郷愁感あるサウンドは日本的??
Title:The Dancing Devils Of Djibouti
Musician:Groupe RTD
今回紹介するのも、ここ最近続いている、2020年のベストアルバムを後追いで聴いた1枚。今回もMUSIC MAGAZINE誌ワールドミュージック部門第3位にランクインしていたアルバム。日本にはちょっとなじみのない国かもしれませんが・・・エチオピアの北東、ソマリアにも隣接しているアフリカの国、ジブチ共和国。彼ら、Groupe RTDは、その国営ラジオ局のオフィシャルバンド。国営ラジオ局の厳しい制限に従ってわずか3日間で録音されたそうで、ジブチ初の外国向けのレコーディングアルバムとなるそうです。
これが初の外国向け、ということからもわかるように、いままでジブチの音楽というのはほとんど知られていませんでした。そんな中リリースされた本作は非常に貴重な音源とも言えるのですが、内容的にも非常に陽気な雰囲気で楽しい作品が並ぶ傑作に仕上がっていました。ちょっとアラビアテイストの混じった、エキゾチックな香り漂う「Buuraha U Dheer」に、同じく郷愁感漂うホーンの音色が印象的な「Raga Kaan Ka'Eegtow」など、隣国エチオピアの音楽では、日本での演歌に通じるような郷愁感ただようメロディーラインの曲が大きな特徴なのですが、本作もそんな郷愁感漂う作品が目立ちます。続く「Kuusha Caarey」なども、そんな郷愁感漂うメロが印象的ですし、「Raani」もどこか日本民謡的。こぶしの利いたボーカルには日本人の琴線に触れる部分も?
本作の紹介文には、「ジャズ、レゲエ、ダブ、ボリウッドなどの音楽スタイルを取り入れた」という記載があります。実際、「Suuban」などレゲエ的な要素も感じますし、ホーンセッションの軽快なリズムにジャズ的な要素も垣間見れます。また陽気でアップテンポなエキゾチックなサウンドはまさにボリウッドといった感じでしょうか。あまり知られていない地域の音楽ながらも、非常に様々なジャンルからの音楽を取り込んだ豊かな音楽的土壌を感じさせます。
ただ、それ以上に、前述した通り、どこか日本の民謡にも通じるような、日本人の琴線に触れそうなサウンドやメロディーが顔をのぞかせるのが、私たちにとっては大きな魅力ではないでしょうか。「Halkaasad Hhigi Magtiisa」のこぶしの利いたボーカルなど、まさに民謡的ですし、「liso Daymo」の横ノリのリズムも、どこかなじみを感じてしまいます。もちろん日本の音楽が影響を与えた・・・なんてことは思わないのですが、ひょっとしたらどこかつながっている部分があるのでは?なんて想像力をたくましくしてしまいます。
録音状態としてはフィールドレコーディング的な作品もあったり、サウンド的にはチープな部分があったりと、いろいろと泥臭さを感じる部分もあるのも大きな魅力のひとつ。粗いサウンドがゆえに、現場の息遣いを感じさせる作品になっているようにも感じました。まだまだ世界には魅力的な音楽がたくさんあるんですね!日本では知られざるジブチの音楽を聴いて、あらためてそう感じた傑作アルバムでした。
評価:★★★★★
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