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2021年2月27日 (土)

ダイナミックなサウンドが心地よい

Title:Chants de femmes des Asturies
Musician:MUGA

今回も2020年のベストアルバムの後追いで聴いた1枚。本作は、Musici Magazine誌ワールドミュージック部門で9位を獲得したアルバム。スペインの北西部、アストゥリアス州の女性シンガー、クララ・ディアス・マルケスと、同じくスペインはブルターニュ地方のヴァイオリニスト、トマス・フェルダーとギタリストのマルタン・シャプロンによる3人組のユニット。そこに4人のゲストを迎えて作成されたのが本作だそうです。

ジャンル的にはヨーロッパトラッドということになるのでしょう。まず耳に飛び込んでくるのは、クララの力強いボーカル。ちょっとしゃがれた渋みのあるボーカルながらも声量がありパワフルなボーカルが強い魅力。うなるようにこぶしを利かせた節回しと、伸びやかなボーカルが耳を惹きます。ケルト民謡も彷彿とさせるようなメランコリックさと、勇壮さを感じさせる彼女のボーカルが、まずこのバンドの大きな魅力となっています。

そして、このボーカルと同じくらい惹かれたのが、非常にパワフルで力強いバンドサウンドでした。アルバムの冒頭「Anada de Viodo」は、いきなりヘヴィーでノイジーなギターサウンドからスタート。さらにバスドラの力強いリズムと、分厚いバイオリンの音色が重なり、ダイナミックな楽曲に仕上がっていました。続く「Ramu la Madalena de Tresmonte」も、まずは飛び込んでくるヘヴィーなギターとドラムスの音色に、ヨーロッパトラッド以上にロック的な要素を感じさせます。その後入ってくる、エキゾチックなフィドルの音色と、クララののびやかなボーカルが加わることにより、ロック的なダイナミズムさとトラッド的なエキゾチックな雰囲気が混ざり合う、独特の音楽性を醸し出していました。

その後も「Los Titos de Benllera」に至っては、ハードロックか、メタルじゃないか?というほどのヘヴィーなギターリフを前面に押し出していますし、ラストの「El Corri-Corri」もサイケデリック的な要素を感じさせるサウンドが魅力的。最初から最後まで、ある種「ロック的」と言えるダイナミックなバンドサウンドが大きな魅力となっているアルバムに仕上がっています。

そしてそんなパワフルなバンドサウンドに正面から対峙するクララのボーカルと、トマスのヴァイオリンの音色がまたパワフルかつスリリング。ゲストを加えたメンバーそれぞれが、真正面からそれぞれの音をぶつけ合い、そしてひとつのサウンドに昇華していく、ある種のすさまじさを感じる作品になっており、彼らの奏でる歌やサウンドに終始圧巻される作品でした。

ヨーロッパトラッドが好きならもちろんのこと、この作品、なにげに実はロックリスナーが楽しめるアルバムなのでは?とも感じるようなダイナミックな作品。聴き終わった後に、すさまじいものを聴いたと、しばし茫然としてしまうようなアルバムでした。こういうバンド、ライブで聴いたらすごいことになるんだろうなぁ・・・コロナ禍が終わったら、是非一度、日本にも来てほしいなぁ・・・。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

ManifestaSITI2020/Dato Siti Nurhaliza

こちらも2020年ベストアルバムの後追い。Music Magazine誌ワールドミュージック部門で、こちらは7位となったアルバム。マレーシアを代表する女性シンガーによる新作。哀愁感たっぷりに歌い上げる楽曲が並ぶ作品で、まさに「大衆歌手」といったイメージがピッタリくるようなアルバム。メロディーや節回しには歌謡曲的な部分も強く感じられ、日本人にとっても耳なじみやすい作品だと思います。確かにマレーシアを代表するような大物然とした雰囲気が漂ってくるアルバム。いい意味で、日本とマレーシア、同じアジアなんだなぁ、とも感じた作品でした。

評価:★★★★

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