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2021年2月23日 (火)

14年目の彼ら

Title:MUD SHAKES
Musician:ザ・クロマニヨンズ

結成以来、ほぼ毎年、1枚ずつアルバムをリリースし続けているクロマニヨンズ。コロナ禍の中の2020年も例年と同様に、約1年2か月ぶりに新作をリリース。通算14枚目のオリジナルアルバムとなるのが本作です。通算14作目ということは、クロマニヨンズとしても結成14年目。ブルーハーツもハイロウズも結成10年で活動を終了している訳で、ヒロト&マーシーにとっても、バンド活動を14年も継続するというのはクロマニヨンズが初のケース。もともと、ブルハもハイロウズも10年程度でバンドを畳んだのは、10年活動を続けると、やはりマンネリ状態に陥るからな訳で、一方でクロマニヨンズとして14年も活動が続いているのは、14年続けても、まだバンドとして新たな可能性を感じるからこそバンド活動が続いているのでしょう。

もっとも、この14枚目のオリジナルアルバムにしても決していままでの彼らになかった新鮮なジャンルに挑戦している・・・という感じではありません。今回のアルバムも彼らが演っている音楽は愚直にロックンロール。ただ、14年目を迎える彼らは、というよりも、すでにブルハとしての活動から、30年以上バンドを演り続けているヒロト&マーシーのコンビによる音楽は、まさにプロフェッショナルとして最高峰とも言える領域に達している感のあるアルバムとなっています。

彼らがたどり着いた「最高峰とも言える領域」として、一言で言ってしまえば非常にシンプルなロックンロール。メンバー4人による絶妙なアンサンブルのバンドサウンドを貫いており、そういう意味ではブルハ以来、ロックバンドとしてのスタイルに大きな変化はないといえるかもしれません。バンドサウンドもそうですが、歌詞の世界もシンプルそのもの。今回も「ドンパンロック」やら「空き家」やら「新人」やら、およそ楽曲のタイトルとは思えないようなタイトルの、シンプルな歌詞の世界が繰り広げられています。ただ、そんな中でもクロマニヨンズとしての主張を感じさせる曲もあり、特に今回のアルバムの1曲目「VIVA!自由!!」がそれ。歌詞の内容はタイトル通りの自由賛歌なのですが、コロナ禍の中で、外出や人と会うのが制限され、活動の自由が奪われている今。まさにそのコロナに対する彼らのメッセージとも言えるのが本作であるように感じました。

また、シンプルなロックンロールの中で、様々なタイプの曲調が収録されているのも大きな特徴。「暴動チャイル(BO CHILE)」はタイトルから想像されるようなボ・ディドリー・ビートの曲ですし、「ドンパンロック」は昔ながらもギターポップ調の楽曲。「妖怪山エレキ」はモータウンビートが特徴的な軽快なナンバーですし、ラストの「かまわないでくださいブルース」もゴスペルを取り入れた楽曲。ここらへんの、特にルーツ志向の音楽性は、ブルハからの活動を含めてすっかりベテランとなったヒロト&マーシーだからこそ聴かせてくれる音楽性とも言えるでしょうし、彼らの実力を存分に感じさせる方向性とも言えるかもしれません。

バンドとしてより一層の深化を遂げた本作。ヒロト&マーシーはバンドとして15年目という未知の領域に進んでいくわけですが、まだまだクロマニヨンズとしての深化を期待できそうな、そんな傑作アルバムだったと思います。クロマニヨンズにしか作りえないクロマニヨンズらしい、そんな傑作でした。

評価:★★★★★

ザ・クロマニヨンズ 過去の作品
CAVE PARTY
ファイヤーエイジ
MONDO ROCCIA
Oi! Um bobo
ACE ROCKER
YETI vs CROMAGNON
ザ・クロマニヨンズ ツアー2013 イエティ対クロマニヨン
13 PEBBLES~Single Collection~
20 FLAKES~Coupling Collection~
GUMBO INFERNO
JUNGLE9
BIMBOROLL
ラッキー&ヘブン
レインボーサンダー
PUNCH
ザ・クロマニヨンズ ツアー PUNCH 2019-2020


ほかに聴いたアルバム

Passport&Garcon DX/Moment Joon

Pg-dx

まさに2020年を代表するアルバムとなったMoment Joonの「Passport&Garcon」。2020年の私的ベストアルバム1位に選んだことは先日紹介した通りなのですが、なんとその後、同作にゲストを追加。さらに新曲を加えてリメイクされたアルバムがリリースされました。時代を反映させすぎたアルバムゆえに、今から聴くと、歌詞の一部がすでに古くなってしまっている感もあるのですが、新曲では、本編でとらえられなかったコロナ禍での日本の状態についても収録。同作を今の時代にアップデートされた作品になっています。ただ、今聴いても、このアルバムが伝えたい本質的なメッセージの強烈さは変わっておらず、やはり2020年を代表する傑作だったと再認識させられました。

評価:★★★★★

Moment Joon 過去の作品
Passport&Garcon

THE BOOK/YOASOBI

「夜に駆ける」が大ヒットを記録し、一躍注目を集めたボカロPのAyaseと、シンガーソングライターのikuraの2人によって結成されたユニット。歌詞の方向性としては、現実世界にどこかなじめないような2人が未来をつかもうとする姿を描いた歌詞といった感じでしょうか。「文学的」と称する向きもあるのですが、個人的には「いかにも」な言葉の羅列というイメージも強く感じてしまいます。Twitterで某音楽ライターが、サウンドのチープさを指摘し、一部で賛否両論となったのですが、確かに良くも悪くもサウンドはかなりチープ。ここらへんは良くも悪くもこだわりのなさも感じ、彼らが自分の楽曲の中で、どこに焦点を当てているかも逆の意味で明確になっているようにも感じます。いかにも意味ありげな歌詞の世界観も含めて、自分が中高生だったらもうちょっとはまっていたかも、といった感のあるバンド。もうちょっと楽曲的にバリエーションが増えればおもしろいとは思うのですが。

評価:★★★

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