アフロビートにあか抜けたシティポップが?
Title:Everybody Get Agenda
Musician:Bantu
今回紹介するアルバムも、2020年のベストアルバムを後追いで聴いた1枚。こちらもMusic Magazine誌ワールドミュージック部門で8位にランクインしたアルバムとなります。このBantuというバンドは、もともとドイツでラッパーとして活躍していたナイジェリア系ドイツ人、Ade Bantuを中心とした13人組のアフロビートのバンド。今はナイジェリアに戻り、Bantuを率いて活躍。本作は、その中でリリースされた1枚ということになります。
そんな彼らのアルバムですが、まずは陽気なアフロビートの楽曲がとても楽しいアルバムとなっています。まさに1曲目「Animal Collective」はアフロビートの王道ともいうべき作品になっており、陽気なホーンセッションも加わったアップテンポのビートがとにかく楽しい楽曲。続く「Disrupt the Programme」も同じく、疾走感あるアフロビートなナンバーになっており、序盤からテンションがあがっていきます。
その後もハイテンポなアフロビートながらもメランコリックなメロが印象に残る「Me,Myself and I」や、アフロビートの創始者、フェラ・クティの息子で、自身もアフロビートのミュージシャンとして活躍するシェウン・クティが参加した「Yeye Theory」など、最後までハイテンションなビートに心が躍るアフロビートの楽曲が続いていきます。
ただ、本作の大きな特徴として、アフロビートのリズムが大きなインパクトとなっている一方で、妙にあか抜けたサウンドやメロディーラインが要所要所に顔をのぞかせる点が印象に残ります。「Water Cemetery」などもメロウなメロディーラインに、ラップを取り入れたHIP HOP的な要素を感じさせますし、「Cash and Carry」や「Killers&Looters」などはジャジーなサウンドが随所に顔をのぞかせます。まあ、後ろの2曲については、同じくアフリカ音楽であるハイライフの影響を大きく受けている、といった感じではあるのですが。
さらにサウンド的に「あか抜けた」ものを感じさせるのが終盤の2曲で、「Man Know Man」は女性ボーカルによるメロウな曲調とフュージョン風のギターサウンドが印象的、「Big Lie」も男性ボーカルののびやかで爽やかなメロディーラインが印象に残る楽曲で、どちらもジャズ、ソウルの要素を入れた都会的なポップチューンとなっており、ジャンル的にはむしろ「シティポップ」とカテゴライズされそうな音楽。アフロビートの印象からするとかなりあか抜けた感じのするサウンドになっているのですが、トライバルな要素の強いアフロビートの作品との対比が非常にユニークさを感じさせるアルバムになっていました。
ここらへんは、もともとAde Bantuがドイツのベルリンで活躍していたミュージシャンだから、ということも大きいのでしょうか。ここらへんの西洋的な部分とアフリカ的な部分の対比が非常にユニークかつ上手く機能している傑作アルバムになっていたと思います。アフロビートが好きな方はもちろん、シティポップが好きな方にも惹かれる部分があるアルバムではないでしょうか。トライバルなビートとシティポップ的なサウンド、どちらも心地よく楽しめた傑作でした。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
Whole Lotta Red/Playboi Carti
アメリカはアトランタ出身の人気上昇中のラッパー、Playboi Cartiによる3枚目のアルバム。本作では自身初となるBillboardチャート1位を獲得するなど、大きな注目を集めています。サウンド的にはいまだに流行が続くトラップのアルバムなのですが、一般にトラップとしてイメージされるようなダウナーでメランコリックな雰囲気というよりは軽快なポップといった感じ。そのため、ポップな耳でも聴きやすいアルバムとなっており、確かにこれは売れそうなアルバムだなぁ、ということを実感できる作品になっていました。
評価:★★★★★
Woman Of Steel/Yemi Alade
本作も2020年ベストアルバムの後追い。Music Magazine誌ワールドミュージック部門で6位を獲得したアルバム。ナイジェリアで人気の女性シンガーによるアルバム。楽曲としては、アフリカ音楽というよりもむしろラテンの色合いの強いアルバムで、メランコリックなフレーズが印象に残る作品。伸びやかなボーカルで聴かせる作品もありますが、基本的にはリズミカルな明るいナンバーが目立つアルバムに仕上がっていました。
評価:★★★★
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