMusic Magazine誌ワールドミュージック部門第4位のアルバム。砂漠のブルースを奏でるTINARIWENや同じくTAMIKRESTの活躍でおなじみの、アフリカはマリのトゥアレグ族によるグループによる作品。ノイジーなギターリフとボーカルの掛け合いが非常にアグレッシブで、かつ、ループするサウンドがトランシーに響き、聴いていて軽くトリップできるようなサウンドを繰り広げられています。アフリカ音楽にロックの要素を取り入れた音楽性が特徴的ながらも、TINARIWENやTAMIKRESTとは異なる方向性を感じるサウンドに。これ、ライブが最高に気持ちよさそうだなぁ・・・。年間ベストで上位に食い込んでくるのも納得の1枚でした。

評価:★★★★★

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2021年3月25日 (木)

Hot100との同時1位は成らず!

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週、Hot100で宇多田ヒカル「One Last Kiss」が1位を獲得しましたが、同名のアルバムは今週は3位にダウン。ダウンロード数は先週と変わらず1位と強さは感じますが、残念ながら2週連続の1位&Hot100との同時1位獲得はなりませんでした。

その宇多田ヒカルに代わって1位獲得となったのはジャニーズ系男性アイドルグループ、ジャニーズWEST「rainboW」でした。CD販売数及びPCによるCD読取数で1位獲得。オリコン週間アルバムランキングでも初動売上24万5千枚で1位初登場。前作「W trouble」の20万8千枚(1位)からアップしています。

2位初登場はロックバンド[Alexandros]「Where's My History?」。デビュー10周年を記念してリリースされた、彼ら初のベスト盤。デビュー作は2010年1月20日にリリースされた「Where's My Potato?」でしたので、タイトルはそれに対応する形といったところでしょうか。もともと、10周年の昨年5月にリリースする予定だったのですが、新型コロナウイルスの影響で、夏に延期し、さらにちょうど11年目のスタートとなる、今年1月20日に延期。しかし、緊急事態宣言発令を受け、3月17日に再度延期になったという、コロナ禍に翻弄されたアルバム。3月17日は緊急事態宣言解除前だったのですが、今回は発売に踏み切った模様。だったら、昨年の夏にリリースしておけばよかったのでは?と思ったり思わなかったり・・・。CD販売数及びダウンロード数2位、PCによるCD読取数7位。オリコンでは初動売上3万8千枚で2位初登場。直近作の「Bedroom Joule」の9千枚(8位)からは大きくアップ。ただし、直近のオリジナルアルバム「Sleepless in Brooklyn」の3万9千枚(3位)からは若干のダウンとなっています。

続いて3位以下の初登場盤ですが、4位には韓国の男性アイドルグループTHE BOYZ「Breaking Down」が初登場でランクイン。CD販売数3位そのほかのチャートは圏外。オリコンでは初動売上2万枚で4位初登場。前作「TATTOO」の1万6千枚(2位)よりアップ。

5位には大滝詠一「A LONG VACATION」が先週の92位から大きくランクアップし、ベスト10入り。1981年にリリースされた日本ポップ史に残る名盤としても名高い本作。その後も何度も再リリースされ、特に20周年、30周年の際には「Anniversary Edition」がリリース。そして40周年となる今年、「40th Anniversary Edition」がリリースされ、その影響でCD販売数が5位にランクイン。ダウンロード数も23位、PCによるCD読取数も24位にランクインし、総合順位でベスト10入りしてきました。Hot Albumsでは、「40th Anniversary Edition」でも別枠での集計ではありまえせんでしたが、オリコンでは「40th Anniversay Edition」のみ別枠で集計。初動売上1万9千枚で5位にランクイン。前作「Happy Ending」の1万6千枚(6位)からはアップしています。

7位初登場は鷺巣詩郎「Shiro SAGISU Music from "SHIN EVANGELION"」。タイトル通り、映画「シン・エヴァンゲリオン」の劇中音楽を担当した鷺巣詩郎による、劇中音楽集。CD販売数7位、PCによるCD読取数9位で見事ベスト10入りを果たし、「エヴァ」人気を見せつける結果となっています。オリコンでも初動売上1万7千枚で8位初登場。

9位には「『ウマ娘 プリティーダービー』WINNING LIVE 01」がランクイン。競走馬を擬人化し、女の子のキャラクターとした「競馬ゲーム」、「ウマ娘 プリディーダービー」のサントラ集。CD販売数13位、ダウンロード数40位でしたが、ダウンロード数で4位を記録し、総合順位でベスト10入りとなっています。

最後10位にはGYROAXIA「ONE」がランクイン。アニメやゲームによるメディアミックス作品「BanG Dream!」発のボーイズロックバンドによるデビューアルバム。CD販売数8位、ダウンロード数29位、PCによるCD読取数43位。オリコンでは初動売上1万枚で10位初登場となりました。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2021年3月24日 (水)

アルバムに続きHot100も宇多田が1位獲得

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週はついに1位獲得です。

今週1位は、先週、2位に初登場してきた宇多田ヒカル「One Last Kiss」が初登場から2週目にして初の1位獲得となりました。ダウンロード数は先週から変わらず1位。ただ、ストリーミング数が3位から6位、You Tube再生回数も1位から3位とダウンしており、下落傾向なのは気にかかります。同作が主題歌となっている映画「シン・エヴァンゲリオン劇場版」は、評判も良いみたいなので、今後の伸びに期待したいところですが。

さて今週ですが、大型の新譜が少なかった影響もあり、初登場はゼロ。2位以下、おなじみのロングヒット曲がズラリと並んでいます。まず2位には先週3位の優里「ドライフラワー」が返り咲き。特にストリーミング数は9週連続の1位となっており、ヒットの大きな要因となっています。ダウンロード数は5位から6位にダウンしていますが、You Tube再生回数は8位から7位にアップするなど、まだまだロングヒットは続きそう。これで18週連続のベスト10ヒット&8週連続のベスト3ヒットです。

3位はAdo「うっせぇわ」が先週の4位からアップし、2週ぶりのベスト3返り咲き。You Tube再生回数は3週連続の2位、ストリーミング数は6位から5位にアップ。一方、ダウンロード数は2位から3位にダウンしています。今週でベスト10ヒットは10週連続に。すっかり社会現象になってきた同曲。まだまだヒットは続きそうです。

4位はBTS「Dynamite」が先週の7位からアップ。特にYou Tube再生回数が7位から1位に一気にアップ。アメリカグラミー賞にノミネートされ、パフォーマンスを披露したことが話題となった影響が大きいようです。これで31週連続のベスト10ヒットに。

5位はYOASOBI「夜に駆ける」が先週から同順位をキープ。ただ、You Tube再生回数が4位をキープしているほか、ストリーミング数が5位から4位、ダウンロード数も10位から5位にアップと、今週、強力な新譜がなかった影響もありそうですが、ここに来て、再度、上昇基調になっています。これで48週連続のベスト10ヒット。また、YOASOBIは今週、「怪物」が8位から7位にランクアップ。「群青」も9位をキープし、今週も3曲同時ランクインとなっています。「怪物」は通算9週目のベスト10ヒット。特に今週、ダウンロード数が13位から9位にアップしています。

ロングヒット曲最後は8位のLiSA「炎」。先週の10位から再度ランクアップし、これでベスト10ヒットを22週連続に伸ばしています。ストリーミング数は先週と変わらず10位をキープしているほか、ダウンロード数が21位から18位、You Tube再生回数も11位から9位にアップしているほか、なにげにカラオケ歌唱回数の5位もヒットの要因の一つとなっています。

今週のHot100は以上。しかし、あまりに同じ曲のランクインが多いチャートが続いています。さすがにこれだけ動きがないと全体的に飽きてきてしまう感じも・・・。もっとも、毎週ベスト10のほとんどが入れ替わるオリコンのCD売上ランキングに比べれば、こちらの方が100倍ましなのですが・・・。

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2021年3月23日 (火)

King Gnuの評価も一変したアルバム

Title:THE MILLENNIUM PARADE
Musician:millennium parade

2019年から2020年にかけておそらく最もブレイクしたミュージシャンの一人といえばKing Gnuでしょう。「白日」が大ヒットを記録し、その後リリースされたアルバム「CEREMONY」も大ヒット。2019年には紅白歌合戦にも出場し、一躍脚光を浴びました。このKing Gnuの大ブレイク以前、特にポップスシーンでは、メロウなジャズやソウルの要素を楽曲に取り入れたバンドが目立ちました。ただ、そんなバンドの中で、King Gnuについてはその実力を若干図りかねる部分がありました。というのも、彼らのサウンドは確かにジャズやHIP HOP、ネオソウルなどの要素を取り込んだ作風ながらも、メロディーラインがあまりにベタで悪い意味でJ-POP的な強く、彼らが本物の「実力派」なのかブームにのって出てきただけの「ハイプ」なのか、いまひとつわかりかねる部分がありました。

さて、そんな中、リリースされた本作は、King Gnuの作詞作曲を手掛ける常田大希を中心とする音楽プロジェクト集団、millennium paredeのニューアルバム。実質的に、常田大希のソロアルバムがリリースされたに等しいとも言えるのですが、King Gnuとして大ブレイク中に、あえてソロ作をリリースしてくるというのは非常に異例なように感じます。しかし、個人的にはこのアルバムを聴いて、King Gnuに対するイメージがグッと変わりました。というのも、いままでの彼らに対する評価を変えざるを得ないような傑作アルバムだったからです。

基本的な方向性はKing Gnuと同様に、ジャズやネオソウル、HIP HOPの要素を取り入れたポップスというものになるのでしょうが、ここからKing Gnuの楽曲に感じたベタなJ-POP的要素が完全に消え、代わりに今風なビートミュージックの要素を加えて、非常にユニークかつアバンギャルドなサウンドを楽しむことが出来る作品に仕上がっています。典型的なのが「Trepanation」で、メロウなボーカルなバックで、タイトなサウンドを鳴らすエレクトロのリズムが鳴っており、アバンギャルドで非常にカッコいいナンバーに仕上がっており、耳を惹きます。

ほかにもピアノを軸とした美しいサウンドながらも、アグレッシブなエレクトロビートとのバランスが絶妙な「lost and found」、ヘヴィーなギターリフからスタートし、ロッキンなサウンドを展開させつつ、そこに祝祭色も感じる美しいストリングスをのせてくる「2992」、ゴシック調の怪しげなサウンドにテンポよいラップが耳を惹く「Philip」など、様々な要素を加えた挑戦的な楽曲が次々と展開し、耳を楽しませます。

全体的に比較的サウンドは多めで、にぎやかな楽曲構成になっているのですが、しっかりと緩急をつけており、決して過剰なサウンドになっていないのも特徴的。ラストを締めくくる「FAMILIA」も、歌い上げるメランコリックなメロディーラインに、エレピやバンドサウンド、打ち込みなども入れた、神秘的な雰囲気を入れつつ、ダイナミックなサウンドに仕上がているのですが、サウンド過多といったイメージはなく、かつ、しっかりとサウンドのスケールを感じさせつつアルバムを締めくくっています。

間違いなく傑作アルバムと言える本作ですし、また、常田大希のコアな部分の実力を感じることにより、King Gnuというバンドの実力も図ることが出来たアルバムで、個人的には本作でKing Gnuというバンドの評価は大きく変わりました。King GnuはあえてJ-POP的な要素を取り入れたバンド、ということらしいのですが、確かに、このmillennium paredeのアルバムでその話が事実だったということをあらためて感じさせました。そして、だからこそKing Gnuが大ブレイクした今、あえてKing Gnuの新作をリリースするのではなく、millennium paredeのアルバムをリリースし、彼のコアな部分を外に知らせたかった、今回のソロ作にはそういう意図があったのではないでしょうか。そんな印象を強く受けた1枚でした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

あめりか/Hosono Haruomi Live in US 2019/細野晴臣

タイトル通り、2019年に行われたアメリカでの単独ライブの模様を収録したライブ盤。ブルースやカントリーなどルーツミュージック志向にアレンジした曲が並び、非常に円熟味あふれるボーカルと演奏でしっかりと聴かせる作品に。ルーツ志向の作風となっているのは、やはりアメリカへのリスペクトというところがあるのでしょうか。ただ、海外公演でありながらも、そうとは感じさせないアットホームな暖かさもあふれ、いい意味で肩の力が抜けたようなライブ演奏に。細野晴臣の包容力も感じされる傑作アルバムでした。

評価:★★★★★

細野晴臣 過去の作品
細野晴臣アーカイヴスvol.1
HoSoNoVa
Heavenly Music
Vu Ja De
HOCHONO HOUSE
HOSONO HARUOMI Compiled by HOSHINO GEN
HOSONO HARUOMI Compiled by OYAMADA KEIGO

Live Loud/THE YELLOW MONKEY

こちらもライブアルバム。20周年を記念して行われたライブツアー。2019年のナゴヤドーム、2020年2月の京セラドームのライブ実施後、ファイナルとなる予定だった4月の東京ドーム公演がコロナ禍で中止。その後、11月に東京ドームでのライブが実施されたのですが、そのライブの模様を収録したライブアルバム。コロナ禍前後でのライブの模様が1枚のCD収録されているという意味ではある種「貴重」とも言えるのですが、もちろんそこに大きな差はなく、THE YELLOW MONKEYとしてのありのままのライブが収録されています。ライブ音源は原曲に比べると、よりバンドとしてのグルーヴ感がまし、迫力を感じさせる内容で、THE YELLOW MONKEYのライブバンドとしての実力を感じさせます。それだけに早くライブが何の懸念もなく実施出来る日が1日も早く訪れることを願うのですが。

評価:★★★★★

THE YELLOW MONKEY 過去の作品
COMPLETE SICKS
イエモン-FAN'S BEST SELECTION-
砂の塔
THE YELLOW MONKEY IS HERE.NEW BEST
9999

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2021年3月22日 (月)

隙間を埋めるような歌詞とサウンド

Title:SEKAI NO OWARI 2010-2019
Musician:SEKAI NO OWARI

2020年にデビュー10周年を迎えたSEKAI NO OWARI。本作は、もともとそのデビュー10周年を記念して、昨年の5月にリリースされる予定だったベスト盤ですが、ご承知の通り、コロナ禍が直撃し、同作も販売延期を余儀なくされました。そして2021年、あらためて「メジャーデビュー10周年」としてリリースが決定。ようやく発売となったベストアルバムが本作となります。

基本的に、以前から・・・というよりもここ最近特にセカオワについて感じているのは、メロディーセンスは素晴らしいが歌詞が酷いという点。特に歌詞については、中2病の世界観が炸裂している自意識過剰系のミュージシャンであり、それが良くも悪くも売りになっている、という点は以前から認識はしていたのですが、あらためて彼らの曲を聴くと、特に初期の作品については自意識過剰というよりも自意識が暴走しているような感のある曲が目立ちました。

特に自意識暴走系と感じるのが「天使と悪魔」「Love the warz」あたりで、なんとなく何を歌いたいのかはわかるのですが、それをわかった上で「何が言いたいんだ、この人は??」と頭の中ではてなマークがグルングルン回り出すような歌詞という印象を強く受けます。中2病という言葉そのもの、14歳あたりの少年が、「自分は世の中のことをわかっているんだぞ」という自意識の暴走むき出しに、いかにも独自の視点の意見のつもりで歌詞を書きつつも、大人から見ると、失笑でしかない、誰もがそういうことを感じつつ、その上で自分の経験の中で解決していくような、そんな「ありふれた」ことを語っている歌詞、という印象を受けてしまいます。

さすがにここまでの自意識暴走系は、彼らも年を経るごとに薄れていくのですが、それでも以前にもここに書いた通り、ここ最近の歌詞に至るまで歌詞の中ですべて状況を説明してしまうような情報過多な歌詞が目立ち、それがかなり気になります。例えば比較的最近の曲で、このベスト盤でも最後に収録している「RAIN」でも

「虹が架かる空には 雨が降っていたんだ
虹はいずれ消えるけど雨は草木を育てていたんだ」

という歌詞がありつつ最後には

「雨が止んだ庭に 花が咲いてたんだ」
(「Rain」より 作詞 Fukase,Saori)

と締めくくっているんですが、最後に「花が咲いてた」という描写を入れるのなら、わざわざ「雨は草木を育てていたんだ」という説明的な一説は不要に思います。彼らの歌詞はこういう「行間を読ませない」歌詞が多く、ここらへんの余韻をほとんど感じられません。

この説明過多な歌詞と同様、サウンドに関してもファンタジックというイメージが強いのですが、音の間を詰め込むようなサウンドが多く、そういう意味ではサウンド的な側面でも「説明過多」と言えるのかもしれません。簡単に言うと、歌詞にしろサウンドにしろ、隙間を詰め込もうとするのが彼らの楽曲の特徴で、今回のベスト盤で、その特徴を再認識しました。

ただメロディーラインについては、デビュー当初の作品からここ最近の曲に関しても、人なつっこくポップでキュートなメロディーラインを書いてきており、以前にも書いた通り、メロディーラインについては間違いなく天性の才を感じさせます。個人的にはこのメロディーラインで、変な装飾をつけずにシンプルなサウンドにシンプルな歌詞で聴いてみたい、といった印象を受けてしまうのですが、こればっかりは彼らの「趣味」の問題もあり難しいんだろうなぁ。メロディーセンスというせっかくの素材の良さを、過剰なサウンドと歌詞というこってりとした味付けで殺してしまっているような印象すら受けてしまい、そういう意味では非常に惜しい感もあります。

もっとも、この自意識過剰系の歌詞とこってりとしたファンタジーなサウンドだからこそ彼らは「売れている」訳で、そういう意味ではもっとシンプルにしてほしいというのは、単なる私の好みに過ぎないのかもしれませんが、ただ、やはりもうちょっと違う側面も見てみたい、そう感じてしまったベストアルバムでした。

評価:★★★★

SEKAI NO OWARI 過去の作品
EARTH
ENTERTAINMENT
Tree
Lip
Eye
Chameleon(End of the World)


ほかに聴いたアルバム

ONE WISH e.p./MAN WITH A MISSION

新曲4曲に、昨年7月に行われた配信ライブでの音源を収録した8曲を追加した、計12曲入りの、一応扱い的にはミニアルバム。新曲4曲は、アップテンポで疾走感のあるギターロックチューンとなっており、特に「All You Need」はシンセも取り入れた打ち込みのリズムでトランシーな曲に仕上がっています。好みの問題もあるけど、個人的にはちょっと軽すぎる印象があり、もっとガツンと来るようなサウンドを聴きたかったかも。

評価:★★★★

MAN WITH A MISSION 過去の作品
Trick or Treat e.p.
MASH UP THE WORLD
Beef Chicken Pork
Tales of Purefly

5 Years 5 Wolves 5 Souls
The World's on Fire
Out of Control(MAN WITH A MISSION x Zebrahead)
Dead End in Tokyo European Edition
Chasing the Horizon
MAN WITH A "B-SIDES & COVERS" MISSION
MAN WITH A "REMIX" MISSION
MAN WITH A "BEST" MISSION

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2021年3月21日 (日)

昭和のスターたち

Title:ありがとう!石原軍団

石原軍団といえば、ご存じ、昭和の大スター、石原裕次郎が設立した芸能事務所である石原プロモーション所属の俳優の愛称として知られています。「昭和の匂い」を色濃く残したような非常に男臭さを感じさせる俳優を数多く抱えていましたが、今年1月にプロモーション業務を終了し、石原軍団も「解散」したが大きなニュースになったのでご存じの方も多いでしょう。石原軍団は俳優としての活躍だけではなく、曲も多く残していたそうで、その石原軍団にかかわる楽曲を集めたコンピレーションアルバムがリリースされ、話題を呼んでいます。

ただ、このアルバムを聴いた率直な感想としては、純粋に楽曲の出来としてはかなり厳しいものがありました。石原裕次郎の作品にしても、1950年代のヒット曲ではなく、石原プロが設立されてからの作品ということもあって、完全に様式化されたムード歌謡曲がメイン。Disc2に収録されている歌モノについても、いわゆる「ど演歌」がメインで面白みはほとんどありません。あえていえば、Disc1の終盤に収録されていた黛ジュンや浅丘ルリ子の楽曲はレトロポップといった感じで楽しめました。また、個人的には舘ひろしの「冷たい太陽」は、「あぶない刑事」のエンディングテーマということもあって懐かしく聴くことが出来ました。

Disc2は西部警察のテーマ曲や大都会のテーマ曲が収録されています。こちらも楽曲によっては意外にファンキーなレアグルーヴ的なサウンドが入っていたりして楽しめる部分もあるのですが、いかんせん、シンセの音がチープで、平凡なフュージョンといったイメージも否めず・・・。太陽にほえろのメインテーマも収録されているのですが、こちらはサスペンスチックなサウンドが今聴いても非常にカッコいいオリジナルのバージョンではなく、1986年のバージョン。こちらも正直なところシンセの音が時代を反映しすぎていて非常にチープ。太陽にほえろは石原プロ制作のドラマではないだけに、このアルバムに収録すべきだったかどうかという話もあるのですが、どうせ収録するのなら、オリジナルのバージョンを聴きたかったなぁ。

石原プロのヒット曲といえば、AORの名曲として今でも名高い、寺尾聰の「ルビーの指輪」がありますが、こちらも同曲のヒット後に寺尾聰が石原プロを抜けた影響なのか、それとも歌手といて現役であるという自負からなのか、オリジナルではなく「Re-Cool ルビーの指輪」というリメイクバージョンを収録。こちらも悪くはなかったけど、正直なところ、オリジナルの方がよかったように思います。

そんな感じで楽曲的には収録曲のセレクトも含めて微妙なのですが、一方で、このアルバムでそんな楽曲の出来を払拭するほど魅力的だったのは石原裕次郎の歌声。昭和の大スターとして今でも語り継がれる彼ですが、包容力があり、なおかつ大人の色気を感じさせるその歌声は、このアルバムの中でもずば抜けています。私のようなおじさんでも、素直に彼の歌声をいつまでも聴き続けていたいと感じるような魅力があり、大スターとして多くの人たちを惹きつけたその魅力は、その歌声を通じても十分に感じられました。そんな石原裕次郎の魅力に触れられるだけでも、このアルバムは意義深いといえるかもしれません。

なお、そんな石原裕次郎の大ヒット曲「夜霧よ今夜も有難う」は、こちらも石原プロ設立前の曲ということもあってか、石原裕次郎のバージョンではなく、金児憲史によるカバー。ただ、石原裕次郎のカバーを任されるだけあって、ボーカリストとしての表現力もあり、元曲の良さも相まって、非常に魅力的なカバーに仕上がっていました。

そんな訳で、純粋に楽曲の評価としたら、★★に近いかもしれませんが、石原プロの作品をまとめた意義を考えて1追加。さらにあと1つは石原裕次郎の歌声の魅力に。正直、石原プロ全盛期は私が物心つく前だったのでさほど思い入れがあるわけではありませんが、石原裕次郎の魅力に触れられた、そんなコンピレーションアルバムでした。

評価:★★★★


ほかに聴いたアルバム

PHYSICAL/夜の本気ダンス

以前のアルバムはいまひとつピンと来なかったのですが、前作「Fetish」でグッと内容がよくなり、今後の展開を期待していた夜の本気ダンス。そしてリリースされた6曲入りのミニアルバムが良い!前半はダンサナブルなナンバーが続き、後半はヘヴィーなギターリフを展開する、彼らの「ロック」な側面にスポットをあてた作品が並び、いい意味でインパクトあるサウンドの曲がほどよく配置されています。わずか6曲入りのミニアルバムだからこそ、変にダレずに最後まで一気に聴き切れた、という面はあるかと思いますが、バンドとしての成長を感じられるアルバムに。次のオリジナルアルバムが楽しみです。

評価:★★★★★

夜の本気ダンス 過去の作品
DANCEABLE
INTELLIGENCE
Fetish

次世界/宮沢和史

約1年8ヶ月ぶりとなるソロアルバム。「次世界」というタイトルチューンもそのままですし、「未来飛行士」というタイトルもわかりやすいのですが、非常に未来志向で前向きな曲の並ぶアルバムとなっています。ただ、どうもそれらの楽曲が正直言って理屈っぽく、ちょっと頭でっかちに感じてしまいます。サウンド的にも分厚くて、のっぺりとする感じのサウンドになっており、悪い意味でJ-POP的。THE BOOM時代に強く感じたワールドミュージックへの憧憬もあまり感じられず、お決まりのように沖縄民謡が1曲あるだけ・・・。ベテランらしいある種の安定感は感じるのですが、宮沢和史らしさが出てるかと言われると少々微妙に感じてしまいアルバムでした。

評価:★★★

宮沢和史 過去の作品
寄り道
MIYATORA(宮沢和史&TRICERATOPS)
MUSICK
留まらざること 川の如く

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2021年3月20日 (土)

レジェンドの血を継ぐものたち

Title:Legacy+
Musician:Femi Kuti&Made Kuti

主に70年代から80年代にかけて活躍した、アフロビートの創始者として知られるミュージシャン、Fela Kuti。今でもその世界的にも彼が生み出したアフロビートは様々な影響を与えています。さらにその息子であるFemi KutiとSeun kutiは彼の遺志をつぐべくアフロビートのミュージシャンとしての活躍し、日本でも大きな話題となっています。

今回紹介するアルバムは、Femi Kutiと、さらにその息子であるMade Kutiによるコラボレーションアルバム。Femi Kutiのアルバム「Stop The Hate」と、Made Kutiのデビューアルバム「For(e)ward」が2枚組のセットとなったアルバムで、デビュー作でいきなり親子の共演となっており大きな話題となっています。

そんな親子の共演となったアルバム。どちらもFela Kutiの生み出したアフロビートを引き継いでいるのですが、2人でその方向性が微妙に異なる点が非常にユニークに感じます。まずFemi Kutiは、いわばFela Kutiの生み出したアフロビートを現在にアップデートさせつつ、基本的にはそのまま継承しているスタイル。パーカッションやホーンセッションを入れた賑やかなサウンドでハイテンポなビートをファンキーに展開する、ある意味王道的なスタイルともいえるアフロビートを忠実に引き継いでいます。メッセージにしても「Stop The Hate」「No Bigmanism Spoil Government」「You Can't Fight Corruption With Corruption」など、タイトルそのまま社会派なメッセージへとつながっている、こちらもFela Kutiの正当な継承者ともいえる内容の楽曲が目立ちます。

一方、ユニークさを感じさせるのがMade Kutiの楽曲。今回、彼はボーカル、リズム・セクション、サックスなど、ほぼすべてのパートを彼自身が演奏するというスタイル。ある意味、宅録とも言える作品になっており、バンドとしての一体感がひとつの魅力でもあるアフロビートのイメージからも大きく異なるものとなっています。

楽曲もメランコリックなメロを歌い上げる歌が目立つような楽曲になっており、アフロビートのサウンドが鳴っているものの、サウンドにしてもメロにしても、祖父のFelaや父親のFemiの泥臭さが抜けて、どこか都会的な雰囲気も感じさせます。育ちのよさを感じるというのでしょうか、どこか感性的な部分が先に走るFelaやFemiのアフロビートに比べて、理性的というか、あか抜けた部分をMadeの作品からは感じます。

曲のタイトルにしてもストレートな社会派だったFemiに比べると「Free Your Mind」「Higher You'll Find」など、内省的な要素を感じさせるタイトルの曲が目立つのも特徴的。ここらへんも状況が変わってきた現代っ子ならでは?といった感じなのでしょうか。もっともアフロビートとしてただ先代のサウンドをそのまま引き継ぐだけではなく、デビュー作からしっかりと自分なりの色を付けようとするMadeのスタイルには頼もしさも感じられ、まだまだ粗削りな部分もあるのですが、今後に注目したくなるデビュー作になっていたと思います。

ただ、ちょっと気になるのですが、欧米でもそうですし、日本でも親子でミュージシャンとして引き継いで活動を続ける人ってほとんどいないように感じます。特に親子3代というと皆無ではないでしょうか。あえて日本で親子3代作曲家として活動しているというと、服部良一、克久、隆之の3代くらいでしょうか?親子でミュージシャンとして活動を引き継ぎ、活躍するというのは稀有なケース。それだけFelaの血の濃さが残っているのか、それともお国柄、父親の職業を子どもが継ぐべきという風習が残っているのでしょうか??

評価:★★★★★

FEMI KUTI 過去の作品
NO PLACE FOR MY DREAM
ONE PEOPLE ONE WORLD


ほかに聴いたアルバム

The Highlights/The Weeknd

日本独自企画という形でのリリースはあったものの、全世界リリースとしては初となるベスト盤。ある意味、安心して聴けるポップチューンが並んでおり、メランコリックな方向性には若干一本調子的な部分は感じるものの、それでもアルバムをまったくダレることなく聴けてしまうあたりにポップソングとしてのクオリティーの高さ、メロディーセンスの良さを感じます。先日、自身のアルバムがグラミー賞にノミネートされなかったことから、グラミー賞を永久ボイコットすると宣言しニュースとなった彼ですが、グラミー賞なんて関係ないグッドミュージックをこれからも作り続けてくれそうです。

評価:★★★★★

The Weeknd 過去の作品
Kiss Land
Beauty Behind The Madness
STARBOY
My Dear Melancholy,
The Weeknd In Japan
After Hours

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2021年3月19日 (金)

フーファイ流パーティーロック

Title:Medicine at Midnight
Musician:FOO FIGHTERS

最近のロックの動向といえば、すっかりHIP HOPにメインストリームの座を追われ、「売れない」ジャンルに・・・・・・というほどの感じではさすがにないですし、昨今ではIdlesみたいなポストパンクの注目バンドも話題になっていて、ともすれば「活況を帯びている」といった感すらある今日このごろ。ただ、様々なロックバンドはあれど、泥臭く、ヘヴィーなギターリフを主導とするバンドサウンドを聴かせてくれる、いかにも昔ながらのロックといった感のあるバンドで、なおかつ現役感あるバンドというのは数少なくなってしまっているような感じもあります。しかし、彼ら、FOO FIGHTERSは、そんな「昔ながらの泥臭いロック」を奏でつつ、しっかりと現役感を覚える、数少ないバンドのひとつではないでしょうか。

約3年半ぶり通算10枚目となる本作ですが、ただ単純に愚直にロックを聴かせるだけではなく、まずアルバム冒頭の入りに、構成の上手さも感じます。最初はドラムスの力強いリズムからスタート。そこにヘヴィーなギターリフがかさなり、否応なくロックチューンへの期待が高まります。そんな1曲目はミディアムチューンながらもシャウト気味のボーカルが重なる、まさにロックなカッコいい楽曲。アルバム全体への期待も高まるスタートとなります。

今回のアルバムはフーファイ流のパーティーロックだとか。もともとこのコロナ禍の前に制作が終了しており、アルバムをリリースし、いざワールドツアーへ・・・となる矢先にコロナ禍の前にすべての計画が中止。アルバムもリリース延期になっていたのですが、とにかくいいアルバムが出来たのでみんなに聴いてほしい、というデイヴ・クロールの思惑もあり、無事、アルバムリリースにこぎつけたようです。

ただ、フーファイ流のパーティロックといっても、よくありがちな「打ち込みを入れて四つ打ちでリズミカルな」といった感じではありません。あくまでもヘヴィーなバンドサウンドとノイジーなギターをメインとしたリズミカルで陽気なロックチューンが並ぶアルバムになっています。軽快なギターリフとカウベルも活用した陽気なドラムでリズミカルに聴かせる「Cloudspotter」。テンポよいリズムながらもメランコリックに聴かせる表題曲「Medicine At Midnight」は同じくテンポよいリズムながらもメランコリックなメロが印象的なDavid Bowieの「Let's Dance」のフーファイ版だとか。

さらに強いインパクトを残したのが後半で、ダイナミックなバンドサウンドでアップテンポに一気に攻めてくるような「No Son of Mine」は、シャウト気味なボーカルと共に、いかにもヘヴィーロックといった感じのサウンドとリズミカルで意外とポップなメロが印象的ですし、続く「Holding Poison」はリズミカルなギターリフを主導とした、まさにパーティーロックにふさわしいナンバー。さらにラストを締めくくる「Love Dies young」もポップなメロと疾走感あるバンドサウンドが心地よいポップスロックな楽曲に仕上げてくるなど、最後まで陽気で楽しいロックチューンをヘヴィーなバンドサウンドにのせて聴かせる、まさにフーファイらしいパーティーロックチューンの連続となっています。

聴いている最中にも聴き終わった後にも、まさにヘヴィーなギターロックのサウンドを身体中に浴びて、「ロックを聴いた」という心地よい満足感に浸れるアルバムになっていました。ある意味、「王道」ともいえるロックチューンなのですが、今の時代、逆にここまでストレートなロックを奏でるバンドが珍しくなってしまい、FOO FIGHTERSらしさがよく出ているアルバムになっていたようにも感じます。既にベテランの域に達している彼らですが、なおバンドとして脂がのっているように感じる1枚でした。

評価:★★★★★

FOO FIGHTERS 過去の作品
ECHOES,SILENCE,PATIENCE&GRACE
GREATEST HITS
WASTING LIGHT
Saint Cecilia EP
SONIC HIGHWAYS

Concrete and Glod
02050525
00959525

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2021年3月18日 (木)

エヴァ人気で大ヒットなるか?

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

まず、宇多田ヒカルの企画盤が見事1位獲得です。

まず今週1位を獲得したのは宇多田ヒカル「One Last Kiss」。今週、Hot100に映画「シン・エヴァンゲリオン劇場版」の主題歌「One Last Kiss」が2位にランクインしてきましたが、本作は同作をはじめ、いままで彼女が「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」に提供してきた楽曲全曲が収録された企画盤。CD販売数は2位でしたが、ダウンロード数1位、PCによるCD読取数で1位を獲得し、総合順位でも見事1位を獲得しました。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上6万1千枚で2位初登場。前作「初恋」の20万3千枚(1位)からダウンしてしまいましたが、今、話題の映画主題歌が収録されたアルバムなだけに、今後のロングヒットの可能性もあり、今後の動向に注目されます。

2位にはBad Ass Temple vs 麻天狼「ヒプノシスマイク –Division Rap Battle- 2nd D.R.B『Bad Ass Temple VS 麻天狼』」がランクイン。声優によるラッププロジェクト「ヒプノシスマイク」から、架空のラップチーム同士のバトルをCDとしてリリースされるアルバム。CD販売数は1位でしたが、ダウンロード数3位、PCによるCD読取数2位となり、総合順位は2位に。オリコンでは初動売上8万1千枚で1位初登場。「2nd Division Rap Battle」の第2弾となりますが、同シリーズの前作どついたれ本舗 vs Buster Bros!!!「ヒプノシスマイク -Division Rap Battle- 2nd Division Rap Battle『どついたれ本舗 vs Buster Bros!!!』」の初動7万6千枚(1位)からアップしています。

3位初登場はRADWIMPS「2+0+2+1+3+1+1 = 10 years 10 songs」。今年でちょうど発生から10年目となる2011年3月11日の東日本大震災。その直後にRADWIMPSがはじめた義援金プロジェクト「糸色」を契機に、ほぼ毎年3月11日に被災地への想いをのせた新曲をYou Tubeにアップしてきた彼らですが、震災発生からちょうど10年目になる3月11日に、いままで発表してきた8曲に新曲2曲を加えてリリースした企画盤が本作となります。CD販売数3位、ダウンロード数2位、PCによるCD読取数17位。オリコンでは初動売上2万枚で3位初登場。前作「夏のせい ep」の1万6千枚(4位)からアップしています。

続いて4位以下の初登場盤です。まず4位にTeam.Sol「THE IDOLM@STER SHINY COLORS COLORFUL FE@THERS -Sol-」がランクイン。CD販売数4位、ダウンロード数5位、PCによるCD読取数9位。アイドル育成シミュレーションブラウザゲーム「アイドルマスター シャイニーカラーズ」に登場する架空のアイドルを、「Stella」「Luna」「Sol」の3チームに分けて、主に参加アイドルのソロ曲を収録したアルバムの、これがラストとなります。オリコンでは初動売上1万2千枚で4位初登場。同シリーズの前作Team.Luna「THE IDOLM@STER SHINY COLORS COLORFUL FE@THERS -Luna-」から初動売上は横バイ(4位)となります。

6位にはゴスペラーズ「アカペラ2」が初登場。2002年にリリースした「アカペラ」以来、約18年ぶりとなるアカペラアルバムの第2弾となります。CD販売数6位、ダウンロード数16位、PCによるCD読取数27位。オリコンでは初動売上1万2千枚で5位初登場。直近のベストアルバム「G25-Beautiful Harmony-」の初動1万枚(10位)よりアップしています。

8位はJun.K(From 2PM)「THIS IS NOT A SONG」が初登場でランクイン。CD販売数8位、ダウンロード数10位、PCによるCD読取数94位。名前どおり、韓国のアイドルグループ2PMのメンバーによるソロ作となるミニアルバム。オリコンでは初動売上8千枚で7位初登場。前作「NO TIME」の1万4千枚(5位)からダウンしています。

初登場組最後は10位にLOVEBITES「GLORY,GLORY,TO THE WORLD」がランクイン。女性4人組ヘヴィーメタルバンドによる4曲入りのミニアルバム。CD販売数11位、ダウンロード数14位、PCによるCD読取数42位と、個別チャートではいずれも10位に食い込みませんでしたが、総合順位では見事ベスト10入りとなりました。オリコンでは初動売上6千枚で11位初登場。前作「Electric Pentagram」(9位)から横バイとなっています。

そしてロングヒット組。YOASOBI「THE BOOK」は今週は先週からワンランクダウンの5位。ダウンロード数が4位となっているほか、PCによるCD読取数は1位を獲得。同作はCDは限定販売で、既にチャート圏外になっているので、このPCによるCD読取数1位は、おそらくレンタルで多くのリスナーがCDを借りている結果だと思われます。これで10週目のベスト10ヒットとなりました。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2021年3月17日 (水)

新譜2曲が1位、2位

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

ロングヒット曲が上位に来た先週とは異なり、今週は新譜が1位2位に並びました。

まず1位を獲得したのがジャニーズ系。KAT-TUNのニューシングル「Roar」が獲得。日本テレビ系ドラマ「レッドアイズ 監視捜査班」主題歌。CD販売数及びPCによるCD読取数1位、ダウンロード数3位、ラジオオンエア数12位、Twitterつぶやき数2位となり総合順位でも1位獲得。オリコン週間シングルランキングでも初動売上25万2千枚で1位初登場。前作「Ask Myself」の13万8千枚(1位)よりアップしています。

2位には宇多田ヒカル「One Last Kiss」が初登場でランクイン。今、話題沸騰中の映画「シン・エヴァンゲリオン劇場版」主題歌として話題の曲。配信限定シングルとしてリリースされ、ダウンロード、ラジオオンエア数及びYou Tube再生回数で1位、ストリーミング数3位、Twitterつぶやき数4位を記録し、総合順位はこの位置に。1位こそ獲得できませんでしたが、ストリーミング数やYou Tube再生回数で上位に食い込んでおり、「シン・エヴァンゲリオン」の話題性を合わせて今後のロングヒットに期待できそうです。

そして3位には先週2位の優里「ドライフラワー」がワンランクダウンながらもベスト3をキープ。これで17週連続のベスト10ヒット&7週連続のベスト3ヒットとなりました。ストリーミング数は8週連続の1位獲得。ただ、ダウンロード数は4位から5位、You Tube再生回数も5位から8位にダウンしています。

続いて4位以下ですが、今週は1位、2位の2曲以外に初登場曲はゼロ。おなじみのロングヒット曲が並びます。まず4位は先週1位のAdo「うっせぇわ」が3ランクダウン。ダウンロード数及びYou Tube再生回数の2位は変わらないものの、ストリーミング数が3位から6位にダウンしており、ベスト3落ちの要因となっています。とはいえ、これで9週連続のベスト10ヒット。話題性十分の曲なだけに、まだまだロングヒットは続きそうです。

5位は先週、ベスト3に返り咲いたYOASOBI「夜に駆ける」が2ランクダウンでこの位置に。これで47週連続のベスト10ヒットになりました。ストリーミング数5位、You Tube再生回数4位は先週から変わらず。ダウンロード数は9位から10位にダウンしています。さらに今週、「怪物」が先週から変わらず8位に、「群青」も6位からダウンしたものの9位をキープし、今週も3曲同時ランクインとなっています。特に「怪物」は今週で8週目のベスト10ヒットとなり、ロングヒットとなっています。

BTS「Dynamite」は4位から7位にダウン。ストリーミング数は先週と変わらず4位をキープしましたが、You Tube再生回数が3位から7位にダウンしています。これで30週連続のベスト10ヒットになりました。

ロングヒットはあと1曲。LiSA「炎」が先週の7位から10位にランクダウン。ストリーミング数は9位から10位、You Tube再生回数も8位から11位にダウンと、さすがに後がなくなってきた感が。とはいえ、これでベスト10ヒットは21週連続となります。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2021年3月16日 (火)

あれ?ギターが鳴ってないぞ??

Title:OK HUMAN
Musician:Weezer

日本でも人気のパワーポップバンド、Weezer。ただ、ここ最近はストレートなパワーポップのアルバムというよりは異色作と言うべき作品が続いています。前々作「Weezer(Teal Album)」はカバーアルバム、さらに前作「Weezer(Black Album)」では様々なジャンルを取り入れたポップアルバムに仕上がっていました。そしてそんな中、次にリリースを予定していたアルバムがヴァン・ヘイレンへのオマージュを兼ねたハードロックなアルバム「Van Weezer」を予定していた・・・そうなのですが、コロナ禍の中でツアーが中止になったことに伴い制作も中断。そしてリリースされたのが本作だそうです。

そのように急遽リリースされた本作ですが、これがまた、彼らにとっては異色作に仕上がっていました。なんと、本作は全編、ストリングスやピアノをフューチャーした作品。全くギターの音が鳴っていません!当初予定していたアルバム「Van Weezer」がハードロック志向のアルバムでしたので、ある意味、その真逆とも言える内容に、少々驚いてしまったファンも少なくないのではないでしょうか。

全編ストリングスやピアノによる鮮やかな色どりがされたポップスアルバムということで、かのビーチボーイズの名盤「PET SOUNDS」を彷彿とさせるコメントもよく見受けられます。実際、1曲目の「All My Favorite Songs」は、バンドサウンドにストリングスを重ねた分厚いアレンジがほどこされたミディアムポップとなっており、ビーチボーイズ以上にビートルズからの影響も感じる、メロディーの良さがキラリと光る、正統派のポップソングに仕上がっています。

それ以降も、ストリングスやピアノアレンジでメロディーラインがより際立つアレンジだからこそ、Weezerリヴァース・クオモのメロディーセンスの光った曲が並びます。まず前半で印象に残るのが「Numbers」。ストリングスで静かに聴かせる、ファルセット気味のボーカルで歌い上げる泣きメロが胸をうつ楽曲に仕上がっています。タイトルそのまま「Playing The Piano」もピアノの美しいメロをバックに聴かせ、歌い上げるナンバー。バンドによる曲というよりも、エルトン・ジョンあたりのシンガーソングライター系の楽曲を彷彿とさせる曲になっています。

個人的にメロディーラインが壺にはまったのが「Mirror Image」で、ゆっくりと聴かせる祝祭色の豊かなメロディーラインが強いインパクト。楽曲的には1分強の短い曲で、サビのフレーズのワンアイディアだけの曲なのですが、このゆっくりと上がって下がっていくフレーズ、個人的に壺にはいりました。

後半で印象に残ったのが「Here Comes The Rain」でしょう。個人的にバックに流れるピアノのフレーズがBilly Joelを彷彿とさせて壺にはまった1曲。爽やかでポップなメロディーラインに、こちらもリヴァースの才能を感じさせる楽曲。ストリングスとピアノ、ポップなメロディーラインのバランスも絶妙にマッチしていました。

ちょっと気になったのはポップなメロディーラインにストリングスアレンジでスケール感を付加するという方法が、いかにもJ-POP的という部分で、若干大味な部分も見受けられました。また、リヴァースといえばJ-POPからの影響も受けているミュージシャンですが、このアルバムでも「Aloo Gobi」などはJ-POP的なメランコリックさも感じられ、いい意味で日本人好みにもマッチしたアルバムと言えるかもしれません。もっとも、全体的には一部のJ-POPチューンにみられる、ただスケール感を出すだけの無意味なストレングスアレンジというのは見受けられず、そういう意味ではアルバムとしてのバランスもよく、Weezerの実力もしっかりと感じられるアルバムに仕上がっていました。

そんな訳で、非常に優れたポップの傑作として仕上がった1枚。リヴァースのメロディーメイカーとしての才が余すところなく発揮された作品だったと思います。ただ、個人的には、前作でも感じたのですが、そろそろガツンと聴かせるロックなアルバムを期待したいところ。そういう意味では、次回作は是非、「Van Weezer」を聴いてみたいなぁ。そちらも楽しみです。

評価:★★★★★

WEEZER 過去の作品
WEEZER(Red Album)
RADITUDE
HURLEY
DEATH TO FALSE METAL
Everything Will Be Alright in the End
WEEZER(White Album)
Pacific Daydream
Weezer(Teal Album)
Weezer(Black Album)


ほかに聴いたアルバム

Madre/Arca

Arcaの4曲入りのEP。直近のアルバム「KiCk i」ではノンバイナリーという彼女のパーソナリティーを前に押し出した作品になっていましたが、本作も彼女の中性的なボーカルを生かした、Arcaという個人の存在を前に押し出した作品になっています。また、全体的に荘厳な雰囲気の作品で統一されており、どこかダークな雰囲気の、彼女の心の奥底をのぞき込むような、そんな作品になっていました。

評価:★★★★★

Arca 過去の作品
Xen
Sheep(Hood By Air FW15)
Mutant
Arca
KiCk i

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2021年3月15日 (月)

ボカロP出身組としては頭ひとつ出た感が

Title:創作
Musician:ヨルシカ

ここ最近、ネット上で初音ミクなどのボーカロイドソフトを使って曲を発表していたいわゆるボカロPが、ボカロではなく人間のボーカリストを用いて曲をつくり、ボカロ支持層だけではなくもっと広いリスナー層を想定してデビューしてくるミュージシャンがグッと増えてきました。言うまでもなく米津玄師の大ヒットが契機となり、第2第3の米津玄師を探せ、的な結果起こった現象だと思いますが、それに続いたミュージシャンたちも、昨年大ヒットを記録したYOASOBIにように、ヒット曲が続いています。

そんなミュージシャンたち、YOASOBI、ずっと真夜中でいいのに、Eve、須田景凪、そして今回紹介するヨルシカがあげられると思います。米津玄師は、そんな中でまさに別格だと思うのですが、人気面はともかく、楽曲のクオリティという意味ではそれに続く位置にいるのがヨルシカではないでしょうか。メロディーにしろ歌詞にしろサウンドにしろ、そのほかのボカロP出身組のミュージシャンたちに比べると、頭ひとつ出ているような印象を受けます。

まさにそんな思いを強く感じたのが今回紹介する彼ら1枚目となるEP「創作」。直近のオリジナルアルバムのタイトルが「盗作」で、内容的にも盗作を行う作家を描いたコンセプチャルなアルバムだったのですが、同作と地続きになっているような作品になっています。まず印象的なのがその歌詞の世界。1曲目の「強盗と花束」がまず非常にインパクトのある歌詞になっており、内容的には社会の倫理観を問いているという、結構、過激な内容。「強盗と花束に何かの違いがあるのですか」という歌詞もかなりインパクトがありますし、内容的には昨今話題になっている「うっせぇわ」よりも過激と言えるかもしれません(笑)。

さらに印象に残ったのがサウンド面で、タイトルチューンでもある「創作」は、インストチューンなのですが、ピアノの美しい音色と水の音などをサンプリングしたサウンドで、爽やかな森の中にいるような雰囲気を感じるサウンドがまず印象的ですし、それに続く「風を食む」も、消費社会を題材として歌詞もインパクトがあるのですが、アコギの音と打ち込みをベースとしたシンプルなサウンドは非常にエッジが効いており、強い印象に残ります。

前作まで気になっていたネット初のミュージシャンにありがちな、頭でっかちな歌詞や、同じくネット初ミュージシャンに見られるマイナーコード主体の若干一本調子な作風といったマイナス面は本作でも感じる部分があり、その点は気にかかる部分もあったのですが、本作はわずか5曲のEPということもあり、そんな部分が大きなマイナスとなる前に作品が終った、といった感もあります。そういった意味ではヨルシカのプラスの面だけがよりはっきりと前に出たアルバムだったように感じました。

そんな訳で気になる点はあったものの、ボカロP出身組では(米津玄師を除いて)ミュージシャンとして頭ひとつ出ているように感じた作品になっていました。今後はさらにその実力を磨き、米津玄師に続く大物ミュージシャンになっていくのか、これからの活躍に期待したいところ。次のオリジナルアルバムも楽しみです。

評価:★★★★★

ヨルシカ 過去の作品
エルマ
盗作


ほかに聴いたアルバム

本日紹介するのは、先日リリースされた山下達郎のリマスター再発盤2作。

POCKET MUSIC (2020 Remaster)/山下達郎

1986年にリリースされた8枚目のオリジナルアルバムの再発盤と

僕の中の少年 (2020 Remaster)/山下達郎

1988年にリリースされた9枚目のオリジナルアルバムの再発盤。どちらも爽やかなサマーポップといった印象で、いい意味で、今に続く山下達郎らしさが確立されていることを感じます。サウンド的には良くも悪くも80年代的な空気感を強く感じるのですが、リマスターによって音はかなりよくなった模様。どちらも間違いなくAORの名盤といった感じで、リマスター盤リリースを機に、あらためて聴いておきたい作品です。

評価:どちらも★★★★★

山下達郎 過去の作品
Ray of Hope
OPUS~ALL TIME BEST 1975-2012~
MELODIES(30th Anniversary Edition)
SEASON'S GREETINGS(20th Anniversary Edition)

Big Wave (30th Anniversary Edition)
COME ALONG 3

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2021年3月14日 (日)

バンドの変遷がよくわかるベストアルバム

Title:20th Anniversary BEST 花鳥風月
Musician:MONKEY MAJIK

今年で活動20周年を迎えたロックバンドMONKEY MAJIKのベストアルバム。日本在住のカナダ人2名+日本人2名という国籍を超えたバンドということでも話題を呼んだ彼ら。2006年にはシングル「Around The World」がヒットを記録し、一躍人気バンドの仲間入りを果たしました。その後も「空はまるで」が有線で話題になったりと、根強い人気を確保しているものの、楽曲単位でのヒットは「Around The World」を超えるヒットには恵まれず、現在に至っています。

今回のベストアルバムでは、活動時期を4年毎に区切り「花」「鳥」「風」「月」という4枚のCDで構成されたアルバムとなっています。いわば彼らの楽曲を活動順に並べた作品になっているのですが、彼らの作品を時系列順で聴くと、思った以上にMONKEY MAJIKというバンドが様々なスタイルに変遷していったんだなぁ、ということがあらためてわかる構成に仕上がっていました。

まず1枚目の「花」は、2001年から2005年の楽曲を収めた作品。いわば「Around The World」がヒットする前、インディーズ時代の楽曲が収録されているのですが、この時期の作品は洋楽テイストの強いオルタナ系のギターロックバンドの色合いが強かったんだな、ということをはじめて知りました。特に冒頭の3曲「tired」「wait」「フミダスチカラ」はノイズギターを前に押し出し、バンドサウンドをより聴かせる構成となっており、彼らのスタートは、意外とロックバンド然とした活動からはじまっていたんだな、ということに驚かされました。

ただ、メジャーデビュー以降、そのスタイルは大きく変わります。メジャーデビュー作「fly」もそうなのですが、シンプルなバンドサウンドというよりも、よりポップな部分を前に押し出したようなスタイルに変化し、良くも悪くも「J-POP」なバンドとなっていきました。フロントマンの2人が在日カナダ人という特色もあってか、英語を使ったり、洋楽的な節回りを取り入れたりもしているのですが、あくまでもJ-POPというフォーマットの中での「彩り」的な要素にすぎず、むしろこの時期の作品では吉田兄弟とコラボした「Change」や和風な作風の「あかり」といったような、「西洋人が和風な作品に挑戦しようとしている」という、日本人から見た「ジャポニズム」的なつくりを感じさせます。

この方向性はDisc3「風」になるとより顕著となり、「木を植えた男」「Headlight」みたいな、いかにもJ-POP的な、ストリングスを入れてスケール感をとりあえず出しておきました、的な作品が目立つようになります。正直、この時期の作品は、楽曲的に大味な感じがあり、外国人的な発音のボーカルスタイルにも関わらず、サウンドは悪い意味でのJ-POP的とチグハグ。それなりにインパクトのあるメロディーを書けるバンドなので、決して「悪い」曲ではないけど、あまり面白みがない・・・という印象を抱いてしまいます。

ただ、これがDisc4「月」の作品になるとグッと楽曲が良くなってくるのが不思議なところ。実際、2016年のアルバム「southview」以降、ここに来てバンドの最盛期か?と思うほどの脂ののった傑作アルバムを連発するようになった彼らですが、確かにこのようなベスト盤で過去の作品を並べて聴いても、Disc4の作品から、楽曲の質が明らかに変わります。この時期の作品から、洋楽的な要素をグッと前に押し出したような作品に変化し、変に「凝った」アレンジによってスケール感を無理やり出そうとするような楽曲がなくなります。無理に「売り」を狙うような作品がなくなったからでしょうか。これがMONKEY MAJIKらしさなんだろうな、ということを感じさせる楽曲が並びます。

以前からここ最近のアルバムを聴いて、バンドとしての勢いが増してきたなぁ、ということを感じていたのですが、このベスト盤を聴いて、その印象が事実だったんだということをあらためて裏付けられました。また、楽曲的にさほど大きな変化のないポップスバンドというイメージのあった彼らですが、あらためて聴くと、様々な音楽的な変遷を経て今に至っているバンドということを認識させられるベスト盤になっていました。Disc1とDisc4は、★★★★★といった感じでしょうか。特にここ最近、バンドとしてのスタイルを今となって確立してきただけに、これからのさらなる活躍に期待したいところ。ここ最近、ヒット作がないのですが、これだけの作品をここ最近リリースし続けているだけに、久々のヒットも期待できるかも?これからの活躍が楽しみです。

評価:★★★★

MONKEY MAJIK 過去の作品
TIME
MONKEY MAJIK BEST~10years&Forever~
westview
SOMEWHERE OUT THERE
DNA
Colour By Number
southview
enigma
COLLABORATED
northview


ほかに聴いたアルバム

theory/おいしくるメロンパン

おいしくるメロンパン5枚目となるミニアルバム。前作あたりから、よりバンドとしてサウンドを聴かせる方向へのシフトを感じされたのですが、今回の作品ではその方向性がより明確に。いままでの彼らに対する印象以上にヘヴィネスなサウンドを聴かせてくれ、それがひとつのインパクトとなっていました。メロディーラインにはもうちょっとフックが欲しい印象は変わらないのですが、そのインパクトの弱さをバンドサウンドで補ってきた印象も。そしてその方向性は案外と良い方向にも向かっているように感じます。そろそろフルアルバムでバンドとしての全貌を聴きたいところですが。

評価:★★★★

おいしくるメロンパン 過去の作品
indoor
hameln
flask

36.2℃/フラワーカンパニーズ

フラカンのニューアルバム。当初、アルバム制作は予定されていなかったものの、コロナ禍によりライブツアーが中止。そんな中で急遽作成されたアルバムだそうで、いわばコロナ禍の副産物というべきアルバムとなっています。ただ、出来としては良くも悪くも無難といった印象のアルバム。フラカンらしさは感じるのですが、これといったインパクトのある作品はなく・・・。悪いアルバムではないのですが、いまひとつ印象に残らないアルバムでした。

評価:★★★

フラワーカンパニーズ 過去の作品
フラカン入門
ハッピーエンド
新・フラカン入門
Stayin' Alive
夢のおかわり
ROLL ON 48
50×4

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2021年3月13日 (土)

あの名盤から50年

Title:What’s Going On: The Detroit Mix
Musician:Marvin Gaye

2021年は、あのMarvin Gayeの名盤「What's Going On」から50年という区切りの年。いきなり年初から50周年を記念したアルバムのリリースが相次いでいます。

まずは「What's Going On」のアルバムの紹介。1971年にアメリカのシンガーソングライターでありソウルシンガーでもあるMarvin Gayeによって発表された「What's Going On」は、ソウルの名盤のみならず、全ポピュラーミュージックの中でも名盤中の名盤として名高いアルバムで、2020年選出の「ローリング・ストーンの選ぶオールタイム・ベストアルバム500」では1位に選ばれるなど、非常に高い評価を受けている作品です。

もともと本作の表題曲である「What's Going On」は、当時、ベトナム戦争から帰還した弟から戦争の様子を聴き反戦歌として作り上げた1曲。モータウンの社長、ベリー・ゴーディは当初、同曲のリリースに難色を示したものの、楽曲は大ヒットを記録。その後リリースされた本作は、表題曲をはじめとしてアメリカの社会問題に鋭く切り込んだコンセプチュアルな内容になっていました。また、本作はモータウンでは異例となるセルフ・プロデュースに挑んだ作品で、この作品によりMarvin Gaye自体もアーティストとしての評価をグッと高めた作品になっています。

今回、50周年を記念して、同作の50周年記念盤がリリースされましたが、今回紹介するのは、それと同時にデジタルリリースされた作品。「What's Going On」の最終版はロサンゼルスでミックスされたのですが、同作はその直前、デトロイトにおいてミックスされたものの、作品としては却下となってしまった、「What's Going On」のアナザーミックスとなります。今回、初登場・・・ではなく30周年記念盤の時にリリース済の作品のようですが、50周年を記念して、あらためてデジタルアルバムとしてリリースされたようです。

オリジナルのアナザーテイクという、「熱心なファン向け」の作品と言えるかもしれませんが、原曲と聴き比べると、その差は素人でも一目瞭然。さらには、このバージョンが却下になり、ロサンゼルスでのミックスが採用された理由も比較的、容易にわかる内容になっています。

最終版と比べて明確なのは、このデトロイトミックス、あきらかに最終版に比べて重低音のリズムが強調されており、よりパーカッシブで、グルーヴィーなミックスに仕上がっています。おそらくこのバージョンが採用されなかったのは、最終版と比べて、歌の部分が若干後ろに下がってしまったからではないでしょうか。最終版を聴くと、より歌の部分が明確になったミックスとなっており、おそらく歌自身をより強調したかったマーヴィンにとっては、このデトロイトミックスではサウンドの主張がちょっと強すぎたのかもしれません。

ただ、今の耳で聴くと、重低音のリズムが強調された本作は、むしろ今風であり、ある種の新鮮味すら覚える内容になっています。最終版とどちらのバージョンがいいか、と言われると、確かに歌がはっきりと前に出た最終版の方がやはりよかったのかもしれません。とはいえ、このバージョンも非常に魅力的で捨てがたいのも事実。だからこそ、デトロイトミックスとして表に出てきたのでしょう。名盤の、また別の側面が、熱狂的なファンならずとも楽しめるアルバムになっていました。

評価:★★★★★

そして、同時にリリースされたのが本作。

Title:Funky Nation: The Detroit Instrumentals
Musician:Marvin Gaye

「What's Going On」をリリース後、当時のツアー・ドラマーだったハルトン・ボハノンと、彼が招集した腕ききのミュージシャンたちとともに1971年の夏の終わりから秋にかけて録音したインスト曲を収録したアルバム。こちらは40周年記念盤に収録されていたようですが、こちらも別途デジタルアルバムとしてリリースされました。

この作品がめちゃくちゃカッコいい!全体的には、2~3分程度の楽曲が並んでおり、デモ音源程度の出来栄えだったり、短いアイディアを披露しただけといった感じの曲もあり、作品としてリリースすることを意図した、というよりもジャムプレイを楽しんでいるという要素が強いのですが、それだけに難しいこと抜きにして、楽曲のグルーヴを楽しんでいるMarvinをはじめとしたバンドメンバーの姿を感じることが出来ます。

ファンキーでグルーヴィーな作品から、楽曲によってはロック、さらにはサイケロック的な要素を感じさせる曲、フュージョンっぽい曲まで様々収録されているのですが、「What's Going On」ではさほど感じることが出来ない、Marvin Gayeの「黒い」部分をより感じることが出来る作品集になっており、そういう意味でも非常に興味深いアルバムと言えるかもしれません。こちらも申し分ない傑作アルバム。デトロイトミックスともども、熱心なファンでなくてもMarvinの魅力をより知りたいという方にはお勧めしたい作品でした。

評価:★★★★★

Marvin Gaye 過去の作品
You're The Man
What's Going On Live


ほかに聴いたアルバム

Uncivil War/Shemekia Copeland

アメリカのモダンブルースシンガーによる新作。ジャケット写真からも想像できるように、パワフルなボーカルスタイルが大きな魅力。全体的にはブルースを基調とした作品が多い反面、ストーンズの「Under My Thumb」のカバーがあったり、「She Don't Wear Pink」のようなロックンロール色の強い曲があったり、全体的にはギターを前に押し出した、ルーツ志向のロック色の強いアルバムになっていました。ブルースとロックのちょうど中間に位置するようなアルバムといった感じでしょうか。ただ、それ以上に彼女の力強いボーカルに圧巻された1枚でした。

評価:★★★★

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2021年3月12日 (金)

Rhye流ダンスミュージック?

Title:Home
Musician:Rhye

カナダ出身の男性シンガーソングライター、マイク・ミロシュによるソロプロジェクト、Rhyeのニューアルバム。毎回、官能的なボーカルに美しくメロウなメロディーラインを聴かせ、大きな話題を呼ぶRhyeですが、今回のアルバムでも非常に魅力的な歌を聴かせてくれているアルバムとなっています。ちなみにこの官能的なボーカルを聴かせるのは、ゲストの女性ボーカル、とかではなく、マイク・ミロシュその人だそうで、要するに男性ボーカルによる歌声。男性ボーカルがメロウな女性的な歌声で歌うからこそ、中性的でかつ官能的なボーカルが展開されるのでしょう。

そんな彼のニューアルバムですが、特徴としてはエレクトロサウンドでリズミカルなナンバーが目立つという点。「Beautiful」はファルセット気味のボーカルで、リズミカルな打ち込みのリズムが展開されていきますし、「Hold You Down」も、メロウな歌声で聴かせるナンバーなのですが、打ち込みのリズムはリズミカルに展開していきます。

リズミカルという点ではもっとも印象的だったのは「Black Rain」でしょう。ファルセット気味のボーカルで憂いを帯びた感じのボーカルはいつも通りなのですが、リズミカルな打ち込みのサウンドが印象に残るナンバー。決してライブなどで軽快に踊るといった感じではなく、静かに体を揺らす、といった感じになるのでしょうが、Rhye流のダンスミュージック、といっても過言ではない楽曲となっています。

ただ、そんな打ち込みでリズミカルなポップの中に、「Need A Lover」のようなアコギでしんみりと聴かせる楽曲が入ったり、「Sweetest Revenge」のような、ストリングスを入れて、哀愁感たっぷりに聴かせる楽曲があったりと、打ち込み以外で聴かせる要素も入れ、全体としてはバランスを感じさせる構成に。最後までしっかりと飽きさせない構成のアルバムに仕上がっています。

とはいえ、全体的にはいままで聴いてきた彼の3枚のアルバムの中では、一番物足りなかったかな、といった印象も残りました。一番の理由は、打ち込みのサウンドにチープさを強く感じてしまったという点。作品全体としては、ちょっとひと昔前のなつかしさを感じさせる部分もあり、チープさを感じる打ち込みの音はわざとだったようにも感じます。ただ、結果としてエレクトロサウンドは後ろでただ鳴っているだけ、という印象も受けてしまい、若干物足りなさも覚えてしまいました。

官能なボーカルは相変わらずですし、メロウなメロディーラインも魅力的。そういう意味ではRhyeの魅力はしっかりとつまったアルバムであることは間違いないと思います。そういう意味では良作であるとは思うのですが・・・惜しい印象を受けるアルバムでした。

評価:★★★★

Rhye 過去の作品
Blood
Spirit


ほかに聴いたアルバム

Live at the Royal Albert Hall/Arctic Monkeys

2018年6月7日にロンドンのアルバート・ホールで行われたライブの模様を収録したライブアルバム。当日のライブは、収益をすべて、子どもたちを戦争から守る運動を行うWar Child UKに寄付されたそうですが、そのWar Child UKがコロナ禍で損失をかかえ、今回のライブアルバムは、そのWar Child UKを救う意図で、リリースされたアルバム。収益はやはりWar Child UKに寄付されるそうです。

もともとのライブ自体、特別な意味を込めたライブということもあってセットリストはほぼベスト盤のようなセット。基本的にメランコリックなメロディーとバンドサウンド、ギターサウンドをゴリゴリ聴かせるロックチューンが非常に魅力的。Arctic Monkeysの実力と魅力を存分に感じられるアルバムになっていました。

評価:★★★★★

ARCTIC MONKEYS 過去の作品
Humbug
SUCK IT AND SEE
AM
Tranquility Base Hotel & Casin

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2021年3月11日 (木)

注目の新譜が1、2、3位に

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

大物の新譜のなかったHot100に比べ、Hot Albumsでは注目の新譜がベスト3に並んでいます。

まず1位を獲得したのがジャニーズ系アイドルグループSexy Zone「SZ10TH」。デビュー10周年を迎えた彼らの2枚目となるベストアルバム。CD販売数及びPCによるCD読取数で1位を記録し、総合順位も1位。オリコン週間アルバムランキングでも初動売上18万5千枚で1位を獲得。直近のオリジナルアルバム「POP×STEP!?」の13万1千枚(1位)からアップしています。

2位はaikoのニューアルバム「どうしたって伝えられないから」がランクイン。CD販売数、ダウンロード数で2位、PCによるCD読取数で6位。オリコンでは初動売上4万6千枚で2位初登場。直近作はベスト盤「aikoの詩」で、同作の初動8万9千枚(1位)からダウン。オリジナルアルバムで前作の「湿った夏の始まり」の初動4万7千枚(3位)からは微減。今回のオリジナルアルバムからストリーミングがついに解禁されましたが、オリジナルアルバムの初動売上の推移を見る限り、ストリーミング解禁の影響はあまりなさそうです。

3位は、人気上昇中のポップバンドsumika「AMUSIC」がランクインです。CD販売数3位、ダウンロード数4位、PCによるCD読取数10位。オリコンでは初動売上2万5千枚で3位初登場。前作「Chime」の初動3万3千枚(5位)からはダウン。Hot Albumsでは前作「Chime」が最高位2位を記録していますが、オリコンでは本作が初のベスト3ヒットとなりました。

続いて4位以下の初登場盤です。まず5位に国木田花丸(高槻かなこ)from Aqours「LoveLive! Sunshine!! Kunikida Hanamaru First Solo Concert Album ~おやすみなさん!~」が初登場。アニメキャラによるアイドルプロジェクトラブライブ!サンシャイン!!から登場したアイドルグループAqoursのメンバーによるソロアルバム。CD販売数4位、ダウンロード数29位、PCによるCD読取数28位。オリコンでは初動売上1万2千枚で4位初登場。同シリーズの前作、松浦果南(諏訪ななか)from Aqours「LoveLive! Sunshine!! Matsuura Kanan First Solo Concert Album~さかなかなんだか?~」の1万3千枚(5位)からはダウンしています。

7位にはSawanoHiroyuki[nZk]「iv」がランクイン。CD販売数8位、ダウンロード数3位、PCによるCD読取数30位。アニメ作品の劇伴曲を主に手掛ける作曲家、澤野弘之のボーカル楽曲中心のプロジェクト、SawanoHiroyuki[nZk](サワノヒロユキ ヌジーク)の新作。オリコンでは初動売上5千枚で9位初登場。澤野弘之作品として直近作、澤野弘之「BEST OF VOCAL WORKS[nZk]2」の初動7千枚(7位)よりダウン。SawanoHiroyuki[nZk]名義での前作「Rヨ/MEMBER」での1万枚(6位)よりもダウンしています。

9位初登場は大原櫻子「l(エル)」。CD販売数は7位だったものの、ダウンロード数13位、PCによるCD読取数は56位に留まり、総合順位もこの位置に。オリコンでは初動売上6千枚で7位初登場。前作「Passion」の7千枚(7位)から微減。

初登場組最後は10位に東京スカパラダイスオーケストラ「SKA=ALMIGHTY」がランクイン。こちらもCD販売数は6位だったものの、ダウンロード数15位、PCによるCD読取数57位で総合順位はこの位置に。オリコンでは初動売上6千枚で8位初登場。直近作はベスト盤「TOKYO SKA TREASURES 〜ベスト・オブ・東京スカパラダイスオーケストラ〜」で、同作の2万枚(4位)からダウン。オリジナルアルバムの前作「ツギハギカラフル」の9千枚(5位)からもダウンしています。

一方、ロングヒット組はYOASOBI「THE BOOK」。先週、10位までダウンしていましたが、「THE FIRST TAKE」配信の影響で一気に4位にランクアップ。特にダウンロード数が3位から1位に一気にアップし、4週ぶりの1位返り咲きとなりました。これで9週目のベスト10ヒットとなりました。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2021年3月10日 (水)

ついにあの曲が1位獲得!

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

現在、話題沸騰中のあの曲がついに1位獲得です。

最近はお茶の間レベルで話題にのぼることも多くなったAdo「うっせぇわ」がベスト10入りから8週目にしてついに1位獲得。ダウンロード数は2位で変わらず。ストリーミング数は2位から3位に、You Tube再生回数も1位から2位にダウンと、全体的には決して上り調子ではないのですが、今週は他の大型新曲もなかった影響で、ついに1位獲得となりました。一度聴いたら忘れられないインパクト満載のこの曲。間違いなく2021年を代表するヒット曲となりました。昨今の状況から、おそらく紅白出場も濃厚でしょうが、その時はまた物議をかもしそうな予感もします・・・。

その「うっせぇわ」とデッドヒートを繰り広げながら、ランキング的には上位を維持していた優里「ドライフラワー」は今週2位をキープ。これで16週連続のベスト10ヒット&6週連続のベスト3ヒットとなりましたが、惜しくも1位ならず。ダウンロード数は3位から4位に、You Tube再生回数も4位から5位にダウン。ただストリーミング数は今週も1位をキープしており、これで7週連続の1位。まだまだ1位を狙える位置にいます。

3位にはYOASOBI「夜に駆ける」が6位からランクアップし6週ぶりにベスト3返り咲きとなりました。ストリーミング数が5位をキープした一方、You Tube再生回数が5位から4位、ダウンロード数が14位から9位にアップ。You Tubeチャンネル「THE FIRST TAKE」で「群青」が公開されたことが大きな要因のようです。そしてその「群青」が、You Tube再生回数で今週1位を獲得。ストリーミング数も10位から7位、ダウンロード数も18位から13位にアップし、総合順位でも6位にランクアップ。8週ぶり、通算3度目の返り咲きによるベスト10ヒットとなりました。さらに今週はそれにつれ「怪物」も12位から8位にアップし、2週ぶりのベスト10返り咲き。これで今週はYOASOBIが3曲同時ランクインとなりました。

続いて4位以下の初登場曲ですが、まず9位にハロプロ系女性アイドルグループBEYOOOOONDS「激辛LOVE」がランクイン。CD販売数1位、PCによるCD読取数7位でしたが、ダウンロード数28位、ラジオオンエア数11位、Twitterつぶやき数20位、そのほかはランク圏外となり総合順位はこの位置に。イギリスの女性グループToto Coeloの「Dracula's Tango (Sucker For Your Love)」の日本語カバー。インパクト重視のユーロビートで、上手くいけばDA PUMPの「U.S.A.」よろしく、You Tubeからの口コミヒットを狙おうという戦略でしょうか。オリコン週間シングルランキングは初動売上6万5千枚で1位初登場。前作「眼鏡の男の子」の10万枚(1位)からはダウンしています。

10位には、昨年、アルバム「HELP EVER HURT NEVER」の大ヒットで注目を集めた男性シンガーソングライター、藤井風「旅路」が初登場。テレビ朝日系ドラマ「にじいろカルテ」主題歌。配信限定のシングルなのですが、ダウンロード数で見事1位を獲得。ラジオオンエア数2位、Tiwtterつぶやき数10位。ただし、ストリーミング数は43位、You Tube再生回数は70位に留まり、総合順位はこの位置となりました。全体的にはウェットなエレピが心地よいメロウなナンバーになっており、メランコリックな雰囲気が心地よい、彼らしいポップチューンに仕上がっていました。

続いてロングヒット曲ですが、まずはBTS「Dynamite」が5位からワンランクアップの4位に。ストリーミング数は先週と変わらず4位をキープ。ただ5週連続2位をキープしてきたYou Tube再生回数が今週3位にダウンしています。これで29週連続のベスト10ヒットとなりました。

さらに今週、LiSA「炎」が10位から7位にランクアップ。ストリーミング数9位、You Tube再生回数8位は先週から変わらず。土俵際の底力を見せる形となりました。これで20週連続のベスト10ヒットです。

今週のHot100は以上。来週はHot Albums!

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2021年3月 9日 (火)

「理想」と「現実」の狭間で

Title:GRADTI∞N
Musician:Little Glee Monster

2012年に行われた「最強歌少女オーディション」によって選出されたメンバーにより結成された女性コーラスグループ、Little Glee Monster。2014年のデビュー後は、シングルアルバムともにコンスタントにヒットを獲得。2017年以降は4年連続紅白歌合戦に出場するなど、確実にその地位を確保しています。今回紹介するのは、そんな彼女たちの初となるベストアルバムとなります。

「歌が上手い女の子を集めたグループ」というのが「売り」のLittle Glee Monster。とはいえ、昨今の(というよりも彼女たちがデビューした頃の)音楽業界の雰囲気といては、いろいろな売り出す上での建前を押し出しつつ、実質的にはアイドルグループ、というグループが多々ありました。ただ、彼女たちに関しては、間違いなく「歌が上手い」という点でのみ売り出しているグループ。「アイドル的」な売り出しは一切なく、あくまでも「歌」で勝負している拘りを感じさせてくれます。

そんな拘りのようなものはその楽曲にも感じることが出来ます。彼女たちのファンは、おそらく中高生あたりがメインで、あまり洋楽などを聴いたりするタイプではなく、あくまでも「流行のJ-POP」の一貫として彼女たちの曲を聴いているファンが多いような印象を受けます。ただその一方で、本格的に彼女たちのボーカルを生かすために、比較的洋楽、それもソウルやファンクテイストの強い曲も彼女たちは積極的に歌っています。

今回のベスト盤は3枚組になっており、Disc1では2ndアルバム「Joyful Monster」までの、彼女たちが6人組だった頃の楽曲を集めた「Sing 2020」、Disc2はタイトル通り、グルーヴィーな曲を集めた「Groovy Best」、Disc3はメロディアスな曲を集めた「Harmony Best」となっています。「Sing2020」の比較的初期のナンバーは、いわゆるJ-POP色が強い楽曲が多いのですが、そんな中でも「Hop Step Jump」などではソウルミュージックからの要素を感じますし、「青春フォトグラム」も卒業をテーマとした、ある種、典型的なJ-POPチューンなのですが、ゴスペル的な要素を入れてきたりと、初期のナンバーからソウルミュージックへの憧憬を感じさせる部分は少なくありません。

その方向性が典型的なのがDisc2で、ファンキーの要素を入れた「恋を焦らず」(楽曲自体、シュープリームスの「恋は焦らず」からとっていますし)や、アップテンポでソウルフルな「Baby Baby」、力強いボーカルが印象的なファンクチューン「Get Down」など、ソウルやファンクの要素を強く感じさせる曲が並びます。さらには「SPIN」では、今どきなトラップの要素をサウンドに入れてきていますし、「I Feel The Light」に至っては、Earth,Wind&Fireとの共演を実現。ソウルやファンク志向を強く感じさせる曲が少なくありません。

実際、彼女たちのボーカルをより生かしたナンバーというと、ここらへんのソウルやファンク、あるいはゴスペルなどの要素を入れた楽曲ですし、そういうこともあってか、おそらくは理想形としては本格的なソウルやファンクのコーラスグループとして彼女たちを育てていきたい、という方向性も感じます。ただ一方で、良くも悪くも彼女たちのメインのファン層は、やはり普段、ソウルやファンクなどを聴かない、J-POPメインで聴いているようなファン層がメイン。そのため、ベタなJ-POPチューンも目立ちますし、その傾向は特にDisc3の収録曲でより顕著でした。

ここらへん、例えばドリカムなんかは、ブラックミュージックの要素を上手く取り込みつつ、いい意味でJ-POP的なポップな曲調に着地させている独自のドリカムサウンドを構築しているのですが、彼女たちの場合は、彼女たち自体が楽曲を作っている訳ではないこともあって、そのような上手い着地位置は見つけていません。正直なところ、彼女たちを取り巻く作家陣を含めて、理想的としてのソウルやファンクのコーラスグループと、現実としてのJ-POPグループとしての狭間で、Little Glee Monsterの方向性を模索している最中というような印象を受けました。

彼女たちのボーカルにしても、現状、声量やピッチの安定感など、技術的な巧さが先に立っており、表現力という点においては、まだ拙さを感じてしまう印象は否めません。ただ、それは今後、いろいろな意味で経験を積んで、徐々に身に着けていくでしょう。そんな中で、音楽的な方向性を含めて、徐々にLittle Glee Monsterとしてのスタイルを確立していくような予感がします。現状は、いろいろな意味で中途半端さが残るグループではあるのですが、逆にそれだけ成長途上のグループであることは間違いなく、今後、彼女たちがどのような成長を遂げていくのか、非常に楽しみでもあります。今回のベスト盤は、そんな彼女たちの成長途上な部分が良くも悪くも多く出たアルバムといった印象があります。これから彼女たちがどのような歩みを進めていくのか・・・今後も注目したいところです。

評価:★★★★

Little Glee Monster 過去の作品
Joyful Monster
juice
FLAVA
I Feel The Light
BRIGHT NEW WORLD

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2021年3月 8日 (月)

名カバーが並ぶトリビュート盤

Title:TRIBUTE TO TRICERATOPS

1997年にシングル「Raspberry」でデビュー。今年、デビューから24年目を迎えたロックバンド、TRICERATOPS。大ヒット曲こそ、1999年の「GOING TO THE MOON」以降、目立った大ヒットはないのですが、「踊れるロック」をテーマとしたルーツ志向でかつポップなロックミュージックと、魅力的なライブパフォーマンスで根強い人気を持続している彼ら。そんなトライセラの楽曲を数多くのミュージシャンがカバーした、初のトリビュートアルバムがリリースされました。特に区切りの年でもないこのタイミングでなぜ?という印象も受けるのですが、2018年以降、活動休止状態に入っていた彼らが、昨年末から活動を再開。その活動再開の嚆矢としてのアルバム、ということなのかもしれません。

数多くのミュージシャンがトライセラの曲をカバーしたこのトリビュートアルバムですが、この手のトリビュートとして非常に理想的な、素晴らしいアルバムに仕上がっていました。それぞれのミュージシャンがそれぞれの個性を発揮しつつ、一方では原曲の良さをきちんと残したカバーになっており、カバーしたミュージシャンとトライセラのそれぞれの個性が、ほどよくバランスされた名カバーばかりが収録されたアルバムになっています。

まさにそんな典型例が1曲目の奥田民生による「ロケットにのって」でしょう。ヘヴィーなバンドサウンドによるアレンジは原曲からほとんど変わりませんが、奥田民生のボーカルが乗ることにより、完全に奥田民生の曲になっています。さらに続く「2020」は、デビュー時期が近く、特にデビュー当初は両者共通のファンも多かった、盟友GRAPEVINEのカバーなのですが、ギターのアルペジオをベースに、ゆっくりと聴かせるカバーは、GRAPEVINEの色にもピッタリとマッチ。GRAPEVINEの新曲といっても違和感ないカバーになっています。

スキマスイッチの「if」もBase Ball Bearの「Raspberry」も、原曲から大きな変化はなく、それぞれ原曲の良さをきちんと感じつつも、スキマスイッチ、Base Ball Bearらしさもきちんと発揮されたカバーになっていますし、特にカラッとしたギターサウンドで軽快に聴かせるLOVE PSYCHEDELICOの「New Lover」やピアノとアコギで幻想的に聴かせる山崎まさよしの「シラフの月」などは、完全にデリコ、山崎まさよしのフィールドにトライセラの曲を引きずり込んだ形のカバーに。ただ、原曲の良さはこれらのカバーでも失っていません。

CHABOの色が濃く出た、ブルージーな「New World」もユニークですし、このアルバムの中である意味、最もユニークで挑戦的だったのがKANの「トランスフォーマー」でしょう。全編打ち込みを取り入れたエレクトロポップに生まれ変わっている、KANちゃんらしいユニークなカバー。ただ、このエレクトロサウンドが「トランスフォーマー」に意外とマッチしており、楽曲の新たな魅力を引き出したカバーに仕上げています。

ミスチルの桜井和寿とトライセラがタッグを組んだQuattro Formaggiの「ラストバラード」も完全に桜井の曲になっています。そしてラストを締めくくるのは和田唱と小田和正の「Fever」。TBSの番組「クリスマスの約束2017」で披露された音源だそうですが、基本的に小田和正はコーラスに徹しているのですが、聴き終わった後は小田和正の印象も強く残ってしまう点も印象的。この2曲については、桜井和寿、小田和正のボーカリストとしての個性の強さを感じるカバーになっています。

そして、これだけ素晴らしいカバーが並んだもう1つの大きな要因は、間違いなく原曲が魅力的だから、ということでしょう。特に和田唱の書くメロディーラインがしっかりメロディアスでインパクトを持っているからこそ、多少乱暴なカバーをしたり、カバーするミュージシャンの個性を前に押し出したりしても、原曲の良さが失われないという点が、今回、数多くのミュージシャンが名カバーを披露した大きな要素になっているのではないでしょうか。

個人的にはTRICERATOPSというバンドは、日本でもっとも過小評価されているバンドのひとつだと思っているのですが、今回のカバーアルバムを聴いて、参加ミュージシャン個々の魅力はもちろんなのですが、それ以上にTRICERATOPSの実力、魅力を再認識したアルバムに仕上がっていたと思います。昨年末から活動を再開したトライセラ。次はついに、彼らのオリジナルアルバムのリリースとなるのでしょうか。早くトライセラの新譜も聴きたいです!

評価:★★★★★

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2021年3月 7日 (日)

アレンジャー4名で新たな挑戦

Title:蓮の花がひらく時
Musician:柴田淳

途中、カバーアルバム「おはこ」を挟んだものの、オリジナルアルバムとしては約2年2ヶ月ぶりとなるしばじゅんのオリジナルアルバム。今回のアルバムの大きな特徴としては、アレンジャーが4人に増やしたという点。いままでの彼女の楽曲にも参加してきた松浦晃久、森俊之に加えて、冨田恵一、山本隆二という2人のアレンジャーを追加し、アレンジャー全4名体制という中で制作されたアルバムとなっています。

今回は、この「サウンド」面にも相当力が入っているようで、初回盤は収録曲のインスト版が収録されたアルバムがDisc2としてついてくるあたり、その力の入れようがわかります。また、実際に全体的にはよりバラエティーに富んだサウンドに仕上がっている点が大きな特徴。4人のアレンジャーの個性がよく出ている作品になっており、序盤の「はじまりはじまり」「ループ」を手掛けた松浦晃久は、ロック系のダイナミックな音作りが特徴的。しばじゅんのボーカルに比べて前に出てくるアレンジになっているため、賛否はわかれそうなアレンジなのですが、アルバムの中ではひとつのアクセントとなっていました。

富田恵一は全編、プログラミングにより手掛けたアレンジが特徴的。ラテン調に挑戦した「ハイウェイ」などバラエティーに富んでおり、全編彼による打ち込みであるため、きめ細やかさを感じさせるアレンジが魅力的。そして山本隆二と森俊之はストリングスやピアノなどアコースティックな楽器を用いて、比較的シンプルなアレンジでしばじゅんの声を前に出して生かそうとするアレンジになっていました。

結果としてはバラエティー富んだ作風になっている一方、統一感に欠ける部分もあり、そういう意味では良い側面と悪い側面が同時に出たかな、という印象もあります。ただ、その一方で今回のアルバムは、バラエティーあるサウンドを前に押し出すために、あえて統一感をはからなかったのではないか、という印象も受けました。あらたな挑戦ということもあるのでしょうが、アレンジャーそれぞれにしばじゅんのボーカルをどのように味付けしていくのか、楽曲毎に比較の出来る作品だったと思います。

ただ、その上で、それだけ挑戦心のある試みでありながら、ちょっと無難にまとまっていたかな、という印象も受けました。松浦晃久はかなり攻めているのですが、結果、アレンジの主張が強すぎ、逆に山本隆二や森俊之はしばじゅんの声を生かそうとしているのですが、少々無難な感じに。富田恵一も、若干彼らしい個性は薄いような感じがします。ラテンやビックバンドなど、それなりに挑戦した曲もあったのですが、アレンジャーを前に押し出すのなら、しばじゅんのボーカルとの意外な相性を感じさせるユニークなアレンジがあってもよかったのではないかな、とも感じてしまいました。

一方、歌詞については、今回も悲しい失恋の歌がメイン。ここ最近、この胸をしめつけさせるような失恋の歌に純化したようなアルバムが続いていました。ただ、今回のアルバム、「はじまりはじまり」「ループ」「ハイウェイ」と、かなりヘヴィーな失恋の曲が並びつつ、後半になるに従い、徐々に明るさや希望も感じさせるような曲も増えてきています。「シャンデリアの下で」でも、未知の世界に踏み出そうとする人に対してエールを送るような曲になっていますし、ラストの「エンディング」も内容的には失恋のナンバーながらも、

「いつかこの人生を歩んだ意味を
知れたらいいと思う
君と出逢えた僕 という奇跡を」
(「エンディング」より 作詞 柴田淳)

とかなり前向きな姿勢で、次へ進む姿が見て取れます。

今回のアルバム、本人曰く「自信作」と語っているように、いろいろなところ、特にアレンジに力の入ったアルバムになっているように感じました。ただ、個人的にはこれといったインパクトのあるフレーズもありませんし、サウンドにしても、もうちょっと挑戦した方がおもしろかったのかも、とも思うアルバムになっていました。全体的にはいいアルバムだと思いますし、歌詞の面でもボーカルでもしばじゅんの魅力を強く感じる作品なのは間違いないと思います。今回、様々なアレンジャーと組んだ結果が、次のアルバムにどう生かされてくるのか・・・その点も注目です。

評価:★★★★

柴田淳 過去の作品
親愛なる君へ
ゴーストライター
僕たちの未来
COVER 70's
あなたと見た夢 君のいない朝
Billborda Live 2013
The Early Days Selection
バビルサの牙
All Time Request BEST~しばづくし~
私は幸せ
プライニクル
おはこ

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2021年3月 6日 (土)

懐かしさは感じるが

Title:ミリオンデイズ〜あの日のわたしと、歌え。〜 mixed by DJ和
Musician:DJ和

2017年にリリースした、2000年代のヒット曲を集めてDJミックスとして編集したアルバム「ラブとポップ ~好きだった人を思い出す歌がある~ mixed by DJ和」が大ヒットを記録して一躍注目を集めたDJ和。こちらは主に90年代のヒット曲を集めてDJミックスとしてつないだアルバム。個人的には、ちょうど中高生の頃のヒットした曲がメインであり、ターゲットとなる世代にドンピシャな選曲。そんな選曲の懐かしさに惹かれて聴いてみました。

まあ、そんな訳で、懐かしさにつられて聴いてみた、というこのアルバムの戦略にすっぽりはまって聴いてみた訳ですが、ただ、このアルバムに関しては(というか以前リリースされた「ラブとポップ」なんかも同じなのですが)率直に感じるものがあります。それはこの内容のアルバムなら、自分にもつくれるんじゃない??という身もふたもない感想。はっきりいって、このアルバムにDJ和なるDJの才能や実力はほとんど感じられません。選曲された曲は、「90年代のヒット曲」と言われて多分10人中10人が選びそうな無難なセレクト。妙にビーイング系の選曲が多いのは「バックにビーイングが協力しているんじゃない?」と大人の事情を感じてしまいますし、同じく、ソニー系が妙に多いのも(以下略)。曲の並びにしても、アップテンポな曲はアップテンポな曲でつなげて、ミディアムテンポな曲はミディアムテンポで、と特に工夫は感じませんし、つなぎの部分についても、特にこれといって特徴もありません。はっきり言ってしまえば、DJ和なる人物を取り上げなくても、ソニーミュージックの社員による企画で同じようなCDを作れちゃうんじゃない?とは思ってしまいます。

ただ一方で同時に感じるのは「そうはいってもコロンブスの卵で、この発想力と企画力はやはり評価されるべきなのでは?」とも思います。もともとWikipediaでDJ和なるものの経歴を調べると、通常の洋楽中心のDJで活動していたのですが、その中にJ-POPの曲を混ぜるとフロアが盛り上がることに気づき、J-POPをかけはじめたのだとか。クラブシーンにはさほど詳しくありませんが、彼がDJとしてデビューした頃には、すでにJ-POPをクラブでかけるような人がいたようにも記憶しているだけに、このスタイルの先駆的存在かどうかは不明なのですが・・・ただ、DJというスタイルにJ-POPを取り入れるという方法論の面では先見の明があったということが言えるのかもしれません。

さて、そんなアルバムの選曲なのですが、前述のとおり、主に中学生から高校生、さらには大学生の頃に聴いた曲の連続に唯々懐かしいな、と感じる一方で、正直言って、30年近く前の曲にも関わらず、楽曲としてあまり変化がない、ここらへんの曲が「今」リリースされていても、なにも不思議でないあたり、薄々感じていたのですが、ポピュラーミュージックの停滞ようなものも感じてしまいます。

あと、これはちょうど私が中高生の頃にあたるからなのかもしれませんが、ヒット曲の内容から考えると、非常に音楽シーンが濃かったな、ということを感じます。このアルバムの中の選曲の中で一番古いのはおそらくプリンセスプリンセスの「Diamonds」、一方、比較的新しいと思うのはORANGE RANGEの「花」。「Diamonds」というと、かなり昔の曲と感じる反面、「花」は比較的最近の・・・と思ってしまうのですが、「Diamonds」が89年、「花」が2004年の曲なので、この間、わずか15年程度なんですよね。逆に「花」はもう、18年も前の楽曲になってしまう訳で・・・。15年の間に数多くのミリオンヒットが生まれたこの時期は、本当に日本の音楽シーンが盛況だったんだな、ということをあらためて感じてしまいます。

ただし、90年代のヒット曲ということですが、ミスチルもスピッツもチャゲアスもB'zもサザンも未選曲。ここらへんは、レコード会社の都合を感じてしまいます。おそらく許可が下りなかったんだろうなぁ。そういう意味でも「企画もの」の域を超えるアルバムではなく、DJ和としての実力はほとんど感じられなかったのですが、純粋に企画ものとして懐かしさを感じたいのならば、聴いてみて損はないかと思います。もっとも、DJミックスですので、途中でブツ切りになってつながっている内容で、フルバージョンは聴けませんので、その点だけご注意ください。

評価:★★★

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2021年3月 5日 (金)

究極のオールタイムベスト

Title:ここにいるよ
Musician:中島みゆき

今回紹介するのは、中島みゆきの「セレクトアルバム」という位置づけでリリースされたニューアルバム。公式サイトに記載された「売り文句」によると、コロナ禍の中で、彼女の「糸」や「時代」「ファイト!」などに勇気を得て、それらの曲へのリクエストやCDアルバムに注文が集中したことから企画されたアルバムだそうで、全2枚組の内容で、1枚目が「エール盤」、2枚目が「寄り添い盤」と名付けられ、それぞれのコンセプトに沿った彼女の楽曲が収録されています。

そんなこともあって、アルバムのスタンスとしてはコンセプチュアルなセレクションアルバム、という立ち位置の作品ではあるのですが、選曲的には彼女の「オールタイムベスト」と言ってもいいような、代表曲を惜しみなく並べたような作品になっています。中島みゆきのベスト盤はいままで何度か発売されていますが、彼女の代表曲、特に大ヒット曲が網羅的に収録されるベスト盤は意外と発売されていません。直近のベストアルバムは「中島みゆき・21世紀ベストセレクション『前途』」ですが、こちらはタイトル通り、2000年以降にリリースされた曲だけ収録されているので、大ヒットした「地上の星」は収録されていますが、90年代以前のヒット曲は未収録です。90年代の大ヒット曲が比較的網羅されているのはミリオンセールスを記録した2002年の「Singles2000」ですが、こちらは「空と君のあいだに」から「地上の星」までのシングルが網羅されているものの、「時代」のようなそれ以前の曲は未収録となっています。

しかし、今回のベストアルバムは、Disc1の1曲目からいきなり「空と君のあいだに」からスタート。さらに「旅人のうた」と続き、その後も「糸」「ファイト!」「時代」そして「地上の星」と、大ヒット曲が出し惜しみなく続きます。Disc2もいきなりデビュー作「アザミ嬢のララバイ」からスタートし、「悪女」「たかが愛」のような代表曲、「タクシードライバー」のようなアルバム収録曲ながらも人気の高いナンバーもしっかりと網羅。初期のナンバーから最近のナンバーまでしっかりと網羅しています。

彼女のヒット曲の中で収録されていないのは、あとは「わかれうた」「浅い眠り」あたりでしょうか。ここらへんは、さすがにテーマに沿ってないと判断されたのか未収録になっているのはちょっと残念。ただ、その点を差し引いても、40年以上のキャリアを持つ彼女の、数多くのヒット曲、代表曲のうち、特に有名な曲をわずかCD2枚という短さで網羅的に聴けるという意味では、「究極のオールタイムベスト」といっても過言ではないセレクトだったと思います。

楽曲の良さについてはいまさら言うまでもありません。特に歌詞については、「エール盤」「寄り添い盤」という名前の通り、人々に対する「応援歌」的な位置づけになっているか・・・と思いきや、厳しい現実にしっかりと立脚し、甘くない現状を見せつける歌詞の世界は、まさに見事のひとこと。単純にうわべだけの応援歌になっていないからこそ、逆に、人々の心に深く刻み込まれるのでしょう。典型的なのが「ファイト!」で、ともすればサビの部分だけで単純な応援歌と誤解されがちなのですが、歌詞の中に登場してくるのは、現実社会の中で立ち行かなくなった一人の女性。「ファイト!」はそんな女性が自分を鼓舞するために歌うフレーズであり、その言葉はずっしりと鉛のように重くのしかかってきます。

あと、今回のアルバムであらためて感じたのが、彼女の曲のメロディーが持つ強度。一度聴いたら忘れられないフレーズが連発されているだけではなく、思わず一緒に歌いだしてしまうような、いい意味でわかりやすいメロディーラインが大きな特徴。その歌の力強さをあわせて、このアルバムを聴いてから、いまでも中島みゆきの曲が頭の中でかけめぐっています(笑)。あらためて彼女の曲の持つすごさを感じました。

そんな訳で、わずか2枚組の中島みゆきの入門的には最適なベストアルバムですし、また、彼女の代表曲をあらためて聴いてみたい方にもおすすめできるアルバム。ただ、そういえば彼女って、オールタイムベストってリリースしていないよなぁ。そろそろ、4枚組くらいのオールタイムベストを聴いてみたい気もするのですが・・・。

評価:★★★★★

中島みゆき 過去の作品
DRAMA!
真夜中の動物園
荒野より
常夜灯
十二単~Singles4~
問題集
組曲(Suite)

中島みゆき・21世紀ベストセレクション『前途』
中島みゆきConcert「一会」(いちえ)2015~2016-LIVE SELECTION-

相聞
中島みゆき ライブ リクエスト -歌旅・縁会・一会-
CONTRALTO


ほかに聴いたアルバム

モルモットラボ/キュウソネコカミ

バンド結成10周年と「ねずみ年」が重なった2020年。対となる2枚のミニアルバムをリリースし、昨年、1作目として「ハリネズミズム」をリリースしましたが、本作はその2作目となるミニアルバム。タイトル通り、ちょうど3分の内容となっている「3minutes」からスタートし、序盤は彼ららしい疾走感あるパンキッシュなナンバーからスタート。ヘヴィーなギターリフを聴かせる「囚」や、逆にポップ色の強い「薄皮」「シュレディンガー」に、フォーキーな「ぬいペニ」のような楽曲まで、いままでにないバラエティーの豊富さが楽しめます。終盤も「シャチクズ」「ポカリ伝説」みたいなユニークな歌詞の曲も。毎作、キュウソネコカミらしさをしっかりと感じさせつつ、傑作というには少々パンクロック的な勢いに頼りすぎな感があった彼らですが、本作は、勢いのあり、なおかつバラエティー富んだ作風でバンドとしての底力を感じさせる傑作になっていました。次はフルアルバムでしょうか。楽しみです。

評価:★★★★★

キュウソネコカミ 過去の作品
チェンジ ザ ワールド
ハッピーポンコツランド
人生はまだまだ続く
キュウソネコカミ -THE LIVE-DMCC REAL ONEMAN TOUR 2016/2017 ボロボロ バキバキ クルットゥー
にゅ~うぇいぶ
ギリ平成
ハリネズミズム

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2021年3月 4日 (木)

声優系が目立つチャートに

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

まず人気の声優勢によるラップバトルのアルバムが1位獲得です。

今週の1位はどついたれ本舗 vs Buster Bros!!!「ヒプノシスマイク -Division Rap Battle- 2nd Division Rap Battle『どついたれ本舗 vs Buster Bros!!!』」が獲得しました。声優によるラッププロジェクト「ヒプノシスマイク」から、架空のラップチーム同士のバトルをCDとしてリリースされるアルバム。その「2nd Division Rap Battle」の第1弾となるのが本作だそうです。CD販売数1位、ダウンロード数2位、PCによるCD読取数3位。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上7万6千枚で1位初登場。

2位はEXILEの弟分のグループ、THE RAMPAGE from EXILE TRIBE「REBOOT」がランクイン。CD販売数2位、ダウンロード数7位、PCによるCD読取数16位。オリコンでは初動売上4万9千枚で2位初登場。前作「THE RIOT」の7万枚(3位)からダウンしています。

3位初登場はジェル「Believe」。You Tubeやツイキャスなどを中心に活動を行っている6人組グループ、すとぷりのメンバーによるソロアルバム。CD販売数3位、ダウンロード数27位、PCによるCD読取数20位。オリコンでは初動売上4万8千枚で3位にランクインしています。

続いて4位以下の初登場盤。今週は1位に声優によるラッププロジェクト、ヒプノシスマイクのアルバムがランクインしてきましたが、4位以下でもこの声優系のアルバムが目立ちました。まず6位に「バンドリ! ガールズバンドパーティ! カバーコレクションVol.5」がランクイン。CD販売数6位、PCによるCD読取数13位。アニメキャラによるガールズバンドプロジェクトBanG Dream!から派生したゲーム「バンドリ! ガールズバンドパーティ!」の中で使用されたカバー曲を集めたアルバムの第5弾。オリコンでは初動売上1万5千枚で6位初登場。同シリーズの前作「ガルパ ボカロカバーコレクション」の1万4千枚(4位)から微増。

さらに7位には「ディズニー 声の王子様 Voice Stars Dream Selection III」がランクイン。CD販売数7位、ダウンロード数38位、PCによるCD読取数28位。人気声優がディズニーの曲をカバーしたアルバムで、本作が第7弾となります。オリコンでは初動売上1万4千枚で8位初登場。同シリーズの前作「Disney 声の王子様 Voice Stars Dream Selection Ⅱ」の初動2万5千枚(4位)からダウンしています。

そんな声優系意外の初登場盤は・・・まず4位にDISH//「X」がランクイン。CD販売数4位、ダウンロード数9位、PCによるCD読取数27位。スターダストプロモーション所属の男性アイドルグループ。今年2月に、メンバーの北村匠海が、You Tubeチャンネル「THE FIRST TAKE」で歌った楽曲「猫」が再生回数1億回を突破するなど話題となりました。一時期、Hot100でもランクアップしてきたのですが思ったほどの大ヒットにはつながっていません。とはいえ、今週のHot100でも19位にランクインしているのですが。本作では、その「THE FIRST TAKE」で録音した「猫~THE FIRST TAKE ver.~」も収録されています。オリコンでは初動売上3万6千枚で4位初登場。前作「CIRCLE」の1万2千枚(5位)からアップしています。

5位には同じスターダストプロモーション所属の女性アイドルグループ、ももいろクローバーZ「田中将大」がランクイン。CD販売数5位、PCによるCD読取数15位。今年、東北楽天ゴールデンイーグルスに復帰し、さらなる活躍が期待される田中将大。熱心なももクロのファンとしても知られていますが、本作は、彼が登場曲として使用した楽曲や、メジャー時代に田中投手への応援歌して作成された楽曲が収録されたコンピレーションアルバム。かなりストレートなタイトルですが・・・。オリコンでは初動売上1万5千枚で7位初登場。直近作の「月色Chainon【ももいろクローバーZ盤】」の8千枚(6位)からはアップしています。

8位には韓国の男性アイドルグループSHINee「Don't Call Me:SHINee Vol.7」がランクイン。韓国盤で、ビルボードではCD販売数はカウントされないものの、ダウンロード数で1位を獲得し、ベスト10入りとなりました。オリコンでは輸入盤が初動売上7千枚で13位にランクイン。前作「THE STORY OF LIGHT EPILOGUE」の6千枚(8位)から微増。

最後、9位にはYUI「NATURAL」がランクイン。CD販売数8位、ダウンロード数9位、PCによるCD読取数32位。2012年いっぱいでソロとしての活動を休止し、バンドFLOWER FLOWERのボーカルとして活動していた彼女ですが、昨年11月に行われたYouTube上の配信ライブ「THE FIRST TAKE FES Vol.2」でYUIとして8年ぶりに活動を再開。本作はベスト盤をのぞけば実に9年3か月ぶりとなるYUI名義のアルバムで、自身の過去の作品をセルフカバーしたアルバムとなります。オリコンでは初動売上1万枚で9位初登場。前作は2枚同時リリースしたベストアルバム「GREEN GARDEN POP」「ORANGE GARDEN POP」となりますが、両者のそれぞれ11万6千枚(2位)、11万5千枚(3位)からはそれぞれ大きくダウンしてしまっています。

今週の初登場盤は以上ですが、一方、ロングヒット盤として今週、YOASOBI「THE BOOK」が10位にランクインし、8週目のベスト10ヒットを記録しています。ただ、順位的には先週の5位から10位に大きくダウン。今後のさらなるヒットは難しそう。さらに先週までベスト10入りしていたMr.Children「SOUNDTRACKS」は今週18位にダウン。ベスト10ヒットは通算9週でストップとなりました。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2021年3月 3日 (水)

3週連続ジャニーズ系が1位

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

これで3週連続ジャニーズ系が1位獲得となりました。

今週、初登場で1位を獲得したのはジャニーズ系。Kis-My-Ft2「Luv Bias」が獲得。CD販売数、PCによるCD読取数、Twitterつぶやき数でそれぞれ1位。ほか、ラジオオンエア数13位、You Tube再生回数は15位でしたが、総合順位では1位獲得となりました。TBS系ドラマ「オー! マイ・ボス! 恋は別冊で」主題歌。オリコン週間シングルランキングでは初動売上21万3千枚で1位初登場。前作「ENDLESS SUMMER」の初動18万4千枚(1位)よりアップ。

2位は先週3位にダウンした優里「ドライフラワー」がワンランクアップで2位に返り咲き。ストリーミング数は今週で6週連続の1位。ダウンロード数も4位から3位にアップ。ただし、You Tube再生回数は反対に3位から4位にダウンしています。これで15週連続のベスト10ヒット&5週連続のベスト3ヒット。

一方で、最近では「歌詞を子供に歌わせたくない」と親世代にも話題になるなど、お茶の間レベルのヒットとなったAdo「うっせぇわ」は4位から3位にアップし、2週ぶりにベスト3返り咲き。こちらはYou Tube再生回数が5週連続で1位獲得。ストリーミング数も3週連続の2位、ダウンロード数も先週から変わらず2位なのですが、ストリーミング数の影響で、「ドライフラワー」になかなか勝てません。

続いて4位以下の初登場曲です。まず4位にOfficial髭男dism「Universe」がランクイン。CD販売数4位、ダウンロード数20位、ストリーミング数53位、ラジオオンエア数2位、PCによるCD読取数3位、Twitterつぶやき数75位、You Tube再生回数63位。先週の40位からCD販売にあわせてランクアップし、初のベスト10ヒットとなりました。映画「ドラえもん のび太の宇宙小戦争2021」主題歌。オリコンでは初動売上3万7千枚で3位初登場。前作「I LOVE...」の1万5千枚(5位)からアップしています。

映画「ドラえもん のび太の宇宙小戦争2021」はタイトル通り、1985年の映画「ドラえもん のび太の宇宙小戦争」のリメイク。オリジナルの主題歌といえば、ドラえもん映画の主題歌として屈指の名曲として知られる武田鉄矢の「少年期」なのですが、リメイクで同曲が主題歌とならなかったのは非常に残念に感じます・・・。一方で、私がヒゲダンのことをはじめて知ったのは、彼らのインディーズ時代の曲「黄色い車」がアニメ「秘密結社鷹の爪GT」主題歌に起用されたことがきっかけだったのですが、同じアニメ主題歌でも、ついにドラえもんの主題歌にまで上り詰めたか・・・と感慨深くも感じてしまいました。

もう1曲初登場は8位の22/7「僕が持ってるものなら」。秋元康プロデュースによる声優ユニットのアイドルグループ。CD販売数は2位でしたが、ラジオオンエア数65位、PCによるCD読取数17位、Twitterつぶやき数13位そのほかは圏外となっており、総合順位はこの位置に。オリコンでは初動売上7万3千枚で2位初登場。前作「風は吹いてるか?」の初動5万4千枚(2位)からアップしています。

続いてロングヒット組ですが、まずBTS「Dynamite」は先週から変わらず5位をキープ。You Tube再生回数は先週から変わらず2位をキープし、これで5週連続の2位に。一方、ストリーミング数は3位から4位にダウンしています。これで28週連続のベスト10ヒットとなりました。

YOASOBI「夜に駆ける」も今週6位をキープ。これで45週連続のベスト10ヒットとなりますが、You Tube再生回数は5位をキープしているものの、ストリーミング数は4位から5位にダウン。少しずつランクダウンしていく傾向が続いています。ちなみに2曲同時ベスト10入りを続けていたもう1曲「怪物」は今週12位にダウンです。

そしてもう1曲ロングヒット、LiSA「炎」は8位から10位にダウン。ストリーミング数は7位から9位に、You Tube再生回数も7位から8位にダウン。これでベスト10ヒットは19週連続となりましたが、さすがに後がなくなりました。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2021年3月 2日 (火)

80歳目前でのアルバムデビュー!

Title:Found! One Soul Singer
Musician:Sonny Green

今回紹介するミュージシャンは「知る人ぞ知る」的な存在だったらしい、アメリカはルイジアナ出身の男性ソウルシンガー。来年80歳になるという超ベテランミュージシャンなのですが、なんと、これがデビューアルバムとなるそうです。ただもっとも、80歳間際で超遅咲きのデビューを果たしたシンガー、という訳ではなく、1969年にシングルデビュー。1973年にはシングル「Don't Write A Check WIht Your Mouth」がR&Bチャートで89位にランクインするスマッシュヒットも記録しているそうです。ただ、その後はコンピレーションアルバムなどへのゲスト参加はあったものの録音は途絶え、音楽フェスなどに参加するなど、歌い続けてはいたそうですが、アルバムをリリースする機会には恵まれなかったそうです。

そんな「知る人ぞ知る」的な存在だった彼ですが、なんと、ここに来てアルバムリリースを果たし、齢80歳間際になり、待望のアルバムデビューとなりました。個人的には、そんな彼を知ったのは雑誌「BLUES&SOUL RECORDS」誌で取り上げられていたのがきっかけなのですが、アルバムを聴いてみて、ソウルシンガーとしてのパワーにまずは驚かされます。アルバムはボビー・ブランドのカバー「I'm So Tired」からスタートするのですが、ドスの効いた力強いだみ声のボーカルをまずは聴かせます。声に伸びがあり、艶すら感じられるその歌声は、80歳間際だとは信じられないくらい。緩急つけたボーカルも感情たっぷりで、これだけの力を持ったソウルシンガーが、いままで埋もれてきたことにもビックリ。70年代から録音が途切れていた彼ですが、現役感が全く失っていないのは、その後も歌い続けてきたからでしょう。

アップテンポでパワフルなソウルボーカルを聴かせるような曲も素晴らしいのですが、それ以上に彼のシンガーとしての実力を感じさせるのがバラードナンバーで、「Are You Sure」は、震えるようなボーカルも聴かせる、まさに泣きのバラード。感情こもったピアノをバックに聴かせるボーカルが素晴らしく、やさしい歌声を聴かせてくれたかと思えば、一転、パワフルなボーカルでリスナーの耳を奪い取ります。60年代70年代の彼のシングル曲は聴いたことないのですが、おそらくボーカリストとしての衰えが全くないであろうことを感じさせます。

8曲目の「If You Want Me To Keep Loving You」も本作の聴きどころの1曲。もともとは1971年にリリースされたシングル「Jody's On The Run」のB面曲だったそうですが、次のシングル「Come And See Me」のB面にも収録され、彼の「代表曲」とも言える楽曲だそうで、今回のアルバムでもリメイクされ収録されているあたりに、彼のこの曲の対する思い入れの深さを感じます。確かに、ミディアムブルースのこの曲は、彼がそのボーカルをパワフルに歌い上げている、ボーカリストとしての持ち味をよく発揮されているブルースナンバーとなっており、思い入れの深さも納得。彼のボーカリストとしての実力を存分に感じる曲になっています。

アップテンポなソウルナンバーではパワフルに歌い上げるボーカルを聴かせ、ブルースナンバーでは、感情こもったボーカル、さらにソウルバラードでは、伸びやかで艶のあるボーカルでリスナーを魅了する・・・これだけのソウルシンガーがいままで埋もれていたのが不思議になるのと当時に、それだけアメリアのミュージックシーンの奥の深さを感じてしまうアルバムでした。ラストを飾る「Be Ever Wonderful」もタイトル通り、まだまだソウル/ブルースシンガーとして現役だ、ということを主張するようにファルセット気味のボーカルも入れて、伸びやかな歌声を聴かせるバラードナンバー。タイトル通り、まさにソウルシンガーを見つけた!!と主張したくなるような、驚くべき魅力的なボーカルを最後の最後まで聴かせてくれます。

衰えのない現役感あふれるボーカルでこれだけ魅力的な歌声を聴かせてくれるだけに、80歳とはいえ、まだまだこれからの活躍も期待したくなってしまう1枚。とはいえ、年齢が年齢なだけに「ご無理しないように・・・」とは言いたくなってしまうのですが、でも、次のアルバム、さらには可能であれば来日ライブまで期待したくなってしまうほど!まさに「見つけた!」と言いたくなるシンガーでした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Song of Sage: Post Panic!/Navi Blue

本作が2作目となるアメリカのラッパーによるアルバム。ピアノやストリングスを用いた、美しいトラックをループさせ、その上に語るようなスタイルのラップを載せるスタイルが印象的。非常に美しいサウンドが終始、耳を惹くアルバムになっており、聴いていて心地よさを感じます。淡々と語るような落ち着いたラップもサウンドに絶妙にマッチ。ついつい聴き惚れてしまう、そんな傑作アルバムでした。

評価:★★★★★

Heaux Tales/Jazmine Sullivan

フィラデルフィア出身の女性ソウルシンガーによる4枚目のオリジナルアルバム。全14曲入りのアルバムですが、うち約半数は様々な女性の語りによるトラック。伸びやかで美しい歌声で歌い上げる正統派のソウルに、ラップなどの要素も加わり、トラック的にも今どきへしっかりとアップデートされた作品に。ただ、アカペラ的な「Lost One」やアコギをバックにしんみり聴かせる「Girl Like Me」など、やはり彼女の歌声を中心に据えてしっかりと聴かせる楽曲が大きな魅力になっている作品でした。

評価:★★★★★

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2021年3月 1日 (月)

貴重な音源を収録した津軽民謡の記録

Title:真説じょんがら節 甦る津軽放浪藝の記憶

今回もまた、2020年のベストアルバムとして各種メディアで取り上げられた作品のうち、未聴だった作品を後追いで聴いた作品。今回はMUSIC MAGAZINE誌のワールドミュージック部門で10位を獲得したアルバム。ワールドミュージック・・・といっても、本作はタイトルからわかる通り、アフリカの作品でもアジアの作品でもありません。れっきとした日本の音楽。1920年代から40年代の戦前戦後の津軽民謡のSP盤を収録したアンソロジーアルバム。全2枚組のアルバムの中に、津軽民謡の貴重な音源が収録されたアルバムとなっています。

三味線と太鼓をバックに、伸びやかに歌い上げる津軽民謡は、もちろん今でも現役で、多くの民謡歌手が活躍されている分野。おそらく多くの方にとっては、どういう形であれ、多かれ少なかれ耳にしたことがある音楽であるかと思います。ただ一方で、しっかりとした音源でまとまって聴いているという方は、少なくとも当サイトに遊びに来てくださっているような世代では少ないのではないでしょうか。

今回紹介するアルバムに収録されている音源は、いずれも戦前戦後直後の音源。戦前及び戦後直後のSP盤ということで、曲によってはレコードのノイズが酷い曲もあることにはあるのですが、全体的には比較的、保存状況は良く、聴きやすい音源がまとまっていました。そしてあらためて、津軽民謡をこのような音源の形で聴くと、その魅力を強く感じることが出来ました。

まず大きな魅力のひとつは、なんといってもその歌声でしょう。力強く伸びやかで、張りのあるその歌声の迫力は、100年近くが経過した今のリスナーの心も大きく揺さぶるのではないでしょうか。アルバムの1曲目、工藤美栄子による「津軽じょんがら節」の伸びのある歌声にまずは耳を奪われるのは間違いなし。そして特にDisc1の中で印象に残るのが、12曲目「じょんがら節」から15曲目「津軽三下り」まででその歌声を聴かせる津軽家シワ(津軽家シワ子)など歌い手。どこか色っぽさを感じさせつつ、同時にドスが効いたようなパワフルなボーカルが強い魅力。CD付属のブックレットの曲紹介でも「澄んだ声と艶、切れのよさは、津軽の芸人中、最高だろう」と評されていますが、本作の中でもその歌声は非常に印象に残ります。

そしてもうひとつの主役が三味線。こちらも曲によってはかなりアグレッシブな演奏が魅力的で、Disc2の18曲目に収録されている「津軽あいや節」では切れのある澄んだ歌声の佐藤りつの歌も魅力的ですが、アグレッシブに勢いある演奏を聴かせる三味線も耳を惹きます。この三味線を弾いているのは高橋竹山。津軽三味線を全国に広めた第一人者と言われる方で、私でもその名前を聴いたことある方。確かに、このアルバムの中でも特に耳を惹く演奏が魅力的で、その実力を感じさせます。

また、本作で意外な発見だったのは、「じょんがら節」と一言で言ってもそのバリエーションの多彩さ。津軽民謡というと、「三味線に張り上げたこぶしを効かせた歌」というお決まりのスタイルを思い浮かべるでしょうし、実際、そのような典型的なタイプの曲も少なくありません。ただ一方ではDisc2の2曲目「津軽イタコ口ヨセ」のような、歌とほぼ太鼓のみで、「イタコ口ヨセ」を再現した不気味な雰囲気の曲もあったり、Disc2の8曲目「たんと節」のように、男女の掛け合いでコミカルさを感じさせる曲もあったりと、楽曲にもバリエーションを感じさせます。

さらに、その時代の出来事をそのまま歌詞として読みこんだ曲も少なくありません。Disc1の6曲目「津軽小原節」では、1920年にロシアのニコラエフスクで発生した、ソ連の赤軍パルチザン(共産主義のゲリラ部隊)による日本人捕虜殺害事件(尼港事件)をそのまま題材にしていますし、Disc2の15曲目「津軽小原節(上)」、16曲目「津軽よされ節(上)」では1932年の第一次上海事変の最中に、爆弾を抱えて敵陣を突破して自爆し、突撃路を切り開いたという爆弾三勇士を題材としています。この時代の津軽民謡が、決して「伝統芸」ではなく、現役の「ポピュラーソング」だったということを感じさせます。

私自身、決して普段、民謡をよく聴いているという訳ではないのですが、非常に聴きごたえのあるコンピレーションアルバムで、予想以上に楽しめた作品でした。企画としても貴重なSP盤を多く収録していますし、素晴らしい企画だったと思います。普段、民謡に縁のない方でも意外と楽しめるかも。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

#4 -Retornado- /凛として時雨

2005年にインディーレーベルよりリリースされた、彼ら初のフルアルバム「#4」をリマスターした作品。「#4」については今回はじめて聴いたのですが、疾走感あるギターサウンドとマイナーコード主体のメランコリックなメロディーラインを歌い上げる、切迫したようなボーカルという凛として時雨のスタイルはこの時期にすでに確立しており、曲によっては、確かに若々しさを感じさせる部分もあるのですが、今のアルバムと並べて聴いても全く違和感ない作品に。リアルタイムではほとんど売れなかったため、おそらく多くの方にとってははじめて聴く作品なだけに、「凛として時雨の新譜」的にも楽しめるアルバムでした。

評価:★★★★

凛として時雨 過去の作品
just A moment
still a Sigure virgin?
i'mperfect
Best of Tornado
es or s
#5

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